2023/02/06(月) - 10:45
メカトラなし、クラッシュなし。何にも邪魔されることなく繰り広げられたライバル同士の一騎打ち。ワウト・ファンアールト(ベルギー)をゴールスプリントで下し、マチュー・ファンデルプール(オランダ)が母国開催のシクロクロス世界選手権でチャンピオンに輝いた。
シクロクロス世界選手権、最終種目の男子エリートレースを一目見ようと詰めかけた観客は数万人。陽が差し込み、コースの湿り気がどんどん乾いていく好条件の中、ヨーロッパ、南北アメリカ大陸、そして日本から集った39名がグリーンシグナルと共にホーヘルハイデの特設コースに弾け出した。
ダッシュを決めたのは母国での必勝体制を組むオランダナショナルチームの面々だった。1月にオランダ選手権2連覇を決めたラース・ファンデルハールのロケットスタートが決まり、絶対エースのマチュー・ファンデルプール(オランダ)が、そして世界選に向けて成績を上げていたヨリス・ニューウェンハイスが続く。ライバル国ベルギー勢が出遅れる中、唯一ワウト・ファンアールト(ベルギー)がこの3名の中に割って入ることに成功する。
ファンデルハールが高速牽引する中、1周回完了を待たずにファンデルプールが動いた。フライオーバー手前で猛加速し、続く登り勾配を強烈なスピードでこなす。王者の速攻に唯一ファンアールトだけが食らいつき、レースは序盤から優勝候補2人の一騎打ちの様相を呈していった。
決まり手に欠くハイスピードコースゆえ、2番手以降は強豪選手が一列棒状に続く。ファンデルハールや欧州王者マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)、ケヴィン・クーン(スイス)といった面々を先頭に、20名以上が高速進行。若きイギリス王者キャメロン・メイソンが後方スタートからポジションを上げた一方、序盤のコーナーで接触落車した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は苦しい戦いを強いられた。
先頭を突き進むファンデルプールとファンアールトは、2番手以降を突き放すハイペースを刻んでいく。途中互いにアタックを仕掛ける場面があったものの差は生まれず、互いの顔色を伺いながら周回をこなし続けた。
「お互いに今日差を付けるのは不可能だとすぐ気づいたけれど、登坂で負けていなかったことで自信が生まれた」と言うファンデルプールがペースメイクする一方、ファンアールトはライバルの背後に付く時間が長くなる。ファンアールトはこの時の状況を「最初の30分間は彼のペースにかなり苦労したんだ。それは、残りの後半戦で臆病な選手のように走らざるを得ないことを意味していた」と、プレッシャーに晒されていたことを後に語っている。
レース開始後30分を過ぎ、2番手グループが絞り込まれてもなお先頭2人の均衡は変わらない。序盤から展開される最強選手の一騎打ちに、熱狂の渦が先頭集団の動きと合わせて会場内を駆け巡った。
最後の10周目に入ると先頭2人は牽制でペースダウン。フライオーバーでも、登坂区間でも互いにアタックはなく、シケイン、長い階段、そしてホームストレートと勝負所が続く最終区間へ。誰もがファンデルプールが得意のシケインのバニーホップでアタックすると思っていたが、特に前に出ることなくファンアールトの背後についたまま。これが「2番手でホームストレートに入りスプリントするつもりだった」と言うライバルの作戦を狂わせた。
予想の裏を突いたファンデルプールは、混乱するファンアールトの背後で最終コーナーを回り、一呼吸置いてから猛烈なスプリントを開始した。ファンアールトも応戦したが出足が悪く、ファンの声援に後押しされて突き進むファンデルプールとの1車身は縮まらない。強烈な勢いでフィニッシュラインまでの登り勾配を駆け上がったファンデルプールが右拳を突き上げた。
1時間に渡るスペクタクルなショーは、今季背中の故障に悩まされ続けてきたファンデルプールに軍配。ファンデルハールとのマッチスプリントを下したエリ・イゼルビット(ベルギー)が3位銅メダル、ファントーレンハウトが5位、途中2位グループを引っ張る走りを見せたエリート初挑戦のガーべン・カイペルス(ベルギー)が殊勲の6位。「いろいろあって正直頭が混乱している」と綴った織田聖は追走叶わず35位でラップアウトに終わった。
「人生の中で最も美しい勝利のベスト3に入る勝利だ。決して忘れられない記憶になるだろう。最終ラップではとてもリラックスできていたし、それが勝利への切り札だったかもしれない。チームと一緒に、背中の故障に対処するべく取り組んできた。とても幸せな勝利だ」と、ファンデルプールはエリートカテゴリー5回目、ジュニア時代から数えれば合計7回目のアルカンシエル獲得を喜んでいる。
上位選手のコメントなどは別記事で紹介します。
シクロクロス世界選手権、最終種目の男子エリートレースを一目見ようと詰めかけた観客は数万人。陽が差し込み、コースの湿り気がどんどん乾いていく好条件の中、ヨーロッパ、南北アメリカ大陸、そして日本から集った39名がグリーンシグナルと共にホーヘルハイデの特設コースに弾け出した。
ダッシュを決めたのは母国での必勝体制を組むオランダナショナルチームの面々だった。1月にオランダ選手権2連覇を決めたラース・ファンデルハールのロケットスタートが決まり、絶対エースのマチュー・ファンデルプール(オランダ)が、そして世界選に向けて成績を上げていたヨリス・ニューウェンハイスが続く。ライバル国ベルギー勢が出遅れる中、唯一ワウト・ファンアールト(ベルギー)がこの3名の中に割って入ることに成功する。
ファンデルハールが高速牽引する中、1周回完了を待たずにファンデルプールが動いた。フライオーバー手前で猛加速し、続く登り勾配を強烈なスピードでこなす。王者の速攻に唯一ファンアールトだけが食らいつき、レースは序盤から優勝候補2人の一騎打ちの様相を呈していった。
決まり手に欠くハイスピードコースゆえ、2番手以降は強豪選手が一列棒状に続く。ファンデルハールや欧州王者マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)、ケヴィン・クーン(スイス)といった面々を先頭に、20名以上が高速進行。若きイギリス王者キャメロン・メイソンが後方スタートからポジションを上げた一方、序盤のコーナーで接触落車した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は苦しい戦いを強いられた。
先頭を突き進むファンデルプールとファンアールトは、2番手以降を突き放すハイペースを刻んでいく。途中互いにアタックを仕掛ける場面があったものの差は生まれず、互いの顔色を伺いながら周回をこなし続けた。
「お互いに今日差を付けるのは不可能だとすぐ気づいたけれど、登坂で負けていなかったことで自信が生まれた」と言うファンデルプールがペースメイクする一方、ファンアールトはライバルの背後に付く時間が長くなる。ファンアールトはこの時の状況を「最初の30分間は彼のペースにかなり苦労したんだ。それは、残りの後半戦で臆病な選手のように走らざるを得ないことを意味していた」と、プレッシャーに晒されていたことを後に語っている。
レース開始後30分を過ぎ、2番手グループが絞り込まれてもなお先頭2人の均衡は変わらない。序盤から展開される最強選手の一騎打ちに、熱狂の渦が先頭集団の動きと合わせて会場内を駆け巡った。
最後の10周目に入ると先頭2人は牽制でペースダウン。フライオーバーでも、登坂区間でも互いにアタックはなく、シケイン、長い階段、そしてホームストレートと勝負所が続く最終区間へ。誰もがファンデルプールが得意のシケインのバニーホップでアタックすると思っていたが、特に前に出ることなくファンアールトの背後についたまま。これが「2番手でホームストレートに入りスプリントするつもりだった」と言うライバルの作戦を狂わせた。
予想の裏を突いたファンデルプールは、混乱するファンアールトの背後で最終コーナーを回り、一呼吸置いてから猛烈なスプリントを開始した。ファンアールトも応戦したが出足が悪く、ファンの声援に後押しされて突き進むファンデルプールとの1車身は縮まらない。強烈な勢いでフィニッシュラインまでの登り勾配を駆け上がったファンデルプールが右拳を突き上げた。
1時間に渡るスペクタクルなショーは、今季背中の故障に悩まされ続けてきたファンデルプールに軍配。ファンデルハールとのマッチスプリントを下したエリ・イゼルビット(ベルギー)が3位銅メダル、ファントーレンハウトが5位、途中2位グループを引っ張る走りを見せたエリート初挑戦のガーべン・カイペルス(ベルギー)が殊勲の6位。「いろいろあって正直頭が混乱している」と綴った織田聖は追走叶わず35位でラップアウトに終わった。
「人生の中で最も美しい勝利のベスト3に入る勝利だ。決して忘れられない記憶になるだろう。最終ラップではとてもリラックスできていたし、それが勝利への切り札だったかもしれない。チームと一緒に、背中の故障に対処するべく取り組んできた。とても幸せな勝利だ」と、ファンデルプールはエリートカテゴリー5回目、ジュニア時代から数えれば合計7回目のアルカンシエル獲得を喜んでいる。
上位選手のコメントなどは別記事で紹介します。
シクロクロス世界選手権2023 男子エリート結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ) | 1:07:20 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー) | |
3位 | エリ・イゼルビット(ベルギー) | +0:12 |
4位 | ラース・ファンデルハール(オランダ) | +0:13 |
5位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー) | +0:46 |
6位 | ガーべン・カイペルス(ベルギー) | +0:57 |
7位 | ニルス・ファンデプッテ(ベルギー) | +0:59 |
8位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー) | +1:08 |
9位 | キャメロン・メイソン(イギリス) | +1:30 |
10位 | クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス) | +1:33 |
35位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) |
Text:So.Isobe
Photo:Nobuhiko.Tanabe
Photo:Nobuhiko.Tanabe
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