今年も9月下旬にホノルルセンチュリーライドが開催され、シクロワイアード編集部の高木が東武トップツアーズのツアーに帯同。大会前日に実施される走り方講座とプラクティスライドの模様をレポートしていく。



ホノルルセンチュリーライドでの集合写真 photo:Michinari TAKAGI

ロードレースが開幕し、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの三大グランツールが忙しなく終わり、国内外サイクリングイベントが盛んな中、やってくるのはホノルルセンチュリーライド(HCR)だ。シクロワイアードではコロナ時期を除き、毎年の恒例行事で、日本からの参加ツアーを催行している東武トップツアーズのツアーに帯同し、取材を行っている。

例年ではシクロワイアードから2人の編集部員が派遣されるのだが、コロナ明けで日本でもサイクリングイベントなど取材案件が続々と復活しているため、今回は編集部員の高木が一人で担当することに。私事ではあるが、日本の47都道府県は訪れているものの、実は初海外、初ハワイであるため、海外慣れを全くしていない。加えて、HCR初参加であるため、正直なところ不安や緊張もある中、ホノルルへと向かうことに。

羽田空港に到着して、梱包した自転車を受け取る photo:Michinari TAKAGI

自転車を受け取り、預け荷物と共にカウンターへ photo:Michinari TAKAGI

ホノルルの大会スポンサーにはJALがついていることもあり、JAL自転車運搬無料サービスが用意されている。日本の航空会社ということもあり、安心してバイクを預けることができる。今回は大学生の頃から大切にしている愛車(2015年モデルのS-WORKS TARMAC)を自転車用の段ボールに詰めていく。

普段のレースで使用しているディスクロードバイクは一体型ハンドルを使用していることもあり、輪行には手間がかかる。一方で、長年の愛車はリムブレーキ仕様のため、ノーマルハンドルで機械式のコンポーネントを使用していたりとバイク自体も非常にコンパクトにできる他、現地でバイクトラブルがあっても”なんとかなる”という安心感がある。

ホノルル行きの梱包された自転車が立ち並ぶ photo:Michinari TAKAGI

空港まではできる限り身軽に行きたいので、自宅からJAL ABCを利用し、自転車は一足先に羽田空港へ。そのため出国当日はバックパックとスーツケースを持って電車と東京モノレールを乗り継いで羽田空港第3ターミナルに到着。そして、羽田空港の荷物受け取りカウンターでバイクを受け取る。

自転車とスーツケースを預け荷物のカウンターに預ける手続きをしていると、後ろには自転車の箱を持った旅行客が連なっていた。「この方たちもホノルルセンチュリーライドに参加するのかな」と思い、日本からの参加者も多いことを羽田空港でも実感したのであった。

21時から約7時間のフライトとなる photo:Michinari TAKAGI

機内食は日本人シェフ監修の充実したメニュー photo:Michinari TAKAGI
金曜日の10時、ホノルルに到着 photo:Michinari TAKAGI


日本時間の9月22日(金)21時に羽田空港を出発し、ホノルルの現地時間9時22日(金)10時にダニエル・K・イノウエ空港に到着する。時差は日付変更線を越え-19時間となったため、初めての時差ボケの辛さを実感する。7時間のフライトではあったが、機内食をはじめ最新の映画も見ることができ、あっという間に感じた。

偏西風に乗ったスムーズなフライトのおかげで、無事にホノルル玄関口ダニエル・K・イノウエ空港に到着。そして次は人生初の入国審査。また日本を旅立つ直前にアメリカで日本人のインフルエンサーが日本に強制送還されたというニュースを見てしまったため、緊張は更に高まっていった。

預け荷物を受け取りツアー参加者の皆さんと合流 photo:Michinari TAKAGI

入国審査場ではハリウッド映画で見るような視線が鋭い審査官が並び、緊迫感のある場内に緊張してしまった。そして自分の入国審査の番がくると、5つほど質問を受け、スムーズに返答することができた!そして、指紋をスキャンし、スムーズに入国審査場を後にしたが、そのやり取りによって”自分はアメリカにいる”ことを強烈に実感させらることとなった。

そして、梱包された自転車とスーツケースを受け取り、東武トップツアーのホテルまでの送迎バスを待つ。オアフ島は9月下旬であるが、最高気温は33℃と日本に比べれば少し涼しく、湿度も低かったため大変過ごしやすい気候であった。

ツアーデスクが設置されるマリオットリゾート&スパに12時に到着 photo:Michinari TAKAGI

ツアーの参加客の方と初対面のお時間。人見知りな私はこの瞬間にとても緊張してしまうのだが、参加者の皆さんは非常にフレンドリーで、すぐに打ち解けることができた。昨年まで私自身が所属していたさいたまディレーブ監督の鈴木さんが経営するスズキバイクファクトリーのお客さんがいたりなど、共通の話題があり、すぐに仲良くなることができた。

宿泊するホテルまではツアーの参加者と一緒に市内へとバス移動するため、初めての海外旅行でも安心だった。更に梱包された自転車と大きなスーツケースは空港からホテルの部屋まで運んでくれるので、荷物の運搬に困ることは一切ない。そしてツアーデスクが設置されるマリオットリゾート&スパに12時に到着した。

今中さんに案内してもらいました photo:Michinari TAKAGI

ワイキキビーチで一枚! photo:Michinari TAKAGI

東武トップツアーズのスタッフからツアー概要の説明を受けたらホテルのチェックイン15時ごろまで自由行動となる。初めてのホノルルということもあり、ホテル周辺のお店や大会で走るコースの確認、撮影スポットなどチェックするため、自転車の梱包を解きながら早速バイクの組み立てていく。

それが終わると遠くの方から眩しい真っ白のジャージを身にまとった、インターマックス代表である今中大介さんがツアーデスクに登場。なんというジャストタイミング!今中さんはこれまで何度もホノルルセンチュリーライドに参加しているため、なんとも心強い存在なのだ。そして試走も付き合ってくれることに。

ダイヤモンドヘッドの海岸線の展望台で photo:Michinari TAKAGI

ツアーデスクのある「マリオットリゾート&スパ」からダイヤモンドヘッド方面に向かって今中さんと共に走り出していく。アメリカは右側通行であり、赤信号でも右折のみはできるという日本の交通ルールとは全く異なる。そしてなんといってもホノルルは路肩が広い!

日本でも自転車を推進している都市では自転車レーンがかなり普及してきているが、車道の左側に自転車の矢印が描かれているだけではなく、車道の路肩が日本の車道一車線分くらい広く設けられているため、走っていてかなりの安心感がある。日本との違いに困惑しながらも、今中さんが日本との異なる交通ルール等を細かく教えてくれたため、すぐにホノルルにも慣れることができた。ありがとうございました!

今中さんと別れた後は、しばらく幹線道路を走り抜けていく。そして20kmほど走り、ホテルに戻ろうかというタイミングでまさかの”両輪”パンク。日ごろから路面の状況をよく見ているため日本ではここ数か月パンクと無縁だったのだが、早速ホノルルの洗礼を受けることに。

だがツアーデスクには千葉県のプロショップ「プロジェクトK」の栗田秀隆さんが期間中メカニックとして待機しているため、バイクの不具合があれば直ぐに見てもらえる。今ツアーで高木が第一号になったのは言うまでもない。(栗田さん、ありがとうございました…)



直前走り方講座

大会前日には直前走り講座を実施 photo:Michinari TAKAGI

東武トップツアーズのホノルルセンチュリーライド参加ツアーの醍醐味といえば、大会当日のサポートはもちろんだが、大会前日から”直前走り講座”や”プラクティスライド”が実施されているところがポイントである。

直前乗り方講座の会場となるのはホテルから近いところに位置するカピオラニ公園。大会のスタート&フィニッシュ地点でもあり、広々とした公園にはランニングやテニスなどスポーツを楽しむ方が集まるアクティブな公園だ。

今中さんと絹代さんが講師を務める photo:Michinari TAKAGI
プラクティスライドに向けて股関節周りの準備運動を photo:Michinari TAKAGI


直前走り講座には35人が参加 photo:Michinari TAKAGI

カピオラニ公園の広々とした芝生エリアで35人が受講した。元プロロードレーサーの今中大介さんと健康管理士の資格を持つサイクルナビゲーター絹代さんの豪華な2人が講師を務めていく。

今中さんからは長距離を走る上での身体の使い方や、ホノルルの交通ルールに関する説明があった。乗り方のアドバイスとして、今中さんによるフルブレーキングのデモンストレーションが行われ、見事なバイクコントロールに会場では拍手が起こった。

緩やかな斜面を走っていく photo:Michinari TAKAGI

元気いっぱいな絹代さん photo:Michinari TAKAGI

サイクルナビゲーター絹代さんからは食事や補給に関して講義があり、大会前日や当日の食事について細かく的確なアドバイスをしてくれていた。昨年は猛暑で参加者の多くが脚を攣ってしまったため、特にミネラルと水分補給について深堀りをした内容が語られ、参加者は皆真剣に学んでいる様子だった。

そして、その2つの講座を受けた後は実践編ということで、プラクティスライドが実施された。昨年から参加されている方も多く、皆さんホノルルを走り慣れているご様子。30分ほど走ったところ、記念写真を撮って解散し、ここからは自由行動の時間となった。

プラクティスライド後にプレゼントされたグリコのサプリメントを持って記念写真 photo:Michinari TAKAGI

私はこれまで何回も参加している参加者の方に連れられ、やってきたのは毎週土曜日に開催されているファーマーズ・マーケット。ホノルルでは人気がある朝市で、ハンバーガーやサンドイッチ、ドリンク、アサイーなどいろんなものを食べたり飲んだりできる。

ダイヤモンドヘッドの入り口から近いところで開催されているため、ホノルルの市街地から歩いてくる観光客がとても多かった。

ドラゴンフルーツやアボカドなどが販売されていた photo:Michinari TAKAGI

ハワイらしいハイビスカスミントジンジャー photo:Michinari TAKAGI
ハイビスカスミントジンジャーを頂きます photo:Michinari TAKAGI




上級者向けのプラクティスライドB

プラクティスライドBには4名が参加 photo:Michinari TAKAGI

午後からは本格的なオプショナルツアーが開始される。プラクティスAコースとBコースに分かれており、初中級向けのAコースは絹代さんが、上級者向けのBコースは今中さんがそれぞれ帯同してくれる。

初中級者向けのAコースはホノルルセンチュリーライドの25マイル折り返し地点であるサンデービーチまでの往復45kmを走るコース。上級者向けのBコースはオアフ島東海岸カイルアの町から標高366mのヌウアヌ・パリ展望台を駆け上がる約55㎞を走るコースだ。

ダイヤモンドヘッドを横目に進んでいく photo:Michinari TAKAGI

小休憩の時に今中さんが走り方のアドバイスをしてくれる photo:Michinari TAKAGI

今回は今中さん率いる上級者向けのBコースに帯同していく。ツアーデスクのあるマリオットの前で集合写真を撮り、早速スタート。中上級者向けコースということもあり、良いペーシングで走っていく。案内役の今中さんを先頭に、本番でも走ることになるカライアナオレ・ハイウェイを駆け抜けていった。

プラクティスライドBは、大会本番では走らないハナウマ湾の海岸線を走ることができる。海岸線沿いからは色鮮やかな青い海と地平線、火山による生み出された大地と隕石によってできた山肌はハワイの大自然を体感できるスポットだ。岩肌に沿って作られたハイウェイは右へ左へ小刻みなアップダウンを繰り返していく。

今中さんが一定のペースで牽引してくれるため、登りもスムーズ photo:Michinari TAKAGI

ラビットアイランドを背景に今中さんが撮影をしてくれていました photo:Michinari TAKAGI

大会本番で第一エイドステーションとなるサンディービーチに到着。お手洗い休憩中に黒い雨雲が近づいてきたと思いきや、すぐにポツポツと雨が降ってきた。しばらくするとシャワーのような大粒の雨が降ってきたものの、遠くには雲の切れ間が。そのためしばらく雨が通り過ぎるのを待った。

雨が止んだことを確認し、サンディービーチを出発。しばらく走ったところでラビットアイランドの記念撮影。沿岸は撮影スポットも多く、観光客の方が多くとまっているため、気になるところに立ち寄りながらゆっくり進んでいく。

第一エイドステーションとなるサンディービーチで通り雨に降られしばし雨宿り photo:Michinari TAKAGI

皆さん、いろんなフレーバーを注文していました photo:Michinari TAKAGI
ワイナマロの街にある小さなスイーツショップ「デイビス」でジェラートを頂きました photo:Michinari TAKAGI


途中にワイナマロの街にある小さなスイーツショップ「デイビス」で毎年恒例となっているジェラートを食べることに。20種類を優に超えるフレーバーが用意され、今中さんをはじめ、参加者の皆さん、もちろん私もどれにするのか悩んでしまった。

そしてプラクティスライドBの難所である「ヌウアヌ・パリ」へのヒルクライムに差し掛かる。オアフ島のコオラウ山脈を通る幹線道路「パリ・ハイウェー」は距離は約5km、斜度は約5.4%とマイペースに走ればさほど厳しい坂ではない。

パリ・ハイウェーを快調に進んでいく photo:Michinari TAKAGI
トンネルに差し掛かればパリ・ハイウェーの最高地点まであと少し photo:Michinari TAKAGI


パリ・ハイウェーの中腹にある絶景ポイントで一枚 photo:Michinari TAKAGI

後半にかけてコーナーが続く photo:Michinari TAKAGI

そしてパリ・ハイウェーの最高地点から右に反れたところに林道が見えてくる。距離1.7kmで、平均斜度2.2%の坂を登った先に展望台が。しかし到着した我々に爆風が襲い掛かる。今回の参加者の多くはディープリムのホイールを履いているため、バイクを押して歩いているはずなのだが、風を受けて舞い上がってしまう。バイクを慎重に立てかけ、展望台に向かっていく。

やっと思いでたどり着いた展望台から眺める景色には、鳥肌が立ち、思わず息を飲んでしまう絶景が広がっていた。コオラウ山脈の岩肌に囲まれ、海に向かって大自然と町を一望することができる。

林道を抜けると展望台の入り口に到着 photo:Michinari TAKAGI

展望台からの絶景を背景に photo:Michinari TAKAGI

映画「ジュラシックパーク」の撮影地として知られているコオラウ山脈一帯は、ティラノサウルスなどの恐竜が出てきても不思議に思わないような大自然で見惚れてしまうほどだ。この景色を観たい方はプラクティスライドBで来年待っています!

パリ・ハイウェーのダウンヒルは路面が綺麗でカーブが少なく、スピードが出すぎてしまうため、参加者の皆さんと慎重に下っていく。ゆっくり走ってきたつもりだったが、快速だった今中トレインのおかげで、日が暮れる前にワイキキビーチへと到着。

ホノルルの市街地に戻ってこれました photo:Michinari TAKAGI

この日のライドでも十分なほど満足度が高かったが、翌日は待ちに待ったホノルルセンチュリーライド本番。初参加のため高揚感で寝つきが悪かったのはここだけの話。次回に続く。

text & photo: Michinari TAKAGI

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