無数のアタックに途中で降りはじめた雨など、サバイバルなレースとなったプラバンツ・ベイル女子レース。小集団によるスプリントでシルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ)が前回覇者フォレリングらを退け、キャリアハイとなる勝利を挙げた。



弱冠20歳にして現シクロクロス世界王者のフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

男子レースに先立ち行われたブラバンツ・ペイル女子レース(UCI1.Pro)は今年で第8回を迎えた。アルデンヌ3連戦(アムステル、ワロンヌ、リエージュ)の前哨戦と位置づけられる今大会は起伏あるワンデーレースだ。コースは男子とほぼ重なる141.2kmで、合計24箇所の石畳を含む短い坂を越える。

スタート地点のレニクには前回覇者のデミ・フォレリング(オランダ)やマーレン・ローセル(スイス)らSDワークスが強力なメンバーを揃え、ユンボ・ヴィスマからは現シクロクロス世界王者のフェム・ファンエンペル(オランダ)が今季ロード2戦目として出場。20歳の若きCXチャンピオンの走りに注目が集まった。

晴れ間のなかスタートしたレースは、徐々に雲が空を覆い始めた photo:CorVos

レースは序盤からアタックと吸収を繰り返す展開に。集団ひと塊のまま計3周するオーベレルエイセの21.9kmコースに入ると、トレック・セガフレードやSDワークスが一気にペースを上げていく。そして一列棒状になったプロトンからは続々と選手たちが遅れていき、集団前方では逃げではなく勝利を目指したアタックが勃発した。

レースが60kmを切った地点でエリノア・バーカー(イギリス、ウノエックス・プロサイクリングチーム)が単独で飛び出すことに成功する。2016年リオ五輪の金メダリスト(トラックのチームパシュート)でもあるバーカーを捉えようと、プロトン先頭ではシリン・ファンアンローイ(オランダ、トレック・セガフレード)らの動きにより先鋭集団が形成。約15名程度の集団がバーカーを吸収した。

一方のプロトンではファンエンペルが落車に巻き込まれて遅れる不運。ファンエンペルはその後集団復帰を目指したが、復帰することはできなかった。

逃げが形成されず、アタックが連続 photo:CorVos

先頭集団がプロトンに捉えられ、急坂の度にリアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター)やエリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム)が仕掛けるものの、いずれも決定打に欠く。そして雨が振りはじめた残り16km地点でローセルの加速から、再び先鋭集団が成立した。

モスケストラート(平均勾配8.9%)で今度はフォレリングが仕掛け、勝負は絞り込まれた6名による小集団スプリントへ。そして先んじて腰を上げたフォレリングの背後で、タイミングを図ったように踏み込んだシルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ)が勝利した。

フォレリングを抜き先頭に出たシルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ) photo:CorVos

金星とも言える勝利を掴んだシルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ) photo:CorVos

プラバンツ・ベイル女子レース2023表彰台:2位フォレリング、1位ペルシコ、3位リッパート photo:CorVos

「チームの協力がなければ不可能だった勝利。雨も降り、悪いコンディションだったが皆のおかげで勝利することができた。心からの感謝を伝えたい」と、UAEに移籍後初勝利を飾ったペルシコはそう喜びを表現した。
プラバンツ・ベイル女子レース2023結果
1位 シルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ) 3:37:07
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)
3位 リアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター)
4位 エリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム) +0:02
5位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、トレック・セガフレード)
6位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス) +0:03
7位 マルゴット・ヴァンパッテンベーケ(ベルギー、パークホテル・ファルケンブルク) +0:13
8位 ヴィクトワール・ベルトー(フランス、コフィディス) +0:25
9位 ソラヤ・パラディン(イタリア、キャニオン・スラム)
10位 ミーシャ・ブレーデウォルツ(オランダ、SDワークス)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos