2022/05/12(木) - 09:11
ユアンとカヴェンディッシュ不在の集団スプリントで、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が先着。今季まだ勝利がなかったフレンチスプリンターが、相性の良いメッシーナで復活の勝利を挙げた。
今大会最初の山岳決戦を終え、シチリア2日目はパレルモに次いで同島2番目に大きな都市カターニアを出発し、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)の故郷メッシーナを目指す174km。ステージ前半に登場する標高1,125mの2級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長19.6km・平均4%)を超えて以降はずっと平坦路が続くスプリンターステージだ。
スプリンターステージと言えど、ほぼ同様のコースレイアウトが登場した2020年第4ステージではボーラ・ハンスグローエがペテル・サガン(スロバキア)のために山岳を飛ばし、複数名のピュアスプリンターを振り落とした過去がある。山岳通過後は長く平坦が続くため復帰のチャンスは残されているものの、ゴール勝負を目指す選手にとってはできる遅れを最小限に留めることが求められる。
前日に涙のマリアローザ獲得を決めたフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)や、ピンクから紫に衣替えしたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)たちを先頭にカターニアをスタート。スタートフラッグが振られると共にUCIプロチーム(セカンドディヴィジョン)勢を中心とした5名の逃げが決まった。
逃げグループを形成した5名
ヤーコ・ハンニネン(フィンランド、AG2Rシトロエン)
アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)
マッティア・バイス(イタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
フィリッポ・タリアーニ(イタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
ミルコ・マエストリ(イタリア、エオーロ・コメタ)
バイスとタリアーニは開幕初日と第3ステージに続く、ここまでのマスドステージ4日間中なんと3回目のエスケープ。総合成績で最も上位につけるハンニネンですら15分半近く遅れていたものの、山岳に向けて緊張感を高めるメイン集団が一定ペースを刻んだため、タイム差最大でも4分台止まりとなった。
2級山岳ポルテッラ・マンドラッツィの麓にある中間スプリントポイントはハンニネンとスプリントしたタリアーニが先着。その4分後に通過したメイン集団ではマリアチクラミーノ争いでファンデルプールに次ぐ2位ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が全体の6位通過で3ポイントを加算している。
20km弱にわたる緩斜面勾配では、予想通りスプリンター勢を振り落とすべく静かな戦いが始まった。ファンデルプールの指示を聞いたアルペシン・フェニックスのアシスト勢がテンポを上げ、じわじわとライバル勢にダメージを与えていく。すると落車の影響を感じさせるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が落ち、さらに第3ステージ覇者マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)も脱落。カヴェンディッシュはアシスト5名を得て追いかけたものの、その差を縮めることは最後まで叶わなかった。
ポルテッラ・マンドラッツィ山頂付近ではアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)も遅れたものの、頂上通過後の下り区間で復帰に成功する。ダウンヒルを経て平坦区間に出たところで逃げメンバーを吸収して以降も、エースが残ったスプリンターチームが2分後方のカヴェンディッシュ、そして5分後方のユアンを合流させまじとハイペースを刻み続けた。
グルパマFDJやアルペシン、イスラエル・プレミアテックといった複数チームが一列棒状でペースメイクするメイン集団からは、当然アタックを狙う選手は現れず。カヴやユアンを振り切って(2人は最終的に12分近く遅れのグルペットフィニッシュ)、デマールやフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を含むメイン集団がメッシーナへと続く平坦区間を駆け抜けた。
海岸線沿いの最終区間は鋭角コーナーが続くため、フィニッシュまで距離を残して激しい位置取り争いが勃発した。コフィディスやボーラ・ハンスグローエが、チームDSMが熾烈に争いながら残り1kmアーチを通過し、残り800m地点にある鋭角左コーナーへ。デマールを引き連れたラモン・シンケルダム(オランダ)が残り200mまでを引っ張る後方では、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル)に塞がれる形でギルマイが行き場を失ってしまう。そんな状況を尻目に、冷静にタイミングを待ち続けたデマールが一気に加速した。
トップスピード67.9km/hでもがき倒したデマールには、ガビリアやニッツォーロも、踏み直したギルマイも届かない。今季まだ1勝も挙げられていなかったフランスチームのエーススプリンターが両手をいっぱいに広げてフィニッシュ。並み居るライバルを打ち負かし、昨年10月のパリ〜トゥール以来となる嬉しい勝利を挙げた。
「フィニッシュラインを越えた瞬間にこれが今年初勝利だと気づいたんだ。安堵したよ。シーズン最初の勝利をここジロで挙げることができて嬉しい」と言うデマールにとって、グランツールでのステージ優勝は10月開催の2020年ジロ以来。ちなみにほぼ同様のコースレイアウトで争われた2020年第4ステージでもデマールは勝利しており、相性の良いコースで勝てない期間を脱したことになる。ファンデルプールはスプリントに加わらなかったため、デマールはマリアチクラミーノも手中に収めている。
また、このメッシーナで生まれ育ったヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)はメイン集団内でフィニッシュした後、今季限りで引退することを発表した。RAIによれば、ニバリはこのジロのスタート前にこの決断に至ったという。ニバリのコメントを含めてこの後別記事で紹介します。
今大会最初の山岳決戦を終え、シチリア2日目はパレルモに次いで同島2番目に大きな都市カターニアを出発し、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)の故郷メッシーナを目指す174km。ステージ前半に登場する標高1,125mの2級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長19.6km・平均4%)を超えて以降はずっと平坦路が続くスプリンターステージだ。
スプリンターステージと言えど、ほぼ同様のコースレイアウトが登場した2020年第4ステージではボーラ・ハンスグローエがペテル・サガン(スロバキア)のために山岳を飛ばし、複数名のピュアスプリンターを振り落とした過去がある。山岳通過後は長く平坦が続くため復帰のチャンスは残されているものの、ゴール勝負を目指す選手にとってはできる遅れを最小限に留めることが求められる。
前日に涙のマリアローザ獲得を決めたフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)や、ピンクから紫に衣替えしたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)たちを先頭にカターニアをスタート。スタートフラッグが振られると共にUCIプロチーム(セカンドディヴィジョン)勢を中心とした5名の逃げが決まった。
逃げグループを形成した5名
ヤーコ・ハンニネン(フィンランド、AG2Rシトロエン)
アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)
マッティア・バイス(イタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
フィリッポ・タリアーニ(イタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
ミルコ・マエストリ(イタリア、エオーロ・コメタ)
バイスとタリアーニは開幕初日と第3ステージに続く、ここまでのマスドステージ4日間中なんと3回目のエスケープ。総合成績で最も上位につけるハンニネンですら15分半近く遅れていたものの、山岳に向けて緊張感を高めるメイン集団が一定ペースを刻んだため、タイム差最大でも4分台止まりとなった。
2級山岳ポルテッラ・マンドラッツィの麓にある中間スプリントポイントはハンニネンとスプリントしたタリアーニが先着。その4分後に通過したメイン集団ではマリアチクラミーノ争いでファンデルプールに次ぐ2位ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が全体の6位通過で3ポイントを加算している。
20km弱にわたる緩斜面勾配では、予想通りスプリンター勢を振り落とすべく静かな戦いが始まった。ファンデルプールの指示を聞いたアルペシン・フェニックスのアシスト勢がテンポを上げ、じわじわとライバル勢にダメージを与えていく。すると落車の影響を感じさせるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が落ち、さらに第3ステージ覇者マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)も脱落。カヴェンディッシュはアシスト5名を得て追いかけたものの、その差を縮めることは最後まで叶わなかった。
ポルテッラ・マンドラッツィ山頂付近ではアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)も遅れたものの、頂上通過後の下り区間で復帰に成功する。ダウンヒルを経て平坦区間に出たところで逃げメンバーを吸収して以降も、エースが残ったスプリンターチームが2分後方のカヴェンディッシュ、そして5分後方のユアンを合流させまじとハイペースを刻み続けた。
グルパマFDJやアルペシン、イスラエル・プレミアテックといった複数チームが一列棒状でペースメイクするメイン集団からは、当然アタックを狙う選手は現れず。カヴやユアンを振り切って(2人は最終的に12分近く遅れのグルペットフィニッシュ)、デマールやフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を含むメイン集団がメッシーナへと続く平坦区間を駆け抜けた。
海岸線沿いの最終区間は鋭角コーナーが続くため、フィニッシュまで距離を残して激しい位置取り争いが勃発した。コフィディスやボーラ・ハンスグローエが、チームDSMが熾烈に争いながら残り1kmアーチを通過し、残り800m地点にある鋭角左コーナーへ。デマールを引き連れたラモン・シンケルダム(オランダ)が残り200mまでを引っ張る後方では、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル)に塞がれる形でギルマイが行き場を失ってしまう。そんな状況を尻目に、冷静にタイミングを待ち続けたデマールが一気に加速した。
トップスピード67.9km/hでもがき倒したデマールには、ガビリアやニッツォーロも、踏み直したギルマイも届かない。今季まだ1勝も挙げられていなかったフランスチームのエーススプリンターが両手をいっぱいに広げてフィニッシュ。並み居るライバルを打ち負かし、昨年10月のパリ〜トゥール以来となる嬉しい勝利を挙げた。
「フィニッシュラインを越えた瞬間にこれが今年初勝利だと気づいたんだ。安堵したよ。シーズン最初の勝利をここジロで挙げることができて嬉しい」と言うデマールにとって、グランツールでのステージ優勝は10月開催の2020年ジロ以来。ちなみにほぼ同様のコースレイアウトで争われた2020年第4ステージでもデマールは勝利しており、相性の良いコースで勝てない期間を脱したことになる。ファンデルプールはスプリントに加わらなかったため、デマールはマリアチクラミーノも手中に収めている。
また、このメッシーナで生まれ育ったヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)はメイン集団内でフィニッシュした後、今季限りで引退することを発表した。RAIによれば、ニバリはこのジロのスタート前にこの決断に至ったという。ニバリのコメントを含めてこの後別記事で紹介します。
ジロ・デ・イタリア2022第5ステージ結果
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 4:03:56 |
2位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
3位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック) | |
4位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル) | |
5位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
6位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
7位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM) | |
8位 | ナトナエル・テスファション(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ) | |
9位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
10位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 18:21:03 |
2位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:39 |
3位 | レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +0:59 |
4位 | サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ) | +1:42 |
5位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +1:47 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:55 |
7位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +2:00 |
8位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +2:04 |
9位 | リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) | +2:06 |
10位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 62pts |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 55pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 53pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 41pts |
2位 | ミルコ・マエストリ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 18pts |
3位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 18pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | 18:21:03 |
2位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +1:47 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:58 |
チーム総合成績
1位 | ボーラ・ハンスグローエ | 55:06:42 |
2位 | アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ | +2:17 |
3位 | トレック・セガフレード | +2:47 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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