2022/04/26(火) - 15:07
3年ぶりにAACRことアルプスあづみのセンチュリーライドが帰ってきた。この日を心待ちにしてきたサイクリストたちを歓迎するかのような快晴に恵まれた1日の様子をレポートしていこう。
蔓延するコロナウィルス感染症のため、多くのイベントが中止に追い込まれてきたここ2年。その影響を最も大きく受けたのが、多くの人数を集める大規模なロングライドイベントだろう。
素晴らしいコースと地元のおもてなし、地産のグルメを組合せ、全国からやってくるサイクリストたちに地域の魅力を伝える。そんなロングライドイベントのパイオニアとも言えるAACRもコロナ禍の影響が直撃したイベントだ。最後に開催されたのは2019年。昨年、一昨年と開催中止の憂き目を見たAACRだが、3年のブランクを挟み、ついに開催されることになった。
3年のブランクが空いたものの、メイン会場は変わらず梓川の側に位置する「梓水苑」。ライド前日には受付が行われ、冠スポンサーであるミズタニ自転車をはじめ、ウェイブワンやマヴィック、スポーツアロマといった協賛社がブースを展開していた。
コロナ感染症対策として、ステージイベントは行われなかったものの、ブースでは様々なキャンペーンも行われ盛況だった様子。感染症対策としては、健康チェックシートを提出したことを示すリストバンドが渡されるというのも面白い取り組みだ。
さて、大会当日。三寒四温という言葉がぴったりなこの時期だが、今年は三寒の方に当たってしまい、駐車場オープンとなる4時半ごろには0℃くらいの冷え込みに。最高気温も12℃程度の予報で、なかなかウェアの選択に迷うイベントでもある。
冬用アンダーと夏用ジャージにウインドブレーカー、裏起毛ビブとニーウォーマーという組み合わせで準備を進めていく間に、どんどん駐車場は満車になってきた。集まったサイクリストたちが準備を済ませているうちに、空も白み始めていく。
梓水苑前の道路に交通規制がかかり1組目スタートの参加者たちがスタートゲートに集まってきた。今回の桜のAACRは全参加者600名強ということで、2019年以前と数字の上で比較すればかなり人数を絞ったことになる。
ただ、ここ2年間、10名程度のガイドツアーや100名前後の小規模イベントくらいしか取材する機会が無かった身からすると、こんなに多くのサイクリストが集まっているのを見るのは久しぶり。スタートしていく人達を撮影していると、なんだか3年ぶりの「日常」が帰ってきたような気がした。
朝日に照らされながらスタートゲートをくぐると、早速桜並木が出迎えてくれる。今年は開花が早かったようで、ソメイヨシノの花はかなり落ちてしまっていたけれど、それでも残っている花もある。一方で、八重桜や枝垂桜は満開で、桜のAACRの名に恥じない美しさを魅せてくれた。
第一エイドのアルプスあづみの公園堀金・穂高地区までの23㎞区間にいくつもの美しい桜スポットがあり、自転車を停めて撮影するグループの姿も。もちろん取材の私も止まって撮影するので、なかなかエイドが近づいてこない(笑)
そんなこんなで辿りついた最初の穂高エイドでは、色とりどりの「やさいぱん」と、あったかーい「米粉とポロネギのポタージュスープ」が待っていた。日の出と共にだんだん暖かくなってきたとはいえ、止まると冷える朝の空気に、暖かいポタージュの湯気が立ち上る様子がたまらない。トロッとした食感のスープを飲むと、体の中から温めてくれるのが伝わってくる。
このエイドは色とりどりのチューリップが咲いていて、本イベントでも屈指のフォトスポットでもある。鮮やかな花のバックには冠雪のアルプスの山々という、なんとも映えるロケーションを前に、あちこちからシャッター音が聞こえてくる。
ここから次なる大町エイドへは、更に北上していくことに。緩やかなアップダウンが続き、意外にペースが掴みづらい区間でもある。登っているように見えないけど速度が落ちるので、つい頑張ってしまい体力を消耗してしまう、自制が必要なセクションだ。
先は長いのでマイペースで走りつつ、大きな「アルプスあづみの公園大町・松川地区」の看板を左に曲がると2つ目の大町エイドはもう少し。といいつつも、実はあづみの公園の敷地内に入ってから結構登るのですが。
森の中を縫うような園路で標高を上げていくコースは、ちょっとしたトレッキング気分を味わえるロケーション。ロードバイクでも最近流行のグラベルライドのような雰囲気を楽しめるのは自然豊かな長野ならではだろう。
その先にある大町エイドで頂いたのは「豆腐汁」と「大福餅」。ぺろっと食べられちゃうふんわり甘い大福餅がライド中の身に嬉しいのは間違いないのだけど、豆腐汁のインパクトもスゴイ。大町にある栗林豆腐店の木綿豆腐がごろっと入った味噌汁で、何なら一杯に冷奴分くらい入っているのではないかというボリューム感に大満足。
さて、まだまだAACRは始まったばかり、大町エイドから更に北へ。次に目指すのは松本平と白馬盆地の境界にある仁科三湖の一つに三つ目のエイドステーションが設けられている。
大町エイドを出発すると、真っ白な雪に覆われた白馬の山々がだんだんと迫ってきており、北に近づいてきたことを実感。しばらく行くと、仁科三湖の最も南側に位置する木崎湖が見えてくる。
ブラックバスやキザキマス釣りが盛んな木崎湖には、この日もボートが浮かんでいる。さまざまな映画やアニメに登場している「聖地」でもあり、コース途中にある木崎湖キャンプ場の桟橋で撮影する人も。
木崎湖の西岸を走り抜け、中綱湖と青木湖方面へさらに国道を登っていく。中綱湖へと到着すれば3つ目のエイドはもう少し。しかしその前にこの日最大の激坂が登場する。基本的に緩やかな登りしかないAACRだけに、この坂のインパクトはかなり大きい。ここまでずっとアウターだったフロントを変速し、えっちらおっちら登っているとその先に懐かしい姿が!
全国のロングライドイベントに神出鬼没、真っ赤なママチャリと三叉槍を持った「悪魔おじさん」がこの一番つらい坂で応援してくれている。この2年ほど、その姿を見る機会も無かったわけで、あまりのなつかしさに少しウルッと来てしまうほど。槍とハイタッチしながら、最後に踏み込めば青木湖エイドに到着だ。
こちらのエイドで振舞われたのは、待っていました!の「ネギ味噌おにぎり」。AACRと言えばこのネギ味噌おにぎりであり、ネギ味噌おにぎり無くしてAACRは語れない。もはや大会の象徴ともいえるエイド食だが、今回はコロナ禍ということもあり新米のおにぎりが2つとネギ味噌、そして漬物がセットになったプチお弁当形式に。
ネギ味噌をおにぎりにたっぷり乗せて、いただきます。疲れ始めた体にネギ味噌の塩気とおにぎりの甘さが絶妙なバランスで染みわたっていく。これ、このためにAACRに来たんだよ、という声が周りからも聞こえてくるがまさに同感。激しく同意、というやつだ。
さて、大きな目的を果たしたことだし帰るか……となりそうなところだが、まだこの先にAACR最大の見どころは残っているのだ。この150㎞の旅のハイライトへ向けて、再び出発するのであった。
(後編に続きます)
text:Naoki Yasuoka
photo:T.Hatamachi,Naoki Yasuoka
蔓延するコロナウィルス感染症のため、多くのイベントが中止に追い込まれてきたここ2年。その影響を最も大きく受けたのが、多くの人数を集める大規模なロングライドイベントだろう。
素晴らしいコースと地元のおもてなし、地産のグルメを組合せ、全国からやってくるサイクリストたちに地域の魅力を伝える。そんなロングライドイベントのパイオニアとも言えるAACRもコロナ禍の影響が直撃したイベントだ。最後に開催されたのは2019年。昨年、一昨年と開催中止の憂き目を見たAACRだが、3年のブランクを挟み、ついに開催されることになった。
3年のブランクが空いたものの、メイン会場は変わらず梓川の側に位置する「梓水苑」。ライド前日には受付が行われ、冠スポンサーであるミズタニ自転車をはじめ、ウェイブワンやマヴィック、スポーツアロマといった協賛社がブースを展開していた。
コロナ感染症対策として、ステージイベントは行われなかったものの、ブースでは様々なキャンペーンも行われ盛況だった様子。感染症対策としては、健康チェックシートを提出したことを示すリストバンドが渡されるというのも面白い取り組みだ。
さて、大会当日。三寒四温という言葉がぴったりなこの時期だが、今年は三寒の方に当たってしまい、駐車場オープンとなる4時半ごろには0℃くらいの冷え込みに。最高気温も12℃程度の予報で、なかなかウェアの選択に迷うイベントでもある。
冬用アンダーと夏用ジャージにウインドブレーカー、裏起毛ビブとニーウォーマーという組み合わせで準備を進めていく間に、どんどん駐車場は満車になってきた。集まったサイクリストたちが準備を済ませているうちに、空も白み始めていく。
梓水苑前の道路に交通規制がかかり1組目スタートの参加者たちがスタートゲートに集まってきた。今回の桜のAACRは全参加者600名強ということで、2019年以前と数字の上で比較すればかなり人数を絞ったことになる。
ただ、ここ2年間、10名程度のガイドツアーや100名前後の小規模イベントくらいしか取材する機会が無かった身からすると、こんなに多くのサイクリストが集まっているのを見るのは久しぶり。スタートしていく人達を撮影していると、なんだか3年ぶりの「日常」が帰ってきたような気がした。
朝日に照らされながらスタートゲートをくぐると、早速桜並木が出迎えてくれる。今年は開花が早かったようで、ソメイヨシノの花はかなり落ちてしまっていたけれど、それでも残っている花もある。一方で、八重桜や枝垂桜は満開で、桜のAACRの名に恥じない美しさを魅せてくれた。
第一エイドのアルプスあづみの公園堀金・穂高地区までの23㎞区間にいくつもの美しい桜スポットがあり、自転車を停めて撮影するグループの姿も。もちろん取材の私も止まって撮影するので、なかなかエイドが近づいてこない(笑)
そんなこんなで辿りついた最初の穂高エイドでは、色とりどりの「やさいぱん」と、あったかーい「米粉とポロネギのポタージュスープ」が待っていた。日の出と共にだんだん暖かくなってきたとはいえ、止まると冷える朝の空気に、暖かいポタージュの湯気が立ち上る様子がたまらない。トロッとした食感のスープを飲むと、体の中から温めてくれるのが伝わってくる。
このエイドは色とりどりのチューリップが咲いていて、本イベントでも屈指のフォトスポットでもある。鮮やかな花のバックには冠雪のアルプスの山々という、なんとも映えるロケーションを前に、あちこちからシャッター音が聞こえてくる。
ここから次なる大町エイドへは、更に北上していくことに。緩やかなアップダウンが続き、意外にペースが掴みづらい区間でもある。登っているように見えないけど速度が落ちるので、つい頑張ってしまい体力を消耗してしまう、自制が必要なセクションだ。
先は長いのでマイペースで走りつつ、大きな「アルプスあづみの公園大町・松川地区」の看板を左に曲がると2つ目の大町エイドはもう少し。といいつつも、実はあづみの公園の敷地内に入ってから結構登るのですが。
森の中を縫うような園路で標高を上げていくコースは、ちょっとしたトレッキング気分を味わえるロケーション。ロードバイクでも最近流行のグラベルライドのような雰囲気を楽しめるのは自然豊かな長野ならではだろう。
その先にある大町エイドで頂いたのは「豆腐汁」と「大福餅」。ぺろっと食べられちゃうふんわり甘い大福餅がライド中の身に嬉しいのは間違いないのだけど、豆腐汁のインパクトもスゴイ。大町にある栗林豆腐店の木綿豆腐がごろっと入った味噌汁で、何なら一杯に冷奴分くらい入っているのではないかというボリューム感に大満足。
さて、まだまだAACRは始まったばかり、大町エイドから更に北へ。次に目指すのは松本平と白馬盆地の境界にある仁科三湖の一つに三つ目のエイドステーションが設けられている。
大町エイドを出発すると、真っ白な雪に覆われた白馬の山々がだんだんと迫ってきており、北に近づいてきたことを実感。しばらく行くと、仁科三湖の最も南側に位置する木崎湖が見えてくる。
ブラックバスやキザキマス釣りが盛んな木崎湖には、この日もボートが浮かんでいる。さまざまな映画やアニメに登場している「聖地」でもあり、コース途中にある木崎湖キャンプ場の桟橋で撮影する人も。
木崎湖の西岸を走り抜け、中綱湖と青木湖方面へさらに国道を登っていく。中綱湖へと到着すれば3つ目のエイドはもう少し。しかしその前にこの日最大の激坂が登場する。基本的に緩やかな登りしかないAACRだけに、この坂のインパクトはかなり大きい。ここまでずっとアウターだったフロントを変速し、えっちらおっちら登っているとその先に懐かしい姿が!
全国のロングライドイベントに神出鬼没、真っ赤なママチャリと三叉槍を持った「悪魔おじさん」がこの一番つらい坂で応援してくれている。この2年ほど、その姿を見る機会も無かったわけで、あまりのなつかしさに少しウルッと来てしまうほど。槍とハイタッチしながら、最後に踏み込めば青木湖エイドに到着だ。
こちらのエイドで振舞われたのは、待っていました!の「ネギ味噌おにぎり」。AACRと言えばこのネギ味噌おにぎりであり、ネギ味噌おにぎり無くしてAACRは語れない。もはや大会の象徴ともいえるエイド食だが、今回はコロナ禍ということもあり新米のおにぎりが2つとネギ味噌、そして漬物がセットになったプチお弁当形式に。
ネギ味噌をおにぎりにたっぷり乗せて、いただきます。疲れ始めた体にネギ味噌の塩気とおにぎりの甘さが絶妙なバランスで染みわたっていく。これ、このためにAACRに来たんだよ、という声が周りからも聞こえてくるがまさに同感。激しく同意、というやつだ。
さて、大きな目的を果たしたことだし帰るか……となりそうなところだが、まだこの先にAACR最大の見どころは残っているのだ。この150㎞の旅のハイライトへ向けて、再び出発するのであった。
(後編に続きます)
text:Naoki Yasuoka
photo:T.Hatamachi,Naoki Yasuoka
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