2023/10/10(火) - 01:04
ツール・ド・九州最終日の第3ステージが大分県日田市で開催され、レース中盤に抜け出した3名が逃げ切り、デクラン・トレザイス(ARAスキップ・キャピタル)が優勝した。個人総合成績は、アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム)が首位を守り切り、ツール・ド・九州初代チャンピオンに。兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)がポイント賞を獲得した。
マイナビ ツール・ド・九州2023最終日は、大分県南部にある国際サーキット、オートポリスから日田市内までの129km。オートポリスをパレードを含め4周したのち、コース外に出て一路北上。日田市内に設定された1周11.5kmの周回コースを5周してフィニッシュする。
日田市内に向かう途中、24.1km地点に4級山岳・上津江、42.8km地点に3級山岳・天瀬が設定されるほか、スタート直後のオートポリス内と、周回コースの1周完了時と3周完了時にスプリントポイントが設定される。
前日の第2ステージまでを終えて、個人総合首位はアンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム)。2位アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム)との差は25秒、3位留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)との差は27秒、7位のベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)までが1分以内の差に収まる。展開次第では順位の入れ替わりが起きることが予想された。
各賞ジャージも僅差の争いだ。山岳賞トップのベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)と2位留目との差は2ポイント。4級山岳1位通過で3ポイント、3級山岳で5ポイント獲得出来るので、逆転の可能性が残る。一方、スプリント賞はさらに混戦状態。第3ステージは計3回あるポイント賞を全て1位通過し、ステージ優勝もすれば34ポイントを獲得出来る。トップの兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が持つポイントは31なので、計算上は0ポイントからの逆転も可能となる。加えて最後のステージ優勝を狙う選手とチームの思惑も絡み、簡単に物事は進まない様相を見せる。
霧の立ち込めるオートポリスのサーキットコースでリアルスタートが切られると、最初のスプリントポイントに向けて今大会で何度も見られたブリヂストン・トレインが発車。兒島を1位通過させ、ポイントを加算させる。
サーキットの外に出て、日田市内へ向けての下りの途中で数名が絡む落車が発生。これに留目が巻き込まれてしまう。留目は重傷を負ってリタイア。総合3位と山岳賞逆転の可能性がここで消えた。
最初の4級山岳・上津江に向けて10名ほどの集団が先行。その後の下りで先頭集団は22名まで増えて42.8km地点の3級山岳・天瀬へ。その下りでベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)、ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)、デクラン・トレザイス(ARAスキップ・キャピタル)の3名が抜け出す。
先行する3名、3名を見送った先頭集団(=第2集団)、メイン集団(=第3集団)と、3つの集団に分かれた状態で日田の周回コースへ。3名と第2集団との差は1分40秒、第3集団までは3分以上まで開く。リーダージャージを着るゼイツは第2集団におり、この時点で54秒遅れで総合7位のダイボールがバーチャルリーダーとなる。
第3集団では、アスタナ・カザクスタンチームのメンバーが牽引してペースアップ。2周目までに第2集団と合流するも、先行する3名との差は2分以上まで開く。以降は他チームもペースアップに加担し、3周目完了時点までに1分差まで戻し、最終周回の5周目に入ると30秒、20秒と差を詰めていく。しかし先行する3名は捕まらないまま、残り500mの最終コーナーへ。3名でのスプリント勝負は、先手を打ったカバナをトレザイスがかわしてステージ優勝を決めた。その8秒後、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)を先頭に集団がフィニッシュ。リーダージャージを着るゼイツも集団前方でフィニッシュし、総合優勝を確定させた。
ポイント賞争いは、ステージ3位のダイボールが21ポイントを加算するも、9位でフィニッシュした兒島が10ポイントを加算し、4ポイント差で逃げ切った。
総合優勝 アンドレイ・ゼイツ コメント
3名の逃げを追ってチームでコントロールして捕まえ、総合優勝することが出来た。16年間の選手キャリアの中で優勝は今回が初めて。日本に来て本当に良かったし、最高の結果を残せて嬉しい。良いロケーションの中でのレースだったし、九州をもっと見て歩きたいけれど、明日には帰らなくてはならないのが残念。また日本に来たい。
ポイント賞 兒島直樹
本当はチームでスプリントポイントを全て獲っていこうというプランだったけれど、思った以上にコースレイアウトが厳しく、先頭集団が割れていたところで3名に行かれてしまったので、配点の高いフィニッシュを獲るしかないと考えて集団の中で脚を溜めていた。
先行したメンバーの中に16ポイント持ってるダイボール選手が入っていて、2回のスプリントポイントを先頭通過してステージ優勝されたら逆転される可能性があった。でもダイボール選手はポイント賞を狙っていなかったようで、それは運が良かった。チームメイトが思った以上に消耗していて遅れてしまう中、窪木さんが最後まで近くにいてくれたので、絶対ポイント賞を取らねばと思って最後は気合いでついて行った。
総合に絡む選手が先行していたのでアスタナがペースを上げていき、思った以上にコースが厳しかったこともあって、フィニッシュのスプリントは第1ステージのようには行かなかった。それでも9位でポイント賞を確定することが出来て、めちゃくちゃホッとしている。結果がなかなか出なくて落ち着かなかったけれど、今は解放された気分。
まだロードシーズンは少し残っているので、来年から始まるトラックシーズン、さらにはパリ五輪に向けての土台を作り、自分に甘えることなく頑張っていきたい。
チーム総合優勝 EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム 門田祐輔
今日は序盤に総合3位の留目選手が落車してしまい、僕らは無線を使っていないので下り切るまで混乱していたが、チーム総合1位だったので、切り替えて走った。ツール・ド・九州は初開催で、強いチームも出場するので楽しみにしていたし、みんな高いモチベーションで臨んだ。部分的ではあるがコースを試走して、第1ステージと第2ステージが総合に大きく影響するだろうと予想していた。その第2ステージでは、僕は終盤に遅れてしまったけれど、留目選手が上位に入れて成長を感じられたレースだった。それだけに今日のトラブルはとても残念。レースに落車はつきものではあるが、早い回復を祈るばかりだ。
チームとしてはこのレースがヨーロッパと日本を含めて今年の最終戦。僕個人の来年についてはまだ決まっていないが、近々良い発表が出来るのではないかと思っている。
九州初のUCIステージレースは、終わってみればアスタナ・カザクスタンチームがワールドチームの底力を見せつけた結果となった。総合3位につけていた留目のリタイアは残念だが、第2ステージの走りは今後の可能性を感じさせた。怪我からの早い復帰と、来シーズンの活躍を期待したいところだ。
小倉城クリテリウムも含め、国内レースとしてはかなり大掛かりな規模で開催出来たことは評価できよう。今後どのように展開し、開催を定着させていくかが課題となるだろうか。
マイナビ ツール・ド・九州2023最終日は、大分県南部にある国際サーキット、オートポリスから日田市内までの129km。オートポリスをパレードを含め4周したのち、コース外に出て一路北上。日田市内に設定された1周11.5kmの周回コースを5周してフィニッシュする。
日田市内に向かう途中、24.1km地点に4級山岳・上津江、42.8km地点に3級山岳・天瀬が設定されるほか、スタート直後のオートポリス内と、周回コースの1周完了時と3周完了時にスプリントポイントが設定される。
前日の第2ステージまでを終えて、個人総合首位はアンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム)。2位アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム)との差は25秒、3位留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)との差は27秒、7位のベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)までが1分以内の差に収まる。展開次第では順位の入れ替わりが起きることが予想された。
各賞ジャージも僅差の争いだ。山岳賞トップのベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)と2位留目との差は2ポイント。4級山岳1位通過で3ポイント、3級山岳で5ポイント獲得出来るので、逆転の可能性が残る。一方、スプリント賞はさらに混戦状態。第3ステージは計3回あるポイント賞を全て1位通過し、ステージ優勝もすれば34ポイントを獲得出来る。トップの兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が持つポイントは31なので、計算上は0ポイントからの逆転も可能となる。加えて最後のステージ優勝を狙う選手とチームの思惑も絡み、簡単に物事は進まない様相を見せる。
霧の立ち込めるオートポリスのサーキットコースでリアルスタートが切られると、最初のスプリントポイントに向けて今大会で何度も見られたブリヂストン・トレインが発車。兒島を1位通過させ、ポイントを加算させる。
サーキットの外に出て、日田市内へ向けての下りの途中で数名が絡む落車が発生。これに留目が巻き込まれてしまう。留目は重傷を負ってリタイア。総合3位と山岳賞逆転の可能性がここで消えた。
最初の4級山岳・上津江に向けて10名ほどの集団が先行。その後の下りで先頭集団は22名まで増えて42.8km地点の3級山岳・天瀬へ。その下りでベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)、ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)、デクラン・トレザイス(ARAスキップ・キャピタル)の3名が抜け出す。
先行する3名、3名を見送った先頭集団(=第2集団)、メイン集団(=第3集団)と、3つの集団に分かれた状態で日田の周回コースへ。3名と第2集団との差は1分40秒、第3集団までは3分以上まで開く。リーダージャージを着るゼイツは第2集団におり、この時点で54秒遅れで総合7位のダイボールがバーチャルリーダーとなる。
第3集団では、アスタナ・カザクスタンチームのメンバーが牽引してペースアップ。2周目までに第2集団と合流するも、先行する3名との差は2分以上まで開く。以降は他チームもペースアップに加担し、3周目完了時点までに1分差まで戻し、最終周回の5周目に入ると30秒、20秒と差を詰めていく。しかし先行する3名は捕まらないまま、残り500mの最終コーナーへ。3名でのスプリント勝負は、先手を打ったカバナをトレザイスがかわしてステージ優勝を決めた。その8秒後、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)を先頭に集団がフィニッシュ。リーダージャージを着るゼイツも集団前方でフィニッシュし、総合優勝を確定させた。
ポイント賞争いは、ステージ3位のダイボールが21ポイントを加算するも、9位でフィニッシュした兒島が10ポイントを加算し、4ポイント差で逃げ切った。
総合優勝 アンドレイ・ゼイツ コメント
3名の逃げを追ってチームでコントロールして捕まえ、総合優勝することが出来た。16年間の選手キャリアの中で優勝は今回が初めて。日本に来て本当に良かったし、最高の結果を残せて嬉しい。良いロケーションの中でのレースだったし、九州をもっと見て歩きたいけれど、明日には帰らなくてはならないのが残念。また日本に来たい。
ポイント賞 兒島直樹
本当はチームでスプリントポイントを全て獲っていこうというプランだったけれど、思った以上にコースレイアウトが厳しく、先頭集団が割れていたところで3名に行かれてしまったので、配点の高いフィニッシュを獲るしかないと考えて集団の中で脚を溜めていた。
先行したメンバーの中に16ポイント持ってるダイボール選手が入っていて、2回のスプリントポイントを先頭通過してステージ優勝されたら逆転される可能性があった。でもダイボール選手はポイント賞を狙っていなかったようで、それは運が良かった。チームメイトが思った以上に消耗していて遅れてしまう中、窪木さんが最後まで近くにいてくれたので、絶対ポイント賞を取らねばと思って最後は気合いでついて行った。
総合に絡む選手が先行していたのでアスタナがペースを上げていき、思った以上にコースが厳しかったこともあって、フィニッシュのスプリントは第1ステージのようには行かなかった。それでも9位でポイント賞を確定することが出来て、めちゃくちゃホッとしている。結果がなかなか出なくて落ち着かなかったけれど、今は解放された気分。
まだロードシーズンは少し残っているので、来年から始まるトラックシーズン、さらにはパリ五輪に向けての土台を作り、自分に甘えることなく頑張っていきたい。
チーム総合優勝 EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム 門田祐輔
今日は序盤に総合3位の留目選手が落車してしまい、僕らは無線を使っていないので下り切るまで混乱していたが、チーム総合1位だったので、切り替えて走った。ツール・ド・九州は初開催で、強いチームも出場するので楽しみにしていたし、みんな高いモチベーションで臨んだ。部分的ではあるがコースを試走して、第1ステージと第2ステージが総合に大きく影響するだろうと予想していた。その第2ステージでは、僕は終盤に遅れてしまったけれど、留目選手が上位に入れて成長を感じられたレースだった。それだけに今日のトラブルはとても残念。レースに落車はつきものではあるが、早い回復を祈るばかりだ。
チームとしてはこのレースがヨーロッパと日本を含めて今年の最終戦。僕個人の来年についてはまだ決まっていないが、近々良い発表が出来るのではないかと思っている。
九州初のUCIステージレースは、終わってみればアスタナ・カザクスタンチームがワールドチームの底力を見せつけた結果となった。総合3位につけていた留目のリタイアは残念だが、第2ステージの走りは今後の可能性を感じさせた。怪我からの早い復帰と、来シーズンの活躍を期待したいところだ。
小倉城クリテリウムも含め、国内レースとしてはかなり大掛かりな規模で開催出来たことは評価できよう。今後どのように展開し、開催を定着させていくかが課題となるだろうか。
マイナビ ツール・ド・九州2023 第3ステージ結果(129km)
1位 | デクラン・トレザイス(ARAスキップ・キャピタル、オーストラリア) | 2時間57分32秒 |
2位 | ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) | +0秒 |
3位 | ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア) | +2秒 |
4位 | 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム、日本) | +8秒 |
5位 | ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京) | +8秒 |
6位 | ダン・ガードナー(ボルトンエクイティース・ブラックスポーク、イギリス) | +8秒 |
7位 | ロニラン・キータ(ゴーフォー・ゴールド・フィリピン、フィリピン) | +8秒 |
8位 | ジャンバルジャムツ・セインベヤール(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム) | +8秒 |
9位 | 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング、日本) | +8秒 |
10位 | 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム、日本) | +8秒 |
個人総合成績 | ||
1位 | アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン) | 9時間13分30秒 |
2位 | アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア) | +25秒 |
3位 | ウィリアム・イーブス(ARAスキップ・キャピタル、オーストラリア) | +33秒 |
4位 | ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京、スペイン) | +35秒 |
5位 | ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア) | +39秒 |
6位 | レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島、ベネズエラ) | +54秒 |
ポイント賞 | ||
1位 | 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング、日本) | 41p |
2位 | ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア) | 37p |
3位 | ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) | 33p |
山岳賞 | ||
1位 | ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京、スペイン) | 49p |
2位 | アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン) | 31p |
3位 | ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) | 18p |
チーム総合成績 | ||
1位 | EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム | 27時間51分36秒 |
2位 | JCLチーム右京 | +2分15秒 |
3位 | ボルトンエクイティース・ブラックスポーク | +7分1秒 |
text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato,ツール・ド・九州2023実行委員会
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