2022/05/27(金) - 09:37
一体誰がこの展開を予想できただろうか。ジロ最後のスプリント勝負が見込まれていた平坦コースで、逃げる4名が大集団の計算を狂わせた。ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)がチームに今大会3勝目をもたらした。
過酷な山岳ステージは一旦お休み。ジロ・デ・イタリア第18日目の舞台は、ピュアスプリンターにとってラストチャンスとなるほぼ真っ平らな152km。ピナレロのお膝元であるトレヴィーゾのフィニッシュラインを目指す道中には4級山岳が2ヶ所設定されているものの、難易度は全く高くない。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)など、ここまで激しい峠道を耐え抜いてきたスプリンターが優勝争いを繰り広げるはずだった。
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)のCOVID-19陽性が発覚し、マリアビアンカを着たままリタイアというニュースが流れたこの日。レースはマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)のアタックをきっかけに、4名の逃げがあっさりと決まることとなった。
逃げグループを形成した4名
ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)
ダヴィデ・ガッブロ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)
逃げの名手デボントとガッブロ、クラシックハンターのコルト、そしてTTスペシャリストのアッフィニ。4名ながら強力な逃げグループに対して、メイン集団ではスプリント勝負を狙うチームががっちりとコントロールを担った。タイム差は最大でも2分半を超えず、常時1分台に留められる。誰がどう見てもスプリント勝負に持ち込まれる状況だったものの、逃げる4名の中では集団を出し抜く計画が動いていた。
「あえてスローペースで走り、後ろの集団がどう反応するか見ようとした」とアッフィニが振り返る通り、下り基調のコースを43km/hほどのイージーモードで逃げた4名。85kmを残して一時的にタイム差は1分台を割り込んだものの、メイン集団は早すぎる吸収を嫌ってかタイム調整を行い、再び1分半〜2分台ほどまで広がった。
平均12.3%、最大勾配19%に達する55km地点の4級山岳を2分半リードで登り始めたコルトたち。大観衆が詰めかけた壁のような短距離登坂を400ワットほどのイーブンペースで越え、頂上通過時点でもタイム差はそのまま。ここから逃げ切りを目指し、脚を貯めた先頭4名がトップギアに入れ替えた。
完璧な協調体制を敷いた先頭グループは、残り40km地点でタイム差を2分、残り30kmで1分45秒、残り20kmでも1分20秒とリードを維持し続ける。パニックに陥ったスプリンターチームがアシスト総動員でメイン集団を引いたものの、リード減少は「10km/1分の法則」を下回った。全速力で通過した横風区間ではメイン集団をざっくりと2分割する分断も発生し、アルメイダに代わりマリアビアンカを着た総合8位フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)が遅れをとった。
焦りと混乱、集団分断による人数減。トレヴィーゾ市街地の周回コースに入り、一度フィニッシュラインを通過したタイミング(残り13km)で先頭4名のリードは未だ1分11秒。スプリンターチームのアシスト勢が捨て身の牽引を行ったものの、コーナーが連続する市街地コースは先頭グループに味方する。もはやリードアウト要因もほとんど使い切った状態のメイン集団が最後まで追い続けたが、ラスト55km区間を平均スピード51km/hで逃げた4名を捕まえることはできなかった。
たった4名で大集団の思惑を狂わせた逃げグループが残り1km地点を通過。先頭コルト、2番手アッフィニ、3番手デボント。残り200mを切ってからアッフィニが仕掛けてコルトを抜き、その背後からタイミングを読んだデボントがスプリントを開始する。伸び悩むコルトとガッブロを尻目に、アッフィニとデボントが並びながら踏み込み、ハンドルを投げ込む。僅差のスプリント勝負で元ベルギー王者の加速力が上回った。
したたかな戦略でスプリンターチームを出し抜き、数センチの差でアッフィニを下したデボントが自身初のグランツールステージ優勝。「うまく協調してメイン集団を振り切ることができた。初めてのグランツールステージ優勝。信じられないよ。こんな勝利を射止めるのが夢だった」と語る。決して勝利数は多くないものの、常勝アルペシン・フェニックスのアシストとして、マチュー・ファンデルプールのアシストとして重要任務を担う30歳がキャリア最大の勝利を収めることに。連日の逃げが実を結ぶとともに、アルペシン・フェニックスにとって今大会3勝目(ファンデルプール、オルダーニ、デボント)を献上することとなった。
逃げグループを上回るスピードで追い込んだものの、逃げ吸収を果たせずにステージ優勝を逃したメイン集団はアルベルト・ダイネーゼ(チームDSM)を先頭に14秒遅れでフィニッシュ。激しいハイペースに耐えたのはわずか40名程度で、総合2位ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)は最終盤にメカトラブルで遅れるも救済措置によってタイム差無し扱いに。その一方でトレック・セガフレード擁する第2集団は2分57秒遅れたため、ロペスはマリアビアンカこそ守ったものの総合8位から9位まで落としている。
リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)はメイン集団内に残ってマリアローザをキープ。「比較的穏やかな1日だったけれど、常にランダとヒンドレーの位置をチェックしていたよ。最後までマリアローザを守りたいし、自分に自信を持っている」と、残る山岳2ステージ、そして最終個人タイムトライアルを見据えている。
過酷な山岳ステージは一旦お休み。ジロ・デ・イタリア第18日目の舞台は、ピュアスプリンターにとってラストチャンスとなるほぼ真っ平らな152km。ピナレロのお膝元であるトレヴィーゾのフィニッシュラインを目指す道中には4級山岳が2ヶ所設定されているものの、難易度は全く高くない。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)など、ここまで激しい峠道を耐え抜いてきたスプリンターが優勝争いを繰り広げるはずだった。
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)のCOVID-19陽性が発覚し、マリアビアンカを着たままリタイアというニュースが流れたこの日。レースはマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)のアタックをきっかけに、4名の逃げがあっさりと決まることとなった。
逃げグループを形成した4名
ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)
ダヴィデ・ガッブロ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)
逃げの名手デボントとガッブロ、クラシックハンターのコルト、そしてTTスペシャリストのアッフィニ。4名ながら強力な逃げグループに対して、メイン集団ではスプリント勝負を狙うチームががっちりとコントロールを担った。タイム差は最大でも2分半を超えず、常時1分台に留められる。誰がどう見てもスプリント勝負に持ち込まれる状況だったものの、逃げる4名の中では集団を出し抜く計画が動いていた。
「あえてスローペースで走り、後ろの集団がどう反応するか見ようとした」とアッフィニが振り返る通り、下り基調のコースを43km/hほどのイージーモードで逃げた4名。85kmを残して一時的にタイム差は1分台を割り込んだものの、メイン集団は早すぎる吸収を嫌ってかタイム調整を行い、再び1分半〜2分台ほどまで広がった。
平均12.3%、最大勾配19%に達する55km地点の4級山岳を2分半リードで登り始めたコルトたち。大観衆が詰めかけた壁のような短距離登坂を400ワットほどのイーブンペースで越え、頂上通過時点でもタイム差はそのまま。ここから逃げ切りを目指し、脚を貯めた先頭4名がトップギアに入れ替えた。
完璧な協調体制を敷いた先頭グループは、残り40km地点でタイム差を2分、残り30kmで1分45秒、残り20kmでも1分20秒とリードを維持し続ける。パニックに陥ったスプリンターチームがアシスト総動員でメイン集団を引いたものの、リード減少は「10km/1分の法則」を下回った。全速力で通過した横風区間ではメイン集団をざっくりと2分割する分断も発生し、アルメイダに代わりマリアビアンカを着た総合8位フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)が遅れをとった。
焦りと混乱、集団分断による人数減。トレヴィーゾ市街地の周回コースに入り、一度フィニッシュラインを通過したタイミング(残り13km)で先頭4名のリードは未だ1分11秒。スプリンターチームのアシスト勢が捨て身の牽引を行ったものの、コーナーが連続する市街地コースは先頭グループに味方する。もはやリードアウト要因もほとんど使い切った状態のメイン集団が最後まで追い続けたが、ラスト55km区間を平均スピード51km/hで逃げた4名を捕まえることはできなかった。
たった4名で大集団の思惑を狂わせた逃げグループが残り1km地点を通過。先頭コルト、2番手アッフィニ、3番手デボント。残り200mを切ってからアッフィニが仕掛けてコルトを抜き、その背後からタイミングを読んだデボントがスプリントを開始する。伸び悩むコルトとガッブロを尻目に、アッフィニとデボントが並びながら踏み込み、ハンドルを投げ込む。僅差のスプリント勝負で元ベルギー王者の加速力が上回った。
したたかな戦略でスプリンターチームを出し抜き、数センチの差でアッフィニを下したデボントが自身初のグランツールステージ優勝。「うまく協調してメイン集団を振り切ることができた。初めてのグランツールステージ優勝。信じられないよ。こんな勝利を射止めるのが夢だった」と語る。決して勝利数は多くないものの、常勝アルペシン・フェニックスのアシストとして、マチュー・ファンデルプールのアシストとして重要任務を担う30歳がキャリア最大の勝利を収めることに。連日の逃げが実を結ぶとともに、アルペシン・フェニックスにとって今大会3勝目(ファンデルプール、オルダーニ、デボント)を献上することとなった。
逃げグループを上回るスピードで追い込んだものの、逃げ吸収を果たせずにステージ優勝を逃したメイン集団はアルベルト・ダイネーゼ(チームDSM)を先頭に14秒遅れでフィニッシュ。激しいハイペースに耐えたのはわずか40名程度で、総合2位ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)は最終盤にメカトラブルで遅れるも救済措置によってタイム差無し扱いに。その一方でトレック・セガフレード擁する第2集団は2分57秒遅れたため、ロペスはマリアビアンカこそ守ったものの総合8位から9位まで落としている。
リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)はメイン集団内に残ってマリアローザをキープ。「比較的穏やかな1日だったけれど、常にランダとヒンドレーの位置をチェックしていたよ。最後までマリアローザを守りたいし、自分に自信を持っている」と、残る山岳2ステージ、そして最終個人タイムトライアルを見据えている。
ジロ・デ・イタリア2022第18ステージ結果
1位 | ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 3:21:21 |
2位 | エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
4位 | ダヴィデ・ガッブロ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ) | |
5位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM) | +0:14 |
6位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ) | |
7位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、コフィディス) | |
8位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) | |
9位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 76:41:15 |
2位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:03 |
3位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:05 |
4位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン) | +5:48 |
5位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +6:19 |
6位 | ヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +7:12 |
7位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +7:13 |
8位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +12:30 |
9位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | +15:10 |
10位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) | +17:03 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 254pts |
2位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) | 132pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 124pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 218pts |
2位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 103pts |
3位 | ディエゴ・ローザ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 94pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 76:56:25 |
2位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +5:05 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +6:46 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 230:14:47 |
2位 | ボーラ・ハンスグローエ | +0:14 |
3位 | アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ | +52:38 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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