2023/09/15(金) - 08:45
今大会最後の山頂フィニッシュとなったブエルタ第18ステージで、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が圧巻の独走勝利。不和が囁かれたユンボ・ヴィスマはヴィンゲゴーがセップ・クスのアシストに徹し、総合首位キープに尽力した。
9月14日(木)第18ステージ
ポラ・デ・アリャンデ〜ラ・クルス・デ・リナレス 178.9km(山岳/山頂フィニッシュ)
ユンボ・ヴィスマが制圧した超級山岳アングリルの翌日も、レースは険しい山々を越える。ブエルタ第18ステージは引き続きカンタブリア山脈を舞台とし、2級、1級、3級、1級、1級と前日より800m増しの獲得標高差4,100mの登りを越えていく。
コース中盤に設定された1級山岳プエルト・デ・サン・ロレンツォ(距離9.9km/平均8.6%)をクリアし、臨むのは合計2度登る1級山岳ラ・クルス・デ・リナレス(距離8.3km/平均8.6%)だ。
今大会最後の山頂フィニッシュとなったステージで逃げたのは、山岳賞ジャージのレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を含む14名。その中には昨年の大怪我からグランツールを連戦できるまで回復したエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)の他、逃げではお馴染みのメンバーとなったアンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が入った。
逃げ集団の中に総合で脅威となる選手がいないことを確認したユンボ・ヴィスマは、スローペースでメイン集団の牽引を開始。すると一気に拡がったタイム差は最初の2級山岳で7分に達し、続く1級山岳プエルト・デ・サン・ロレンツォ(距離9.9km/平均8.6%)に入る頃には10分まで拡大した。
山岳賞のリード拡大とステージ優勝の二兎を追うエヴェネプールは、山岳賞ランキング2位のマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)が逃げに乗らなかったため、争うことなくカテゴリー山岳を連続でトップ通過。そして平均勾配が9.5%と厳しい3級山岳(残り57.7km)の登りで、エヴェネプールが作るペースにルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)などが遅れていく。
更にこのペースには、前日にジャパンカップへの参戦が発表されたアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)も脱落。しかし粘りを見せたピッコロは下りで追いつき、エヴェネプールを含む8名まで絞られた逃げ集団は、11分のリードで1度目の1級山岳ラ・クルス・デ・リナレスを目指した。
プロトンを牽引するユンボ・ヴィスマはレース後半に入っても一切ペースアップすることがなかったため、この時点でステージ優勝は逃げの8名に絞られる。そして山岳賞ジャージを手中に収めたエヴェネプールら一向は、1度目の1級山岳ラ・クルス・デ・リナレス(距離8.3km/平均8.6%)に突入。すると勾配が15%に達する登り口で、第2ステージの勝者であるクロンが仕掛けた。
一気に上がったスピードにベルナルやピッコロが遅れ、クロンは後続を引き離すどころかエヴェネプールの加速を誘発。そのため逆にクロンが脱落し、先頭はエヴェネプールとカルーゾ、そしてグランツールデビューの20歳マックス・プール(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)の3名に絞られる。そして山頂まで残り4km地点でエヴェネプールはカルーゾを引き離し、続いてプールも遅れていった。
フィニッシュ地点まで残り29km地点で単独先頭に立ったエヴェネプールは、単独で頂上を通過。この時点でプールとの差を1分21秒まで拡げ、ユンボ・ヴィスマからバーレーン・ヴィクトリアスに牽引が変わったプロトンとは10分45秒の差ができていた。
昨年の世界選手権も制した必勝パターンを築いた現TT世界王者のエヴェネプールは、急勾配のダウンヒルも危なけなくクリアして中間スプリントを通過。本人は「あくまでも目標はステージ優勝と山岳賞」と言いながらも、ポイント賞で首位のカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)に対し36ポイント差まで縮める。
そして最後のラ・クルス・デ・リナレスでもエヴェネプールはダンシングを織り交ぜる軽快な登坂を披露。そして2位のカルーゾに4分44秒差をつける圧巻の走りで、今大会3勝目を手に入れた。
一方のプロトンでは、最終山岳の手前で逃げから下がってきたニコ・デンツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と共にアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。そこにペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)と逃げに乗っていたルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)も追従し、容認したマイヨロホを含む集団はUAEチームエミレーツとモビスターがペースを作った。
山岳に入り、この日もワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)が強力な牽引によって集団の人数を絞っていく。ウラソフたちを捕まえたプールスが仕事を終えると同時に、総合5位のミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が加速。これをフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が潰し、緩んだペースにプールスが再び集団先頭に戻ってきた。
その後は総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ)のために牽引し、2度目のアタックを仕掛けたランダとアユソをペーシングでキャッチ。その後もヴィンゲゴーはライバルたちの攻撃を抑制するハイペースで先頭を牽き、フィニッシュ手前で仕掛けたエンリク・マス(スペイン、モビスター)の背後にクスがついたまま、トップから9分29秒遅れでレースを終えた。
ログリッチはクスと同タイムだった一方で、アシストに徹したヴィンゲゴーは9秒遅れでフィニッシュ。そのため総合首位クスと2位ヴィンゲゴーのタイム差が8秒から17秒差まで拡大することになった。
大会連覇を逃しながらも、元世界王者の名にふさわしい強さを見せたエヴェネプール。「逃げ集団で自分が一番強いことがわかっていた。だから(様子を見る)時間を無駄にしたくないと思い、早めに仕掛けた。(逃げ切り勝利した)第14ステージのような良い脚があった。全ての山岳をトップ通過する素晴らしいステージになったよ」と、この日登場した5つ全ての山岳をトップで通過して勝利を収めたエヴェネプールはコメントした。
そしてマイヨロホを守り、また一歩総合優勝に近づいたクス。「ヨナス(ヴィンゲゴー)の牽引は素晴らしかった。だが彼が強すぎて遅れてしまうと思い、怖さすら感じたよ(笑)。アングリルの前に話し合い、ある戦略に皆合意していた。そしてアングリルを経て僕らは再び話し合い、新たな戦略に合意した」と、クスは前日ステージで囁かれたチーム内の不和を一蹴。
また総合タイムの犠牲も構わずアシストに徹したヴィンゲゴーは「セップ(クス)が僕とプリモシュ(ログリッチ)にしてくれたことの恩返しがしたい。だからそれを今日は実行し、また土曜日にも同じことをするつもりだ」と語った。
9月14日(木)第18ステージ
ポラ・デ・アリャンデ〜ラ・クルス・デ・リナレス 178.9km(山岳/山頂フィニッシュ)
ユンボ・ヴィスマが制圧した超級山岳アングリルの翌日も、レースは険しい山々を越える。ブエルタ第18ステージは引き続きカンタブリア山脈を舞台とし、2級、1級、3級、1級、1級と前日より800m増しの獲得標高差4,100mの登りを越えていく。
コース中盤に設定された1級山岳プエルト・デ・サン・ロレンツォ(距離9.9km/平均8.6%)をクリアし、臨むのは合計2度登る1級山岳ラ・クルス・デ・リナレス(距離8.3km/平均8.6%)だ。
今大会最後の山頂フィニッシュとなったステージで逃げたのは、山岳賞ジャージのレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を含む14名。その中には昨年の大怪我からグランツールを連戦できるまで回復したエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)の他、逃げではお馴染みのメンバーとなったアンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が入った。
逃げ集団の中に総合で脅威となる選手がいないことを確認したユンボ・ヴィスマは、スローペースでメイン集団の牽引を開始。すると一気に拡がったタイム差は最初の2級山岳で7分に達し、続く1級山岳プエルト・デ・サン・ロレンツォ(距離9.9km/平均8.6%)に入る頃には10分まで拡大した。
山岳賞のリード拡大とステージ優勝の二兎を追うエヴェネプールは、山岳賞ランキング2位のマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)が逃げに乗らなかったため、争うことなくカテゴリー山岳を連続でトップ通過。そして平均勾配が9.5%と厳しい3級山岳(残り57.7km)の登りで、エヴェネプールが作るペースにルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)などが遅れていく。
更にこのペースには、前日にジャパンカップへの参戦が発表されたアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)も脱落。しかし粘りを見せたピッコロは下りで追いつき、エヴェネプールを含む8名まで絞られた逃げ集団は、11分のリードで1度目の1級山岳ラ・クルス・デ・リナレスを目指した。
プロトンを牽引するユンボ・ヴィスマはレース後半に入っても一切ペースアップすることがなかったため、この時点でステージ優勝は逃げの8名に絞られる。そして山岳賞ジャージを手中に収めたエヴェネプールら一向は、1度目の1級山岳ラ・クルス・デ・リナレス(距離8.3km/平均8.6%)に突入。すると勾配が15%に達する登り口で、第2ステージの勝者であるクロンが仕掛けた。
一気に上がったスピードにベルナルやピッコロが遅れ、クロンは後続を引き離すどころかエヴェネプールの加速を誘発。そのため逆にクロンが脱落し、先頭はエヴェネプールとカルーゾ、そしてグランツールデビューの20歳マックス・プール(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)の3名に絞られる。そして山頂まで残り4km地点でエヴェネプールはカルーゾを引き離し、続いてプールも遅れていった。
フィニッシュ地点まで残り29km地点で単独先頭に立ったエヴェネプールは、単独で頂上を通過。この時点でプールとの差を1分21秒まで拡げ、ユンボ・ヴィスマからバーレーン・ヴィクトリアスに牽引が変わったプロトンとは10分45秒の差ができていた。
昨年の世界選手権も制した必勝パターンを築いた現TT世界王者のエヴェネプールは、急勾配のダウンヒルも危なけなくクリアして中間スプリントを通過。本人は「あくまでも目標はステージ優勝と山岳賞」と言いながらも、ポイント賞で首位のカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)に対し36ポイント差まで縮める。
そして最後のラ・クルス・デ・リナレスでもエヴェネプールはダンシングを織り交ぜる軽快な登坂を披露。そして2位のカルーゾに4分44秒差をつける圧巻の走りで、今大会3勝目を手に入れた。
一方のプロトンでは、最終山岳の手前で逃げから下がってきたニコ・デンツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と共にアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。そこにペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)と逃げに乗っていたルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)も追従し、容認したマイヨロホを含む集団はUAEチームエミレーツとモビスターがペースを作った。
山岳に入り、この日もワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)が強力な牽引によって集団の人数を絞っていく。ウラソフたちを捕まえたプールスが仕事を終えると同時に、総合5位のミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が加速。これをフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が潰し、緩んだペースにプールスが再び集団先頭に戻ってきた。
その後は総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ)のために牽引し、2度目のアタックを仕掛けたランダとアユソをペーシングでキャッチ。その後もヴィンゲゴーはライバルたちの攻撃を抑制するハイペースで先頭を牽き、フィニッシュ手前で仕掛けたエンリク・マス(スペイン、モビスター)の背後にクスがついたまま、トップから9分29秒遅れでレースを終えた。
ログリッチはクスと同タイムだった一方で、アシストに徹したヴィンゲゴーは9秒遅れでフィニッシュ。そのため総合首位クスと2位ヴィンゲゴーのタイム差が8秒から17秒差まで拡大することになった。
大会連覇を逃しながらも、元世界王者の名にふさわしい強さを見せたエヴェネプール。「逃げ集団で自分が一番強いことがわかっていた。だから(様子を見る)時間を無駄にしたくないと思い、早めに仕掛けた。(逃げ切り勝利した)第14ステージのような良い脚があった。全ての山岳をトップ通過する素晴らしいステージになったよ」と、この日登場した5つ全ての山岳をトップで通過して勝利を収めたエヴェネプールはコメントした。
そしてマイヨロホを守り、また一歩総合優勝に近づいたクス。「ヨナス(ヴィンゲゴー)の牽引は素晴らしかった。だが彼が強すぎて遅れてしまうと思い、怖さすら感じたよ(笑)。アングリルの前に話し合い、ある戦略に皆合意していた。そしてアングリルを経て僕らは再び話し合い、新たな戦略に合意した」と、クスは前日ステージで囁かれたチーム内の不和を一蹴。
また総合タイムの犠牲も構わずアシストに徹したヴィンゲゴーは「セップ(クス)が僕とプリモシュ(ログリッチ)にしてくれたことの恩返しがしたい。だからそれを今日は実行し、また土曜日にも同じことをするつもりだ」と語った。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第18ステージ
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 4:47:37 |
2位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 4:44 |
3位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 5:10 |
4位 | マックス・プール(イギリス、DSM・フィルメニッヒ) | 5:12 |
5位 | ポール・ウルスラン(フランス、トタルエネルジー) | 5:17 |
6位 | ジュリアン・ベルナール(フランス、リドル・トレック) | 6:11 |
7位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 7:01 |
8位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 9:29 |
9位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
10位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | |
12位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
12位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 9:32 |
13位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 9:38 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 65:31:27 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:17 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:08 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +4:00 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:16 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +4:30 |
7位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +7:37 |
8位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +8:35 |
9位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +10:20 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +12:20 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 228pts |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 192pts |
3位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 139pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 129pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 51pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | 39pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 65:35:27 |
2位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:37 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +6:20 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 196:00:56 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +33:59 |
3位 | UAEチームエミレーツ | +36:27 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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