UAEツアー3日目の短距離個人タイムトライアルでシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)が最速タイム。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)を打ち負かし、総合首位浮上に成功している。



アジュマーン首長国の首都アジュマーンを舞台にした9kmタイムトライアルアジュマーン首長国の首都アジュマーンを舞台にした9kmタイムトライアル photo: UAE Tour
2日間のスプリンターステージを終え、UAEツアー(UCI2.ワールドツアー)3日目に距離9kmの個人タイムトライアルが登場。TTスペシャリストの活躍の場であることはもちろん、強豪勢ひしめく個人総合成績争いにとっても鍵となる一日だ。

アラブ首長国連邦を構成するアジュマーン首長国の首都アジュマーンを舞台にしたタイムトライアルコースは昨年よりも更に4km短い9km。市街地を出発して4.5km東へ向かい、180度ターンで折り返すコースはものの見事にまっ平らで、短時間高強度のレースだ。そのためTTを得意とする選手はもちろんのこと、スプリンター勢も上位に食い込む一日になった。

行きは追い風、帰りは向かい風となるTTコースに向け、125人の選手たちがスタート。序盤には元U23TT世界王者のミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ)が10分07秒(平均53.3km/h)を叩き出してホットシートに座ったものの、スタートから飛ばしに飛ばしたシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)がビョーグを上回った。

圧倒的なタイムで突き進むシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)圧倒的なタイムで突き進むシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) photo: UAE Tour
ビッセガーに7秒甘んじたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)ビッセガーに7秒甘んじたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo: UAE Tour
追い風の往路をなんと60.9km/hで駆け抜け、180度ターンを攻め、ひときわ低い姿勢で向かい風の復路を飛ばしたビッセガーのタイムは9分43秒(平均55.5km/h)。対抗馬であり、絶対的優勝候補と目されていたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)もビッセガーとほぼ同じタイムで折り返しに入ったものの、向かい風区間でタイムを落としてしまう。「予定よりもずっと高いパワーで走れたけれど、最終的にビッセガーを讃えたい」と、ビッセガーから7秒落ちの9分50秒(平均54.9km/h)に甘んじた。

そして注目は、今後の山岳ステージでの走りぶりが期待されるオールラウンダー勢に集まった。UAEチームエミレーツ新加入のジョアン・アルメイダ(ポルトガル)はビッセガーから11秒落ちと健闘し、決してTTを得意としないアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)も29秒遅れにまとめる。

総合勢の中で最速タイム(区間3位)を叩き出したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)総合勢の中で最速タイム(区間3位)を叩き出したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo: CorVos
18秒遅れの区間4位に入ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)18秒遅れの区間4位に入ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo: CorVos
区間5位に食い込んだジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)区間5位に食い込んだジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo: UAE Tour
その中、コロナ明けでコンディションがやや疑問視されていたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)はアルメイダを上回る10分01秒(平均53.9km/h)でフィニッシュ。更にオランダTTチャンピオンのトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)はポガチャルを4秒上回る9分57秒(平均54.2km/h)で9kmTTを走り切った。

総合上位につけていたスプリンター勢の中では最終走者(総合首位)のヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が区間10位と健闘したものの、これまで維持していた総合リードを守り抜くことは叶わない。こうしてビッセガーがステージ優勝と、個人総合成績首位浮上を同時に達成した。

総合リーダーに立ったシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)総合リーダーに立ったシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) photo: UAE Tour
「誰かが最高の走りをするかもしれないので、(個人TTでは)最後まで結果が分からない。でも今日はフィニッシュラインで僕のタイムを確認して、良い結果になるだろうとは思っていた」と、TT世界チャンピオンを打破したビッセガーは言う。

昨年大会2位の雪辱を晴らしたビッセガーだが、この冬は舟状骨(手関節)骨折など困難を強いられていた。「ずっとこのTTステージを楽しみにしていたよ。この冬は"ラフ"で、修正するのに時間がかかった。でも今はやり遂げることができてとても嬉しい」と喜んでいる。

総合成績では「全力を出せたし、好調なのでこの後の山岳ステージが楽しみ」と言うデュムランが3位に入り、「これまでの10分走の中で最大出力を出せた」と言うポガチャルが4位、アルメイダが5位。役者が出揃った状態で、翌日のジュベルジャイス山頂フィニッシュを迎える。
UAEツアー2022第3ステージ結果
1位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) 0:09:43
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:07
3位 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +0:14
4位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +0:18
5位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:11
6位 ミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ) +0:24
7位 ステファン・デボッド(南アフリカ、アスタナカザフスタン)
8位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:25
9位 ヨハン・プリースパイタースン(デンマーク、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:26
10位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) +0:28
個人総合成績
1位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) 9:13:02
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:07
3位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) +0:12
3位 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +0:14
4位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +0:18
5位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:22
7位 ステファン・デボッド(南アフリカ、アスタナカザフスタン) +0:24
8位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:25
9位 ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:28
10位 アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:29
その他の特別賞
ポイント賞 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ヤングライダー賞 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)
チーム総合成績 EFエデュケーション・イージーポスト
text:So.Isobe
photo:CorVos

最新ニュース(全ジャンル)