2022/05/21(土) - 08:37
山岳を前にロマン・バルデ(フランス、チームDSM)がリタイアしたジロ13日目。逃げと集団のきわどい追走劇の末、バウハウスやカヴェンディッシュを下したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が今大会3勝目を挙げた。
2日前の第11ステージに続き、クーネオにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第13ステージのフィニッシュは再びスプリンター向け。ミラノ〜サンレモのフィニッシュ地点から逆走スタートし、ポッジオとチプレッサを回避して内陸を目指すコースレイアウトだ。
54km地点には登坂距離10kmに及ぶ3級山岳コッレ・ディ・ナーヴァ(平均6.7%)が控えているが、登りが苦手な重量級選手でもこのリグリアン・アルプスの峠道をクリアすればその後は難所はない。この日を逃すと平坦ステージはあと1回のみ(トレヴィーゾフィニッシュの第18ステージ)だけ、しかもその前後には厳しい山岳が続くため、この日でジロを去るスプリンターも多いと目されている。
翌日からの山岳決戦を前にスプリンターチームがレースを支配した。グルパマFDJやクイックステップ・アルファヴィニル、UAEチームエミレーツ、さらにはイスラエル・プレミアテックといった各チームが、マリアローザを擁するトレック・セガフレードの出る幕がないほど集団先頭をキープ。スタートから10km地点までに形成された5名逃げを射程圏内に置き続けた。
逃げグループを形成した5名
ニコラ・プロドム(フランス、AG2Rシトロエン)
フィリッポ・タリアーニ(イタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)
ミルコ・マエストリ(イタリア、エオーロ・コメタ)
パスカル・エーンコーン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
快調にコース序盤を走っていたメイン集団では波乱が起きた。前夜から体調不良を抱え食事も睡眠も取れなかったという総合4位ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)がコース脇にバイクを止め、チームカーに乗り込みそのままリタイア。ここまで山岳勝負で精鋭グループに残り、前日のスプリント勝負でもリードアウト役を務めるなど、これまでにない好調ぶりを発揮していたバルデだが、ここでマリアローザ争いではなくレースそのものから去ることとなってしまった。
中間スプリントランキングで首位に立つ逃げグループのタリアーニはコッレ・ディ・ナーヴァ手前の中間スプリントを先頭通過したものの、ここまで逃げ続けた疲労が溜まってか登坂が始まると脱落。メイン集団はスプリンターをケアしつつ10km登坂をこなして下り/平坦コースに入り、7分近くまで広がったタイム差を縮めにかかった。
残り30kmでタイム差は3分。一般的に言われる「10km(で)1分(を縮められる)」ペースで追撃を試みたメイン集団だったが、ここから逃げる4名がその計算を狂わせるハイペースで粘りを見せる。「登りでリードを稼ぎ、できるだけリードを維持しようと話していたんだ。頂上を超えてからは長い下りで、背中側からは追い風も吹いていた」と振り返るエーンコーンたちがハイスピードを維持していく。
逃げを捉えるべく、アクセル全開で踏むメイン集団後方では横風区間で分断が発生する。リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)やサイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が遅れ、結果的にこのグループはグルペットとなってフィニッシュにたどり着いている。
先頭4名とメイン集団のタイム差は残り10kmで1分5秒、残り7kmで50秒、残り4kmで30秒。逃げ切れるか否かの微妙なタイム差で飛ばす4名だったが、残り2km地点から丘の上を目指す緩斜面勾配に入ったことでリードは急降下。石畳が敷かれたクーネオの市街地に入ると牽制を始めてしまい、一気に集団の追い上げを許してしまった。
残り700mからマエストリが飛び出すも、すぐグルパマFDJを先頭に加速を続けるメイン集団によって残り300mで引き戻される。厳しい追走劇によってどのチームも潤沢なアシストを残せていない中、隊列前方を支配し続けたグルパマFDJのヤコポ・グアルニエーリ(イタリア)が牽引。ポジションを失っていたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)が自力で挽回を図る前で、タイミングを読んだマリアチクラミーノが踏み込んだ。
最大1330ワットで加速し、最高速度67.8km/hに乗せたデマールがフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を押さえつけながらスプリント。最後はフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が猛追したものの、すでに大きなリードを築いていたデマールにはわずかに届かない。デマールが今大会最強スプリンターであることを証明する区間3勝目を挙げるとともに、ジロ区間通算優勝数を8に伸ばしている。
「信じられない一日になったよ。逃げグループはすごい走りだった。チームメイトたちが仕事をこなして一人、また一人と脱落していくのを見てスプリントに持ち込めるか不安になっていた。残り10km地点からはスプリントになると思い始めたものの、その時点で僕の脚は死んでいたし、どうスプリントすればいいんだと思っていたんだ」とデマールは振り返る。「長く緩斜面のスリリングなホームストレートだった。タイミングを待ち、正しい瞬間に仕掛けることができた」。そう振り返るフレンチスプリンターは、ポイントランキングで2位につけるカヴェンディッシュにほぼ2倍のポイントで首位独走中だ。
この日、総合上位勢はバルデを除いて全員が遅れることなくフィニッシュ。翌日からは厳しい丘陵コース、そして山岳ステージが続くため、パンチャー、そして総合勢も積極的に動いてくるはずだ。
2日前の第11ステージに続き、クーネオにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第13ステージのフィニッシュは再びスプリンター向け。ミラノ〜サンレモのフィニッシュ地点から逆走スタートし、ポッジオとチプレッサを回避して内陸を目指すコースレイアウトだ。
54km地点には登坂距離10kmに及ぶ3級山岳コッレ・ディ・ナーヴァ(平均6.7%)が控えているが、登りが苦手な重量級選手でもこのリグリアン・アルプスの峠道をクリアすればその後は難所はない。この日を逃すと平坦ステージはあと1回のみ(トレヴィーゾフィニッシュの第18ステージ)だけ、しかもその前後には厳しい山岳が続くため、この日でジロを去るスプリンターも多いと目されている。
翌日からの山岳決戦を前にスプリンターチームがレースを支配した。グルパマFDJやクイックステップ・アルファヴィニル、UAEチームエミレーツ、さらにはイスラエル・プレミアテックといった各チームが、マリアローザを擁するトレック・セガフレードの出る幕がないほど集団先頭をキープ。スタートから10km地点までに形成された5名逃げを射程圏内に置き続けた。
逃げグループを形成した5名
ニコラ・プロドム(フランス、AG2Rシトロエン)
フィリッポ・タリアーニ(イタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)
ミルコ・マエストリ(イタリア、エオーロ・コメタ)
パスカル・エーンコーン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
快調にコース序盤を走っていたメイン集団では波乱が起きた。前夜から体調不良を抱え食事も睡眠も取れなかったという総合4位ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)がコース脇にバイクを止め、チームカーに乗り込みそのままリタイア。ここまで山岳勝負で精鋭グループに残り、前日のスプリント勝負でもリードアウト役を務めるなど、これまでにない好調ぶりを発揮していたバルデだが、ここでマリアローザ争いではなくレースそのものから去ることとなってしまった。
中間スプリントランキングで首位に立つ逃げグループのタリアーニはコッレ・ディ・ナーヴァ手前の中間スプリントを先頭通過したものの、ここまで逃げ続けた疲労が溜まってか登坂が始まると脱落。メイン集団はスプリンターをケアしつつ10km登坂をこなして下り/平坦コースに入り、7分近くまで広がったタイム差を縮めにかかった。
残り30kmでタイム差は3分。一般的に言われる「10km(で)1分(を縮められる)」ペースで追撃を試みたメイン集団だったが、ここから逃げる4名がその計算を狂わせるハイペースで粘りを見せる。「登りでリードを稼ぎ、できるだけリードを維持しようと話していたんだ。頂上を超えてからは長い下りで、背中側からは追い風も吹いていた」と振り返るエーンコーンたちがハイスピードを維持していく。
逃げを捉えるべく、アクセル全開で踏むメイン集団後方では横風区間で分断が発生する。リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)やサイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が遅れ、結果的にこのグループはグルペットとなってフィニッシュにたどり着いている。
先頭4名とメイン集団のタイム差は残り10kmで1分5秒、残り7kmで50秒、残り4kmで30秒。逃げ切れるか否かの微妙なタイム差で飛ばす4名だったが、残り2km地点から丘の上を目指す緩斜面勾配に入ったことでリードは急降下。石畳が敷かれたクーネオの市街地に入ると牽制を始めてしまい、一気に集団の追い上げを許してしまった。
残り700mからマエストリが飛び出すも、すぐグルパマFDJを先頭に加速を続けるメイン集団によって残り300mで引き戻される。厳しい追走劇によってどのチームも潤沢なアシストを残せていない中、隊列前方を支配し続けたグルパマFDJのヤコポ・グアルニエーリ(イタリア)が牽引。ポジションを失っていたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)が自力で挽回を図る前で、タイミングを読んだマリアチクラミーノが踏み込んだ。
最大1330ワットで加速し、最高速度67.8km/hに乗せたデマールがフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を押さえつけながらスプリント。最後はフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が猛追したものの、すでに大きなリードを築いていたデマールにはわずかに届かない。デマールが今大会最強スプリンターであることを証明する区間3勝目を挙げるとともに、ジロ区間通算優勝数を8に伸ばしている。
「信じられない一日になったよ。逃げグループはすごい走りだった。チームメイトたちが仕事をこなして一人、また一人と脱落していくのを見てスプリントに持ち込めるか不安になっていた。残り10km地点からはスプリントになると思い始めたものの、その時点で僕の脚は死んでいたし、どうスプリントすればいいんだと思っていたんだ」とデマールは振り返る。「長く緩斜面のスリリングなホームストレートだった。タイミングを待ち、正しい瞬間に仕掛けることができた」。そう振り返るフレンチスプリンターは、ポイントランキングで2位につけるカヴェンディッシュにほぼ2倍のポイントで首位独走中だ。
この日、総合上位勢はバルデを除いて全員が遅れることなくフィニッシュ。翌日からは厳しい丘陵コース、そして山岳ステージが続くため、パンチャー、そして総合勢も積極的に動いてくるはずだ。
ジロ・デ・イタリア2022第13ステージ結果
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 3:18:16 |
2位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
3位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) | |
4位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM) | |
6位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) | |
7位 | ドリス・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | |
8位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック) | |
9位 | アンドレア・ヴェンドラメ(イタリア、AG2Rシトロエン) | |
10位 | トビアス・バイヤー(オーストリア、アルペシン・フェニックス) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 54:37:23 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | +0:12 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:20 |
5位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +0:28 |
6位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:29 |
7位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +0:54 |
8位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:09 |
9位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:22 |
10位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +1:23 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 238pts |
2位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) | 121pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 117pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ディエゴ・ローザ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 83pts |
2位 | クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 69pts |
3位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 43pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 54:37:23 |
2位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:12 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +1:27 |
チーム総合成績
1位 | アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ | 163:44:11 |
2位 | ボーラ・ハンスグローエ | +2:52 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +7:09 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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