サプライズ決着となったブエルタ・ア・サンフアン第2ステージ。コース幅の広いサーキットを利用したクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)がアーリーアタックで勝利を掴み、今大会限りで引退するマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチンナショナルチーム)が2位に入った。



モータースポーツのサーキット場であるオートドローモ・デ・ビリカムを出発する選手たち photo:CorVos

南米アルゼンチンを舞台に行われているブエルタ・ア・サンフアン(UCI2.Pro)。その第3ステージはモータースポーツのサーキット場であるオートドローモ・デ・ビリカムを発着点とする170.9kmで、フィニッシュ手前14kmから9kmほどの緩斜面以外は真っ平らのスプリントステージだ。

トレック・セガフレードで走っていた経験を持つホセルイス・ロドリゲス(チリナショナルチーム)が2日連続で逃げに乗ったこの日、5名の選手が逃げ集団を形成。集団スプリントに持ち込みたいボーラ・ハンスグローエがプロトンが統制し、5分以上の差を許さないコントロールを見せた。

ファビオ・ヤコブセン(オランダ)がスプリント勝利した前日の再現をすべく、スーダル・クイックステップがメイン集団の牽引に加わり、残り35kmで先頭グループを捕まえる。吹きさらしの荒地を突き進むプロトンからは残り5kmでシモーネ・ベヴィラクア(イタリア、エオーロ・コメタ)がアタック。単独でフィニッシュ地点であるサーキット場に突入した。

アルゼンチンの厳しい暑さのなか行われたブエルタ・ア・サンフアン2023第3ステージ photo:CorVos

盟友ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)と会話するダニエル・オス(イタリア) photo:CorVos

サーキットでの横風や落車により混沌としたプロトンは残り2kmでベヴィラクアを吸収。幅広のサーキットとライン取りの難しいコーナーにより各チームが通常のリードアウトトレインを作れずにいるなか、隙を突きクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)が飛び出した。

得意とする瞬間的な加速力を活かし突き進むシモンズ。それに今大会限りでの引退を発表しているマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチンナショナルチーム)が追従し、その後ろからフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)やサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)らスプリンターたちが必死の形相で追いかける。元ジュニア世界王者のシモンズがフィニッシュラインを通過し、スプリンターたちは2位のリケーゼすら捉えることができなかった。

シモンズとリケーゼに迫るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)らスプリンターたち photo:CorVos

アタックを成功させ今季初勝利を挙げたクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) photo:CorVos

エーススプリンターに欠き、他チームより1人少ない5名で参戦しているトレック・セガフレードの奇襲作戦が大成功。シモンズは「監督が今朝、このコースで同じような形で勝利する動画を見せてくれたんだ。だからマティアス(ヴァチェク)に『この地点まで僕を連れてきてくれたら勝ってみせる』と伝えたんだ。スプリンターでもクライマーでもない僕が勝つためには、自らタフなレースにしなければならないからね。勝利という、今年チームと結んだ約束を達成できて嬉しいよ」と喜びを語った。

翌日の第4ステージもスプリントが予想されるレイアウト。コース中盤で1級山岳グルタ・ビルゲン・デ・アンダコッロが現れるものの、距離7.6kmで平均勾配3.6%と低難易度のため、4日連続でスプリンターが勝利を狙うステージになりそうだ。

シャンパンファイトで勝利を喜ぶクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) photo:CorVos

ブエルタ・ア・サンフアン2023第3ステージ結果
1位 クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) 3:49:30
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチンナショナルチーム)
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)
5位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)
6位 ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)
7位 ヘルマン・ティバニ(アルゼンチン、コラテック)
8位 イヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
9位 ダニエル・オス(イタリア、トタルエネルジー)
10位 フアンパブロ・ドッティ(アルゼンチン、サンディコ・デ・エンペレアドスプビリコス・オブ・サンフアン)
個人総合成績
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 11:30:54
2位 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、スーダル・クイックステップ) +0:06
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター) +0:08
4位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック) +0:10
5位 ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー) +0:14
6位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、チームDSM)
8位 ヘルマン・ティバニ(アルゼンチン、コラテック)
9位 ダニエル・オス(イタリア、トタルエネルジー)
10位 イヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
その他の特別賞
山岳賞 トマス・コンテ(アルゼンチンナショナルチーム)
ヤングライダー賞 トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、チームDSM)
チーム総合成績 ボーラ・ハンスグローエ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos