今年で110回目を迎えたフランドル最古のロードレース「シュヘルデプライス」。序盤に形成された先頭集団から、残り8km地点でアタックを成功させたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が、自身初となる独走勝利を挙げた。



3度目の優勝を狙うファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)3度目の優勝を狙うファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
ロンド・ファン・フラーンデレンから4日後、同じフランドル地方で最も歴史の深いセミクラシックレース「シュヘルデプライス(UCI1.Pro)」が開催された。今年で第110回目を迎える伝統の一戦は、オランダ・テルネーゼンを出発点に全長198.7kmで争われ、終盤に石畳区間を含む17.2kmのコースを3周するスプリンターレースだ。

登りのない平坦路がひたすらに続くレースには、2018、19年大会の覇者ファビオ・ヤコブセン(オランダ)を擁するクイックステップ・アルファヴィニルやサム・ベネット(アイルランド)のボーラ・ハンスグローエなど、強力スプリンターチームを含む9のワールドチームが出場。その他にもゼッケン1をつける前回王者ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)や、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)といった面々がスタートを切った。

ニュートラル区間で発生した落車に巻き込まれるパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)ニュートラル区間で発生した落車に巻き込まれるパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
横風分断を成功させ、4名を先頭集団に送り込んだボーラ・ハンスグローエ横風分断を成功させ、4名を先頭集団に送り込んだボーラ・ハンスグローエ photo:CorVos
クイックステップ・アルファヴィニルなどのチームが遅れを取った先クイックステップ・アルファヴィニルなどのチームが遅れを取った先 photo:CorVos
ニュートラル区間でパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)らが落車する不穏な幕開けとなったレースは、アクチュアルスタートから最初の1時間を50.5km/hで駆けるハイスピードで進行。ボーラ・ハンスグローエが先導した横風分断が成功したことによって、フィリプセンやアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)など各チームのエーススプリンターらを含む14名の先頭集団が形成された。

スタート後わずか40kmたらずで作られた先鋭集団には、ボーラ・ハンスグローエがベネットやサブエースのダニー・ファンポッペル(オランダ)を含む4名を送り込むことに成功した。反対にクイックステップ・アルファヴィニルはこの動きに遅れ、懸命に追走集団を牽引したものの、協力するチームは現れず。先頭グループが1度目のフィニッシュラインを通過する時点で、追走集団とは1分差。2度目の通過でその差は2分まで拡大したことにより、勝負は先頭の14名に絞られた。

追走集団を牽引するクイックステップ・アルファヴィニル追走集団を牽引するクイックステップ・アルファヴィニル photo:CorVos
強い雨が選手たちに襲い、アタックと吸収を繰り返す集団では、最後の1700mのパヴェ区間「ブロックストラート」に入る手前でベネットがパンクで勝負から脱落。それでも数で優位なボーラ・ハンスグローエとアルペシン・フェニックスによる攻撃が続いたものの、その間を突くようにアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が飛び出した。

2015年覇者によるアタックに対し、追走グループは牽制状態に陥ったことで、クリストフとの差は拡大。快調に飛ばすクリストフの一方で、なんとかチームDSMとアルペシン・フェニックスが追走の形を整えようと試みるが、その足並みは最後まで揃わなかった。

その後もリードを徐々に積み重ねていったクリストフが、単独先頭をキープしたままフィニッシュに到達。キャリア83勝目を、自身初となる独走勝利で決めた。

残り8km地点で飛び出したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)残り8km地点で飛び出したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
キャリア初となる独走勝利を決めたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)キャリア初となる独走勝利を決めたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
「ボーラとアルペシンがアタックを繰り返す激しい終盤だった。単騎だったためそれらの攻撃にだいぶ苦しめられたが、石畳区間の終わり際に飛び出し、幸運にも誰もついてこなかった。数で勝っていたボーラを下し、チームに勝利をもたらすことができて嬉しいよ」と、34歳のベテランスプリンターは勝利をそう喜んだ。

2位を争うスプリントはサム・ウェルスフォード(オーストラリア、チームDSM)を抑えたファンポッペルが先着。また、フィニッシュ後にレースが終わったと勘違いしたティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)がコースを逆走し、スプリントする後続集団を直前でフェンスを飛び越え回避するシーンも。メルリールはその後「誰かを危険に晒す意図はなかった。自分の行動について深く謝罪したい」とSNSでコメントしている。

シュヘルデプライス2022 表彰台シュヘルデプライス2022 表彰台 photo:CorVos
シュヘルデプライス2022
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) 4:06:02
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:24
3位 サム・ウェルスフォード(オーストラリア、チームDSM)
4位 カスパー・ファンウデン(オランダ、チームDSM) 0:26
5位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 ケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス) 0:28
7位 ダニエル・マクレー(イギリス、アルケア・サムシック)
8位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
9位 ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
10位 ライアン・ミューレン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos