2022/08/26(金) - 19:30
ロードサイクリストの一大イベント、シマノ鈴鹿ロードレース。数多くの種目があるなかで個人&チームタイムトライアルとステージレース形式で争う5ステージ・スズカがユニークな存在だ。仲間で挑む、あるいは総合成績を目指して戦略的に走るなど、シマノスズカらしい一面にフィーチャーしてレースの模様をお届けします。
8月の夏休み終盤に開催されるシマノ鈴鹿ロードレース。2日間に渡り約70に迫るレースが行われ、初心者からベテランまで、老若男女問わずあらゆるレベルのサイクリストが自分のレベルに合わせてレースを楽しむことが出来るロードレースのお祭りイベントだ。
シマノスズカでここ数年、大きな盛り上がりを見せるのが5ステージ・スズカだ。2日に渡って5つのレースをチームで戦うステージレース形式で行われるのが特徴で、距離の異なる3つのロードレースと個人TTとチームTTからなる5つのレースを走り、総合成績を競いあう。
ロードレースの各ステージにはスプリントポイントやステージ順位に応じたボーナスタイムが設けられていて、TTのタイムとあわせて総合タイムによる「個人総合成績」そしてチームの上位3名の成績によって決められる「チーム総合成績」も争うことで、戦略的な広がりのある種目となっている。各チーム・選手の思惑が交錯する奥深さが人気の秘密だ。2日間たっぷり走れる充実度(疲労度?)も格別なステージレースだ。
今年は4人から最大6人までの合計14チーム・80人が出場した。ちなみに前回2019年大会は32チーム・187名の参加者数だったから100人減となる。
全出場チームを紹介すると、昨年の覇者豊田勝徳率いるHSST、BREZZA-KAMIHAGI、TCC-SPEED、セルカリオレーシング、FAST√MADE、ぴっとレーシングチーム、バルバサイクルレーシングチーム、N.I.FD、Inspire Racing Team、TTGミトロングV、MKW、レブハフトレーシング、SIMIZU RACING、Nerebaniの14チーム。普段からおなじみのチーム名に加え、この5ステージ・スズカのために即席で結成されたチームもある。ちなみに同一チームから2つのチームで参加することはできなくなっており、チーム構成人数は違っても「数の有利」は無い規則。
個人総合優勝を狙うならロード種目ではエースを支えるアシストのチームプレイが重要になる。チーム総合成績を狙うならチームTTでは3人目のタイムがチームのタイムとなるため、仲間と脚が揃っていることも重要。普段のレースで参加する機会が少ない種目だけに、チームで事前にどれだけ一緒に練習できたかも結果を左右することだろう。
大会2日間の最初のレースである第1ステージを制したのは井上和郎(バルバサイクルレーシングチーム)。かつてブリヂストンアンカーで走った井上と寺崎武郎が居るバルバは今年も序盤から主導権を握った。総合リーダーになった井上は青と白の格子模様のリーダージャージを着用することになる。
第2ステージは個人タイムトライアル。多くの選手がエアロホイールにTTバー、そしてタイムトライアルバイクやスキンスーツを選択。プロと変わらないような機材を駆ってコースに飛び出していく。トップタイムを叩き出した古閑祥三(Nerebani)が2位河田恭司郎に1秒78差でフィニッシュ、総合首位に立った。Nerebaniは加藤⾠之介が3位、川崎嘉久が8位となりトップ10に3人を送り込み、一気に有利な状況に。
第3ステージはチームタイムトライアル。このタイムが個人総合も大きく左右するだけにもっとも重要なレースだ。4周・23.2kmのレースはJCF登録A、JCF未登録Aのレースとも混走になったが、第2ステージに続きNerebaniが28分23秒77のタイム、平均時速 49.0km/hで制した。2位はHSST、3位はMKW、4位バルバサイクルレーシングチーム、5位ぴっとレーシングチーム。古閑祥三(Nerebani)の個人総合トップは固くなり、総合2位もNerebaniの加藤 ⾠之介がつけることに。総合3位は河田恭司郎(HSST)。
2日目の第4ステージはショートコース2.3km×5周、11.0kmのクリテリウム。これを制したのは全日本マスターズ40代のチャンピオンでもある川崎嘉久(Nerebani)で、じつに3ステージ連続でNerebaniがトップを奪うことに。2位に寺崎武郎(バルバサイクルレーシングチーム)、3位に近藤健介(ぴっとレーシングチーム)。
総合トップに古閑、2位に加藤がつけ圧倒的な力をみせるNerebaniに対し、総合を奪いたいHSSTやMKW、他チームはステージ勝利で一矢報いたい第5ステージ。 7周・40.6kmの長いレースは攻撃が多発する激しい展開が続いた。寺崎武郎(バルバサイクルレーシングチーム)が逃げを打ち、大きな差をもって最終週へ。しかし逃げを潰し集団を完璧にコントロールしたNerebani。総合リーダーの古閑も個人TTを制しただけに、いざとなれば自身で逃げを追える独走力がある。
Nerebaniが焦りのない追走を見せ、集団はすべての逃げを許さず。ステージ優勝争いのロングスプリント勝負を制したのは坊紳(セルカリオ)だった。
個人総合優勝は古閑祥三(Nerebani)、2位もNerebaniの河田恭司郎、総合3位は河田恭司郎(HSST)で、第3ステージ以降の順位を守ったかたちとなった。チーム総合成績もNerebaniが優勝。2位HSST、3位MKW だった。ジュニア総合優勝は深谷天翔(FAST√MADE)の手に。
個人&チームで楽しめるタイムトライアル種目が充実
個人やチームで楽しめるタイムトライアル種目が充実しているのもシマノ鈴鹿ロードの特徴だ。表彰対象となるレースを数えるだけで個人TTが3、チームTTが6種目も設定されている。まず初日は個人タイムトライアル予選と順位決定戦、そしてチームタイムトライアル。チームTTはレディース、JCF登録・未登録の部が開催された。
ロードレーサーそのままで走るのもいいが、クリップオンのDH(TT)バーを取り付けて走る選手も。上級者なら専用のタイムトライアルバイクを用意し、ディスクホイールなどエアロホイールをセットして、スキンスーツを着込んでタイムを競う。アマチュアとはいえ多くの選手がこうしたTT機材を揃えていることにも驚く。
1周(5.8km)で争われた個人TTの最速タイムは地元三重の荻野徹(三味線Racing)が制した。タイムは7分11秒47、平均時速は48.39km/h。2位Sandu Ionut (TeamZenko)、3位楠本 宏樹(Nerebani )。
もっとも参加者の多い1日目午後のチームタイムトライルには、合計でなんと119チームが走り、コース上は途切れなく続く列車にややカオスな状況に。それでも出走を2ウェーブに分けてのレースだ。エンジョイ派とタイムを狙う速いチームが混走するも、抜き方、避け方も慣れたもの。
チームTT レディースAのトップタイムはバルバクラブタカオカ42。2位もバルバの「bフクイ 美しさは強さ」。チームTT JCF未登録Aは鷹組一番機、2位ぴっとレーシングチームA、3位レブハフトレーシングSONKだった。
ちなみに初日のチームTTの最速タイム(大会新記録)は宇都宮ブリッツェンのマークした26分34秒38・平均時速52.25km/h。次いでシマノレーシング(オープン扱い)、2位ヴィクトワール広島(レポート記事)。JPT&JCL登録チームに次ぐ3位はシマノの社員によるクラブチーム、シマノドリンキング。次いで大阪のzippy cycle clubだった。
2日目のチームTTレディースBはバルバクラブタカオカ39が優勝(1日目に続く1位だがメンバーが一部異なる)。2位にTeam ZERO UNO FRONTIER、3位みんカフェサイクリングクラブ。チームTT JCF未登録Bは鷹組二番機が制し、鷹組は2日連続優勝を飾った。2位にO☆RACING Aチーム、3位はTEAM 光。
上位入賞チームを紹介したが、皆で力を合わせて走って完走することがチームタイムトライアルの楽しさ。タイムを狙うだけが楽しみでなく、遅れる仲間を待ち、声を掛け合って走ったり、先頭交代の合図を出しながら走ることが多くのチームにとって非日常体験だったはず。個人種目はロードレースとは違った面白さを感じることができたはずだ。
フォトギャラリーには目立ったチームを収録してあります。ぜひ御覧ください。
text&photo:Makoto AYANO
photo:Masanao TOMITA
8月の夏休み終盤に開催されるシマノ鈴鹿ロードレース。2日間に渡り約70に迫るレースが行われ、初心者からベテランまで、老若男女問わずあらゆるレベルのサイクリストが自分のレベルに合わせてレースを楽しむことが出来るロードレースのお祭りイベントだ。
シマノスズカでここ数年、大きな盛り上がりを見せるのが5ステージ・スズカだ。2日に渡って5つのレースをチームで戦うステージレース形式で行われるのが特徴で、距離の異なる3つのロードレースと個人TTとチームTTからなる5つのレースを走り、総合成績を競いあう。
ロードレースの各ステージにはスプリントポイントやステージ順位に応じたボーナスタイムが設けられていて、TTのタイムとあわせて総合タイムによる「個人総合成績」そしてチームの上位3名の成績によって決められる「チーム総合成績」も争うことで、戦略的な広がりのある種目となっている。各チーム・選手の思惑が交錯する奥深さが人気の秘密だ。2日間たっぷり走れる充実度(疲労度?)も格別なステージレースだ。
今年は4人から最大6人までの合計14チーム・80人が出場した。ちなみに前回2019年大会は32チーム・187名の参加者数だったから100人減となる。
全出場チームを紹介すると、昨年の覇者豊田勝徳率いるHSST、BREZZA-KAMIHAGI、TCC-SPEED、セルカリオレーシング、FAST√MADE、ぴっとレーシングチーム、バルバサイクルレーシングチーム、N.I.FD、Inspire Racing Team、TTGミトロングV、MKW、レブハフトレーシング、SIMIZU RACING、Nerebaniの14チーム。普段からおなじみのチーム名に加え、この5ステージ・スズカのために即席で結成されたチームもある。ちなみに同一チームから2つのチームで参加することはできなくなっており、チーム構成人数は違っても「数の有利」は無い規則。
個人総合優勝を狙うならロード種目ではエースを支えるアシストのチームプレイが重要になる。チーム総合成績を狙うならチームTTでは3人目のタイムがチームのタイムとなるため、仲間と脚が揃っていることも重要。普段のレースで参加する機会が少ない種目だけに、チームで事前にどれだけ一緒に練習できたかも結果を左右することだろう。
大会2日間の最初のレースである第1ステージを制したのは井上和郎(バルバサイクルレーシングチーム)。かつてブリヂストンアンカーで走った井上と寺崎武郎が居るバルバは今年も序盤から主導権を握った。総合リーダーになった井上は青と白の格子模様のリーダージャージを着用することになる。
第2ステージは個人タイムトライアル。多くの選手がエアロホイールにTTバー、そしてタイムトライアルバイクやスキンスーツを選択。プロと変わらないような機材を駆ってコースに飛び出していく。トップタイムを叩き出した古閑祥三(Nerebani)が2位河田恭司郎に1秒78差でフィニッシュ、総合首位に立った。Nerebaniは加藤⾠之介が3位、川崎嘉久が8位となりトップ10に3人を送り込み、一気に有利な状況に。
第3ステージはチームタイムトライアル。このタイムが個人総合も大きく左右するだけにもっとも重要なレースだ。4周・23.2kmのレースはJCF登録A、JCF未登録Aのレースとも混走になったが、第2ステージに続きNerebaniが28分23秒77のタイム、平均時速 49.0km/hで制した。2位はHSST、3位はMKW、4位バルバサイクルレーシングチーム、5位ぴっとレーシングチーム。古閑祥三(Nerebani)の個人総合トップは固くなり、総合2位もNerebaniの加藤 ⾠之介がつけることに。総合3位は河田恭司郎(HSST)。
2日目の第4ステージはショートコース2.3km×5周、11.0kmのクリテリウム。これを制したのは全日本マスターズ40代のチャンピオンでもある川崎嘉久(Nerebani)で、じつに3ステージ連続でNerebaniがトップを奪うことに。2位に寺崎武郎(バルバサイクルレーシングチーム)、3位に近藤健介(ぴっとレーシングチーム)。
総合トップに古閑、2位に加藤がつけ圧倒的な力をみせるNerebaniに対し、総合を奪いたいHSSTやMKW、他チームはステージ勝利で一矢報いたい第5ステージ。 7周・40.6kmの長いレースは攻撃が多発する激しい展開が続いた。寺崎武郎(バルバサイクルレーシングチーム)が逃げを打ち、大きな差をもって最終週へ。しかし逃げを潰し集団を完璧にコントロールしたNerebani。総合リーダーの古閑も個人TTを制しただけに、いざとなれば自身で逃げを追える独走力がある。
Nerebaniが焦りのない追走を見せ、集団はすべての逃げを許さず。ステージ優勝争いのロングスプリント勝負を制したのは坊紳(セルカリオ)だった。
個人総合優勝は古閑祥三(Nerebani)、2位もNerebaniの河田恭司郎、総合3位は河田恭司郎(HSST)で、第3ステージ以降の順位を守ったかたちとなった。チーム総合成績もNerebaniが優勝。2位HSST、3位MKW だった。ジュニア総合優勝は深谷天翔(FAST√MADE)の手に。
個人&チームで楽しめるタイムトライアル種目が充実
個人やチームで楽しめるタイムトライアル種目が充実しているのもシマノ鈴鹿ロードの特徴だ。表彰対象となるレースを数えるだけで個人TTが3、チームTTが6種目も設定されている。まず初日は個人タイムトライアル予選と順位決定戦、そしてチームタイムトライアル。チームTTはレディース、JCF登録・未登録の部が開催された。
ロードレーサーそのままで走るのもいいが、クリップオンのDH(TT)バーを取り付けて走る選手も。上級者なら専用のタイムトライアルバイクを用意し、ディスクホイールなどエアロホイールをセットして、スキンスーツを着込んでタイムを競う。アマチュアとはいえ多くの選手がこうしたTT機材を揃えていることにも驚く。
1周(5.8km)で争われた個人TTの最速タイムは地元三重の荻野徹(三味線Racing)が制した。タイムは7分11秒47、平均時速は48.39km/h。2位Sandu Ionut (TeamZenko)、3位楠本 宏樹(Nerebani )。
もっとも参加者の多い1日目午後のチームタイムトライルには、合計でなんと119チームが走り、コース上は途切れなく続く列車にややカオスな状況に。それでも出走を2ウェーブに分けてのレースだ。エンジョイ派とタイムを狙う速いチームが混走するも、抜き方、避け方も慣れたもの。
チームTT レディースAのトップタイムはバルバクラブタカオカ42。2位もバルバの「bフクイ 美しさは強さ」。チームTT JCF未登録Aは鷹組一番機、2位ぴっとレーシングチームA、3位レブハフトレーシングSONKだった。
ちなみに初日のチームTTの最速タイム(大会新記録)は宇都宮ブリッツェンのマークした26分34秒38・平均時速52.25km/h。次いでシマノレーシング(オープン扱い)、2位ヴィクトワール広島(レポート記事)。JPT&JCL登録チームに次ぐ3位はシマノの社員によるクラブチーム、シマノドリンキング。次いで大阪のzippy cycle clubだった。
2日目のチームTTレディースBはバルバクラブタカオカ39が優勝(1日目に続く1位だがメンバーが一部異なる)。2位にTeam ZERO UNO FRONTIER、3位みんカフェサイクリングクラブ。チームTT JCF未登録Bは鷹組二番機が制し、鷹組は2日連続優勝を飾った。2位にO☆RACING Aチーム、3位はTEAM 光。
上位入賞チームを紹介したが、皆で力を合わせて走って完走することがチームタイムトライアルの楽しさ。タイムを狙うだけが楽しみでなく、遅れる仲間を待ち、声を掛け合って走ったり、先頭交代の合図を出しながら走ることが多くのチームにとって非日常体験だったはず。個人種目はロードレースとは違った面白さを感じることができたはずだ。
フォトギャラリーには目立ったチームを収録してあります。ぜひ御覧ください。
text&photo:Makoto AYANO
photo:Masanao TOMITA
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