2022/03/18(金) - 18:03
AG2Rシトロエンやイスラエル・プレミアテックをサポートするヘルメットブランドのHJCから、プロ選手達が着用するオールラウンドモデルのIBEX 2.0をインプレッション。優れた通気性と独特なフィッティングシステムを備えたハイエンドモデルを紹介しよう。
オートバイ用ヘルメットメーカーとして1971年に設立されて以来、長い間育んできた豊富な経験と革新的なアイデアによりトップブランドの仲間入りを果たしたHJC。2018年からサイクルスポーツ用ヘルメットに参入するや否や注目を集め、その高性能ゆえに海外トップチームに支持され、また端正なルックスと流行を押さえたカラーリングによって一般ユーザーの間にも一気に浸透してきた。
インターマックスによって3月から国内展開がリスタートするHJC。当初はフラッグシップモデルの「IBEX 2.0」とセミエアロヘルメット「FURION 2.0」の2モデルのみ展開予定だったものの、13,200円のロード用末弟モデル「ATARA」や、TT/トライアスロン用のエアロヘルメット「ADWATT 1.5」と「ADWATT」(どちらも45,100円)、アーバンヘルメットのCALIDO PLUS(28,600円)とCALIDO(14,300円)、さらにキッズモデルの「GLEO」(13,200円)も取り扱いが決定し、本国のフルラインナップをほぼ網羅することとなる。(※価格は全て税込)
今回2記事連続でインプレッションを紹介するのは、ラインナップの中核に据わるIBEX 2.0とFURION 2.0。どちらもAG2Rシトロエンとイスラエル・プレミアテックの選手らの頭を守るプロユースモデルである。
フラッグシップモデルのIBEX(アイベックス)2.0は、2018年の自転車ヘルメット参入時に生み出されたIBEXを改良し、2020年に登場した第2世代モデル。リオ五輪覇者のグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)がゴールドペイントモデルを被っていたことでも知られたヘルメットで、モーターサイクル用ヘルメットで培ったエアロデザインを投入しつつ、考え抜かれたベンチレーションによって速く、そして快適であることを最重要視したレーシングモデルだ。
ルックス自体はデビューモデルと2.0の間でほぼ変わらない。2.0で大きく変わったポイントは外側ではなく内側にある。ダイヤルを廃したセルフフィッティング機構「SELFIT」と、空気の流れを阻害しないパッドを採用したエアチャンネルテクノロジー「COOLPATH」という2つのテクノロジーを投入したことが大きな改良点だ。
SELFITの最大の特徴となるのが一般的なダイヤル機構ではなくスプリングを用いた自動フィッティング機能。つまり、着用時も、外す時も、ダイヤルをカチチと回すのではなく、SELFIT部分を引っ張って離すだけという、自転車用ヘルメットでは他にない独創的なシステムとなっている。
もう一つの目玉となるCOOLPATHテクノロジーは、読んで字のごとく、頭部を冷却するために空気の流れを最適化するものだ。頭部とヘルメットの間に空間を生み出すCOOLPATHプレートを配置することで、効率的なエアフローを実現。常に新鮮な空気を取り込み続け、高い快適性を生み出すという。
スタイリッシュなシルエットはそのままに、大きく性能を向上させたHJCの最新作、IBEX2.0。サイズはS,M,Lの3種類展開となり、今回のテストではMサイズを使用した。それではインプレッションをお届けしよう。
−インプレッション
今回の試着担当は丸型頭のCW編集部員・藤原。HJCが自転車用をローンチし、国内でも展開され始めた際に前作となるIBEXを一度試着したことがあるのだが、その時の印象はユーロフィットとアジアンフィットの中間のシェル形状という感覚で、私にはフィットしていなかった。
そんな私が担当することとなった理由は一つ、IBEX 2.0がフィットしたから。数年前のイメージから打って変わり、IBEX 2.0はストレスなく着用できるようになっている。HJCがシェル形状を変更したのか、私の頭が変化したのかは定かではないが、とにかくフィットするようになった。
さて、私がどんなヘルメットを着用するかというと、私は典型的な丸型頭でカブトのS/Mサイズがジャストフィットする頭で、カスクであればLサイズ。各ブランドが用意するいわゆる”アジアンフィット”がベストマッチする頭だ。
同じくカブトやカスクがフィットする編集部員・高木にも着用してもらったが、彼にとっては若干被りが浅く、いくつかの部位で痛みが出てしまうとのこと。丸型頭でも合う、合わないがあるシェルのようだ。ヘルメットにおいて最も重要なフィッティングに関することなので、購入を検討する際は販売店で一度試着してもらいたい。
IBEX 2.0のフィッティングを説明する上で欠かせない部分がユニークなアジャスターシステムだ。バネのような仕組みで自動的にフィットするアジャスターとなっているが、バネの力は結構強くフィッティングベルトにかかるテンションは高め。
また、サポーターの上下位置によって、締め付け感が変化するような印象がある。サポーターを最下部まで移動させると強めに締まる感覚があり、上に移動させるにつれてフィットが緩くなるようだ。初めてのアジャスターということもあり。最初はズレるのではないかという心配もあったが、シェルのフィット感と相まって頭を前後左右に振っても滑ることはなく、完成度の高さを窺わせる。
一方でサポーターを最も下に配置した場合は、額と後頭部の両方から包むようにフィットするため、30分ほど経過した後には締め付け感が気になってしまった。痛みを感じるほどではない上、サポーター位置を変更することで、快適なポジションを見つけることができるため、着用する際は色々と試してもらいたい。
そして、ライドに出てみると真っ先にシェル内部プレートが機能していることが伝わってくる。近年のヘルメットはシェル内部に溝を設け、風の流れを維持することで通気性を向上させおり、IBEX 2.0も同様なのだが、それ以上にシェルと頭部の間の広い空間の存在を強く感じる。
今回は冬場のテストとなったため顕著に感じたが、冷たい空気の層が常に頭頂部にあるような感覚さえあった。実際は風が流れているものの、フィーリングとしては層が生み出されているよう。この空間があることで、低速や停車時にも通気性を発揮しているようだ。先述したエアフロー前提のヘルメットの場合は、走行中以外は風が流れないことがあるが、IBEX 2.0の場合はそのような状況でも熱気がこもらない。
そして、サイドに設けられた小さな穴も良い働きをしているようだ。側頭部にはベンチレーションホールが設けられていないものの、小さな穴から取り込まれたフレッシュな空気が側頭部から後頭部に駆け抜けていくのを感じる。排気の勢いが強いため、通気性の良さをさらに強く感じられた。
重量はIBEX 2.0のMサイズで実測228g。超軽量ヘルメットではないものの、肉厚のシェルとカバー面積の多いアウターシェルによってプロテクション性能を犠牲にしていないことが窺える。重すぎず、軽すぎない上に重量バランスも整えられているためか、実際に着用・走行した印象でも首が疲れてしまうことや、振り向きざまに重さを感じることはなかった。
優れた通気性と重量のバランスも相まって、ヒルクライムでも活躍できる性能を有していると感じる。フラッグシップのオールラウンドヘルメットを探している方には、ぜひ一度試してもらいたいと思うヘルメットだ。
HJC IBEX 2.0
サイズ:S、M、L
カラー:MT.GL ARMY GREEN、MT BLACK CHAMELEON、MT GREY SILVER LINE、MT.GL BLACK、MT.GL WHITE、WHITE LINE GREY、NAVY WHITE、MT.GL GREY MINT、MT.GL OFF WHITE PINK、RED BLACK
価格:37,400円(税込)
text&photo:Gakuto Fujiwara
オートバイ用ヘルメットメーカーとして1971年に設立されて以来、長い間育んできた豊富な経験と革新的なアイデアによりトップブランドの仲間入りを果たしたHJC。2018年からサイクルスポーツ用ヘルメットに参入するや否や注目を集め、その高性能ゆえに海外トップチームに支持され、また端正なルックスと流行を押さえたカラーリングによって一般ユーザーの間にも一気に浸透してきた。
インターマックスによって3月から国内展開がリスタートするHJC。当初はフラッグシップモデルの「IBEX 2.0」とセミエアロヘルメット「FURION 2.0」の2モデルのみ展開予定だったものの、13,200円のロード用末弟モデル「ATARA」や、TT/トライアスロン用のエアロヘルメット「ADWATT 1.5」と「ADWATT」(どちらも45,100円)、アーバンヘルメットのCALIDO PLUS(28,600円)とCALIDO(14,300円)、さらにキッズモデルの「GLEO」(13,200円)も取り扱いが決定し、本国のフルラインナップをほぼ網羅することとなる。(※価格は全て税込)
今回2記事連続でインプレッションを紹介するのは、ラインナップの中核に据わるIBEX 2.0とFURION 2.0。どちらもAG2Rシトロエンとイスラエル・プレミアテックの選手らの頭を守るプロユースモデルである。
フラッグシップモデルのIBEX(アイベックス)2.0は、2018年の自転車ヘルメット参入時に生み出されたIBEXを改良し、2020年に登場した第2世代モデル。リオ五輪覇者のグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)がゴールドペイントモデルを被っていたことでも知られたヘルメットで、モーターサイクル用ヘルメットで培ったエアロデザインを投入しつつ、考え抜かれたベンチレーションによって速く、そして快適であることを最重要視したレーシングモデルだ。
ルックス自体はデビューモデルと2.0の間でほぼ変わらない。2.0で大きく変わったポイントは外側ではなく内側にある。ダイヤルを廃したセルフフィッティング機構「SELFIT」と、空気の流れを阻害しないパッドを採用したエアチャンネルテクノロジー「COOLPATH」という2つのテクノロジーを投入したことが大きな改良点だ。
SELFITの最大の特徴となるのが一般的なダイヤル機構ではなくスプリングを用いた自動フィッティング機能。つまり、着用時も、外す時も、ダイヤルをカチチと回すのではなく、SELFIT部分を引っ張って離すだけという、自転車用ヘルメットでは他にない独創的なシステムとなっている。
もう一つの目玉となるCOOLPATHテクノロジーは、読んで字のごとく、頭部を冷却するために空気の流れを最適化するものだ。頭部とヘルメットの間に空間を生み出すCOOLPATHプレートを配置することで、効率的なエアフローを実現。常に新鮮な空気を取り込み続け、高い快適性を生み出すという。
スタイリッシュなシルエットはそのままに、大きく性能を向上させたHJCの最新作、IBEX2.0。サイズはS,M,Lの3種類展開となり、今回のテストではMサイズを使用した。それではインプレッションをお届けしよう。
−インプレッション
今回の試着担当は丸型頭のCW編集部員・藤原。HJCが自転車用をローンチし、国内でも展開され始めた際に前作となるIBEXを一度試着したことがあるのだが、その時の印象はユーロフィットとアジアンフィットの中間のシェル形状という感覚で、私にはフィットしていなかった。
そんな私が担当することとなった理由は一つ、IBEX 2.0がフィットしたから。数年前のイメージから打って変わり、IBEX 2.0はストレスなく着用できるようになっている。HJCがシェル形状を変更したのか、私の頭が変化したのかは定かではないが、とにかくフィットするようになった。
さて、私がどんなヘルメットを着用するかというと、私は典型的な丸型頭でカブトのS/Mサイズがジャストフィットする頭で、カスクであればLサイズ。各ブランドが用意するいわゆる”アジアンフィット”がベストマッチする頭だ。
同じくカブトやカスクがフィットする編集部員・高木にも着用してもらったが、彼にとっては若干被りが浅く、いくつかの部位で痛みが出てしまうとのこと。丸型頭でも合う、合わないがあるシェルのようだ。ヘルメットにおいて最も重要なフィッティングに関することなので、購入を検討する際は販売店で一度試着してもらいたい。
IBEX 2.0のフィッティングを説明する上で欠かせない部分がユニークなアジャスターシステムだ。バネのような仕組みで自動的にフィットするアジャスターとなっているが、バネの力は結構強くフィッティングベルトにかかるテンションは高め。
また、サポーターの上下位置によって、締め付け感が変化するような印象がある。サポーターを最下部まで移動させると強めに締まる感覚があり、上に移動させるにつれてフィットが緩くなるようだ。初めてのアジャスターということもあり。最初はズレるのではないかという心配もあったが、シェルのフィット感と相まって頭を前後左右に振っても滑ることはなく、完成度の高さを窺わせる。
一方でサポーターを最も下に配置した場合は、額と後頭部の両方から包むようにフィットするため、30分ほど経過した後には締め付け感が気になってしまった。痛みを感じるほどではない上、サポーター位置を変更することで、快適なポジションを見つけることができるため、着用する際は色々と試してもらいたい。
そして、ライドに出てみると真っ先にシェル内部プレートが機能していることが伝わってくる。近年のヘルメットはシェル内部に溝を設け、風の流れを維持することで通気性を向上させおり、IBEX 2.0も同様なのだが、それ以上にシェルと頭部の間の広い空間の存在を強く感じる。
今回は冬場のテストとなったため顕著に感じたが、冷たい空気の層が常に頭頂部にあるような感覚さえあった。実際は風が流れているものの、フィーリングとしては層が生み出されているよう。この空間があることで、低速や停車時にも通気性を発揮しているようだ。先述したエアフロー前提のヘルメットの場合は、走行中以外は風が流れないことがあるが、IBEX 2.0の場合はそのような状況でも熱気がこもらない。
そして、サイドに設けられた小さな穴も良い働きをしているようだ。側頭部にはベンチレーションホールが設けられていないものの、小さな穴から取り込まれたフレッシュな空気が側頭部から後頭部に駆け抜けていくのを感じる。排気の勢いが強いため、通気性の良さをさらに強く感じられた。
重量はIBEX 2.0のMサイズで実測228g。超軽量ヘルメットではないものの、肉厚のシェルとカバー面積の多いアウターシェルによってプロテクション性能を犠牲にしていないことが窺える。重すぎず、軽すぎない上に重量バランスも整えられているためか、実際に着用・走行した印象でも首が疲れてしまうことや、振り向きざまに重さを感じることはなかった。
優れた通気性と重量のバランスも相まって、ヒルクライムでも活躍できる性能を有していると感じる。フラッグシップのオールラウンドヘルメットを探している方には、ぜひ一度試してもらいたいと思うヘルメットだ。
HJC IBEX 2.0
サイズ:S、M、L
カラー:MT.GL ARMY GREEN、MT BLACK CHAMELEON、MT GREY SILVER LINE、MT.GL BLACK、MT.GL WHITE、WHITE LINE GREY、NAVY WHITE、MT.GL GREY MINT、MT.GL OFF WHITE PINK、RED BLACK
価格:37,400円(税込)
text&photo:Gakuto Fujiwara
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