2010/07/16(金) - 07:26
2010年7月15日、ツール・ド・フランス第11ステージがシストロンからブール・レ・ヴァロンスまでの184.5kmで行なわれ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)が3度目のスプリント勝利。新城幸也(Bboxブイグテレコム)がステージ6位に食い込む活躍を見せた。
選手たちはアルプス山脈を離れ、最終決戦地ピレネー山脈に向けて西に進路を取る。ピレネー突入までの3日間は比較的難易度が低く、スプリンターやアタッカーにもチャンスがあるステージが続く。
前半に3級山岳が設定されただけの第11ステージは生粋のスプリンターステージ。スタート直後にアタックを仕掛けたステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)、アントニー・ジェラン(フランス、フランセーズデジュー)、ホセアルベルト・ベニテス(スペイン、フットオン・セルヴェット)の3人を、メイン集団は直ぐに見送った。
レース最初の1時間の平均スピードが37.1km/hという今大会最も遅い展開。47km地点でエスケープトリオのリードが5分を超えると、ようやくチームHTC・コロンビアとランプレがメイン集団のコントロールを開始した。
レース前半、56km地点の3級山岳カブル峠でメイン集団では山岳賞争いが勃発した。3級山岳では4番手通過の選手までポイントが与えられるため、先頭3名の通過後、集団の先頭で頂上を通過すれば僅かながらポイントをゲット出来る。
前日にマイヨアポワを失ったBboxブイグテレコムが積極的にペースを上げ、アントニー・シャルトー(フランス)のマイヨアポワ奪回をお膳立て。しかしパンチ力で勝るジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)が頂上先頭通過を果たし、お気に入りの赤玉ジャージを堅守。シャルトーとの差を2ポイントに広げた。
160km以上に渡って逃げ続けたオジェ、ジェラン、ベニテスの3名。しかしチームHTC・コロンビアやランプレ、ガーミンがコントロールするメイン集団は、逃げグループに4分以上のタイム差を与えない。確実に集団スプリントに持ち込みたいスプリンターチームは、余裕をもってゴール22km手前で逃げを飲み込んだ。
早期の逃げ吸収は新たなカウンターアタックを生む。ジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)のカウンターアタックは不発に終わったが、メイン集団は不安定な状態に。横風区間でサクソバンクがメイン集団のペースを上げた。
サクソバンクの集団牽引によって数十名の選手たちが脱落。しかし完全に集団を破壊するような風は吹かず、ゴールまで10kmを切るとシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)がアタックを仕掛けて先行した。
ここでようやくスプリンターチームが姿を見せ、シャヴァネルとポポヴィッチを吸収。チームHTC・コロンビア、ランプレ、サーヴェロ、チームスカイ、ガーミン・トランジションズが集団を率いてラスト2km。メンバーを揃えて集団を率いたチームHTC・コロンビアとランプレが主導権を握り、ラスト1kmのアーチを駆け抜けた。
アイゼル、レンショー、カヴェンディッシュのチームHTC・コロンビアに、ディーンとファラーのガーミン・トランジションズが対抗。ディーンの先行を阻止すべくレンショーがヘッドバットで対抗する白熱のポジション争いが繰り広げられ、ラスト300mで早めにカヴェンディッシュがスプリントを開始した。
持ち前の加速力で先行したカヴェンディッシュには誰も対抗出来ず、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)やファラーを引き離したカヴェンディッシュが余裕のガッツポーズで優勝。ステージ3勝目を飾った。
シーズン前半から調子が上がらず、ツール開幕後もしばらく波に乗れていなかったカヴェンディッシュ。しかし第5ステージで1勝目を飾ると、その後の集団スプリントでは負け無しの強さを見せている。
「マーク(レンショー)はジュリアン・ディーンを押しのけて、僕のためにドアを開いてくれた。最初に肘を出して来たのはジュリアンだ。マークが(アタマで)押し返していなかったら、肘が絡まって落車していただろう。マークは僕をトラブルから守り続けてくれた。彼のハンドリング能力には目を見張るものがある(レース公式サイトより)」
カヴェンディッシュの勝利の立役者は間違いなくレンショーだ。しかしレース後にコミッセールはレンショーの失格を発表した。降格ではなく、レースを除外する失格という厳しい処分。カヴェンディッシュは重要な発射台役を失ってしまった。
この日、逃げアタックから集団スプリントに目標をスイッチしたBboxブイグテレコムはセバスティアン・テュルゴー(フランス)とユキヤをスプリント勝負に送り込んだ。ユキヤは誰のアシストも受けずに厳しいポジション争いをくぐり抜け、最終ストレートでスプリント勝負に参加。シッティングでぐいぐい加速する走りで強豪スプリンターたちと渡り合い、ステージ6位に入ってみせた。
昨年のツール第2ステージの5位、今年のジロ第5ステージ3位に次ぐ上位入賞。集団スプリントでも上位に絡むことが出来ることを今一度証明した。Bboxブイグテレコムのジャンルネ・ベルノドー監督も「今日のようなハイレベルなスプリントでは、偶然上位に入ることなんて出来ない。実力と才能がある証拠だ。今日の結果には非常に満足している」とべた褒め。今後のステージでの活躍にますます期待が集まる。
ステージ7位に沈んだポイント賞トップのトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)に代わって、ステージ2位のペタッキがマイヨヴェール獲得。これからはステージ優勝に加えてこのマイヨヴェール争奪戦の行方にも注目だ。
ツール・ド・フランス2010第11ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)4h42'29"
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
5位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
6位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
7位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
8位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームミルラム)
第11ステージ敢闘賞
ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 53h43'25"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) +41"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +3'59"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
8位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) +4'41"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5'08"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +5'09"
11位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
14位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +6'31"
16位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +7'13"
17位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +7'18"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +7'47"
102位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h16'51"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 161pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)157pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ) 138pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ) 92pts
2位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)90pts
3位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 62pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 53h43'25"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 161h41'29"
2位 レディオシャック +31"
3位 アスタナ +14'54"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Makoto Ayano
選手たちはアルプス山脈を離れ、最終決戦地ピレネー山脈に向けて西に進路を取る。ピレネー突入までの3日間は比較的難易度が低く、スプリンターやアタッカーにもチャンスがあるステージが続く。
前半に3級山岳が設定されただけの第11ステージは生粋のスプリンターステージ。スタート直後にアタックを仕掛けたステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)、アントニー・ジェラン(フランス、フランセーズデジュー)、ホセアルベルト・ベニテス(スペイン、フットオン・セルヴェット)の3人を、メイン集団は直ぐに見送った。
レース最初の1時間の平均スピードが37.1km/hという今大会最も遅い展開。47km地点でエスケープトリオのリードが5分を超えると、ようやくチームHTC・コロンビアとランプレがメイン集団のコントロールを開始した。
レース前半、56km地点の3級山岳カブル峠でメイン集団では山岳賞争いが勃発した。3級山岳では4番手通過の選手までポイントが与えられるため、先頭3名の通過後、集団の先頭で頂上を通過すれば僅かながらポイントをゲット出来る。
前日にマイヨアポワを失ったBboxブイグテレコムが積極的にペースを上げ、アントニー・シャルトー(フランス)のマイヨアポワ奪回をお膳立て。しかしパンチ力で勝るジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)が頂上先頭通過を果たし、お気に入りの赤玉ジャージを堅守。シャルトーとの差を2ポイントに広げた。
160km以上に渡って逃げ続けたオジェ、ジェラン、ベニテスの3名。しかしチームHTC・コロンビアやランプレ、ガーミンがコントロールするメイン集団は、逃げグループに4分以上のタイム差を与えない。確実に集団スプリントに持ち込みたいスプリンターチームは、余裕をもってゴール22km手前で逃げを飲み込んだ。
早期の逃げ吸収は新たなカウンターアタックを生む。ジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)のカウンターアタックは不発に終わったが、メイン集団は不安定な状態に。横風区間でサクソバンクがメイン集団のペースを上げた。
サクソバンクの集団牽引によって数十名の選手たちが脱落。しかし完全に集団を破壊するような風は吹かず、ゴールまで10kmを切るとシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)がアタックを仕掛けて先行した。
ここでようやくスプリンターチームが姿を見せ、シャヴァネルとポポヴィッチを吸収。チームHTC・コロンビア、ランプレ、サーヴェロ、チームスカイ、ガーミン・トランジションズが集団を率いてラスト2km。メンバーを揃えて集団を率いたチームHTC・コロンビアとランプレが主導権を握り、ラスト1kmのアーチを駆け抜けた。
アイゼル、レンショー、カヴェンディッシュのチームHTC・コロンビアに、ディーンとファラーのガーミン・トランジションズが対抗。ディーンの先行を阻止すべくレンショーがヘッドバットで対抗する白熱のポジション争いが繰り広げられ、ラスト300mで早めにカヴェンディッシュがスプリントを開始した。
持ち前の加速力で先行したカヴェンディッシュには誰も対抗出来ず、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)やファラーを引き離したカヴェンディッシュが余裕のガッツポーズで優勝。ステージ3勝目を飾った。
シーズン前半から調子が上がらず、ツール開幕後もしばらく波に乗れていなかったカヴェンディッシュ。しかし第5ステージで1勝目を飾ると、その後の集団スプリントでは負け無しの強さを見せている。
「マーク(レンショー)はジュリアン・ディーンを押しのけて、僕のためにドアを開いてくれた。最初に肘を出して来たのはジュリアンだ。マークが(アタマで)押し返していなかったら、肘が絡まって落車していただろう。マークは僕をトラブルから守り続けてくれた。彼のハンドリング能力には目を見張るものがある(レース公式サイトより)」
カヴェンディッシュの勝利の立役者は間違いなくレンショーだ。しかしレース後にコミッセールはレンショーの失格を発表した。降格ではなく、レースを除外する失格という厳しい処分。カヴェンディッシュは重要な発射台役を失ってしまった。
この日、逃げアタックから集団スプリントに目標をスイッチしたBboxブイグテレコムはセバスティアン・テュルゴー(フランス)とユキヤをスプリント勝負に送り込んだ。ユキヤは誰のアシストも受けずに厳しいポジション争いをくぐり抜け、最終ストレートでスプリント勝負に参加。シッティングでぐいぐい加速する走りで強豪スプリンターたちと渡り合い、ステージ6位に入ってみせた。
昨年のツール第2ステージの5位、今年のジロ第5ステージ3位に次ぐ上位入賞。集団スプリントでも上位に絡むことが出来ることを今一度証明した。Bboxブイグテレコムのジャンルネ・ベルノドー監督も「今日のようなハイレベルなスプリントでは、偶然上位に入ることなんて出来ない。実力と才能がある証拠だ。今日の結果には非常に満足している」とべた褒め。今後のステージでの活躍にますます期待が集まる。
ステージ7位に沈んだポイント賞トップのトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)に代わって、ステージ2位のペタッキがマイヨヴェール獲得。これからはステージ優勝に加えてこのマイヨヴェール争奪戦の行方にも注目だ。
ツール・ド・フランス2010第11ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)4h42'29"
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
5位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
6位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
7位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
8位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームミルラム)
第11ステージ敢闘賞
ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 53h43'25"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) +41"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +3'59"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
8位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) +4'41"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5'08"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +5'09"
11位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
14位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +6'31"
16位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +7'13"
17位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +7'18"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +7'47"
102位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h16'51"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 161pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)157pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ) 138pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ) 92pts
2位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)90pts
3位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 62pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 53h43'25"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 161h41'29"
2位 レディオシャック +31"
3位 アスタナ +14'54"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Makoto Ayano
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