2023/08/07(月) - 11:00
スペシャライズドがTarmac SL8を発表した。ワールドツアー参加レースバイクの中でもっとも軽く、もっともエアロ。初代モデル登場から20年以上の時を経て、開発を重ね第8世代となったSL8はTarmac史上最速なだけでなく「世界最速のレースバイク」になったという。
スペシャライズドがモットーに掲げる「MADE IN RACING」。プロチームへのスポンサードを通じて製品の性能向上に役立てる。しかしレース参戦の理由はただレースに勝つためではなかった。嬬恋高原で開催されたローンチイベントにおいて、SL8の開発が歩んだ道のりが説明された。
スペシャライズドがチームへ機材スポンサードを行ってきた理由は、ひとえに良い製品を造りたかったからだという。レース活動のなかで製品を造っていくことで、目の肥えたプロライダーたちの評価を得ていく。それが製品造りにおいてもっとも近道だろうというのがMADE IN RACINGの基本的な考え方。同社のレーシング関連カテゴリーのプロダクツにおいては、ワールドクラスのトップライダーたちと協力しながらの製品開発に徹底して取り組んできた。
スペシャライズドは1998年のアルミロード「Allez」から欧州プロロードチームに機材供給を開始。2004年にはTarmacの初代となるフルカーボンロード、S-Works Tarmac E5が誕生。以降、SL2、SL3、SL4と代を重ね、SL5にあたる第5世代のTarmacからはRider First Engineerd(すべてのバイクで一貫した性能を確実に発揮させるデザインアプローチ)が取り入れられ、以降のTarmacの造り方を大きく変えることになる。
その歩みの半ばよりTarmacはエアロロードのVengeと車種を分かちながら展開されてきたが、第7世代開発に当たってはVengeが廃され、エアロの要素を取り込んだオールラウンドロードとしてTarmac SL7に一本化される。
その結果、ゲームチェンジャーとしてのTarmac SL7は「すべてを叶える一台(SL7発表時の記事)」として、グランツール、モニュメントを含むワンデイクラシック、世界選手権のタイトルを総なめする活躍を収める。なかでもSL7は2020年夏のデビューから今までの3年の間に、女子エリートを含むロード世界選手権タイトルをすべて獲得する快挙を達成。ヒルクライムでもスプリントでも、コースの種類やレースタイプを問わず勝利を収めるという、スペシャライズド史上もっとも成功したバイクとなった。
エアロなだけ、あるいは軽いだけではレースに勝てない。重要なのは速さ。その速さを実現するには、空力性能、軽量性、剛性、そしてコンプライアンスのどれにも妥協をせず、そのすべてを高いレベルで融合させる必要があるとスペシャライズドは言う。
「Innovate or Die(革新か、死か)」を標榜するスペシャライズド。Tarmac SL8は、空力性能、軽量性、ライドクオリティーの3要素をバランスさせる考え方で設計され、それら3つの要素を兼ね備えることが最終的にスピードにつながるという考えのもと開発された。
■もっともエアロなロードバイク
自社風洞実験施設 Win Tunnelでの試行錯誤を重ねて10年。風洞実験を重ねて完成したのが、Vengeを超える最も空力性能に優れたロードバイク、Tarmac SL8だ。
F1の開発でも行われるフロービズ(フロー・ビジュアル・ペイント)により、先端形状以外に空力性能を向上できる部位を見つけ、 最適化を行う。空力性能を最大限に高めるため、影響する部位や先端部の形状を最適化。もっとも最初に空気抵抗を受けるヘッドチューブ周辺を重視し、その幅を決めるフォークコラムを、前方に大きく突き出たノーズコーンの後方へと移設することでヘッドチューブの先端形状をより鋭くし、空気抵抗を減らすことに成功。
また、S-Works完成車に標準装備される一体型のRapide Cockpit(単体購入可能)は、先端部の構造を単純化することで別体式ハンドルとステムの組み合わせより4ワットの空気抵抗を削減、同時に50gの軽量化も達成する。
そしてUCIの新車両規定に従い、Tarmac SL8のシートチューブはSL7のシートポストと同じサイズにまでシェイプアップされた。その結果、SL8はこれまででもっとも薄く空力的に優れたシートポストを獲得、ペダリングする両脚にかき乱された高速の気流を後方へ流れやすくする。
そして「見た目のためではなく、効果の得られる部位に空力性能を」の考えに基づき、ペダリングによって空気のかき乱されるBB周辺部などは無駄を徹底的に削り落とした形状に。そうした開発の結果、距離40kmの走行でSL7より16.6秒速い「もっともエアロなロードバイク」が誕生した。
■「もっとも軽い」だけでなく、剛性とライドクオリティーも向上
エアロ面の目標をクリアしたことで、エンジニアたちはバイク全体の軽量化とライドクオリティーの向上に専念することができたという。
エアロ性能を重視しながらも無駄な重量を削ぎ落とす。軽量化にはAethos(エートス)の開発によって得られたテクノロジーが余すところなく生かされた。わずか685gのフレームはワールドツアー出場バイク中最軽量であり、もしもSL8とSL7の重量を均衡にするなら、SL7からはシートチューブとその接合部を取り払う必要があるほどの大幅な軽量化を達成する。
バイクの軽さの重要性についてレムコ・エヴェネプールは言う。「バイクが軽くなればなるほど急勾配の上り坂で有利になり、その差を体感できる。わずか1〜2秒短縮できるだけで、 レースの勝敗を分けるには十分だ」。
ライドクオリティー(乗り心地)は長距離を走るロードレースにおいて軽視できない要素。SL8のBBやヘッド周辺の剛性はSL7より高められており、重量剛性比16%向上の数値を達成しながらも、スムーズさを決めるコンプライアンス(縦方向の柔軟性)は6%向上。過去最高のハンドリング性能と快適性、反応性を実現しているという。
SL8開発において、スペシャライズドのライドサイエンスチームは実際のデータを用いてシミュレーションを実施。ミラノ〜サンレモ、グランツールの難関山岳ステージ、モニュメント(クラシックレース)などを走ったことを想定した複雑なシミュレーションを実施し、「距離40kmの走行で16.6秒を短縮」「ミラノ〜サンレモで128秒を短縮」「ツールマレー峠頂上までの17kmで20秒を短縮」etc...。得られた数々のデータにより、Tarmac SL8が主要レースを走るうえで最速であることを突き止めた。
初代Tarmacの登場から8世代め、20年以上のモデル開発期間を経て誕生したSL8は「Tarmac史上最速」や「スペシャライズド史上最速」にとどまらず、「すべてを制する一台」であり「世界で一番速いレースバイク」であるとスペシャライズドは主張する。そのための裏付けとなる比較データを裏付けとして保持しているという。
■フロントローディング開発
TarmacSL8が今回のような変化を遂げたのは、開発手法が変わったことが大きいという。新たな開発者を迎えると同時に「フロントローディング開発プロセス」が導入された。これはソフトウェアの開発などで用いられるデータ主導の開発手法で、ターゲットとしての要件定義を先に決めた上で、それを達成するための開発を推し進めるという手法だ。製品開発のプロセスで業務の初期工程に負荷をかけ、作業を前倒しで進める。できる限り早い段階で多くの問題点やリスクを洗い出し、対策を講じて初期段階から設計品質を高める。いわば製品は開発した結果ではなく、目標を決めて達成するものと定義される。
フレーム製作におけるそのプロセスは、積層ごとの数値モデルを用いたカーボンモデリングと、有限要素法(FEA)や数値流体力学(CFD) をコンピュータ上で繰り返し行うというものだった。開発過程のプロトタイプ製作において、最初に585gのAethosフレームのレイアップとFACT 12rカーボンをTarmac SL8の形状に適用。次にパワーを受け止め伝えるボトムブラケットと、正確なハンドリングを可能にするヘッドチューブの剛性を高めた。その後、縦方向のコンプライアンスも高めることで路面からの突き上げを減らし、前後バランスの取れた乗り心地を実現。そして目標重量に常に気を配りながらそれぞれの過程を進めていったという。
結果的には設定した目標に到達するまでに53台のプロトタイプを造り、積層ごとの数値モデルのテストを繰り返すことで空力性能、軽量性、剛性、コンプライアンスを追求しながらパフォーマンスを高めていった。こうしてSL7より距離40kmの走行で16.6秒速く、15%軽い685gのフレーム重量、重量剛性比は33%、コンプライアンスは6%向上したTarmac SL8が完成した。もちろんRider-First Engineeredが適応され、すべてのフレームサイズで剛性、重量、ライドクオリティーを最適なバランスで実現。同じ乗り心地を得ることにも成功している。
SL8のジオメトリーはSL7と同じ。タイヤクリアランスも32m(内幅21mmリム使用時)と変わらず。フレームのグレードはFACT 12rのS-WorksとFACT 10rのセカンドグレードの2種。S-Works完成車にはRoval Rapide Cockpitが標準装備となる。またFACT 10rカーボンを使うセカンドグレードであってもフレーム重量780g(剛性値はS-WORKSと同じ)を達成し、S-Works SL7よりも軽量に仕上がっている。なお完成車ではEXPERTまでのすべてのグレードにパワーメーターが標準装備となる。
日本での販売開始は8月18日午前10時。嬬恋高原でテストライドしたファーストインプレッションは次章でお届けする。
S-WORKS TARMAC SL8 - SHIMANO DURA-ACE DI2
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Dura-Ace R9170 Di2
ハンドル:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
ステム:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
サドル:Body Geometry S-Works Power, carbon fiber rails, carbon fiber base
ホイール:Roval Rapide CLX II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo Rapidair 2BR, 700x26mm
価格:¥1,793,000 (税込)
S-WORKS TARMAC SL8 - SRAM RED ETAP AXS
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:SRAM Red eTAP AXS
ハンドル:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
ステム:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
サドル:Body Geometry S-Works Power, carbon fiber rails, carbon fiber base
ホイール:Roval Rapide CLX II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo Rapidair 2BR, 700x26mm
価格:¥1,738,000 (税込)
S-WORKS TARMAC SL8 FRAMESET
カラー:5種類
サイズ:44、49、52、54、56、58
価格:¥737,000 (税込)
S-WORKS TARMAC SL8 READY TO PAINT FRAMESET
カラー:SATIN CARBON RTP / CHAMELEON SNAKE EYE
サイズ:44、49、52、54、56、58
価格:¥737,000 (税込)
TARMAC SL8 PRO - ULTEGRA DI2
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Shimano Ultegra Di2 R8170&R8150
ハンドル:Roval Rapide Handlebar, carbon
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Body Geometry Power Pro, hollow titanium rails
ホイール:Roval Rapide CL II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo, 2BR, 700x26mm
価格:¥1,100,000 (税込)
TARMAC SL8 PRO - SRAM FORCE ETAP AXS
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:SATIN CARBON / METALLIC WHITE SILVER
コンポーネント:SRAM Force eTAP AXS,
ハンドル:Roval Rapide Handlebar, carbon
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Body Geometry Power Pro, hollow titanium rails
ホイール:Roval Rapide CL II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo, 2BR, 700x26mm
価格:¥1,045,000 (税込)
TARMAC SL8 EXPERT
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:3種類
コンポーネント:SRAM Rival eTap AXS
ハンドル:Specialized Expert Shallow Drop, alloy, 125mm drop x 75mm reach
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Body Geometry Power Expert
ホイール:Roval C38, 21mm internal width carbon rim
タイヤ:S-Works Turbo, folding bead, 700x26mm
価格:¥825,000 (税込)
text&edit:Makoto.AYANO
スペシャライズドがモットーに掲げる「MADE IN RACING」。プロチームへのスポンサードを通じて製品の性能向上に役立てる。しかしレース参戦の理由はただレースに勝つためではなかった。嬬恋高原で開催されたローンチイベントにおいて、SL8の開発が歩んだ道のりが説明された。
スペシャライズドがチームへ機材スポンサードを行ってきた理由は、ひとえに良い製品を造りたかったからだという。レース活動のなかで製品を造っていくことで、目の肥えたプロライダーたちの評価を得ていく。それが製品造りにおいてもっとも近道だろうというのがMADE IN RACINGの基本的な考え方。同社のレーシング関連カテゴリーのプロダクツにおいては、ワールドクラスのトップライダーたちと協力しながらの製品開発に徹底して取り組んできた。
スペシャライズドは1998年のアルミロード「Allez」から欧州プロロードチームに機材供給を開始。2004年にはTarmacの初代となるフルカーボンロード、S-Works Tarmac E5が誕生。以降、SL2、SL3、SL4と代を重ね、SL5にあたる第5世代のTarmacからはRider First Engineerd(すべてのバイクで一貫した性能を確実に発揮させるデザインアプローチ)が取り入れられ、以降のTarmacの造り方を大きく変えることになる。
その歩みの半ばよりTarmacはエアロロードのVengeと車種を分かちながら展開されてきたが、第7世代開発に当たってはVengeが廃され、エアロの要素を取り込んだオールラウンドロードとしてTarmac SL7に一本化される。
その結果、ゲームチェンジャーとしてのTarmac SL7は「すべてを叶える一台(SL7発表時の記事)」として、グランツール、モニュメントを含むワンデイクラシック、世界選手権のタイトルを総なめする活躍を収める。なかでもSL7は2020年夏のデビューから今までの3年の間に、女子エリートを含むロード世界選手権タイトルをすべて獲得する快挙を達成。ヒルクライムでもスプリントでも、コースの種類やレースタイプを問わず勝利を収めるという、スペシャライズド史上もっとも成功したバイクとなった。
エアロなだけ、あるいは軽いだけではレースに勝てない。重要なのは速さ。その速さを実現するには、空力性能、軽量性、剛性、そしてコンプライアンスのどれにも妥協をせず、そのすべてを高いレベルで融合させる必要があるとスペシャライズドは言う。
「Innovate or Die(革新か、死か)」を標榜するスペシャライズド。Tarmac SL8は、空力性能、軽量性、ライドクオリティーの3要素をバランスさせる考え方で設計され、それら3つの要素を兼ね備えることが最終的にスピードにつながるという考えのもと開発された。
■もっともエアロなロードバイク
自社風洞実験施設 Win Tunnelでの試行錯誤を重ねて10年。風洞実験を重ねて完成したのが、Vengeを超える最も空力性能に優れたロードバイク、Tarmac SL8だ。
F1の開発でも行われるフロービズ(フロー・ビジュアル・ペイント)により、先端形状以外に空力性能を向上できる部位を見つけ、 最適化を行う。空力性能を最大限に高めるため、影響する部位や先端部の形状を最適化。もっとも最初に空気抵抗を受けるヘッドチューブ周辺を重視し、その幅を決めるフォークコラムを、前方に大きく突き出たノーズコーンの後方へと移設することでヘッドチューブの先端形状をより鋭くし、空気抵抗を減らすことに成功。
また、S-Works完成車に標準装備される一体型のRapide Cockpit(単体購入可能)は、先端部の構造を単純化することで別体式ハンドルとステムの組み合わせより4ワットの空気抵抗を削減、同時に50gの軽量化も達成する。
そしてUCIの新車両規定に従い、Tarmac SL8のシートチューブはSL7のシートポストと同じサイズにまでシェイプアップされた。その結果、SL8はこれまででもっとも薄く空力的に優れたシートポストを獲得、ペダリングする両脚にかき乱された高速の気流を後方へ流れやすくする。
そして「見た目のためではなく、効果の得られる部位に空力性能を」の考えに基づき、ペダリングによって空気のかき乱されるBB周辺部などは無駄を徹底的に削り落とした形状に。そうした開発の結果、距離40kmの走行でSL7より16.6秒速い「もっともエアロなロードバイク」が誕生した。
■「もっとも軽い」だけでなく、剛性とライドクオリティーも向上
エアロ面の目標をクリアしたことで、エンジニアたちはバイク全体の軽量化とライドクオリティーの向上に専念することができたという。
エアロ性能を重視しながらも無駄な重量を削ぎ落とす。軽量化にはAethos(エートス)の開発によって得られたテクノロジーが余すところなく生かされた。わずか685gのフレームはワールドツアー出場バイク中最軽量であり、もしもSL8とSL7の重量を均衡にするなら、SL7からはシートチューブとその接合部を取り払う必要があるほどの大幅な軽量化を達成する。
バイクの軽さの重要性についてレムコ・エヴェネプールは言う。「バイクが軽くなればなるほど急勾配の上り坂で有利になり、その差を体感できる。わずか1〜2秒短縮できるだけで、 レースの勝敗を分けるには十分だ」。
ライドクオリティー(乗り心地)は長距離を走るロードレースにおいて軽視できない要素。SL8のBBやヘッド周辺の剛性はSL7より高められており、重量剛性比16%向上の数値を達成しながらも、スムーズさを決めるコンプライアンス(縦方向の柔軟性)は6%向上。過去最高のハンドリング性能と快適性、反応性を実現しているという。
SL8開発において、スペシャライズドのライドサイエンスチームは実際のデータを用いてシミュレーションを実施。ミラノ〜サンレモ、グランツールの難関山岳ステージ、モニュメント(クラシックレース)などを走ったことを想定した複雑なシミュレーションを実施し、「距離40kmの走行で16.6秒を短縮」「ミラノ〜サンレモで128秒を短縮」「ツールマレー峠頂上までの17kmで20秒を短縮」etc...。得られた数々のデータにより、Tarmac SL8が主要レースを走るうえで最速であることを突き止めた。
初代Tarmacの登場から8世代め、20年以上のモデル開発期間を経て誕生したSL8は「Tarmac史上最速」や「スペシャライズド史上最速」にとどまらず、「すべてを制する一台」であり「世界で一番速いレースバイク」であるとスペシャライズドは主張する。そのための裏付けとなる比較データを裏付けとして保持しているという。
■フロントローディング開発
TarmacSL8が今回のような変化を遂げたのは、開発手法が変わったことが大きいという。新たな開発者を迎えると同時に「フロントローディング開発プロセス」が導入された。これはソフトウェアの開発などで用いられるデータ主導の開発手法で、ターゲットとしての要件定義を先に決めた上で、それを達成するための開発を推し進めるという手法だ。製品開発のプロセスで業務の初期工程に負荷をかけ、作業を前倒しで進める。できる限り早い段階で多くの問題点やリスクを洗い出し、対策を講じて初期段階から設計品質を高める。いわば製品は開発した結果ではなく、目標を決めて達成するものと定義される。
フレーム製作におけるそのプロセスは、積層ごとの数値モデルを用いたカーボンモデリングと、有限要素法(FEA)や数値流体力学(CFD) をコンピュータ上で繰り返し行うというものだった。開発過程のプロトタイプ製作において、最初に585gのAethosフレームのレイアップとFACT 12rカーボンをTarmac SL8の形状に適用。次にパワーを受け止め伝えるボトムブラケットと、正確なハンドリングを可能にするヘッドチューブの剛性を高めた。その後、縦方向のコンプライアンスも高めることで路面からの突き上げを減らし、前後バランスの取れた乗り心地を実現。そして目標重量に常に気を配りながらそれぞれの過程を進めていったという。
結果的には設定した目標に到達するまでに53台のプロトタイプを造り、積層ごとの数値モデルのテストを繰り返すことで空力性能、軽量性、剛性、コンプライアンスを追求しながらパフォーマンスを高めていった。こうしてSL7より距離40kmの走行で16.6秒速く、15%軽い685gのフレーム重量、重量剛性比は33%、コンプライアンスは6%向上したTarmac SL8が完成した。もちろんRider-First Engineeredが適応され、すべてのフレームサイズで剛性、重量、ライドクオリティーを最適なバランスで実現。同じ乗り心地を得ることにも成功している。
SL8のジオメトリーはSL7と同じ。タイヤクリアランスも32m(内幅21mmリム使用時)と変わらず。フレームのグレードはFACT 12rのS-WorksとFACT 10rのセカンドグレードの2種。S-Works完成車にはRoval Rapide Cockpitが標準装備となる。またFACT 10rカーボンを使うセカンドグレードであってもフレーム重量780g(剛性値はS-WORKSと同じ)を達成し、S-Works SL7よりも軽量に仕上がっている。なお完成車ではEXPERTまでのすべてのグレードにパワーメーターが標準装備となる。
日本での販売開始は8月18日午前10時。嬬恋高原でテストライドしたファーストインプレッションは次章でお届けする。
S-WORKS TARMAC SL8 - SHIMANO DURA-ACE DI2
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Dura-Ace R9170 Di2
ハンドル:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
ステム:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
サドル:Body Geometry S-Works Power, carbon fiber rails, carbon fiber base
ホイール:Roval Rapide CLX II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo Rapidair 2BR, 700x26mm
価格:¥1,793,000 (税込)
S-WORKS TARMAC SL8 - SRAM RED ETAP AXS
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:SRAM Red eTAP AXS
ハンドル:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
ステム:Roval Rapide Cockpit, Integrated Bar/Stem
サドル:Body Geometry S-Works Power, carbon fiber rails, carbon fiber base
ホイール:Roval Rapide CLX II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo Rapidair 2BR, 700x26mm
価格:¥1,738,000 (税込)
S-WORKS TARMAC SL8 FRAMESET
カラー:5種類
サイズ:44、49、52、54、56、58
価格:¥737,000 (税込)
S-WORKS TARMAC SL8 READY TO PAINT FRAMESET
カラー:SATIN CARBON RTP / CHAMELEON SNAKE EYE
サイズ:44、49、52、54、56、58
価格:¥737,000 (税込)
TARMAC SL8 PRO - ULTEGRA DI2
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Shimano Ultegra Di2 R8170&R8150
ハンドル:Roval Rapide Handlebar, carbon
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Body Geometry Power Pro, hollow titanium rails
ホイール:Roval Rapide CL II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo, 2BR, 700x26mm
価格:¥1,100,000 (税込)
TARMAC SL8 PRO - SRAM FORCE ETAP AXS
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:SATIN CARBON / METALLIC WHITE SILVER
コンポーネント:SRAM Force eTAP AXS,
ハンドル:Roval Rapide Handlebar, carbon
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Body Geometry Power Pro, hollow titanium rails
ホイール:Roval Rapide CL II 51mm depth/60mm depth
タイヤ:S-Works Turbo, 2BR, 700x26mm
価格:¥1,045,000 (税込)
TARMAC SL8 EXPERT
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:3種類
コンポーネント:SRAM Rival eTap AXS
ハンドル:Specialized Expert Shallow Drop, alloy, 125mm drop x 75mm reach
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Body Geometry Power Expert
ホイール:Roval C38, 21mm internal width carbon rim
タイヤ:S-Works Turbo, folding bead, 700x26mm
価格:¥825,000 (税込)
text&edit:Makoto.AYANO
Amazon.co.jp