2022/03/22(火) - 16:01
サンタクルズのオールマウンテンモデル、BRONSONがフルモデルチェンジ。前後異径のマレット仕様となり、さらにトレイルを遊び尽くせる1台へと進化した。
XCバイクのBlurとほぼ同時にサンタクルズが発表した新作が、フロント160mm、リア150mmトラベルを有するオールマウンテンモデルのBronsonだ。同社のバイクラインアップの中でも中庸な存在であり、サンタクルズのデモクルーの間でも「迷ったらBronsonで」というフレーズが存在するほど、ラインアップの屋台骨を支える1台であるという。
第4世代へと進化したBronson最大の特徴はマレットと呼ばれる前後異径ホイール仕様専用設計とされたこと。これまでサンタクルズはダウンヒルバイクのV10、そしてトレイル系ハードテールのChameleonをマレット対応バイクとして送り出しており、それらに続く3台目にして初のマレット"専用"モデルとして新しいBronsonをデビューさせた。
前作は前後とも27.5インチバイクであったBronsonだが、フロントを29インチに大径化することで、より優れた走破性と高いトラクションを実現。一方で、後輪は27.5インチに据え置くことで、身軽で機敏なアクションライドを楽しめるバイクとなっているという。
サンタクルズ伝家の宝刀ともいえるVPP(Virtual Pivot Point)は前作から受け継ぎつつ、フレーム形状をさらにブラッシュアップ。ダウンチューブに設けられたショックマウントの位置をさらに低くすることでより低重心化を実現。
また、ショックユニットを通すためにシートチューブ下部に設けられたスペースを拡大することで、より大きなエアボリュームを有するエアサスや、コイルサスなど幅広いパーツチョイスを可能としている。
拡大したフロントホイールのサイズに対応するため、ジオメトリーにも大きく手が加えられている。顕著なのはヘッドチューブ長であり、10㎜程度短くされハンドル位置を保つように調整されている。
ロワーリンクのショックマウント部にはフリップチップが埋め込まれており、上下を入れ替えることでBBハイトを3mm、ヘッドアングルを0.2°変化させられる。チェーンステー長もハイポジションのほうがローポジションよりも1mm短くなっており、コースやライディングスタイルによって調整可能だ。
BBにはISCG05タブが設けられチェーンガイドも装着可能なほか、リアエンドにはスラムのユニバーサルディレイラーハンガーを採用しており、トラブル時でもパーツの入手性を高めている。
BRONSON V4はカーボン素材の異なるCCとCという2つのフレームグレードにて展開され、それぞれグレードの異なるコンポーネントをアセンブルされたキットが用意される。サイズはXS~Lの4種類、カラーはGloss Moss/Blue, Paydirt Gold/Grey。今回テストしたのはラインアップ中もっとも手の届いやすいパッケージのCarbon C R-kit(税込価格:814,660円)。
今回テストを行ったのは、西伊豆のYAMABUSHITRAIL。インプレッションライダーは、サイクルハウスミカミの三上和志店長とRiseRideの鈴木祐一店長の2人。日本のトレイルを遊び尽くした彼らの目に、BRONSONはどう映るのか。
―1日、YAMABUSHI TRAILでBRONSONを試していただきました。まず、どういった位置づけ、性格のバイクと言えるでしょう。
三上:一言でいうと、トレイルを意のままに遊べるバイクですね。真面目に最速ラインを狙っていくようなレーシーな走りではなく、前の人とは絶対違うラインで走るぞ!という遊び心とテクニックを持ったライダーにこそ乗ってもらいたい一台です。
サンタクルズには、ほぼ同クラスのオールマウンテン/エンデューロバイクとして160㎜ストロークのMegatowerがありますが、そちらは前後とも29インチとなっています。リンケージ方式もVPPで、ぱっと見ではホイール径以外の差というのは伝わってきづらい両者なのですが、乗ってみると全然別物という印象です。
サンタクルズのオールマウンテンカテゴリーには多くのモデルが用意されていますが、大別すると安定感と走破性に優れ、速さを求めたHightower/Megatowerという29インチシリーズと、小径ホイールの俊敏性を活かし、アクションを入れやすい5010/BRONSONという27.5インチシリーズという2つのラインがありました。今回のモデルチェンジでBRONSONはフロントをインチアップしましたが、その本質は前作から変わってはいません。
エンデューロレースで成績を残したい、もっとタイムを縮めたいという人には挙動が穏やかな29インチシリーズのほうが向いていると思いますし、逆に初心者がゲレンデライド挑戦も視野に入れた1台ということであっても、安定感のあるMegatowerのほうを勧めるでしょう。
対してBRONSONは、トレイルライドにドハマリしていて、もっと自転車に上手く乗りたい!かっこよくジャンプでウィップを入れたり、自分のスタイルを出していきたい!というような方のベストパートナーです。
鈴木:確かにレースバイクというよりはプレイバイク、という言葉が似合う一台でした。車に積み込む前に、サドルを合わせがてら試しに乗った瞬間からすごく軽快に動いてくれて、とにかく俊敏なバイクだなというのが最初の印象でした。
実際トレイルに入ると、その印象は強くなりましたね。フロントを上げたり、バニーホップしたりといった「縦」の動きでも、ウィップ入れたりテールスライドさせたりといった「横」の動きでも、とにかく一つ一つの動作の軽さが際立っていました。
これは三上さんの言っていたことと重なるのですが、そういった軽さって言い換えれば不安定さでもあるので、とにかく無駄を削ってタイムを縮めるような走りとは方向性が違うんですよね。
でも、色んなアクションを入れるような乗り方にはベストマッチで、そういった山遊びを実践している人にはビビッとフィットするのは間違いないですよ。
―なるほど。車でも速いのはグリップ走行だけどかっこいいのはドリフト、みたいな。そういったBRONSONならでは性格というのは何に由来するものなのでしょうか?
鈴木:やっぱり前後異径のマレットバイクだというのは大きなポイントだと思いますね。実際にマレットバイクにちゃんと乗るのは初めてだったんですが、前後29インチより断然リアが振り出しやすい。
そこに加えて、ウィリーやマニュアルといったアクションも後輪がすごく体に近い感覚があるので少しの重心移動で上がりやすいですね。正直、最初はフロントが上がりすぎて少し焦るくらいでした(笑)
マレットバイクというと、DHレースのトレンドでもあるので速く走るための仕様という思い込みがありましたが、良い意味で覆されましたね。
三上:29インチと27.5インチの良いとこどりと言うと簡単すぎるかもしれませんが、実際そういう狙いはあると思います。フロントとリアの役割をしっかりと分けて、それぞれに適したホイール径を組み合わせているということですね。
実際の挙動でいうと、フロントの29インチがしっかりと衝撃をいなして安定感を出してくれるので、コーナーにも安心して入っていけるんですよ。それでうまくコーナーに進入できた、というところから遊び心を出してリアにグッと加重すると簡単にリアを外に振れる。フロント側で余裕を持たせて安心感を作ってくれるので、リア側で思いっきり遊べるんですよ。
逆説的に言うと、レースバイクとしてのマレットの優位性というのは、そういった特性をしっかりと把握したうえで生まれてくるものなんだと思いますね。例えばミスしてしまった時、前後29インチでは成り行きで走っているようなシーンでも、マレットバイクなら積極的にラインを修正しやすいですよね。その分、全体的にシビアなコントロールが求められるようになりますが。
―下りでアクションを楽しむというシーンとマレットの特性がマッチしていたと。一方、オールマウンテンバイクとして、登り性能も避けては通れない部分です。ライド中にはめちゃくちゃ登る!という声も聞かれましたが。
三上:そうですね、ペダリングのロスを抑えつつ常に路面をしっかりつかんでいてくれるので、登りの路面がルーズでもゆっくりじっくりトラクションをかけながら登っていけますね。とにかく後輪の挙動が掴みやすいので、これ以上踏むと滑るな、というのが分かりやすい。
実際、2本目のトレイルで登場したような急こう配のスイッチバックでも足をつくことなく乗っていけたのは、登りのトラクションと回頭性を備えたBRONSONの本領発揮というところでしょう。
鈴木:サンタクルズのバイク全体に共通する味付けのようにも感じたのですが、サスペンションが伸びる時に起こるキックバックをうまく生かしているようなフィーリングがありますね。
BLURとはサスペンションのリンク方式は異なりますが、踏み込んだ時に繋がっていくようなペダリングの感覚は通じるものがありました。バンクの後半やパンプのバックサイドでプッシュを入れるようなシーンでも、いつもより伸びていくように感じます。
全く異なるカテゴリーの2台でしたが、サンタクルズというブランドとしてどういったアプローチでバイクの良さを出していくのか、というのは共通しているのだと思います。
三上:そうですね、サンタクルズの思想的な部分というのはどのバイクにも感じられます。BLURはより速く走ることにその特性を振り向けていて、BRONSONはもっと楽しくアクションすることにフォーカスしている。出てくるバイクはそれぞれのカテゴリーにピッタリなんだけど、その性能を実現するための手法には共通したノウハウがありそうです。
―フリップチップでジオメトリーも調整可能です。今回は最初ローポジションで走った後、ハイポジションに切り替えてテストいただきましたが、どちらが好みでしたか。
鈴木:数字としてはBBハイトが3mm上下するということで、正直そんなに変わるかな?と思っていたんですが、いざ変えてみると全然別物に乗り換えたような感覚でしたね。ここまで変わるのか、と。
個人的には今日のコースだったらハイポジションのほうが楽しいですね。自然の地形をフルに活かして遊べるようなコースで、ちょっとしたアイテムでアクションを入れたりするのはやっぱり機敏なほうが面白いです。でも、レースで使うのであればローポジションもアリですね。
三上:私も今日のシチュエーションならハイポジションのほうが面白かったですね。ヘッドが立ってくるので、積極的にハンドリングを入れつつラインを選んでいくのも容易です。若干重心が前に移動するので、より後輪を振りやすくなりますね。ダーッと一直線に降りるのでなくて、こうクネクネと右に左に振りながらジャンプを入れたり、アクション的な要素を楽しみやすいのはハイポジションですね。
一方で、ローポジションのほうは安定感が出てくるので、まだ走り慣れていないトレイルなどではこちらのほうが安心できますね。ローポジションでトレイルを把握して、よし行けるな!となったらフリップチップを入れ替えてもう一度走る、というような使い方も楽しいと思います。
―今回のテストバイクですが、NX完成車で約80万円です。プライスフォーバリューとしてはいかがでしょう。
鈴木:バイク全体の性能に対する価格としては高すぎるとは思わないですね。でも、パーツのグレードとしては少し疑問符が付く人はいると思います。私も正直、NXと言われるとすごく良いパーツという印象はあんまり無いですよね。手ごろな完成車向けのグレードで、重量もお世辞にも軽いとも言えないですし。
でも、そういったパーツに足を引っ張られているような印象も無かったんです。決してハイエンドとは呼べないグレードのパーツ構成なんですが、それを感じさせないくらいバイクのポテンシャルが高いというように感じました。
三上:そうですね、NXをつけているということは乗ってる時には全く意識しなかったです。プライベートのバイクにはハイエンドなコンポーネントを装着しているわけですが、このBRONSONでライドしているときにそういった部分でストレスを感じることは無かった。
やはりそれはフレーム自体の性能が優れているということだと思いますし、バイク全体として見てもどこかが破綻しているということが無いことの証明だと思います。確かにパーツスペックに対しての値付けとしては高く感じますが、実際にこのバイクがしっくりくる人にとっては妥当に感じられると思いますよ。
サンタクルズ BRONSON C R MX
フレーム:Carbon C MX 150mm Travel VPP™
フォーク:FOX Float X Performance
ショック:RockShox Lyrik Select, 160mm
コンポーネント:SRAM NX Eagle, 12spd
リム:RaceFace AR Offset 30 Rims
ブレーキ:SRAM G2 R
フロントタイヤ: Maxxis Minion DHF 29"x2.5, 3C, MaxxGrip, EXO, TR (27.5” tire on size XS)
リアタイヤ:Maxxis Minion DHR II 27.5"x2.4", 3C,EXO, TR
価格:814,660円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI HP
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
text&photo:Naoki Yasuoka
XCバイクのBlurとほぼ同時にサンタクルズが発表した新作が、フロント160mm、リア150mmトラベルを有するオールマウンテンモデルのBronsonだ。同社のバイクラインアップの中でも中庸な存在であり、サンタクルズのデモクルーの間でも「迷ったらBronsonで」というフレーズが存在するほど、ラインアップの屋台骨を支える1台であるという。
第4世代へと進化したBronson最大の特徴はマレットと呼ばれる前後異径ホイール仕様専用設計とされたこと。これまでサンタクルズはダウンヒルバイクのV10、そしてトレイル系ハードテールのChameleonをマレット対応バイクとして送り出しており、それらに続く3台目にして初のマレット"専用"モデルとして新しいBronsonをデビューさせた。
前作は前後とも27.5インチバイクであったBronsonだが、フロントを29インチに大径化することで、より優れた走破性と高いトラクションを実現。一方で、後輪は27.5インチに据え置くことで、身軽で機敏なアクションライドを楽しめるバイクとなっているという。
サンタクルズ伝家の宝刀ともいえるVPP(Virtual Pivot Point)は前作から受け継ぎつつ、フレーム形状をさらにブラッシュアップ。ダウンチューブに設けられたショックマウントの位置をさらに低くすることでより低重心化を実現。
また、ショックユニットを通すためにシートチューブ下部に設けられたスペースを拡大することで、より大きなエアボリュームを有するエアサスや、コイルサスなど幅広いパーツチョイスを可能としている。
拡大したフロントホイールのサイズに対応するため、ジオメトリーにも大きく手が加えられている。顕著なのはヘッドチューブ長であり、10㎜程度短くされハンドル位置を保つように調整されている。
ロワーリンクのショックマウント部にはフリップチップが埋め込まれており、上下を入れ替えることでBBハイトを3mm、ヘッドアングルを0.2°変化させられる。チェーンステー長もハイポジションのほうがローポジションよりも1mm短くなっており、コースやライディングスタイルによって調整可能だ。
BBにはISCG05タブが設けられチェーンガイドも装着可能なほか、リアエンドにはスラムのユニバーサルディレイラーハンガーを採用しており、トラブル時でもパーツの入手性を高めている。
BRONSON V4はカーボン素材の異なるCCとCという2つのフレームグレードにて展開され、それぞれグレードの異なるコンポーネントをアセンブルされたキットが用意される。サイズはXS~Lの4種類、カラーはGloss Moss/Blue, Paydirt Gold/Grey。今回テストしたのはラインアップ中もっとも手の届いやすいパッケージのCarbon C R-kit(税込価格:814,660円)。
今回テストを行ったのは、西伊豆のYAMABUSHITRAIL。インプレッションライダーは、サイクルハウスミカミの三上和志店長とRiseRideの鈴木祐一店長の2人。日本のトレイルを遊び尽くした彼らの目に、BRONSONはどう映るのか。
―1日、YAMABUSHI TRAILでBRONSONを試していただきました。まず、どういった位置づけ、性格のバイクと言えるでしょう。
三上:一言でいうと、トレイルを意のままに遊べるバイクですね。真面目に最速ラインを狙っていくようなレーシーな走りではなく、前の人とは絶対違うラインで走るぞ!という遊び心とテクニックを持ったライダーにこそ乗ってもらいたい一台です。
サンタクルズには、ほぼ同クラスのオールマウンテン/エンデューロバイクとして160㎜ストロークのMegatowerがありますが、そちらは前後とも29インチとなっています。リンケージ方式もVPPで、ぱっと見ではホイール径以外の差というのは伝わってきづらい両者なのですが、乗ってみると全然別物という印象です。
サンタクルズのオールマウンテンカテゴリーには多くのモデルが用意されていますが、大別すると安定感と走破性に優れ、速さを求めたHightower/Megatowerという29インチシリーズと、小径ホイールの俊敏性を活かし、アクションを入れやすい5010/BRONSONという27.5インチシリーズという2つのラインがありました。今回のモデルチェンジでBRONSONはフロントをインチアップしましたが、その本質は前作から変わってはいません。
エンデューロレースで成績を残したい、もっとタイムを縮めたいという人には挙動が穏やかな29インチシリーズのほうが向いていると思いますし、逆に初心者がゲレンデライド挑戦も視野に入れた1台ということであっても、安定感のあるMegatowerのほうを勧めるでしょう。
対してBRONSONは、トレイルライドにドハマリしていて、もっと自転車に上手く乗りたい!かっこよくジャンプでウィップを入れたり、自分のスタイルを出していきたい!というような方のベストパートナーです。
鈴木:確かにレースバイクというよりはプレイバイク、という言葉が似合う一台でした。車に積み込む前に、サドルを合わせがてら試しに乗った瞬間からすごく軽快に動いてくれて、とにかく俊敏なバイクだなというのが最初の印象でした。
実際トレイルに入ると、その印象は強くなりましたね。フロントを上げたり、バニーホップしたりといった「縦」の動きでも、ウィップ入れたりテールスライドさせたりといった「横」の動きでも、とにかく一つ一つの動作の軽さが際立っていました。
これは三上さんの言っていたことと重なるのですが、そういった軽さって言い換えれば不安定さでもあるので、とにかく無駄を削ってタイムを縮めるような走りとは方向性が違うんですよね。
でも、色んなアクションを入れるような乗り方にはベストマッチで、そういった山遊びを実践している人にはビビッとフィットするのは間違いないですよ。
―なるほど。車でも速いのはグリップ走行だけどかっこいいのはドリフト、みたいな。そういったBRONSONならでは性格というのは何に由来するものなのでしょうか?
鈴木:やっぱり前後異径のマレットバイクだというのは大きなポイントだと思いますね。実際にマレットバイクにちゃんと乗るのは初めてだったんですが、前後29インチより断然リアが振り出しやすい。
そこに加えて、ウィリーやマニュアルといったアクションも後輪がすごく体に近い感覚があるので少しの重心移動で上がりやすいですね。正直、最初はフロントが上がりすぎて少し焦るくらいでした(笑)
マレットバイクというと、DHレースのトレンドでもあるので速く走るための仕様という思い込みがありましたが、良い意味で覆されましたね。
三上:29インチと27.5インチの良いとこどりと言うと簡単すぎるかもしれませんが、実際そういう狙いはあると思います。フロントとリアの役割をしっかりと分けて、それぞれに適したホイール径を組み合わせているということですね。
実際の挙動でいうと、フロントの29インチがしっかりと衝撃をいなして安定感を出してくれるので、コーナーにも安心して入っていけるんですよ。それでうまくコーナーに進入できた、というところから遊び心を出してリアにグッと加重すると簡単にリアを外に振れる。フロント側で余裕を持たせて安心感を作ってくれるので、リア側で思いっきり遊べるんですよ。
逆説的に言うと、レースバイクとしてのマレットの優位性というのは、そういった特性をしっかりと把握したうえで生まれてくるものなんだと思いますね。例えばミスしてしまった時、前後29インチでは成り行きで走っているようなシーンでも、マレットバイクなら積極的にラインを修正しやすいですよね。その分、全体的にシビアなコントロールが求められるようになりますが。
―下りでアクションを楽しむというシーンとマレットの特性がマッチしていたと。一方、オールマウンテンバイクとして、登り性能も避けては通れない部分です。ライド中にはめちゃくちゃ登る!という声も聞かれましたが。
三上:そうですね、ペダリングのロスを抑えつつ常に路面をしっかりつかんでいてくれるので、登りの路面がルーズでもゆっくりじっくりトラクションをかけながら登っていけますね。とにかく後輪の挙動が掴みやすいので、これ以上踏むと滑るな、というのが分かりやすい。
実際、2本目のトレイルで登場したような急こう配のスイッチバックでも足をつくことなく乗っていけたのは、登りのトラクションと回頭性を備えたBRONSONの本領発揮というところでしょう。
鈴木:サンタクルズのバイク全体に共通する味付けのようにも感じたのですが、サスペンションが伸びる時に起こるキックバックをうまく生かしているようなフィーリングがありますね。
BLURとはサスペンションのリンク方式は異なりますが、踏み込んだ時に繋がっていくようなペダリングの感覚は通じるものがありました。バンクの後半やパンプのバックサイドでプッシュを入れるようなシーンでも、いつもより伸びていくように感じます。
全く異なるカテゴリーの2台でしたが、サンタクルズというブランドとしてどういったアプローチでバイクの良さを出していくのか、というのは共通しているのだと思います。
三上:そうですね、サンタクルズの思想的な部分というのはどのバイクにも感じられます。BLURはより速く走ることにその特性を振り向けていて、BRONSONはもっと楽しくアクションすることにフォーカスしている。出てくるバイクはそれぞれのカテゴリーにピッタリなんだけど、その性能を実現するための手法には共通したノウハウがありそうです。
―フリップチップでジオメトリーも調整可能です。今回は最初ローポジションで走った後、ハイポジションに切り替えてテストいただきましたが、どちらが好みでしたか。
鈴木:数字としてはBBハイトが3mm上下するということで、正直そんなに変わるかな?と思っていたんですが、いざ変えてみると全然別物に乗り換えたような感覚でしたね。ここまで変わるのか、と。
個人的には今日のコースだったらハイポジションのほうが楽しいですね。自然の地形をフルに活かして遊べるようなコースで、ちょっとしたアイテムでアクションを入れたりするのはやっぱり機敏なほうが面白いです。でも、レースで使うのであればローポジションもアリですね。
三上:私も今日のシチュエーションならハイポジションのほうが面白かったですね。ヘッドが立ってくるので、積極的にハンドリングを入れつつラインを選んでいくのも容易です。若干重心が前に移動するので、より後輪を振りやすくなりますね。ダーッと一直線に降りるのでなくて、こうクネクネと右に左に振りながらジャンプを入れたり、アクション的な要素を楽しみやすいのはハイポジションですね。
一方で、ローポジションのほうは安定感が出てくるので、まだ走り慣れていないトレイルなどではこちらのほうが安心できますね。ローポジションでトレイルを把握して、よし行けるな!となったらフリップチップを入れ替えてもう一度走る、というような使い方も楽しいと思います。
―今回のテストバイクですが、NX完成車で約80万円です。プライスフォーバリューとしてはいかがでしょう。
鈴木:バイク全体の性能に対する価格としては高すぎるとは思わないですね。でも、パーツのグレードとしては少し疑問符が付く人はいると思います。私も正直、NXと言われるとすごく良いパーツという印象はあんまり無いですよね。手ごろな完成車向けのグレードで、重量もお世辞にも軽いとも言えないですし。
でも、そういったパーツに足を引っ張られているような印象も無かったんです。決してハイエンドとは呼べないグレードのパーツ構成なんですが、それを感じさせないくらいバイクのポテンシャルが高いというように感じました。
三上:そうですね、NXをつけているということは乗ってる時には全く意識しなかったです。プライベートのバイクにはハイエンドなコンポーネントを装着しているわけですが、このBRONSONでライドしているときにそういった部分でストレスを感じることは無かった。
やはりそれはフレーム自体の性能が優れているということだと思いますし、バイク全体として見てもどこかが破綻しているということが無いことの証明だと思います。確かにパーツスペックに対しての値付けとしては高く感じますが、実際にこのバイクがしっくりくる人にとっては妥当に感じられると思いますよ。
サンタクルズ BRONSON C R MX
フレーム:Carbon C MX 150mm Travel VPP™
フォーク:FOX Float X Performance
ショック:RockShox Lyrik Select, 160mm
コンポーネント:SRAM NX Eagle, 12spd
リム:RaceFace AR Offset 30 Rims
ブレーキ:SRAM G2 R
フロントタイヤ: Maxxis Minion DHF 29"x2.5, 3C, MaxxGrip, EXO, TR (27.5” tire on size XS)
リアタイヤ:Maxxis Minion DHR II 27.5"x2.4", 3C,EXO, TR
価格:814,660円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI HP
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
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