2023/07/01(土) - 18:30
本日7月1日(土)、世界最大の自転車レースであるツール・ド・フランスが開幕する。スペイン・バスク州を舞台とした3日間に、ピレネー山脈と中央山塊の超級山岳など、第1週目のコース詳細を紹介します。
ツール・ド・フランスは今年もフランス国外でグランデパール(開幕地)を迎える。大会初日から3日目までの舞台となるのは、バスク州最大の都市であるビルバオ。スペインからツールが始まるのはミゲル・インドゥライン(スペイン)が初日を制し、最終的にマイヨジョーヌを射止めた1992年以来、31年振りのことだ。
総距離3,404km、21日間に及ぶ行程には平坦ステージが8、丘陵ステージが4、山岳ステージが8(うち山岳フィニッシュは4)、そして1つの個人タイムトライアルが登場する。第1週目はバスクを3日間走り、選手一行は早々にピレネー山脈へと脚を踏み入れる。その後は西から東へと中央山塊、ジュラ山脈、アルプス山脈、ヴォージュ山脈とフランスの5大山脈の全てを通過。そして最後は48年連続パリ・シャンゼリゼにて千秋楽を迎える。
7月1日(土) 第1ステージ
ビルバオ〜ビルバオ 182km(丘陵)
ツールがスペインでグランデバールを迎えたのは31年前のこと。ミゲル・インドゥライン(スペイン)が勝利した時はプロローグ(個人タイムトライアル)だったが、今回は獲得標高差3,300mに達する182kmの丘陵ステージで幕を開ける。
登場するカテゴリー山岳は合計5つ。いずれもバスクを象徴するような「短く急勾配」な坂ばかりで、特にフィニッシュ手前11.6kmに登場する最終3級山岳ピケ峠は平均10%(距離2km)と厳しく、残り1kmからは12%、ラスト500mからは15.6%の”壁”が立ちはだかる。その後はビルバオ市内まで下りと平坦路が続き、優勝者には自転車選手ならば誰しもが夢見るマイヨジョーヌが与えられる。
緊張感が高まる大会初日のため逃げ切りは難しく、集団内で最終山岳まで力を溜めるジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)のようなパンチャーが有利。もちろん春に切れ味鋭い登坂力を見せつけたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)をはじめ、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)やマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)などの競演に注目だ。
7月2日(日)第2ステージ
ビトリア・ガステイス〜サン・セバスティアン 208.9km(丘陵)
バスク2日目が始まるビトリア・ガステイスは、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージの出発地点。そこから毎年ツール閉幕の翌週に開催されるクラシカ・サンセバスティアン(UCIワールドツアー)の舞台、サン・セバスティアンに向かう209kmコースで争われる。
標高500m前後の平坦な高台を進み、一度下ってから立て続けに登場する3級&4級山岳から細かいアップダウンがスタート。そしてこのステージ最大の勝負所は残り24.6km地点から始まる2級山岳ハイスキベル(距離8.1km/平均5.3%)だ。
頂上にタイムボーナスが設定された登りはラスト3kmが平均7.5〜7.8%と険しいものの、登りもこなすマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)のようなスプリンターならば耐えられるはず。しかしアタックの応酬となれば話は別で、そうなれば優勝争う顔触れは前日のステージと似かよう可能性が高い。
7月3日(月)第3ステージ
アモレビエタ・エチャノ〜バイヨンヌ 187.4km(平坦)
大会3日目にしてようやくスプリンターたちの出番がやってくる。と、同時にこのステージを最後にプロトンはスペインに別れを告げる。アモレビエタ・エチャノを出発した選手たちは序盤に3級、4級山岳と立て続けに越え、ビスケー湾沿いに出る。中間スプリントで前哨戦を繰り広げた後(大集団の逃げが決まらない限り)2つの3級山岳をクリアし、フランスに入国。フィニッシュ地点はフランス領バスクの中心都市であるバイヨンヌだ。
コース後半に登りはないため正真正銘ピュアスプリンター向きのレイアウト。特にステージ優勝に標準を定め、チーム一丸での戦いが可能なヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)や、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、スーダル・クイックステップ)を中心にレースが展開するだろう。
7月4日(火) 第4ステージ
ダクス〜ノガロ 181.8km(平坦)
2日連続でスプリンターたちが躍動するであろう第4ステージ。フランス有数の”スパの町”として知られるダックスを出発し、西のノガロを目指す道のりは平坦路。残り27.4kmに4級山岳デミュ(距離2km/平均3.5%)が設定されているものの恐れるに足らず、フランス最古のサーキットであるノガロ・サーキット(正式名称:シルキュイ・ポール・アルマニャク)でフィニッシュを迎える。
逃げ切りが許されるようなレイアウトではなく、スプリンターチームがタイトに展開をマネジメントしてくるはず。また強風による集団分断(エシュロン)の心配も少ないため、フィニッシュまで続く800mのストレートで白熱のスピードバトルが見られるだろう。しかし舞台が幅広なサーキットゆえにリードアウトを有するチームはもちろん、単騎での勝負を強いられるスプリンターにもチャンスはある。
7月5日(水) 第5ステージ
ポー〜ラランス 162.7km(山岳)
前述した通り、今ツールはフランスが誇る5大山脈の全てを通過する。そして大会5日目にして登場するのがフランスとスペインを隔てるピレネー山脈だ。ポーをスタートした選手たちは超級山岳スデ峠(距離15.2km/平均7.2%)を越えるものの、コースの真ん中にあるため総合勢のアタックは考えづらい。
その後は3級山岳イシェール峠から1級山岳マリーブランク峠(距離7.7km/平均8.6%)へ。この峠はとにかく勾配がきつく、頂上手前3.5kmの平均勾配は12%に達する。しかしこのステージのフィニッシュ地点はこの山頂ではなく、1級山岳を越えてから下り&平坦路をこなしてフィニッシュを迎える。
コース前半に多少の違いはあれど、ポーからラランスは2020年にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がツールで初の区間勝利を飾った場所。この時、弱冠21歳のポガチャルはマイヨジョーヌを着るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を負かし、歴史的な大逆転で1度目の総合優勝に輝いた。
もちろんポガチャルは3年前の再現を願うだろうが、まだ5日目であることから総合勢は静かにやり過ごす可能性が高い。それゆえティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)などステージ優勝に狙いを絞ったクライマーの動きに注目だ。
7月6日(木)第6ステージ
タルブ〜コテレ・カムバスク 144.9km(山岳/山頂)
仮に前日のステージで動かなかった総合勢も、この日はその脚を顕にしなければならない。なぜなら144.9kmいう比較的短い距離に、獲得標高差3,800mを超える山岳が詰め込まれているから。序盤55kmの平坦路で身体を温めた選手たちは、まず1級アスパン(距離12km/平均6.5%)を登り、ダウンヒルを挟んでトップ通過者に「ジャック・ゴデ記念賞」が与えられる超級山岳トゥールマレー(距離17.1km/平均7.3%)を駆け上がる。
そして31kmに及ぶ下りを経て、そのまま最終山岳である1級コトレ・カンバスクに臨む。16kmの登坂距離に平均勾配5.4%と控えめな数字だが、勝負所となるのは4%から9%まで一気に跳ね上がる残り5km地点から。更に1km先から10%以上の勾配が続くため、マイヨジョーヌを狙う選手たちのアタックを誘発する。
早くもユンボ・ヴィスマvsUAEチームエミレーツの登坂勝負が見られるか。また急勾配が得意なマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)やピノなどのピュアクライマーは、トゥールマレーから早めに仕掛けることも考えているはず。
7月7日(金) 第7ステージ
モン・ド・マルサン〜ボルドー 169.9km(平坦)
ピレネー山脈を離れ、中央山塊に向かう”移動日”のような第7ステージ。モン・ド・マルサンをスタートし、ヨーロッパ最大のマツ林である「ランドの森」を迂回するように、ワインの一大産地ボルドーにフィニッシュする。
マイヨヴェールを狙うスプリンターの前哨戦、中間スプリントは88km地点に設定され、その後4級山岳が登場するものの距離1.2km/平均4.4%と恐れるに足らず。逃げ切りの可能性が極めて低く、集団を破壊する風の心配も少ない。それゆえ昨日の山岳で疲れた脚をレース前半で休め、力を溜めたピュアスプリンターたちが主役となる。
前回ボルドーでフィニッシュしたのは2010年のこと。Bboxブイグテレコム時代の新城幸也が16位に入り、また今大会も出場するダニエル・オス(当時リクイガス)が敢闘賞を獲得。そしてこの地で勝利を挙げたのは、現役最後のツールに臨むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)だ。
7月8日(土) 第8ステージ
リブルヌ〜リモージュ 200.7km(丘陵)
丘陵ステージだが、この日も集団スプリントが大方の予想。だが前日に活躍したピュアスプリンターではなく、ある程度の登坂力も兼ね備えていなければ集団には残れないだろう。その理由はコース後半のペリグー・リムザン自然公園に突入してから3級山岳から細かなアップダウンが連続し、残り17.3kmから2つの4級山岳が登場するため。更にフィニッシュ手前も5%弱の登り坂となっている。
フィニッシュ地点であるリモージュはフランス自転車界の象徴、レイモン・プリドールが死去した場。そして奇しくも、これ以上ないほどその孫マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)に適したレイアウトとなっている。ライバルとなるのはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)といった混戦を好む選手たちだ。
7月9日(日) 第9ステージ
サン・レオナール・ド・ノブラ〜ピュイ・ド・ドーム 182.4km(山岳/山頂)
中央山塊を舞台にした大会最初の超級山岳フィニッシュにて、大会第1週目は締めくくられる。スタート後僅か30.4kmに設定された中間スプリントをクリアし、2つの4級や3級山岳を越えながら、翌日の休息日を過ごす街クレルモン・フェランを通過。その後、いよいよ超級山岳ピュイ・ド・ドーム(距離13.3km/平均7.7%)を上り詰める。
最初の5kmは7.5%前後の勾配で推移し、一度緩む3kmを挟んだ後ラスト4kmは11.4〜11.2%の急勾配がフィニッシュラインまで続いていく。ツールにはこれまで13度登場しているものの、今回は1988年以来となる久々の登場。頂上付近は自然保護区のため観客の立ち入りが許されていないため、熱戦とは裏腹の静かな中での戦いとなる。
一進一退だったマイヨジョーヌ争いがここで一気に動く可能性が大。チーム同士の戦いというよりも、総合上位勢による力と力の勝負を見ることができるだろう。そしてレースを選手たちは第2週目に向け、しばしの休息とメディア対応に追われることとなる。
7月10日(月)休息日
text:Sotaro.Arakawa
ツール・ド・フランスは今年もフランス国外でグランデパール(開幕地)を迎える。大会初日から3日目までの舞台となるのは、バスク州最大の都市であるビルバオ。スペインからツールが始まるのはミゲル・インドゥライン(スペイン)が初日を制し、最終的にマイヨジョーヌを射止めた1992年以来、31年振りのことだ。
総距離3,404km、21日間に及ぶ行程には平坦ステージが8、丘陵ステージが4、山岳ステージが8(うち山岳フィニッシュは4)、そして1つの個人タイムトライアルが登場する。第1週目はバスクを3日間走り、選手一行は早々にピレネー山脈へと脚を踏み入れる。その後は西から東へと中央山塊、ジュラ山脈、アルプス山脈、ヴォージュ山脈とフランスの5大山脈の全てを通過。そして最後は48年連続パリ・シャンゼリゼにて千秋楽を迎える。
7月1日(土) 第1ステージ
ビルバオ〜ビルバオ 182km(丘陵)
ツールがスペインでグランデバールを迎えたのは31年前のこと。ミゲル・インドゥライン(スペイン)が勝利した時はプロローグ(個人タイムトライアル)だったが、今回は獲得標高差3,300mに達する182kmの丘陵ステージで幕を開ける。
登場するカテゴリー山岳は合計5つ。いずれもバスクを象徴するような「短く急勾配」な坂ばかりで、特にフィニッシュ手前11.6kmに登場する最終3級山岳ピケ峠は平均10%(距離2km)と厳しく、残り1kmからは12%、ラスト500mからは15.6%の”壁”が立ちはだかる。その後はビルバオ市内まで下りと平坦路が続き、優勝者には自転車選手ならば誰しもが夢見るマイヨジョーヌが与えられる。
緊張感が高まる大会初日のため逃げ切りは難しく、集団内で最終山岳まで力を溜めるジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)のようなパンチャーが有利。もちろん春に切れ味鋭い登坂力を見せつけたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)をはじめ、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)やマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)などの競演に注目だ。
7月2日(日)第2ステージ
ビトリア・ガステイス〜サン・セバスティアン 208.9km(丘陵)
バスク2日目が始まるビトリア・ガステイスは、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージの出発地点。そこから毎年ツール閉幕の翌週に開催されるクラシカ・サンセバスティアン(UCIワールドツアー)の舞台、サン・セバスティアンに向かう209kmコースで争われる。
標高500m前後の平坦な高台を進み、一度下ってから立て続けに登場する3級&4級山岳から細かいアップダウンがスタート。そしてこのステージ最大の勝負所は残り24.6km地点から始まる2級山岳ハイスキベル(距離8.1km/平均5.3%)だ。
頂上にタイムボーナスが設定された登りはラスト3kmが平均7.5〜7.8%と険しいものの、登りもこなすマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)のようなスプリンターならば耐えられるはず。しかしアタックの応酬となれば話は別で、そうなれば優勝争う顔触れは前日のステージと似かよう可能性が高い。
7月3日(月)第3ステージ
アモレビエタ・エチャノ〜バイヨンヌ 187.4km(平坦)
大会3日目にしてようやくスプリンターたちの出番がやってくる。と、同時にこのステージを最後にプロトンはスペインに別れを告げる。アモレビエタ・エチャノを出発した選手たちは序盤に3級、4級山岳と立て続けに越え、ビスケー湾沿いに出る。中間スプリントで前哨戦を繰り広げた後(大集団の逃げが決まらない限り)2つの3級山岳をクリアし、フランスに入国。フィニッシュ地点はフランス領バスクの中心都市であるバイヨンヌだ。
コース後半に登りはないため正真正銘ピュアスプリンター向きのレイアウト。特にステージ優勝に標準を定め、チーム一丸での戦いが可能なヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)や、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、スーダル・クイックステップ)を中心にレースが展開するだろう。
7月4日(火) 第4ステージ
ダクス〜ノガロ 181.8km(平坦)
2日連続でスプリンターたちが躍動するであろう第4ステージ。フランス有数の”スパの町”として知られるダックスを出発し、西のノガロを目指す道のりは平坦路。残り27.4kmに4級山岳デミュ(距離2km/平均3.5%)が設定されているものの恐れるに足らず、フランス最古のサーキットであるノガロ・サーキット(正式名称:シルキュイ・ポール・アルマニャク)でフィニッシュを迎える。
逃げ切りが許されるようなレイアウトではなく、スプリンターチームがタイトに展開をマネジメントしてくるはず。また強風による集団分断(エシュロン)の心配も少ないため、フィニッシュまで続く800mのストレートで白熱のスピードバトルが見られるだろう。しかし舞台が幅広なサーキットゆえにリードアウトを有するチームはもちろん、単騎での勝負を強いられるスプリンターにもチャンスはある。
7月5日(水) 第5ステージ
ポー〜ラランス 162.7km(山岳)
前述した通り、今ツールはフランスが誇る5大山脈の全てを通過する。そして大会5日目にして登場するのがフランスとスペインを隔てるピレネー山脈だ。ポーをスタートした選手たちは超級山岳スデ峠(距離15.2km/平均7.2%)を越えるものの、コースの真ん中にあるため総合勢のアタックは考えづらい。
その後は3級山岳イシェール峠から1級山岳マリーブランク峠(距離7.7km/平均8.6%)へ。この峠はとにかく勾配がきつく、頂上手前3.5kmの平均勾配は12%に達する。しかしこのステージのフィニッシュ地点はこの山頂ではなく、1級山岳を越えてから下り&平坦路をこなしてフィニッシュを迎える。
コース前半に多少の違いはあれど、ポーからラランスは2020年にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がツールで初の区間勝利を飾った場所。この時、弱冠21歳のポガチャルはマイヨジョーヌを着るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を負かし、歴史的な大逆転で1度目の総合優勝に輝いた。
もちろんポガチャルは3年前の再現を願うだろうが、まだ5日目であることから総合勢は静かにやり過ごす可能性が高い。それゆえティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)などステージ優勝に狙いを絞ったクライマーの動きに注目だ。
7月6日(木)第6ステージ
タルブ〜コテレ・カムバスク 144.9km(山岳/山頂)
仮に前日のステージで動かなかった総合勢も、この日はその脚を顕にしなければならない。なぜなら144.9kmいう比較的短い距離に、獲得標高差3,800mを超える山岳が詰め込まれているから。序盤55kmの平坦路で身体を温めた選手たちは、まず1級アスパン(距離12km/平均6.5%)を登り、ダウンヒルを挟んでトップ通過者に「ジャック・ゴデ記念賞」が与えられる超級山岳トゥールマレー(距離17.1km/平均7.3%)を駆け上がる。
そして31kmに及ぶ下りを経て、そのまま最終山岳である1級コトレ・カンバスクに臨む。16kmの登坂距離に平均勾配5.4%と控えめな数字だが、勝負所となるのは4%から9%まで一気に跳ね上がる残り5km地点から。更に1km先から10%以上の勾配が続くため、マイヨジョーヌを狙う選手たちのアタックを誘発する。
早くもユンボ・ヴィスマvsUAEチームエミレーツの登坂勝負が見られるか。また急勾配が得意なマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)やピノなどのピュアクライマーは、トゥールマレーから早めに仕掛けることも考えているはず。
7月7日(金) 第7ステージ
モン・ド・マルサン〜ボルドー 169.9km(平坦)
ピレネー山脈を離れ、中央山塊に向かう”移動日”のような第7ステージ。モン・ド・マルサンをスタートし、ヨーロッパ最大のマツ林である「ランドの森」を迂回するように、ワインの一大産地ボルドーにフィニッシュする。
マイヨヴェールを狙うスプリンターの前哨戦、中間スプリントは88km地点に設定され、その後4級山岳が登場するものの距離1.2km/平均4.4%と恐れるに足らず。逃げ切りの可能性が極めて低く、集団を破壊する風の心配も少ない。それゆえ昨日の山岳で疲れた脚をレース前半で休め、力を溜めたピュアスプリンターたちが主役となる。
前回ボルドーでフィニッシュしたのは2010年のこと。Bboxブイグテレコム時代の新城幸也が16位に入り、また今大会も出場するダニエル・オス(当時リクイガス)が敢闘賞を獲得。そしてこの地で勝利を挙げたのは、現役最後のツールに臨むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)だ。
7月8日(土) 第8ステージ
リブルヌ〜リモージュ 200.7km(丘陵)
丘陵ステージだが、この日も集団スプリントが大方の予想。だが前日に活躍したピュアスプリンターではなく、ある程度の登坂力も兼ね備えていなければ集団には残れないだろう。その理由はコース後半のペリグー・リムザン自然公園に突入してから3級山岳から細かなアップダウンが連続し、残り17.3kmから2つの4級山岳が登場するため。更にフィニッシュ手前も5%弱の登り坂となっている。
フィニッシュ地点であるリモージュはフランス自転車界の象徴、レイモン・プリドールが死去した場。そして奇しくも、これ以上ないほどその孫マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)に適したレイアウトとなっている。ライバルとなるのはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)といった混戦を好む選手たちだ。
7月9日(日) 第9ステージ
サン・レオナール・ド・ノブラ〜ピュイ・ド・ドーム 182.4km(山岳/山頂)
中央山塊を舞台にした大会最初の超級山岳フィニッシュにて、大会第1週目は締めくくられる。スタート後僅か30.4kmに設定された中間スプリントをクリアし、2つの4級や3級山岳を越えながら、翌日の休息日を過ごす街クレルモン・フェランを通過。その後、いよいよ超級山岳ピュイ・ド・ドーム(距離13.3km/平均7.7%)を上り詰める。
最初の5kmは7.5%前後の勾配で推移し、一度緩む3kmを挟んだ後ラスト4kmは11.4〜11.2%の急勾配がフィニッシュラインまで続いていく。ツールにはこれまで13度登場しているものの、今回は1988年以来となる久々の登場。頂上付近は自然保護区のため観客の立ち入りが許されていないため、熱戦とは裏腹の静かな中での戦いとなる。
一進一退だったマイヨジョーヌ争いがここで一気に動く可能性が大。チーム同士の戦いというよりも、総合上位勢による力と力の勝負を見ることができるだろう。そしてレースを選手たちは第2週目に向け、しばしの休息とメディア対応に追われることとなる。
7月10日(月)休息日
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