2022/05/16(月) - 09:18
難関山岳ブロックハウスで繰り広げられた総合登坂バトル。サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が早々に脱落する中ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)がゴールスプリントを制し、フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)がマリアローザを辛くも死守した。
大会2回目の休息日前日、ジロ・デ・イタリアの第9ステージには1級山岳ブロックハウス(距離13.6km/平均8.4%)の山頂フィニッシュが登場した。ブロックハウスはイタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈に位置する標高1,665mの山で、10%前後の急勾配が延々と続く。
しかもブロックハウスだけではなく、この日はスタートから3級、2級、2級とアペニン山脈の登坂が続き、レース後半は1級山岳パッソ・ランチャーノ(距離10.3km/平均7.6%)も登場。獲得標高差5,080m(!)という第4ステージの1級山岳エトナ山よりも難易度が格段に高い今大会2回目の山頂フィニッシュで、実質的に今大会初となる総合勢による登坂勝負が繰り広げられた。
オフィシャルスタートの旗が振られ、直後の3級山岳「ヴァリコ・デル・マチェローネ」で飛び出したのはディエゴ・ローザ(イタリア、エオーロ・コメタ)を含む5名。ローザはすぐに単独となり、やがて追いかけてきた追走グループが断続的に合流。メイン集団で総合9位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が落車し、傷つきながら集団復帰する前方で、結果的にこの日は9名が逃げを決めた。
難関山岳ステージではあるものの、レース後半までに大きなリードを得れば(メイン集団は総合争いに集中するため)逃げ切りの可能性もある。そのため先頭グループでも登坂のたびにペースアップが図られ強者だけが前に残る展開となった。
第6ステージに続く2度目の逃げとなったローザは序盤から順調に山岳ポイントを稼ぎ、後半の1級山岳パッソ・ランチャーノでは一時的にナンス・ペテルス(フランス、AG2Rシトロエン)やナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)の先行を許したもののマイペース走法で復活。ここで山頂を先頭通過したことで山岳賞ランキングでクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を抜き、翌日のマリアアッズーラ着用を射止めた。
ローザとテスファツィオンが後続勢から50秒差、メイン集団から3分差でダウンヒルに入ったが、テスファツィオンは下りコーナーのブレーキングで止まりきれず、ガードレールと擁壁の隙間から向こう側へと前転ダイブしてしまう。草地に軟着陸したテスファツィオンに幸い怪我はなくレース復帰できたものの、単独先頭となったローザには続いて遅れていたペテルスとジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、アスタナ・カザフスタン)が再合流。アタックの末に単独となったドンブロウスキーは逃げを試みたがイネオス・グレナディアーズが牽引するメイン集団によってブロックハウスの麓で飲み込まれた。
リチャル・カラパス(エクアドル)の必勝体制を敷くイネオス。ヨナタン・カストロビエホ(スペイン)やベン・トゥレット(イギリス)がペースメイクするメイン集団からは、まだ登坂序盤でペースが上がりきっていないにも関わらず総合4位サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジャイコ)が脱落。4日目のエトナから右膝を痛め、暑さ対応もできなかったというイェーツを振り落としたメイン集団は、残り10km地点で30名以下まで絞り込まれた。
ペースメイクはイネオスのパヴェル・シヴァコフ(フランス)からリッチー・ポート(オーストラリア)へ。一列棒状で進む集団の後方では苦しい表情で食らいついていたフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)が他選手と接触してストップ。リズムを狂わされたロペスは遅れを喫したものの、マリアローザを諦めることなく必死に追撃。前からこぼれたビルバオたちを捉えながら登坂を続けた。
無線で指示を仰ぎながら走るポートによって10名まで絞られると、残り5km地点を通過してすぐにカラパスが仕掛けた。すぐ対応できたのはミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)とロマン・バルデ(フランス、チームDSM)の2人だけだったものの、追走の末にジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が合流。ヴィンツェツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)といった今季限りのベテラン勢は最終局面で遅れを喫した。
残り1.9kmでポッツォヴィーヴォが仕掛け、カウンターでバルデが仕掛けるも抜け出すには至らない。一時的な分裂と再合流を経て、6名が一時ペースを落としてスプリント体制へ。短い下りとコーナーを経たゴール前の緩斜面スプリントで「フィニッシュ前が入り組んでいることを知っていたので先頭で入る必要があった」と言うヒンドレーが先行。フィニッシュラインに向けて追い込むカラパスとバルデを辛くも抑え切ったヒンドレーが左手を振り上げた。
2020年のジロ最終ステージで逆転負けを喫したヒンドレーが、その時に続く自身2度目のジロ区間優勝を挙げた。バルデとカラパス、ランダ、アルメイダがタイム差なしでフィニッシュし、ポッツォヴィーヴォが3秒遅れ。マリアローザのロペスは全力で追い込みながら1分46秒遅れの15位でフィニッシュし、アルメイダに対して12秒差でマリアローザを死守してみせた。
またこの日、ブロックハウス序盤で遅れたジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)は9分半遅れ、イェーツはそこからさらに遅れて11分15秒差。決定的な差こそつかずとも、強者が絞り込まれた第1週目を終え、ジロは休息日を挟んで2週目へと向かうこととなった。
大会2回目の休息日前日、ジロ・デ・イタリアの第9ステージには1級山岳ブロックハウス(距離13.6km/平均8.4%)の山頂フィニッシュが登場した。ブロックハウスはイタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈に位置する標高1,665mの山で、10%前後の急勾配が延々と続く。
しかもブロックハウスだけではなく、この日はスタートから3級、2級、2級とアペニン山脈の登坂が続き、レース後半は1級山岳パッソ・ランチャーノ(距離10.3km/平均7.6%)も登場。獲得標高差5,080m(!)という第4ステージの1級山岳エトナ山よりも難易度が格段に高い今大会2回目の山頂フィニッシュで、実質的に今大会初となる総合勢による登坂勝負が繰り広げられた。
オフィシャルスタートの旗が振られ、直後の3級山岳「ヴァリコ・デル・マチェローネ」で飛び出したのはディエゴ・ローザ(イタリア、エオーロ・コメタ)を含む5名。ローザはすぐに単独となり、やがて追いかけてきた追走グループが断続的に合流。メイン集団で総合9位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が落車し、傷つきながら集団復帰する前方で、結果的にこの日は9名が逃げを決めた。
難関山岳ステージではあるものの、レース後半までに大きなリードを得れば(メイン集団は総合争いに集中するため)逃げ切りの可能性もある。そのため先頭グループでも登坂のたびにペースアップが図られ強者だけが前に残る展開となった。
第6ステージに続く2度目の逃げとなったローザは序盤から順調に山岳ポイントを稼ぎ、後半の1級山岳パッソ・ランチャーノでは一時的にナンス・ペテルス(フランス、AG2Rシトロエン)やナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)の先行を許したもののマイペース走法で復活。ここで山頂を先頭通過したことで山岳賞ランキングでクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を抜き、翌日のマリアアッズーラ着用を射止めた。
ローザとテスファツィオンが後続勢から50秒差、メイン集団から3分差でダウンヒルに入ったが、テスファツィオンは下りコーナーのブレーキングで止まりきれず、ガードレールと擁壁の隙間から向こう側へと前転ダイブしてしまう。草地に軟着陸したテスファツィオンに幸い怪我はなくレース復帰できたものの、単独先頭となったローザには続いて遅れていたペテルスとジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、アスタナ・カザフスタン)が再合流。アタックの末に単独となったドンブロウスキーは逃げを試みたがイネオス・グレナディアーズが牽引するメイン集団によってブロックハウスの麓で飲み込まれた。
リチャル・カラパス(エクアドル)の必勝体制を敷くイネオス。ヨナタン・カストロビエホ(スペイン)やベン・トゥレット(イギリス)がペースメイクするメイン集団からは、まだ登坂序盤でペースが上がりきっていないにも関わらず総合4位サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジャイコ)が脱落。4日目のエトナから右膝を痛め、暑さ対応もできなかったというイェーツを振り落としたメイン集団は、残り10km地点で30名以下まで絞り込まれた。
ペースメイクはイネオスのパヴェル・シヴァコフ(フランス)からリッチー・ポート(オーストラリア)へ。一列棒状で進む集団の後方では苦しい表情で食らいついていたフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)が他選手と接触してストップ。リズムを狂わされたロペスは遅れを喫したものの、マリアローザを諦めることなく必死に追撃。前からこぼれたビルバオたちを捉えながら登坂を続けた。
無線で指示を仰ぎながら走るポートによって10名まで絞られると、残り5km地点を通過してすぐにカラパスが仕掛けた。すぐ対応できたのはミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)とロマン・バルデ(フランス、チームDSM)の2人だけだったものの、追走の末にジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が合流。ヴィンツェツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)といった今季限りのベテラン勢は最終局面で遅れを喫した。
残り1.9kmでポッツォヴィーヴォが仕掛け、カウンターでバルデが仕掛けるも抜け出すには至らない。一時的な分裂と再合流を経て、6名が一時ペースを落としてスプリント体制へ。短い下りとコーナーを経たゴール前の緩斜面スプリントで「フィニッシュ前が入り組んでいることを知っていたので先頭で入る必要があった」と言うヒンドレーが先行。フィニッシュラインに向けて追い込むカラパスとバルデを辛くも抑え切ったヒンドレーが左手を振り上げた。
2020年のジロ最終ステージで逆転負けを喫したヒンドレーが、その時に続く自身2度目のジロ区間優勝を挙げた。バルデとカラパス、ランダ、アルメイダがタイム差なしでフィニッシュし、ポッツォヴィーヴォが3秒遅れ。マリアローザのロペスは全力で追い込みながら1分46秒遅れの15位でフィニッシュし、アルメイダに対して12秒差でマリアローザを死守してみせた。
またこの日、ブロックハウス序盤で遅れたジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)は9分半遅れ、イェーツはそこからさらに遅れて11分15秒差。決定的な差こそつかずとも、強者が絞り込まれた第1週目を終え、ジロは休息日を挟んで2週目へと向かうこととなった。
ジロ・デ・イタリア2022第9ステージ結果
1位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 5:34:44 |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
4位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
5位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +0:03 |
7位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:16 |
8位 | ヴィンツェツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) | +0:34 |
9位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | +0:46 |
10位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +0:58 |
11位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +1:08 |
12位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
15位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | +1:46 |
19位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +4:34 |
28位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | +9:26 |
34位 | サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジャイコ) | +11:15 |
38位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | +12:49 |
39位 | トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | +14:12 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 37:52:01 |
2位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:14 |
3位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | +0:15 |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | +0:20 |
5位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:28 |
6位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +0:29 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:54 |
8位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +1:09 |
9位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:22 |
10位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:23 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 147pts |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 120pts |
3位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) | 78pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ディエゴ・ローザ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 83pts |
2位 | クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 69pts |
3位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 43pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 37:52:01 |
2位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:12 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +1:27 |
チーム総合成績
1位 | ボーラ・ハンスグローエ | 13:39:08 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +3:21 |
3位 | アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ | +5:24 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos