2022/03/20(日) - 18:44
埼玉のプロショップ「スポーツバイクファクトリースズキ」が店休日に開催する人気ライドに参加。4つのグループが用意され、初級者から上級者まで誰もがサイクリングの楽しさを体感できる魅力的な内容なのでした。
「スポーツバイクファクトリースズキ」といえば、埼玉県内に2店舗を構えるプロショップ。通勤通学で使いやすいクロスバイクからトップモデルのロードバイクやトライアスロンバイク、MTBまでジャンル問わず幅広く取り扱っている人気ショップであり、平日・休日問わずライドイベントを企画しているユーザーフレンドリーなプロショップだ。
店主の鈴木卓史さんは、店主を務める傍ら、プロチーム「さいたまディレーブ」の監督も務める(最近ではショップYoutubeにも精力的に活動中)方。シクロワイアードのバイクインプレッション企画にも度々登場してくれていて、ロケ時にも常々「平日ライドをやっているから取材に来てよ!」と誘われていたこともあって、CW編集スタッフであり、さいたまディレーブの選手でもある私、高木がライド取材へ赴くことに。
その名もズバリ「平日ライド」は、バイクファクトリースズキでバイクを購入したユーザーを対象にしたショップライドだ。初級者から上級者までが満足できるHOTから順にミディアム、スウィート、スーパースウィートの計4つのコースをが用意され、脚力を問わず楽しめるようになっている。もちろんスタッフが帯同してくれるので、万が一のライド中のメカトラブルがあっても安心だ。
集合時間は8時で、"スーパースウィート"のみ、少し寝坊しても大丈夫(?)な8時30分。集合場所はさいたま市の荒川河川敷にある「秋ヶ瀬公園」。因みに、秋ヶ瀬公園は荒川沿いに約3km広がる公園で、サイクリストの憩いの地としても、それから超人気オフロードイベント「バイクロア」の会場としても有名な場所。
今回同行させてもらった"スーパースウィート"は「グループライドの楽しさを知る」ために設定された約50kmライド。荒川サイクリングロードを北上し、昼食ポイントで折り返し、コーヒーストップを経ながら戻る行程で、グルメやカフェに立ち寄り、それ以外にも休憩を多く挟むので、バイクに乗りはじめたばかりでも気軽に参加しやすい。
安全に、そして楽しく走るため、スタート前にはハンドサインや声掛けの方法がレクチャーされるほか、各グループは無線や位置情報アプリを駆使して進行状況などを共有する。もはやショップライドの域を超えた工夫で円滑な進行を図っているのだ。
我らが"スーパースウィート"はスタート前の自己紹介で自転車歴などを共有。普段からサイクリングをしているご夫婦だったり、お仕事の旦那様を置いて(?)参加されている女性だったり、定年退職後の趣味として楽しんでいる方だったり。グループを率いるのは、スタッフの中で最も経験豊富なスポーツバイクファクトリー店主の鈴木さんだ。
秋ヶ瀬公園から4人ずつの2グループに分けて荒川サイクリングロードへ。通称「荒サイ」は荒川河口の東京都江東区と江戸川区から埼玉県比企郡までの約90㎞に渡って走る、東京や埼玉のサイクリストの定番ルート。ちなみに、最近、秋ヶ瀬付近が舗装整備によって綺麗になったことも記しておきましょう。
冬の「荒サイ」といえば、あまりの爆風ぶりに激坂峠を登っているかのような感覚に陥る「荒川峠」という現象も有名。ところが幸い、この朝に「荒川峠」は現れず、日差しが暖かいサイクリング日和に。
JR川越線の踏切を越え、見えてくるのは埼玉県川越市とさいたま市西区に架かり上江橋(かみごうはし)。荒川と入間川を渡るために架けられ、一般国道で河川に架かる橋としては全長1,609.9mで日本最長。「関東地域の橋百選」にも選出されているんだとか(豆知識)。
以前まで「荒サイ」は上江橋の中腹付近にあったが、堤防改良工事に伴って令和6年5月(予定)まで、上江橋と川越上尾線入間大橋まで通行できなっている。、川越方面に向かって対岸を走り、入間大橋まで迂回する必要があるので、今後初めて走る方はご注意を。
入間大橋に向かう途中で、だんだんと向かい風が強くなってきた。やはり風が強くなってくると体力差も現れ始め、少し集団もばらけてしまったため、いったん入間大橋の袂で全員が集まるまで少し休憩タイム。
これはちょっと難しいアドバイスになっちゃうけど、と前置きしつつ鈴木さんが教えてくれたのはトレインの重要性。「今みたいな向かい風だと、前の人を風よけにすればかなり楽に走れるんですよ。上手い人だとこぶし一つ分まで近づけるんですが、お互い慣れてないと落車の原因にもなるので、怖くない範囲で近づいてみると良いでしょう」というアドバイス。
入間大橋を渡り、荒サイから一度それてスタート地点から18kmのコンビニで一度ストップ。補給を取りつつ今後のルート確認があったりと、もしはぐれてしまっても大丈夫なように気が配られている。
再スタート後は首都圏外周部をぐるりと囲む高速道路「圏央道」の高架下を巡航するルートへ。綺麗な舗装路で走りやすいものの、冬場は日陰で凍結していることも...。広大な田んぼ道を抜けた先に、折り返し地点であり、最初の目的地である「武蔵野きしめん本舗」に到着。20台くらいは停められそうなしっかりとしたバイクラックの用意も嬉しい、サイクリストフレンドリーなお店だ。
編集部が所在している東大和付近にも「武蔵野うどん」の店はいくつもあり、埼玉出身の私にとって昔から食べてきたなじみのある存在だが、「武蔵野きしめん」というのは初耳。もちろんこのお店も初めてだったので、鈴木店長にオススメを聞いてみると「辛味噌きしめん一択だよ!」ということで記念すべき初注文は辛味噌きしめんに。
辛さは普通と1辛、2辛、3辛、鬼辛と5段階の辛さが用意されているので迷っていると「鬼辛しかないでしょ!」と鈴木店長。しかし、実は辛さ耐性は低めなので、普通の辛さをチョイス(笑)。平打ちのきしめんが旨辛い出汁によく絡み合い、相性抜群。麺自体もコシがあって食べ応えも十分だ。辛くないメニューも気になってきたので、秘密の再訪ショップリストに書き込んでおくことに。
お腹を満たした後はついついまったりしたくなるものの、まだまだ日の短い冬場ということもあって、そそくさと2つ目の目的地であるカフェに向かう。行きはあんなに辛かった向かい風も、帰りは背中を押してくれる追い風に。参加者のみなさんも、一段とスピードを上げて一直線に荒サイを南下していく。ドクターヘリもスタンバイしている飛行機見学スポットの「ホンダエアポート」を過ぎれば、目的地のカフェまでもうひと頑張り。
この日2度目の入間大橋に差し掛かったところで、グループライド初参加の女性が身体の痛みを訴えたので、急遽鈴木さんがその場でサドルの高さや前後位置を調整していた。ライド中のトラブルにもすぐに対応してくれるのもショップライドの良い点だ。
この日2度目の休憩ポイント「BigMouse コーヒーと発酵の店。」は、荒川サイクリングロードからすぐのところにある古民家カフェ。グループライドでも立ち寄りやすく、日当たりが良いテラス席で愛車を横目にこだわりのコーヒーを頂けるのだ。ちなみに冬季限定でオーダーできるおしるこや甘酒もたいへん美味しいし、ひと懐っこい猫ちゃんもいるので猫好きサイクリストなら一度は訪れてみるべし。
もと来た道を青空の下駆け抜けて、大きなトラブルもなく秋ヶ瀬公園に無事到着。50kmを初めて走り切った人もいて、全員がいい笑顔を浮かべていたのが印象的。走り終えた後の一体感や、おしゃべりこそがグループライドの魅力。ビギナーさんこそ、その楽しさを知ってほしいという鈴木代表の思いは、自然に参加した皆さんが共有していた様子。初対面でも一緒にサイクリングするだけで仲間の和が広がっていく。サイクリングっていいな、サイクリングって素晴らしい!改めてそう思った瞬間だったのでした。
スポーツバイクファクトリー店主 鈴木卓史氏インタビュー
CW:2021年の夏ごろから始まったという平日ライドですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
新型コロナウイルスの影響で商品の入荷がとても不安定になってしまった結果、売上も立たなくなってしまったんですよね。世の中は密を避けるために自転車に再注目、みたいな話も出ていたけど、新しいお客さんが来てもエントリーモデルのバイクはどこも在庫が払底していたんですよ。
それで、じゃあどうしよう?僕らのストロングポイントってなんだろうか?と考えたときに、それは今まで僕たちを選んでくれたお客さんだと。これまで自転車を買ってくれた方の中でも、やっぱり疎遠になってしまっている方もいらっしゃって。
環境が変わって忙しいとか、自転車自体に飽きちゃったとか、いろいろ理由はあると思うんですが、そういう方にもまた自転車の楽しみを思い出してもらえれば嬉しいな、と。お客さんをどんどん楽しませていくことで、自転車店が親しみやすい存在となれば、良い循環が回っていくのではないか、と思って始めたのが、この平日ライドなんです。
週末はお店の仕事があるので、平日にやる代わりに全レベルに対応したライドをやることにしました。とはいえやはり平日開催ということもあるので、集まらなければそれはそれで良いと思っていましたが、始めてみたら結構好評で(笑)。とりあえず1年間やってみようと思って続けている感じです。
CW:今日の参加者は何名ですか?
31名でした。募集もホームページには出さないで、メルマガだけで呼びかけています。大切なお客さんのために開催しています。
CW:実際、開催してみてどうですか?
正直なところ、予想以上の反響ですね。平日にこんなに集まってくれて驚きました。良くて10人くらいかなと思っていたんですけど、蓋を開けてみれば予想をはるかに超える人数で。要因としては、昔に比べると、平日でもお客さんがお店に来るようになっている。コロナでテレワークになっていたり、社会背景的に平日が休みやすくなっているみたいですね。
土日だと小さいお子さんがいる家庭だったら、自転車に乗るのって後ろめたいこともあるじゃないですか。子供の世話を押し付けてる、みたいな。でも、平日だったら子供は学校に行っているので、そういった心配も少ないのかな、と。これまでとは違う新しい切り口として始めてみた平日ライドですが、いろいろなコトが見えてきたのは収穫ですね。
CW:スズキバイクファクトリーでは土日もライドをやっていますよね?
土日もクラブライドをやっていますが、日曜日の開催が多いです。参加人数は10~20人くらいだから平日ライドの方が多いですね。時間の制約も緩いから来やすいのかもしれないです。
CW:お店の定休日に合わせて平日ライドを開催しているんですか?
お店の定休日は水曜日と木曜日ですね。定休日が水曜日だから平日ライドやるわけではなくて、お客さんに平日ライドをやるなら、どの曜日が良いかグーグルアンケートを取ってみたんです。もし、月曜日が一番希望が多ければ、月曜日をお休みにして平日ライドを開催しようと考えていたんですよ。でもアンケート結果が水曜日が一番多くて、結果的に既存の定休日にマッチした感じでした。
CW::最後に一言お願いします。
ここ数年で、販売店の存在意義が問われているようになってきているし、コロナの影響でその流れは加速しています。通販もたくさんあって、D2Cを始めるブランドもこれから増えていくでしょう。ただ、モノを購入するだけならばインターネットで完結できる時代になりつつあります。
その中で、僕たち販売店の強みはエンドユーザーと直接繋がれることだと思っています。ただ、モノを売ってハイ終わり。ではなくって、自転車の楽しさを伝えることやコミュニティを作ることがショップの存在意義だと思いますね。一緒に楽しめる仲間がいれば自転車に乗るきっかけができて、ライドに行けばそこで新たなコミュニティができて、というようにどんどん繋がっていく。その結果、お店にもっと足を運んでもらえるようになれば嬉しいですね。
今回、スポーツバイクファクトリーの平日ライドに参加してみて、一言。「とても楽しかった!」というのが正直な気持ちだ。普段は巡航スピードが速いトレーニングライドしかしていない筆者だが、ゆっくり走るのは久しぶり。ゆっくりだからこそ季節の変化なども感じられるため、自然との一体感を感じた。
参加者に「今日の平日ライドはどうでしたか?」と問いかけても、皆口を揃えて「楽しかった!次回も参加したい!」という返答だった。初級者から上級者の方までそれぞれのニーズに合ったライドが用意されていて、誰でもサイクリングを楽しむことができることが良いと感じた。また、平日ライドに参加すれば、多くのライド仲間が増え、きっと今後のサイクリング人生がより良いものになるだろう。
text&photo:Michinari TAKAGI
「スポーツバイクファクトリースズキ」といえば、埼玉県内に2店舗を構えるプロショップ。通勤通学で使いやすいクロスバイクからトップモデルのロードバイクやトライアスロンバイク、MTBまでジャンル問わず幅広く取り扱っている人気ショップであり、平日・休日問わずライドイベントを企画しているユーザーフレンドリーなプロショップだ。
店主の鈴木卓史さんは、店主を務める傍ら、プロチーム「さいたまディレーブ」の監督も務める(最近ではショップYoutubeにも精力的に活動中)方。シクロワイアードのバイクインプレッション企画にも度々登場してくれていて、ロケ時にも常々「平日ライドをやっているから取材に来てよ!」と誘われていたこともあって、CW編集スタッフであり、さいたまディレーブの選手でもある私、高木がライド取材へ赴くことに。
その名もズバリ「平日ライド」は、バイクファクトリースズキでバイクを購入したユーザーを対象にしたショップライドだ。初級者から上級者までが満足できるHOTから順にミディアム、スウィート、スーパースウィートの計4つのコースをが用意され、脚力を問わず楽しめるようになっている。もちろんスタッフが帯同してくれるので、万が一のライド中のメカトラブルがあっても安心だ。
集合時間は8時で、"スーパースウィート"のみ、少し寝坊しても大丈夫(?)な8時30分。集合場所はさいたま市の荒川河川敷にある「秋ヶ瀬公園」。因みに、秋ヶ瀬公園は荒川沿いに約3km広がる公園で、サイクリストの憩いの地としても、それから超人気オフロードイベント「バイクロア」の会場としても有名な場所。
今回同行させてもらった"スーパースウィート"は「グループライドの楽しさを知る」ために設定された約50kmライド。荒川サイクリングロードを北上し、昼食ポイントで折り返し、コーヒーストップを経ながら戻る行程で、グルメやカフェに立ち寄り、それ以外にも休憩を多く挟むので、バイクに乗りはじめたばかりでも気軽に参加しやすい。
安全に、そして楽しく走るため、スタート前にはハンドサインや声掛けの方法がレクチャーされるほか、各グループは無線や位置情報アプリを駆使して進行状況などを共有する。もはやショップライドの域を超えた工夫で円滑な進行を図っているのだ。
我らが"スーパースウィート"はスタート前の自己紹介で自転車歴などを共有。普段からサイクリングをしているご夫婦だったり、お仕事の旦那様を置いて(?)参加されている女性だったり、定年退職後の趣味として楽しんでいる方だったり。グループを率いるのは、スタッフの中で最も経験豊富なスポーツバイクファクトリー店主の鈴木さんだ。
秋ヶ瀬公園から4人ずつの2グループに分けて荒川サイクリングロードへ。通称「荒サイ」は荒川河口の東京都江東区と江戸川区から埼玉県比企郡までの約90㎞に渡って走る、東京や埼玉のサイクリストの定番ルート。ちなみに、最近、秋ヶ瀬付近が舗装整備によって綺麗になったことも記しておきましょう。
冬の「荒サイ」といえば、あまりの爆風ぶりに激坂峠を登っているかのような感覚に陥る「荒川峠」という現象も有名。ところが幸い、この朝に「荒川峠」は現れず、日差しが暖かいサイクリング日和に。
JR川越線の踏切を越え、見えてくるのは埼玉県川越市とさいたま市西区に架かり上江橋(かみごうはし)。荒川と入間川を渡るために架けられ、一般国道で河川に架かる橋としては全長1,609.9mで日本最長。「関東地域の橋百選」にも選出されているんだとか(豆知識)。
以前まで「荒サイ」は上江橋の中腹付近にあったが、堤防改良工事に伴って令和6年5月(予定)まで、上江橋と川越上尾線入間大橋まで通行できなっている。、川越方面に向かって対岸を走り、入間大橋まで迂回する必要があるので、今後初めて走る方はご注意を。
入間大橋に向かう途中で、だんだんと向かい風が強くなってきた。やはり風が強くなってくると体力差も現れ始め、少し集団もばらけてしまったため、いったん入間大橋の袂で全員が集まるまで少し休憩タイム。
これはちょっと難しいアドバイスになっちゃうけど、と前置きしつつ鈴木さんが教えてくれたのはトレインの重要性。「今みたいな向かい風だと、前の人を風よけにすればかなり楽に走れるんですよ。上手い人だとこぶし一つ分まで近づけるんですが、お互い慣れてないと落車の原因にもなるので、怖くない範囲で近づいてみると良いでしょう」というアドバイス。
入間大橋を渡り、荒サイから一度それてスタート地点から18kmのコンビニで一度ストップ。補給を取りつつ今後のルート確認があったりと、もしはぐれてしまっても大丈夫なように気が配られている。
再スタート後は首都圏外周部をぐるりと囲む高速道路「圏央道」の高架下を巡航するルートへ。綺麗な舗装路で走りやすいものの、冬場は日陰で凍結していることも...。広大な田んぼ道を抜けた先に、折り返し地点であり、最初の目的地である「武蔵野きしめん本舗」に到着。20台くらいは停められそうなしっかりとしたバイクラックの用意も嬉しい、サイクリストフレンドリーなお店だ。
編集部が所在している東大和付近にも「武蔵野うどん」の店はいくつもあり、埼玉出身の私にとって昔から食べてきたなじみのある存在だが、「武蔵野きしめん」というのは初耳。もちろんこのお店も初めてだったので、鈴木店長にオススメを聞いてみると「辛味噌きしめん一択だよ!」ということで記念すべき初注文は辛味噌きしめんに。
辛さは普通と1辛、2辛、3辛、鬼辛と5段階の辛さが用意されているので迷っていると「鬼辛しかないでしょ!」と鈴木店長。しかし、実は辛さ耐性は低めなので、普通の辛さをチョイス(笑)。平打ちのきしめんが旨辛い出汁によく絡み合い、相性抜群。麺自体もコシがあって食べ応えも十分だ。辛くないメニューも気になってきたので、秘密の再訪ショップリストに書き込んでおくことに。
お腹を満たした後はついついまったりしたくなるものの、まだまだ日の短い冬場ということもあって、そそくさと2つ目の目的地であるカフェに向かう。行きはあんなに辛かった向かい風も、帰りは背中を押してくれる追い風に。参加者のみなさんも、一段とスピードを上げて一直線に荒サイを南下していく。ドクターヘリもスタンバイしている飛行機見学スポットの「ホンダエアポート」を過ぎれば、目的地のカフェまでもうひと頑張り。
この日2度目の入間大橋に差し掛かったところで、グループライド初参加の女性が身体の痛みを訴えたので、急遽鈴木さんがその場でサドルの高さや前後位置を調整していた。ライド中のトラブルにもすぐに対応してくれるのもショップライドの良い点だ。
この日2度目の休憩ポイント「BigMouse コーヒーと発酵の店。」は、荒川サイクリングロードからすぐのところにある古民家カフェ。グループライドでも立ち寄りやすく、日当たりが良いテラス席で愛車を横目にこだわりのコーヒーを頂けるのだ。ちなみに冬季限定でオーダーできるおしるこや甘酒もたいへん美味しいし、ひと懐っこい猫ちゃんもいるので猫好きサイクリストなら一度は訪れてみるべし。
もと来た道を青空の下駆け抜けて、大きなトラブルもなく秋ヶ瀬公園に無事到着。50kmを初めて走り切った人もいて、全員がいい笑顔を浮かべていたのが印象的。走り終えた後の一体感や、おしゃべりこそがグループライドの魅力。ビギナーさんこそ、その楽しさを知ってほしいという鈴木代表の思いは、自然に参加した皆さんが共有していた様子。初対面でも一緒にサイクリングするだけで仲間の和が広がっていく。サイクリングっていいな、サイクリングって素晴らしい!改めてそう思った瞬間だったのでした。
スポーツバイクファクトリー店主 鈴木卓史氏インタビュー
CW:2021年の夏ごろから始まったという平日ライドですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
新型コロナウイルスの影響で商品の入荷がとても不安定になってしまった結果、売上も立たなくなってしまったんですよね。世の中は密を避けるために自転車に再注目、みたいな話も出ていたけど、新しいお客さんが来てもエントリーモデルのバイクはどこも在庫が払底していたんですよ。
それで、じゃあどうしよう?僕らのストロングポイントってなんだろうか?と考えたときに、それは今まで僕たちを選んでくれたお客さんだと。これまで自転車を買ってくれた方の中でも、やっぱり疎遠になってしまっている方もいらっしゃって。
環境が変わって忙しいとか、自転車自体に飽きちゃったとか、いろいろ理由はあると思うんですが、そういう方にもまた自転車の楽しみを思い出してもらえれば嬉しいな、と。お客さんをどんどん楽しませていくことで、自転車店が親しみやすい存在となれば、良い循環が回っていくのではないか、と思って始めたのが、この平日ライドなんです。
週末はお店の仕事があるので、平日にやる代わりに全レベルに対応したライドをやることにしました。とはいえやはり平日開催ということもあるので、集まらなければそれはそれで良いと思っていましたが、始めてみたら結構好評で(笑)。とりあえず1年間やってみようと思って続けている感じです。
CW:今日の参加者は何名ですか?
31名でした。募集もホームページには出さないで、メルマガだけで呼びかけています。大切なお客さんのために開催しています。
CW:実際、開催してみてどうですか?
正直なところ、予想以上の反響ですね。平日にこんなに集まってくれて驚きました。良くて10人くらいかなと思っていたんですけど、蓋を開けてみれば予想をはるかに超える人数で。要因としては、昔に比べると、平日でもお客さんがお店に来るようになっている。コロナでテレワークになっていたり、社会背景的に平日が休みやすくなっているみたいですね。
土日だと小さいお子さんがいる家庭だったら、自転車に乗るのって後ろめたいこともあるじゃないですか。子供の世話を押し付けてる、みたいな。でも、平日だったら子供は学校に行っているので、そういった心配も少ないのかな、と。これまでとは違う新しい切り口として始めてみた平日ライドですが、いろいろなコトが見えてきたのは収穫ですね。
CW:スズキバイクファクトリーでは土日もライドをやっていますよね?
土日もクラブライドをやっていますが、日曜日の開催が多いです。参加人数は10~20人くらいだから平日ライドの方が多いですね。時間の制約も緩いから来やすいのかもしれないです。
CW:お店の定休日に合わせて平日ライドを開催しているんですか?
お店の定休日は水曜日と木曜日ですね。定休日が水曜日だから平日ライドやるわけではなくて、お客さんに平日ライドをやるなら、どの曜日が良いかグーグルアンケートを取ってみたんです。もし、月曜日が一番希望が多ければ、月曜日をお休みにして平日ライドを開催しようと考えていたんですよ。でもアンケート結果が水曜日が一番多くて、結果的に既存の定休日にマッチした感じでした。
CW::最後に一言お願いします。
ここ数年で、販売店の存在意義が問われているようになってきているし、コロナの影響でその流れは加速しています。通販もたくさんあって、D2Cを始めるブランドもこれから増えていくでしょう。ただ、モノを購入するだけならばインターネットで完結できる時代になりつつあります。
その中で、僕たち販売店の強みはエンドユーザーと直接繋がれることだと思っています。ただ、モノを売ってハイ終わり。ではなくって、自転車の楽しさを伝えることやコミュニティを作ることがショップの存在意義だと思いますね。一緒に楽しめる仲間がいれば自転車に乗るきっかけができて、ライドに行けばそこで新たなコミュニティができて、というようにどんどん繋がっていく。その結果、お店にもっと足を運んでもらえるようになれば嬉しいですね。
今回、スポーツバイクファクトリーの平日ライドに参加してみて、一言。「とても楽しかった!」というのが正直な気持ちだ。普段は巡航スピードが速いトレーニングライドしかしていない筆者だが、ゆっくり走るのは久しぶり。ゆっくりだからこそ季節の変化なども感じられるため、自然との一体感を感じた。
参加者に「今日の平日ライドはどうでしたか?」と問いかけても、皆口を揃えて「楽しかった!次回も参加したい!」という返答だった。初級者から上級者の方までそれぞれのニーズに合ったライドが用意されていて、誰でもサイクリングを楽しむことができることが良いと感じた。また、平日ライドに参加すれば、多くのライド仲間が増え、きっと今後のサイクリング人生がより良いものになるだろう。
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