ツール・ド・フランスに向けた重要な前哨戦、ツール・ド・スイスが本日開幕。アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)、そして新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らが揃い踏みする8日間の戦いを予習しておきたい。



過酷な登坂コースを舞台とする、第二のツール前哨戦過酷な登坂コースを舞台とする、第二のツール前哨戦 (c)CorVos
現在開催中のクリテリウム・デュ・ドーフィネと双璧を成す、ツール・ド・フランスに向けての重要な前哨戦がツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)。ドーフィネの最終日となる6月12日(日)に開幕し、6月19日(日)までの8日間、その名の通りスイス全土を舞台にした厳しい山岳コースを駆け巡る。

その歴史は古く、第1回大会が開催されたのは今から89年前の1933年まで遡る。ドーフィネよりも14年も歴史が長く、今年で開催85回目。全8ステージで争われ、歴史だけではなく開催期間もドーフィネよりも長い。かつては2週間の日程で行なわれていたことから「第4のグランツール」とも呼ばれていたこともある。

8日間に渡りスイス全土を駆け巡るツール・ド・スイス8日間に渡りスイス全土を駆け巡るツール・ド・スイス (c)www.tourdesuisse.ch
開幕初日はチューリッヒ州のマイレン地区にある街キュスナハトを出発する丘陵ステージだ。これまでは個人タイムトライアルで幕開けることが通例だったものの、今年主催者はマスドステージにチェンジ。3級山岳を2ヶ所含む周回コースを4周回し、フィニッシュラインは最後の丘の上に用意されている。平均7.3%勾配の登り勝負でリーダージャージを獲得するのは果てして誰だろうか?

第2ステージもステージ終盤に2級、3級、そして2級とカテゴリー山岳が続く丘陵ステージで、第3ステージも獲得標高3,100mに達するアップダウンコース。1級山岳が登場するものの、距離を重ねるごとにコース難易度は低くなるため、逃げ切りと集団勝負のどちらにも可能性があるだろう。続く第4ステージも終盤に距離3km/平均8.5%の2級山岳が控え、登りをこなせないスプリンターは勝負に残れない。

ツール・ド・スイス2022第6ステージツール・ド・スイス2022第6ステージ (c)www.tourdesuisse.chツール・ド・スイス2022第7ステージツール・ド・スイス2022第7ステージ (c)www.tourdesuisse.ch


カデル・エヴァンス(オーストラリア)が世界チャンピオンに輝いたメンドリシオを走る丘陵コースの第5ステージを挟み、いよいよ第6ステージから本格的な総合争いが勃発。2つの超級山岳に挑み、その2つ目頂上にフィニッシュするクイーンステージでクライマーが躍動するだろう。超級ルクマニエ峠を目指す第7ステージでは総合成績を決定づける大きな動きが決まるはずだ。

ツール・ド・スイスを締めくくるのは2017年以来となる最終日の個人タイムトライアルだ。リヒテンシュタインとの国境を跨ぐ25.6 kmコースはほぼフラットであり、もし山岳2連戦で大きな差がついていなければTTを得意とするオールラウンダーが逆転する可能性も十分にある。



オールラウンダー/パンチャー向けの難コース  イネオスの鉄壁布陣に挑むのは?

8日間、総獲得標高21,185mの戦いに挑むのは18のUCIワールドツアーチーム勢に加え、アルペシン・フェニックスとヒューマンパワードヘルス、トタルエネルジー、そしてスイスナショナルチームを加えた合計22チーム。

4月以降久々のレース復帰となるアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)4月以降久々のレース復帰となるアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) (c)CorVos
ゼッケン1をつけるのは例年出場していたドーフィネではなく、スイスからツール・ド・フランスを目指すアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)だ。グランツール常勝チームとしての復権を目指すイネオスはゲラント・トーマス(イギリス)とダニエル・マルティネス(コロンビア)といった強力アシスト勢を揃えるほか、初のツール出場が期待されるトーマス・ピドコック(イギリス)もメンバーに加えている。

1週間のステージレースを最も得意とするのがレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)だ。未だ底知れない実力を秘める22歳は今季2度のステージレース総合優勝を挙げているが、その視線はツールではなく8月のブエルタ・ア・エスパーニャを見据えている。

レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
ロマンディを制したアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)ス)ロマンディを制したアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)ス) photo:CorVosヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック) (c)Israel – Premier Tech


前戦ツール・ド・ロマンディを制したアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)はセルヒオ・イギータ(コロンビア)を従え高地合宿を経て参戦。ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン)も1週間レースで強みを見せる選手だ。

母国最大のステージレースでの栄冠を目指してスイス勢も多数出場する。TTスペシャリストだけでなく、クラシックレーサーとしての実績を重ねるシュテファン・キュング(グルパマFDJ)はティボー・ピノ(フランス)らと共に出場。ジーノ・メーダー(バーレーン・ヴィクトリアス)を支えるのは我らが新城幸也だ。

シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:CorVos
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
日程の中にザ・スプリンター向けステージはほぼ無いと言って良いが、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)やアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、ブライアン・コカール(フランス、コフィディス)といった面々が参加する。コロナ明け以降アメリカで調整を続け、先週末にアンバウンド・グラベルに出場したペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)は完全復活へのきっかけを掴みたいところだ。

text:So Isobe

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