AG2Rシトロエンに投入されているBMCのプロトタイプモデルをクローズアップ。レッドブルとの共同開発、発表されたばかりの新型カンパニョーロSUPER RECORDワイヤレスなど、異彩を放つ一台を取り上げます。カーボン積層を変えて軽さを追求したという山岳用Teammachine SLR01にも触れます。



ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)が駆るプロトバイク photo: So Isobe

ツール前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネに投入されて話題を呼び、今大会でもパドックで高い注目を誇るのがBMCのプロトタイプモデル。エースナンバーを背負うベン・オコーナー(オーストラリア)とブノワ・コスヌフロワ(フランス)の2人に供給され、平坦から山岳までありとあらゆるステージで使われている。

BMCが掲げるキャッチコピー「CREATE SPEED」、そしてレッドブル・アドバンスドテクノロジーズ(レッドブルレーシングのエンジニアリングを担い、BMCともコラボレートする)のロゴが入るフレームは、見るからにエアロダイナミクスと軽さの両立を狙ったもの。ボリュームあふれるヘッドやボトムブラケット、リアチューブ集合部周辺、一方で非常に薄いトップチューブやシートステー...。現行のTeammachine SLR01やTimemachine Roadとも共通するBMCらしい直線基調のデザインと言えるだろう。

ヘッドチューブはエアロを意識したデザイン photo: So Isobe

ボトルケージをフレームと一体化。Timemachineよりもエアロが押し進められている photo: So Isobe
エアロと軽さを両立した設計意図を見てとれる photo: So Isobe


ハンドルはもちろん専用品。ステム部分は非常に薄く仕上げられている photo:So Isobe

反ドライブサイドから見る。BB周辺の造形はかなり特徴的 photo: So Isobe

特筆すべきはグラベルロードやMTBレベルと言える幅広フロントフォークだ。ロータスが作り上げたイギリスチーム用トラックバイクに端を発する幅広フォークは現在各社が採用しているが、その中でもこのBMCプロトは目を見張るほどに広い。

このバイクに関してBMCは一切情報を出しておらず、公式SNSも他選手が駆るTeammachineばかり。このプロトモデルがどちらの後継となるのか推し量る術が無いが、使用用途や登場年を踏まえれば新型Timemachine Roadと見るのが適当だろうか。

また、ハンドルもBMCロゴ入りの専用品。オコーナーのハンドルは360mmという極めて狭く現在のトレンドに合わせている。

ワンレバー方式となったエルゴパワー photo: So Isobe

大きくデザインが変更されたディレイラー。取り外し式バッテリーを備える photo: So Isobe
新型コンポのラインナップには存在しないロー側32Tカセットを使用 photo: So Isobe


さらにこのバイクの注目度を上げているのが、カンパニョーロのが5月末に発表したばかりのSUPER RECORD WIRELESSを搭載している点。12速こそ維持されているが、ワンレバー方式となったエルゴパワー、脱着可能なバッテリーを装備するディレイラー、トップ10Tのカセットなど新機軸を盛り込んだ最高級コンポだ。

ただし、このツールでAG2Rは先代モデルのカセットとチェーンリングを使用する。メカニックによれば他選手とのホイールの互換性や、パワーメーター(POWER2MAX)の使用を踏まえての選択であり、リアの新旧互換性があるからできること、とも。SUPER RECORD WIRELESSはオコーナーとコスヌフロワの全てのバイク、そしてフェリックス・ガル(オーストリア)が山岳ステージで駆るTeammachine SLR01(x1台)に装着されているという。

マイヨアポワを獲得したフェリックス・ガル(オーストラリア)の山岳用Teammachine SLR01。各所がマイヨアポワ仕様に変更された photo: So Isobe

なお、ピレネーの山岳ステージで数台が使用され、ガルのマイヨアポワ獲得に貢献した真っ黒なTeammachine SLR01は、塗装はもちろんカーボン素材まで工夫を凝らした軽量モデル(Masterpiece)。メカニックによればヨーロッパで生産された特別モデルであり、非常に軽く仕上げられているという。ガルのバイクは、マイヨアポワ獲得翌日にはペダルとボトルケージ、バーテープ、そしてワフーのコンピュータが赤白に変更されていた。

text:So Isobe in Bordeaux, France

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