イネオス・グレナディアーズのスタッフとして働くダニエル・ビガム(イギリス)が8月19日、スイスでアワーレコードに挑戦。ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)の記録を上回る55.548kmで世界新記録を達成した。



55.548kmという世界新記録を打ち立てたダニエル・ビガム(イギリス)55.548kmという世界新記録を打ち立てたダニエル・ビガム(イギリス) photo:Ineos Grenadiers
ダニエル・ビガム(イギリス)が世界最長距離を叩き出したのは、5月にエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)が女子記録を樹立したスイスのグレンヘン・ヴェロドローム。そこでイングランド出身の30歳が世界で2人目となる55kmの壁を打ち破った。

「調子はとても良く、実際これまでで最も良いペースを刻むことができた。前半のペースは予定よりも早すぎたものの、感触は変わらず良いものだった。挑戦を楽しむことができたし、心躍る展開となった」とビガムは喜ぶ。「ライン取り、呼吸、そして頭の位置という3つに集中した。この3つをコントロールして、あとは全力でペダルを踏み続けるだけだった」とも。

3年在籍したイギリス籍のコンチネンタルチーム「リビル・ウェルドタイトプロサイクリングチーム」を昨年限りで退団したビガム。今年からイネオス・グレナディアーズにパフォーマンス・エンジニアとして加入し、主に選手たちのパフォーマンスの定量化、技術研究や機材などの開発に携わっている。

世界記録樹立を喜ぶダニエル・ビガム(イギリス)世界記録樹立を喜ぶダニエル・ビガム(イギリス) photo:Ineos Grenadiers
現在はイネオスでスタッフとして働くダニエル・ビガム(イギリス)現在はイネオスでスタッフとして働くダニエル・ビガム(イギリス) photo:Ineos Grenadiers
UCI(国際自転車競技連合)非公式ながら昨年10月にイギリス記録を上回る54.723kmを出していたビガム。その大幅な記録更新が可能となった理由を「イネオス・グレナディアーズによる全面的なサポートのおかげだ。彼らは機材だけでなく、生理学や栄養学、トレーニングなどより高度な水準のサポートを提供してくれた。そのトップレベルのサポートのおかげでトレーニングに集中することができた。あとはここに来て自分の走りをするだけだった」と話している。

一方、2019年に樹立した記録を459m更新されたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)は、自身のYoutubeチャンネルにコメント動画を投稿。「今日たくさんの取材を受け、ほとんどの質問が”(ビガムによる)記録更新を予想していたか?”というものだった。僕の答えは”イエス”。もちろん自分の記録が更新されて悔しいが、記録は破られるためにある」と語った。

更に「でも今後、この記録はここ数年で最高のタイムトライアリストであるフィリッポ・ガンナが更新するだろう。今回のビガムが得たマージナルゲインは、ガンナへフィードバックとして与えられる。60kmに届くクレイジーな記録が出ても僕は驚かない」とカンペナールツは動画を締めくくっている。

歴代アワーレコード記録
ダニエル・ビガム(イギリス)55.548km(2022年8月)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)55.089km(2019年4月)
アレックス・ドーセット(イギリス)54.555km(2021年11月)
ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)54.526km(2015年6月)
アレックス・ドーセット(イギリス)52.937km(2015年5月)
ローハン・デニス(オーストラリア)52.491km(2015年2月)

text:Sotaro.Arakawa

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