2022/03/25(金) - 17:55
AG2Rシトロエンとイスラエル・プレミアテックをサポートするHJC。モーターサイクルのレースで培ったエアロダイナミクスへの知見を投入したセミエアロヘルメットのFURION 2.0をインプレッションする。
1971年にモーターサイクル用ヘルメットメーカーとして創業したHJC。世界トップの自動二輪レースであるMotoGPにおいて数多くの有名選手をサポートしており、コンマ1秒の争いを繰り広げる舞台で技術開発を続けてきたブランドだ。
HJCがサイクルスポーツに参入したのは2018年のこと。モトで鍛えた技術を落とし込んだIBEXとFURIONをロット・スーダルに供給し、自転車ロードレースでも世界最高峰の舞台で戦ってきた。
IBEXとFURIONは2020年モデルで、バージョン2.0にアップデートされている。今回はそれらフラッグシップモデルの中からFURION 2.0をピックアップしてインプレッションする。(IBEX 2.0のインプレッションはこちら)モーターサイクルで培ったエアロダイナミクスの知見を落とし込んだモデルの詳細を紹介しよう。
造形は先代とほぼ同じで、セミエアロヘルメットらしく前頭部には通気口が設けられ、中間部分は空気を流すためにすっきりとしたデザイン、後頭部に排気用のベンチレーションホールが備えられた作り。
FURION 2.0の特徴は頭頂部よりやや後側に2つのホールが設けられていること。その周りの空気の流れをコントロールするようにアウターシェルが形作られている。さらに側頭部のベンチレーションホールから取り込まれる風は頭に当たらず、そのまま後方へ流れる設計だ。
ベンチレーションの設計には、流体の流れを絞ることで流速を加速させるベンチュリー効果を効率的に生み出す設計が採用されているという。
2.0モデルではCOOLPATHというエアチャンネルテクノロジーが搭載されていることが特徴だ。COOLPATHはシェルの内側に配置されるプレートのこと。頭部とシェルの間に空間が生み出されているため、優れた通気性を期待できそうだ。
また、新世代ではダイヤルを廃したセルフフィッティング機構「SELFIT」が搭載されている。SELFITはスプリングを採用したアジャスターであり、自動的に頭にフィットするシステムとなっている。サイズはS、M、Lの3種類で、重量は190gと軽量だ。カラーは計14色で展開されている。価格は29,700円(税込)。
-インプレッション
FURION 2.0のインプレッションを担当するのはIBEX 2.0に続き、丸型頭を持つCW編集部の藤原。IBEX 2.0では自分の頭にジャストフィットし大いに喜んだだけに、FURION 2.0のフィット感にも小さくない期待を胸に試着を行った。
サイズはMでピッタリで、シェル自体も丸形頭にフィットする形状と言って差し支えない。どこかが当たって痛むこともなく快適に着用でき、頭を振ってもずれることはないほど。だが、僅かな差でIBEX 2.0のほうが気持ちよく着用できた。これはあくまでも個人の感想。
実際のところ、編集部員の高木や安岡(この2人もカブトやカスクがフィットする丸形頭である)はFURION 2.0の方がマッチするという感想だった。2つのモデルにわずかな感覚の差はあれど、HJCの帽体はアジアンフィットと謳ってはないものの、そう言って過言ではない。2つのモデルのわずかな差も、丸型頭のサイクリストの中でもよりマッチするモデルを選択できる幅が用意されていると捉えることのできるはず。今回2つのハイエンドモデルを試し、日本人サイクリストたちには新たな選択肢が加わったと感じている。
スプリング構造のアジャスターはテンションが高めで、しっかりと頭をホールドしてくれる。短時間でライドに集中したい場合は、確かなホールド力はアドバンテージになってくれそう。ヘルメットの着用時間が長くなると、少しずつパッドの存在感が気になり始める。痛みではないものの、わずかに気になってしまう。
手動で締め付け具合を調整できないものの、アジャスターの上下位置でフィット感を変化させられる。購入する際の試着では一度アジャスター位置も変えて試してもらいたい。わずかな変化だが、快適に着用するためには有効な手段だと思う。
さて、 FURION 2.0の最も重要な部分であるエアロダイナミクスについてだが、どれくらいの抵抗が削減されているのかを足で感じ取ることは難しい。ただ、走行中にヘルメット近くへ手を当ててみると、走行風やIBEX 2.0よりも速い風が駆け抜けていくように感じる。特に30km/hほどでも、手を進行方向にかざした時と、ヘルメット近くで流速が異なることがわかるほどだ。
通気性については、頭頂部の2つのホールと側頭部のインレットが活躍していると感じた。側頭部から入る風は頭に当たるように設計されていないものの、側頭部には頭を撫でながら後頭部へと流れていく風を感じられたほど。
対して、頭頂部のホールは熱が排出されているのか、空気が取り込まれているのか、判断することができなかったが、間違いなくクーリング性能に貢献している。ライド中に穴を塞いでみると、ヘルメット内に熱気が溜まり、穴を開くとじわーっと熱気が逃げていく感覚があった。走行中に驚くような風の抜けはないが、しっかりと機能しているのだろう。
IBEX 2.0と同じようにCOOLPATHが設けられていることがFURION 2.0の通気性設計の特徴だ。サイズの大きなベンチレーションホールが開けられたIBEX 2.0より、風の通り抜ける感覚は薄いが、確実に空気の層が存在することは感じられる。
もし通気性が悪ければそのまま熱がこもり不快に感じるはずだが、FURION 2.0は程よい温度の状態を保つ印象がある。風を勢いよく取り込み、熱を押し出すクーリング性能ではないものの、風はヘルメット内に入り続け穏やかにクーリングしていると実感した。
また、ハイスピード走行を前提とするようなレース用ヘルメットのためか、スピードが20km/hを下回るような状況では、熱の排出が落ち着いてしまうようだ。淡々と長い時間登り続けるようなシチュエーションではIbex 2.0を選んだほうが良さそう。対して30km/hを下回らないレースであればFrion 2.0は性能を発揮し続けてくれるだろう。
丸型頭にフィットし、通気性に優れるエアロ系ヘルメットのFURION 2.0は、ハイスピードで駆け抜けるライダーにマッチする。レース用のヘルメットを探している方は、一度試着しても良いだろう。
HJC FURION 2.0
カラー:MT BLACK CHAMELEON、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY
サイズ:S、M、L
重量:190g(±10g)
価格:29,700円(税込)
text&photo: Gakuto Fujiwara
1971年にモーターサイクル用ヘルメットメーカーとして創業したHJC。世界トップの自動二輪レースであるMotoGPにおいて数多くの有名選手をサポートしており、コンマ1秒の争いを繰り広げる舞台で技術開発を続けてきたブランドだ。
HJCがサイクルスポーツに参入したのは2018年のこと。モトで鍛えた技術を落とし込んだIBEXとFURIONをロット・スーダルに供給し、自転車ロードレースでも世界最高峰の舞台で戦ってきた。
IBEXとFURIONは2020年モデルで、バージョン2.0にアップデートされている。今回はそれらフラッグシップモデルの中からFURION 2.0をピックアップしてインプレッションする。(IBEX 2.0のインプレッションはこちら)モーターサイクルで培ったエアロダイナミクスの知見を落とし込んだモデルの詳細を紹介しよう。
造形は先代とほぼ同じで、セミエアロヘルメットらしく前頭部には通気口が設けられ、中間部分は空気を流すためにすっきりとしたデザイン、後頭部に排気用のベンチレーションホールが備えられた作り。
FURION 2.0の特徴は頭頂部よりやや後側に2つのホールが設けられていること。その周りの空気の流れをコントロールするようにアウターシェルが形作られている。さらに側頭部のベンチレーションホールから取り込まれる風は頭に当たらず、そのまま後方へ流れる設計だ。
ベンチレーションの設計には、流体の流れを絞ることで流速を加速させるベンチュリー効果を効率的に生み出す設計が採用されているという。
2.0モデルではCOOLPATHというエアチャンネルテクノロジーが搭載されていることが特徴だ。COOLPATHはシェルの内側に配置されるプレートのこと。頭部とシェルの間に空間が生み出されているため、優れた通気性を期待できそうだ。
また、新世代ではダイヤルを廃したセルフフィッティング機構「SELFIT」が搭載されている。SELFITはスプリングを採用したアジャスターであり、自動的に頭にフィットするシステムとなっている。サイズはS、M、Lの3種類で、重量は190gと軽量だ。カラーは計14色で展開されている。価格は29,700円(税込)。
-インプレッション
FURION 2.0のインプレッションを担当するのはIBEX 2.0に続き、丸型頭を持つCW編集部の藤原。IBEX 2.0では自分の頭にジャストフィットし大いに喜んだだけに、FURION 2.0のフィット感にも小さくない期待を胸に試着を行った。
サイズはMでピッタリで、シェル自体も丸形頭にフィットする形状と言って差し支えない。どこかが当たって痛むこともなく快適に着用でき、頭を振ってもずれることはないほど。だが、僅かな差でIBEX 2.0のほうが気持ちよく着用できた。これはあくまでも個人の感想。
実際のところ、編集部員の高木や安岡(この2人もカブトやカスクがフィットする丸形頭である)はFURION 2.0の方がマッチするという感想だった。2つのモデルにわずかな感覚の差はあれど、HJCの帽体はアジアンフィットと謳ってはないものの、そう言って過言ではない。2つのモデルのわずかな差も、丸型頭のサイクリストの中でもよりマッチするモデルを選択できる幅が用意されていると捉えることのできるはず。今回2つのハイエンドモデルを試し、日本人サイクリストたちには新たな選択肢が加わったと感じている。
スプリング構造のアジャスターはテンションが高めで、しっかりと頭をホールドしてくれる。短時間でライドに集中したい場合は、確かなホールド力はアドバンテージになってくれそう。ヘルメットの着用時間が長くなると、少しずつパッドの存在感が気になり始める。痛みではないものの、わずかに気になってしまう。
手動で締め付け具合を調整できないものの、アジャスターの上下位置でフィット感を変化させられる。購入する際の試着では一度アジャスター位置も変えて試してもらいたい。わずかな変化だが、快適に着用するためには有効な手段だと思う。
さて、 FURION 2.0の最も重要な部分であるエアロダイナミクスについてだが、どれくらいの抵抗が削減されているのかを足で感じ取ることは難しい。ただ、走行中にヘルメット近くへ手を当ててみると、走行風やIBEX 2.0よりも速い風が駆け抜けていくように感じる。特に30km/hほどでも、手を進行方向にかざした時と、ヘルメット近くで流速が異なることがわかるほどだ。
通気性については、頭頂部の2つのホールと側頭部のインレットが活躍していると感じた。側頭部から入る風は頭に当たるように設計されていないものの、側頭部には頭を撫でながら後頭部へと流れていく風を感じられたほど。
対して、頭頂部のホールは熱が排出されているのか、空気が取り込まれているのか、判断することができなかったが、間違いなくクーリング性能に貢献している。ライド中に穴を塞いでみると、ヘルメット内に熱気が溜まり、穴を開くとじわーっと熱気が逃げていく感覚があった。走行中に驚くような風の抜けはないが、しっかりと機能しているのだろう。
IBEX 2.0と同じようにCOOLPATHが設けられていることがFURION 2.0の通気性設計の特徴だ。サイズの大きなベンチレーションホールが開けられたIBEX 2.0より、風の通り抜ける感覚は薄いが、確実に空気の層が存在することは感じられる。
もし通気性が悪ければそのまま熱がこもり不快に感じるはずだが、FURION 2.0は程よい温度の状態を保つ印象がある。風を勢いよく取り込み、熱を押し出すクーリング性能ではないものの、風はヘルメット内に入り続け穏やかにクーリングしていると実感した。
また、ハイスピード走行を前提とするようなレース用ヘルメットのためか、スピードが20km/hを下回るような状況では、熱の排出が落ち着いてしまうようだ。淡々と長い時間登り続けるようなシチュエーションではIbex 2.0を選んだほうが良さそう。対して30km/hを下回らないレースであればFrion 2.0は性能を発揮し続けてくれるだろう。
丸型頭にフィットし、通気性に優れるエアロ系ヘルメットのFURION 2.0は、ハイスピードで駆け抜けるライダーにマッチする。レース用のヘルメットを探している方は、一度試着しても良いだろう。
HJC FURION 2.0
カラー:MT BLACK CHAMELEON、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY、MT DARK GREY
サイズ:S、M、L
重量:190g(±10g)
価格:29,700円(税込)
text&photo: Gakuto Fujiwara
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