シクロクロス世界選手権がオランダのホーヘルハイデで開幕する。アルカンシエルを賭けた戦いは各カテゴリーで好勝負の予感。日本人選手6名が出場する大一番を予習しておきたい。



オランダ・ホーヘルハイデで開催される2023年シクロクロス世界選手権 photo:Nobuhiko.Tanabe

3日間に渡るシクロクロス世界選手権が、オランダは北ブラバント州ウーンスドレヒト市にある街ホーヘルハイデで開催される。2022年はアメリカ、2021年はライバル国ベルギー、2020年はスイスで世界選が開催されてきたが、オランダを舞台とするのは2018年大会以来5年ぶりだ。

2009年と2014年に世界選を迎え、それ以外はほぼ毎年UCIワールドカップを迎える伝統と格式あるホーヘルハイデのコース。優勝候補最右翼マチュー・ファンデルプール(オランダ)の父であり、かつての名選手、アドリ氏がコースディレクションを担当しているが、事前に「マチューや特定の誰か有利ではなく、全ての選手にとって公平となるように、エキサイティングで楽しいレースが開催されるよう注意を払った」と話している。

ホーヘルハイデ名物の高低差のある階段セクション photo:Nobuhiko.Tanabe

コースは2018年のファルケンブルクほどの急斜面ではないものの、緩やかな傾斜がついた森と平坦の草地区間を組み合わせている。大きなフライオーバーとキャンバーが設けられ、フィニッシュの少し手前には30段以上の長い階段も。アドリ氏は「階段で勝負するなら10秒(リード)は要るだろう。2秒では勝てない。スプリントで決着することになるだろう」と予測している。

母国の星ファンデルプールか、今季好調のファンアールトか

優勝候補筆頭のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

エリート男子の絶対的優勝候補はオランダ期待の星ファンデルプールと、そして隣国ベルギーを率いるワウト・ファンアールトの2人。トーマス・ピドコック(イギリス)はロードのクラシックレース参戦を見据えて参戦を見送ったため、今季出場レースを全て支配してきた2人の争いにより注目と期待が高まっている。

2人のうち安定した戦績を残しているのはファンアールトで、13戦中9勝4敗。4つの黒星はいずれも今季合計6勝したファンデルプールにつけられたものだが、今季は故障もなく、パワー区間はもちろんのこと、従来ファンデルプールが得意としていたテクニカルコースでもその強さは際立つ。ただしファンデルプールも世界選に向けてコンディションを上げ、スペイン大会ではマッチスプリントの末勝利。ワウトvsマチュー。2年ぶりのアルカンシエルを賭けた直接対決を制するのはどちらだろうか。

今季は好調を維持しているワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

表彰台争いに加わるのは、ワールドカップの総合シリーズランキングを制したローレンス・スウィークや欧州王者マイケル・ファントーレンハウト、故障で浮き沈みのあるシーズンを過ごしたエリ・イゼルビットといった分厚い層を誇るベルギー勢。ファンデルプールと共に開催国オランダを背負うのは、昨年ピドコックとアルカンシエルを争ったラース・ファンデルハールや、台頭著しいヨリス・ニューウェンハイスといった面々だ。

ファンエンペルvsピーテルスの一騎打ちが濃厚な女子エリート

女子エリートの優勝候補である欧州王者フェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

女子エリートレースをオランダ勢が支配することは、これまでのレースを見ても確定事項と言えるだろう。ただし昨年と違うのは、欧州王者フェム・ファンエンペルとパック・ピーテルスという2強がU23からステップアップしたこと。この2人と唯一渡り合えるシリン・ファンアンローイがU23タイトル狙いを選んだことで、女子エリートでもファンエンペルとピーテルスの一騎討ちに持ち込まれる公算が高い。

良きライバル関係を築く2人のうち、パワーに勝り、より勝ち星を挙げているのはファンエンペル。一方のピーテルスは男子顔負けのテクニックを武器にし、接戦になればなるほどシケインをバニーホップで飛べるメリットが大きくなる。昨年覇者マリアンヌ・フォス(オランダ)は腹部の動脈閉塞で離脱を余儀なくされたため、エリートカテゴリーは男女ともに新王者が誕生することになる。

直前のW杯第14戦で優勝したオランダ王者のパック・ピーテルス(アルペシン・ドゥクーニンク) photo:UCI

アンダーはファンアンローイやバックステッドに注目 日本勢は織田や小川らが挑む

U23の男子は、2020年にジュニアタイトルを奪ったティボー・ネイス(ベルギー)や、ティボー・デルグロッソ(オランダ)といった2強国の対決となるはず。女子はファンアンローイに対し、昨年ジュニアのCX、ロード、TTでアルカンシエルを奪ったゾーイ・バックステッド(イギリス)がどこまで近づけるかに注目したい。

シクロクロス世界選手権は本日2月3日に開幕。第1種目は昨年初開催された男女各カテゴリー混合のチームリレーで、ファンエンペルが足慣らしに出場するオランダが有力候補になるはずだ。4日土曜日は女子ジュニア、男子U23、そして女子エリート、5日日曜日は男子ジュニア、女子U23、そして男子エリートレースが開催される。

満面の笑顔を見せる織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:So Isobe

仲間や支えてくれる人への感謝を述べる小川咲絵(AX cyclocross team) photo:So Isobe

2020年以来の世界選手権参戦となる日本ナショナルチームを構成するのは合計6名の選手たち。全日本エリート覇者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小川咲絵(AX cyclocross team)を筆頭に、U23の副島達海(大阪産業大学)、柚木伸元(朝明高校)、石田唯(早稲田大学)、そして大蔵こころ(早稲田大学)が参戦。三船雅彦監督や、現地スタッフのランジット氏のバックアップを経て大一番に挑む。

text:So Isobe

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