2022/10/15(土) - 19:01
「終始牽引してくれたチームメイトの走りに報いるため、勝たなければならないと思っていた」とエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)は振り返る。平均49.0km/hの高速バトルの末、自身のジャパンカップクリテ2連勝、そしてチームの3連勝をマークした。
第29回目のジャパンカップが、宇都宮駅から真っ直ぐに伸びる宇都宮市大通りを封鎖したクリテリウムでいよいよ動き出した。25回記念の2016年大会でコース長を350m伸ばした1周2.25kmのコース両側を、3年ぶりのレースを心待ちにした大勢のファンが埋め尽くした。
2.25kmコース15周する合計33.75kmの短時間高強度レース。4周目、8周目、そして12周目のフィニッシュ地点にスプリント賞が懸けられた40分強の戦いは、スタート直後から終盤まで絶えずアタックが頻発する落ち着かない展開のまま進行することに。
宇都宮市役所からパレード走行を始め、宇都宮市の佐藤栄一市長や「弱虫ペダル」作者の渡辺航さんを先頭に大通りに登場した選手たち。昨年限りでプロキャリアにピリオドを打った別府史之さんもこの中に加わり、フィニッシュライン上では花束贈呈の引退セレモニーも行われた。
日中は25度ほどという半袖で十分な暖かさ。ややスローペースのスタートからアタック合戦を経て、2周目には台湾のナショナルチャンピオンジャージが目立つフェン・チュンカイ(バーレーン・ヴィクトリアス)たちが先行。続いて中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)や西尾憲人(那須ブラーゼン)が飛び出す背後では、トレック・セガフレードが人数を揃えてレースコントロールを開始した。
1回目のスプリントポイントを獲ったのは中根と西尾にジャンプした渡邊翔太郎(愛三工業レーシング)で、このアタックが潰されると武山晃輔(チーム右京)たちが集団を飛び立つ。続いて「スプリンターの岡(篤志)のためにレース展開を厳しくして、同時に楽しみながらファンに良い走りを見せたかった」と言うニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックし、全員を抜き去り単独逃げを開始した。
「コンディションも良かったし、明日に向けた予行練習と考えていた」と言うポーレスに対し、7周目から8周目にかけてギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)、ペイオ・ゴイコエチェア(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が合流。ポーレスは8周目のスプリントポイントではマルタンを下して先着を果たしている。
しかし強力なポーレスの逃げも、トレック・セガフレードの徹底マークを引き剥がすには至らない。日曜日のロードレースのためにクリテ参戦を見送ったアントワン・トールクを欠いてもなおジュリアン・ベルナール(フランス)とダリオ・カタルド(イタリア)の献身的な牽きによって主導権を握り、ポーレスたちを10周目に吸収。全日本チャンピオンジャージを着る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)のアタックもすぐに引き戻し、続いたシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)や新城雄大(キナンレーシングチーム)のアタックにも動じなかった。
最後(12周目)のスプリントポイントで先着したのはヴィクトル・ポトチュキ(リュブリャナ・グスト・サンティック)で、山本大喜(キナンレーシングチーム)のアタックも封じ込められる。小野寺玲を引き連れた宇都宮ブリッツェントレインが前方に上がって最終周回突入の鐘を聞くと、東部馬車道通り入り口の180度コーナーを曲がった先でティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が一気に抜け出した。
宇都宮駅に向かう下り勾配の往路を勢いよく逃げたウェレンスだったが、EFエデュケーション・イージーポストやコフィディスの必死の追走によって上河原交差点の最終ターンを折り返した先で捉えられる。ウェレンス追走で各チームが脚を使い、混沌とした状況でフィニッシュラインへと突き進み、ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)がペースを引き上げる。すると6,7番手後方から一気にエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)がスプリント。緩いS字の最短ラインを駆け上がったトゥーンスが、追い込むアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)を退けた。
終始レースをコントロールしたチームメイトに捧げる勝利。スタート前に「今年は時差ぼけが残っていて身体が少し重いんだ」と話していたトゥーンスが、2019年に続く大会2連覇を掴み取った。トレック・セガフレードにとっては2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)に続く3連覇だ。
「まずはじめに、3年振りにここ日本に戻ってくることができて本当に嬉しい。沿道の観客も素晴らしく、まるで僕の住むフランダースの人たちのようだ。ここまで観に来てくれた人たちに感謝を伝えたい。そして2連続で勝つことができて本当に嬉しいよ。チームが終始牽引してくれたので、その走りに報いるために勝たなければならないと思っていた。だからこそ優勝できて最高の気分だ」と近年稀に見る高速レースを制したトゥーンスは言う。
明日はアシストとして働いてチームの2日連続優勝を狙うことを宣言するとともに、インタビューが終わるタイミングで再びマイクを取り、「最後にフミに賛辞を送りたい。レースでは彼に何度も助けてもらった。たくさんの観客の前で素晴らしいセレモニーだった」と数年に渡りチームメイトとして走った別府のキャリアを祝福した。
「チームメイトが最終コーナー手前でトレックの背後という好位置に僕を運んでくれた。スプリントでの過ちは(大回りになる)右側を取ってしまったこと。悔しいけれどこの順位には満足している。最高の雰囲気のレースでとても楽しかった」と語るザングルが2位。岡篤志(日本、EFエデュケーション・イージーポスト)が2016年の別府史之(優勝)以来6年ぶりとなるクリテ表彰台を掴み取った。
「スプリンター不在のチームで自分で勝負することになった。ワールドチームのジャージを着ていたことでポジション取りもしやすかったし、それだからこそ獲れた順位。宇都宮のファンの前でたくさんの応援を頂いたし、ジャパンカップで初めて表彰台に登ることができて嬉しい」と喜ぶ岡に対し、第2の地元と言える宇都宮の大観衆から暖かな拍手が贈られた。
ワールドチーム勢が積極的に動いた2022年クリテリウムは、平均49.0km/hと直近5年間の中で最速記録をマーク(2016年47.0km/h、2017年47.0km/h、2018年47.5km/h、2019年は落車中断)。翌日のジャパンカップ本戦も激しい戦いとなりそうだ。
第29回目のジャパンカップが、宇都宮駅から真っ直ぐに伸びる宇都宮市大通りを封鎖したクリテリウムでいよいよ動き出した。25回記念の2016年大会でコース長を350m伸ばした1周2.25kmのコース両側を、3年ぶりのレースを心待ちにした大勢のファンが埋め尽くした。
2.25kmコース15周する合計33.75kmの短時間高強度レース。4周目、8周目、そして12周目のフィニッシュ地点にスプリント賞が懸けられた40分強の戦いは、スタート直後から終盤まで絶えずアタックが頻発する落ち着かない展開のまま進行することに。
宇都宮市役所からパレード走行を始め、宇都宮市の佐藤栄一市長や「弱虫ペダル」作者の渡辺航さんを先頭に大通りに登場した選手たち。昨年限りでプロキャリアにピリオドを打った別府史之さんもこの中に加わり、フィニッシュライン上では花束贈呈の引退セレモニーも行われた。
日中は25度ほどという半袖で十分な暖かさ。ややスローペースのスタートからアタック合戦を経て、2周目には台湾のナショナルチャンピオンジャージが目立つフェン・チュンカイ(バーレーン・ヴィクトリアス)たちが先行。続いて中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)や西尾憲人(那須ブラーゼン)が飛び出す背後では、トレック・セガフレードが人数を揃えてレースコントロールを開始した。
1回目のスプリントポイントを獲ったのは中根と西尾にジャンプした渡邊翔太郎(愛三工業レーシング)で、このアタックが潰されると武山晃輔(チーム右京)たちが集団を飛び立つ。続いて「スプリンターの岡(篤志)のためにレース展開を厳しくして、同時に楽しみながらファンに良い走りを見せたかった」と言うニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックし、全員を抜き去り単独逃げを開始した。
「コンディションも良かったし、明日に向けた予行練習と考えていた」と言うポーレスに対し、7周目から8周目にかけてギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)、ペイオ・ゴイコエチェア(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が合流。ポーレスは8周目のスプリントポイントではマルタンを下して先着を果たしている。
しかし強力なポーレスの逃げも、トレック・セガフレードの徹底マークを引き剥がすには至らない。日曜日のロードレースのためにクリテ参戦を見送ったアントワン・トールクを欠いてもなおジュリアン・ベルナール(フランス)とダリオ・カタルド(イタリア)の献身的な牽きによって主導権を握り、ポーレスたちを10周目に吸収。全日本チャンピオンジャージを着る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)のアタックもすぐに引き戻し、続いたシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)や新城雄大(キナンレーシングチーム)のアタックにも動じなかった。
最後(12周目)のスプリントポイントで先着したのはヴィクトル・ポトチュキ(リュブリャナ・グスト・サンティック)で、山本大喜(キナンレーシングチーム)のアタックも封じ込められる。小野寺玲を引き連れた宇都宮ブリッツェントレインが前方に上がって最終周回突入の鐘を聞くと、東部馬車道通り入り口の180度コーナーを曲がった先でティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が一気に抜け出した。
宇都宮駅に向かう下り勾配の往路を勢いよく逃げたウェレンスだったが、EFエデュケーション・イージーポストやコフィディスの必死の追走によって上河原交差点の最終ターンを折り返した先で捉えられる。ウェレンス追走で各チームが脚を使い、混沌とした状況でフィニッシュラインへと突き進み、ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)がペースを引き上げる。すると6,7番手後方から一気にエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)がスプリント。緩いS字の最短ラインを駆け上がったトゥーンスが、追い込むアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)を退けた。
終始レースをコントロールしたチームメイトに捧げる勝利。スタート前に「今年は時差ぼけが残っていて身体が少し重いんだ」と話していたトゥーンスが、2019年に続く大会2連覇を掴み取った。トレック・セガフレードにとっては2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)に続く3連覇だ。
「まずはじめに、3年振りにここ日本に戻ってくることができて本当に嬉しい。沿道の観客も素晴らしく、まるで僕の住むフランダースの人たちのようだ。ここまで観に来てくれた人たちに感謝を伝えたい。そして2連続で勝つことができて本当に嬉しいよ。チームが終始牽引してくれたので、その走りに報いるために勝たなければならないと思っていた。だからこそ優勝できて最高の気分だ」と近年稀に見る高速レースを制したトゥーンスは言う。
明日はアシストとして働いてチームの2日連続優勝を狙うことを宣言するとともに、インタビューが終わるタイミングで再びマイクを取り、「最後にフミに賛辞を送りたい。レースでは彼に何度も助けてもらった。たくさんの観客の前で素晴らしいセレモニーだった」と数年に渡りチームメイトとして走った別府のキャリアを祝福した。
「チームメイトが最終コーナー手前でトレックの背後という好位置に僕を運んでくれた。スプリントでの過ちは(大回りになる)右側を取ってしまったこと。悔しいけれどこの順位には満足している。最高の雰囲気のレースでとても楽しかった」と語るザングルが2位。岡篤志(日本、EFエデュケーション・イージーポスト)が2016年の別府史之(優勝)以来6年ぶりとなるクリテ表彰台を掴み取った。
「スプリンター不在のチームで自分で勝負することになった。ワールドチームのジャージを着ていたことでポジション取りもしやすかったし、それだからこそ獲れた順位。宇都宮のファンの前でたくさんの応援を頂いたし、ジャパンカップで初めて表彰台に登ることができて嬉しい」と喜ぶ岡に対し、第2の地元と言える宇都宮の大観衆から暖かな拍手が贈られた。
ワールドチーム勢が積極的に動いた2022年クリテリウムは、平均49.0km/hと直近5年間の中で最速記録をマーク(2016年47.0km/h、2017年47.0km/h、2018年47.5km/h、2019年は落車中断)。翌日のジャパンカップ本戦も激しい戦いとなりそうだ。
ジャパンカップクリテリウム2022 結果
1位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) | 41:14 |
2位 | アクセル・ザングル(フランス、コフィディス) | |
3位 | 岡篤志(日本、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
4位 | アンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
5位 | 小野寺玲(日本、宇都宮ブリッツェン) | |
6位 | マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・スーダル) | |
7位 | ゴツォン・マルティン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) | |
8位 | ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
9位 | フィリプ・マチェユク(ポーランド、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
10位 | ハミッシュ・ビードル(ニュージーランド、ノボノルディスク) | |
11位 | 岡本隼(日本、愛三工業レーシングチーム) | |
12位 | 中島康晴(日本、キナンレーシングチーム) | |
14位 | 新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス) |
スプリント賞
4周目 | 渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム) |
8周目 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) |
12周目 | ヴィクトル・ポトチュキ(リュブリャナ・グスト・サンティック) |
text:So Isobe
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