2022/03/15(火) - 18:25
ジャイアントがファクトリーオフロードチームとタッグを組み開発を行うグラベルバイクのREVOLT ADVANCED 2。グラベルレースでの実戦で鍛えられたマシンのインプレッションを行った。
アメリカを中心に盛り上がるグラベルライディング。一言でグラベルと言っても、冒険心をくすぐるような奥地まで自転車で突き進むアドベンチャーライドから、200マイル(320km)を走破するレース/ライドイベントまで様々な遊び方があり、ライダー自身が好むスタイルで自由に楽しめる懐の深い自転車遊びだ。
各バイクブランドも多様なグラベルライディングにあわせた自転車やパーツをラインアップに揃え、機材が年々充実し続けているカテゴリーでもある。ジャイアントとLiv、そしてプレミアムパーツブランドのカデックスもグラベル向けの新機材を続々と投入している。
その中の一つであるグラベルバイクのREVOLTシリーズが、2022年モデルで第3世代へと進化を遂げた。今作もジャイアント・ファクトリー・オフロードチームに所属するグラベルライダーたちが開発に参加し、レーシングバイクとして完成度を高めたという。
アンバウンドグラベルで好成績を残すジョシュア・ベリーは、グラベルレースがロードレースのように熾烈な争いになったという。そんなレースで少しでも速さを発揮するべく、新型REVOLTのアップデートが行われた。
今回の進化では軽量化を施されながらも、快適性や汎用性を向上させたことが特徴だ。重量面では前世代と比較してフレームとフォークの合計で160gもの軽量化を達成。200マイルも走るような超長距離レースでは軽さがアドバンテージとなってくれるだろう。
快適性を司るのはジャイアントが誇る振動吸収技術、D-Fuseテクノロジー。手や腰にかかる負担をバイクの性能で低減することで、常に衝撃が加わる砂利道でもライダーのパフォーマンスが発揮されるはずだ。
新型REVOLTではD-Fuseシートポストが標準装備され快適性を確保しているが、30.9mmの丸型シートポストにも対応。ドロッパーシートポストが必要な場面でこの仕様は活躍してくれるだろう。D-Fuseを使用する場合はシムを挟み込み、丸型を使用する場合はシムを外すだけという簡単な作業でシートポストの種類を変更することができる。
汎用性という面ではリアエンドに搭載されたフリップチップも、走行状況に合わせて車体をカスタマイズできるポイントだ。エンドパーツの方向を入れ替えることで、リアセンター長をショート(425mm)/ロング(435mm)の2種類から調整が可能だ。
また、リアセンター長がショートの場合はタイヤクリアランスが42mm、ロングの場合は53mmと装着できるタイヤの幅も変化する。スピードを求めたい場面では40mmほどのタイヤを、路面状況が悪いレースなどではより太いタイヤを装着するなど臨機応変に機材をチョイスできるのは、新型REVOLTのメリットである。
また、今作ではジオメトリーの変更も行われている。ジョシュア・ベリー曰く、ボトムブラケットの高さ変更が最も重要な要素とのことだ。ハンガー下がりを70mmから80mmへと増やすことで、重心を低くし、ハイスピード走行でもグリップ力を稼ぎやすく、また高速巡航の安定感を演出してくれるだろう。
新型REVOLTはフォークの左右、トップチューブダウンチューブにストレージ用の台座が設けられており、超長距離ライドで多くの荷物を持ち運ぶことが可能。レースだけではなく、普段のグラベルライドでも活躍してくれるだろう。
今回インプレッションを行うのはカーボンモデルのREVOLT ADVENCED2。このモデルはD-Fuseハンドルバーがアセンブルされた一台だ。ライズライド店長の鈴木祐一が新型REVOLTの実力に迫る。
―インプレッション
「レースからアドベンチャーまでカバーする深みのあるバイク」鈴木祐一(ライズライド)
景色を楽しみながら、気持ちよく乗れるバイクですね。速く走る気持ちよさではなく、自転車に乗るシンプルな楽しさのあるバイクというのが、最初に感じた印象です。グラベルバイクの目的はレースからバイクパッキング、ワンデーツーリングまでと幅広いです。REVOLTはそれら全てをかなり高いレベルでカバーしてくれます。
レースにも対応できる反応性もありながら、様々なストレージなどを装着できるダボ穴の数も多い。マウンテンバイクまでとは言えないものの、ちょっとしたトレイルライドまでカバーするポテンシャルを持っています。細部の一つ一つを見ても、深みがあるトータルバランスの良いバイクですね。
グラベルレースに必要なバイクの反応性で言えば、BB周りに力をかけてペダリングしても、また少し速いペースで巡航してもフレーム剛性の弱さは全然感じませんでした。力の伝達効率が良く、ペダルにかけた力がしっかり推進力に変わっていく設計になっている。ハイスピードで走行しても不安定さがなく、よく出来ているバイクだなと感じました。
ダートやオフロードなど荒れた路面でもパワーを逃さず、路面衝撃の吸収性もとても高い。特にリア三角ステーやフロントフォークはかなりしなりを感じ、体重をかけたりジャンプのような動きをしても、手や身体への振動は軽減されていました。リア三角のストロークが1cm単位で起こっているような感じがして、まるでサスペンションが付いていると錯覚するような感覚でした。
僕はマウンテンバイクが好きで長年乗っているのですが、このバイクには”マウンテンバイクキラー”と言えるほどの使いやすさがあります。ヘッドアングルやフォークなどのジオメトリーが関係しているのだと思うのですが、リアセンターの短さによってタイヤが滑っても体勢を立て直しやすい。狭いところでのハンドリングの素早さとか、自転車自体を倒した時の安定性、振りやすさとコントロールのしやすさを兼ね備えています。
バイク自体の振動吸収性があまりにも高いので、D-Fuseだけの効果を感じ取ることは難しかったです。逆に言えばそのぐらいフレームが仕事しているということ。トップチューブのスローピングがシートポストの長さを確保したことで、快適性にはいい影響を与えていると思いますね。バイクパッキングの大きいサドルバックもつけやすくなるでしょうし。
ステムを交換してポジションを変更すれば走りのバリエーションも増えるし、ドロッバーシートポストレディでもある。調整幅が広く、これまでグラベルと言われてきた遊び方に対応できる優等生なバイクです。
カバーする領域が広いからこそ、どの様に遊んでも良い。だからちょっとでも「グラベルって面白そう」と思っている人はこのバイクから始めてほしいですね。パーツをカスタマイズしていきながら、自分のグラベルにおける方向性や、サイクリング自体の方向性を探していって欲しい。そんなグラベルという広いジャンルをカバーする懐の深いバイクでした。
ジャイアント REVOLT ADVANCED 2
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm
F.フォーク:Advanced-Grade Composite、Full Composite、OverDrive コラム 12mm Axle
ギアクランク:FSA OMEGA AGX
変速パーツ:SHIMANO GRX
ブレーキセット:SHIMANO GRX TR 160mm Rotors
タイヤ:GIANT CROSSCUT AT 1 700x38C Tubeless Ready
シフト段数:22 Speed
サイズ:430 (XS)、450 (S)、470 (M) mm
重量:9.4kg (470mm)
カラー:スターリーナイト
価格:385,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。トライアル、シクロクロス、MTBクロスカントリーの3つの種目で世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年に神奈川県相模原市橋本にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANAO
アメリカを中心に盛り上がるグラベルライディング。一言でグラベルと言っても、冒険心をくすぐるような奥地まで自転車で突き進むアドベンチャーライドから、200マイル(320km)を走破するレース/ライドイベントまで様々な遊び方があり、ライダー自身が好むスタイルで自由に楽しめる懐の深い自転車遊びだ。
各バイクブランドも多様なグラベルライディングにあわせた自転車やパーツをラインアップに揃え、機材が年々充実し続けているカテゴリーでもある。ジャイアントとLiv、そしてプレミアムパーツブランドのカデックスもグラベル向けの新機材を続々と投入している。
その中の一つであるグラベルバイクのREVOLTシリーズが、2022年モデルで第3世代へと進化を遂げた。今作もジャイアント・ファクトリー・オフロードチームに所属するグラベルライダーたちが開発に参加し、レーシングバイクとして完成度を高めたという。
アンバウンドグラベルで好成績を残すジョシュア・ベリーは、グラベルレースがロードレースのように熾烈な争いになったという。そんなレースで少しでも速さを発揮するべく、新型REVOLTのアップデートが行われた。
今回の進化では軽量化を施されながらも、快適性や汎用性を向上させたことが特徴だ。重量面では前世代と比較してフレームとフォークの合計で160gもの軽量化を達成。200マイルも走るような超長距離レースでは軽さがアドバンテージとなってくれるだろう。
快適性を司るのはジャイアントが誇る振動吸収技術、D-Fuseテクノロジー。手や腰にかかる負担をバイクの性能で低減することで、常に衝撃が加わる砂利道でもライダーのパフォーマンスが発揮されるはずだ。
新型REVOLTではD-Fuseシートポストが標準装備され快適性を確保しているが、30.9mmの丸型シートポストにも対応。ドロッパーシートポストが必要な場面でこの仕様は活躍してくれるだろう。D-Fuseを使用する場合はシムを挟み込み、丸型を使用する場合はシムを外すだけという簡単な作業でシートポストの種類を変更することができる。
汎用性という面ではリアエンドに搭載されたフリップチップも、走行状況に合わせて車体をカスタマイズできるポイントだ。エンドパーツの方向を入れ替えることで、リアセンター長をショート(425mm)/ロング(435mm)の2種類から調整が可能だ。
また、リアセンター長がショートの場合はタイヤクリアランスが42mm、ロングの場合は53mmと装着できるタイヤの幅も変化する。スピードを求めたい場面では40mmほどのタイヤを、路面状況が悪いレースなどではより太いタイヤを装着するなど臨機応変に機材をチョイスできるのは、新型REVOLTのメリットである。
また、今作ではジオメトリーの変更も行われている。ジョシュア・ベリー曰く、ボトムブラケットの高さ変更が最も重要な要素とのことだ。ハンガー下がりを70mmから80mmへと増やすことで、重心を低くし、ハイスピード走行でもグリップ力を稼ぎやすく、また高速巡航の安定感を演出してくれるだろう。
新型REVOLTはフォークの左右、トップチューブダウンチューブにストレージ用の台座が設けられており、超長距離ライドで多くの荷物を持ち運ぶことが可能。レースだけではなく、普段のグラベルライドでも活躍してくれるだろう。
今回インプレッションを行うのはカーボンモデルのREVOLT ADVENCED2。このモデルはD-Fuseハンドルバーがアセンブルされた一台だ。ライズライド店長の鈴木祐一が新型REVOLTの実力に迫る。
―インプレッション
「レースからアドベンチャーまでカバーする深みのあるバイク」鈴木祐一(ライズライド)
景色を楽しみながら、気持ちよく乗れるバイクですね。速く走る気持ちよさではなく、自転車に乗るシンプルな楽しさのあるバイクというのが、最初に感じた印象です。グラベルバイクの目的はレースからバイクパッキング、ワンデーツーリングまでと幅広いです。REVOLTはそれら全てをかなり高いレベルでカバーしてくれます。
レースにも対応できる反応性もありながら、様々なストレージなどを装着できるダボ穴の数も多い。マウンテンバイクまでとは言えないものの、ちょっとしたトレイルライドまでカバーするポテンシャルを持っています。細部の一つ一つを見ても、深みがあるトータルバランスの良いバイクですね。
グラベルレースに必要なバイクの反応性で言えば、BB周りに力をかけてペダリングしても、また少し速いペースで巡航してもフレーム剛性の弱さは全然感じませんでした。力の伝達効率が良く、ペダルにかけた力がしっかり推進力に変わっていく設計になっている。ハイスピードで走行しても不安定さがなく、よく出来ているバイクだなと感じました。
ダートやオフロードなど荒れた路面でもパワーを逃さず、路面衝撃の吸収性もとても高い。特にリア三角ステーやフロントフォークはかなりしなりを感じ、体重をかけたりジャンプのような動きをしても、手や身体への振動は軽減されていました。リア三角のストロークが1cm単位で起こっているような感じがして、まるでサスペンションが付いていると錯覚するような感覚でした。
僕はマウンテンバイクが好きで長年乗っているのですが、このバイクには”マウンテンバイクキラー”と言えるほどの使いやすさがあります。ヘッドアングルやフォークなどのジオメトリーが関係しているのだと思うのですが、リアセンターの短さによってタイヤが滑っても体勢を立て直しやすい。狭いところでのハンドリングの素早さとか、自転車自体を倒した時の安定性、振りやすさとコントロールのしやすさを兼ね備えています。
バイク自体の振動吸収性があまりにも高いので、D-Fuseだけの効果を感じ取ることは難しかったです。逆に言えばそのぐらいフレームが仕事しているということ。トップチューブのスローピングがシートポストの長さを確保したことで、快適性にはいい影響を与えていると思いますね。バイクパッキングの大きいサドルバックもつけやすくなるでしょうし。
ステムを交換してポジションを変更すれば走りのバリエーションも増えるし、ドロッバーシートポストレディでもある。調整幅が広く、これまでグラベルと言われてきた遊び方に対応できる優等生なバイクです。
カバーする領域が広いからこそ、どの様に遊んでも良い。だからちょっとでも「グラベルって面白そう」と思っている人はこのバイクから始めてほしいですね。パーツをカスタマイズしていきながら、自分のグラベルにおける方向性や、サイクリング自体の方向性を探していって欲しい。そんなグラベルという広いジャンルをカバーする懐の深いバイクでした。
ジャイアント REVOLT ADVANCED 2
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm
F.フォーク:Advanced-Grade Composite、Full Composite、OverDrive コラム 12mm Axle
ギアクランク:FSA OMEGA AGX
変速パーツ:SHIMANO GRX
ブレーキセット:SHIMANO GRX TR 160mm Rotors
タイヤ:GIANT CROSSCUT AT 1 700x38C Tubeless Ready
シフト段数:22 Speed
サイズ:430 (XS)、450 (S)、470 (M) mm
重量:9.4kg (470mm)
カラー:スターリーナイト
価格:385,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。トライアル、シクロクロス、MTBクロスカントリーの3つの種目で世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年に神奈川県相模原市橋本にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANAO
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