2022/02/26(土) - 15:06
ベルギーに拠点を構えるリドレーが展開するグラベルバイクシリーズ"KANZO"。アドベンチャー志向、オールラウンドモデル、アルミモデルといった幅広いシリーズラインアップから、レースなどの快速ライド向けとなる"KANZO FAST"のインプレッションを行った。
春のクラシックやシクロクロスなど自転車競技で熱狂的な盛り上がりを見せるベルギー・フランドル地方。かの地に拠点を構えるバイクブランドがリドレーだ。CXレーシングバイクはもちろん石畳など荒れた路面での走行性能に優れるバイク開発に定評があり、世界的なトレンドとなっているグラベルバイクにもそのノウハウが活かされている。
リドレーはグラベルが流行の兆しを見せ始めた2016年、オールロードバイクと位置付けた"X-TRAIL"をローンチ。当初からディスクブレーキ、最大40Cのタイヤクリアランスを備えたバイクとされており、現在でも色褪せないスペックを備えたバイクだった。
その4年後、リドレーは新しいグラベルバイクシリーズとして、Kanzo SpeedとKanzo Adventureを発表。Kanzo Speedはタイヤクリアランス36mmまでとし、モデル名の通りスピードを重視するバイクに仕立てられ、Kanzo Adventureはキャリア用のアイレットなどを数多く搭載したツーリングバイクとして用意された。
グラベルバイクとカテゴライズされるとは言っても遊び方は様々で、Kanzo Speedのようにスピードを上げて未舗装路を駆け抜けることもあれば、荷物を積載してのんびりとツーリングすることもある。リドレーは多様な遊び方に対して、複数のモデルを揃えることで応えようとした。
さらにKanzo Speedをリリースした翌年、プロロードチームであるロット・スーダルと開発したロードレーサーの知見を落とし込んだグラベルバイクとして発表されたのが、今回インプレッションを行る"Kanzo Fast"だ。エアロロードのNoah Fastに非常に似たフォルムで、いかにも高速で走ることを得意としていそうな雰囲気を醸し出すレーシングバイクだ。
リドレーの説明によるとKanzo Fastは、オフロード60%、オンロード40%の割合で走ることを想定し、グラベルレースでパフォーマンスを発揮できるバイクとして開発されたという。プロロードレーサーも参戦し始め、高速化の兆しを見せているグラベルレースのトップ選手たちにとっては、Kanzo Fastのようなエアロ形状はアドバンテージとなるのだろう。
エアロダイナミクス面では"F-Tubing"と呼ばれるカムテールチューブ形状や、フロントフォーク先端のフラップ"F-Wings"が貢献する。さらに、フォーククラウンとダウンチューブのインテグレートデザインや、シートチューブもエアロロードらしいデザインだ。
リドレーはハンドル周りのケーブルをフル内装するためにD型断面のコラムを採用。ケーブル類を全て収納し、エアロ形状のステム一体型ハンドルを用いることで、空気抵抗削減を目指している。またKanzo Fastにはハンドルのドロップ部が16°フレアしたグラベル向けのモデルがアセンブルされていることもトピックだ。
グラベル走行での振動吸収性を確保するために、Kanzo FastではNoah Fastよりもシートステーとシートチューブの交点が下げられている。最大42mm幅のタイヤクリアランスも備えられているため、ワイドタイヤのエアボリュームによる快適性やグリップ力も発揮させられるだろう。
Kanzo Fastはフロントディレイラーの取付台座が省略された、フロントシングル専用マシンだ。ボトムブラケットの規格はBB86。フレーム重量はSサイズで1,170g、フォーク重量は490g。フレーム価格はハンドル、シートポスト込みで396,000円(税込)。
高速でグラベルを駆け抜けるためのレーシングマシン"Kanzo Fast"をテストしたのは、スポーツバイクファクトリーの鈴木卓史。エアロロード然としたグラベルバイクの印象は如何に。
-インプレッション
「ハイスピード走行が気持ち良いバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
KANZO FASTはハイスピードで走ることが楽しいバイクだったので、ほぼロードバイクだなと感じました。NOAH FASTをベースとしていることが納得できる走行性能は実現していますね。
剛性が高くて反応性に優れているフレームの基本性能に、フロント周りのエアロ形状が与えられたことで、北米のグラベルレースで速いスピードで駆け抜けるグループで走りたい方に適したバイクに作られています。もしくは今ロードバイクに乗っている人で、グラベルに興味がある人には相性が抜群に良いです。
見た目はロードバイクですが、42Cまで装着できるタイヤクリアランスがグラベルバイクらしいところだと思う。グラベルを走るときは太めのタイヤを履き、舗装路の割合が高くなるライドでは32Cのタイヤを装着してもいいと思う。
フレームとしての衝撃吸収性はそこそこですが、アセンブルされている40Cオーバーのタイヤが快適さや、低速走行での安定性を発揮してくれるし、荒れた路面で走る楽しさを感じさせてくれます。ベルギーの石畳を熟知しているだけあり、KANZO FASTの味を上手く付けていると思いました。
加えて走っていて感じたのは、直進安定性が高いハンドリング性能でした。ヘッドアングルが寝ているためか、ダンシングの時にハンドルが真っ直ぐ向こうとします。低速でも扱いやすく、オフロードの急坂を登ってみましたが、思った以上にスムーズに走れましたね。
フロントシングル専用と割り切った作りですが、平地で物足りなさを感じることは無く、急坂でもリアのビッグギアだけで十分足りました。フロントシングルはシンプルで、チェーン落ちのリスクも回避できるので走りに集中できると思います。
このバイクをオススメしたいのは、グラベルでも速く走りたい方、人と競いたい方。ロードのようにカスタマイズできるし、そのままグラベルにも行ける安心感があるから、様々な使い方ができるはず。河川敷のグラベルで楽しく走って気分転換したい時にぴったりなバイクだと思いますね。
リドレー Kanzo Fast
フレーム:30T/24T HMカーボン
フォーク:フルカーボン
フレーム重量:1,150g(XS)/ 1,170g(S)/ 1,190g(M)
フォーク重量:490g(コラム長300mm)
ヘッドサイズ:1-1/8 - 1-1/4
BB規格:BB86
シートポスト:Kanzo Fast Aero Seatpost(付属)
ハンドル/ステム:Kanzo Fast Integrated Cockpit(付属)
最大タイヤ幅:42mm
フレーム価格:396,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
春のクラシックやシクロクロスなど自転車競技で熱狂的な盛り上がりを見せるベルギー・フランドル地方。かの地に拠点を構えるバイクブランドがリドレーだ。CXレーシングバイクはもちろん石畳など荒れた路面での走行性能に優れるバイク開発に定評があり、世界的なトレンドとなっているグラベルバイクにもそのノウハウが活かされている。
リドレーはグラベルが流行の兆しを見せ始めた2016年、オールロードバイクと位置付けた"X-TRAIL"をローンチ。当初からディスクブレーキ、最大40Cのタイヤクリアランスを備えたバイクとされており、現在でも色褪せないスペックを備えたバイクだった。
その4年後、リドレーは新しいグラベルバイクシリーズとして、Kanzo SpeedとKanzo Adventureを発表。Kanzo Speedはタイヤクリアランス36mmまでとし、モデル名の通りスピードを重視するバイクに仕立てられ、Kanzo Adventureはキャリア用のアイレットなどを数多く搭載したツーリングバイクとして用意された。
グラベルバイクとカテゴライズされるとは言っても遊び方は様々で、Kanzo Speedのようにスピードを上げて未舗装路を駆け抜けることもあれば、荷物を積載してのんびりとツーリングすることもある。リドレーは多様な遊び方に対して、複数のモデルを揃えることで応えようとした。
さらにKanzo Speedをリリースした翌年、プロロードチームであるロット・スーダルと開発したロードレーサーの知見を落とし込んだグラベルバイクとして発表されたのが、今回インプレッションを行る"Kanzo Fast"だ。エアロロードのNoah Fastに非常に似たフォルムで、いかにも高速で走ることを得意としていそうな雰囲気を醸し出すレーシングバイクだ。
リドレーの説明によるとKanzo Fastは、オフロード60%、オンロード40%の割合で走ることを想定し、グラベルレースでパフォーマンスを発揮できるバイクとして開発されたという。プロロードレーサーも参戦し始め、高速化の兆しを見せているグラベルレースのトップ選手たちにとっては、Kanzo Fastのようなエアロ形状はアドバンテージとなるのだろう。
エアロダイナミクス面では"F-Tubing"と呼ばれるカムテールチューブ形状や、フロントフォーク先端のフラップ"F-Wings"が貢献する。さらに、フォーククラウンとダウンチューブのインテグレートデザインや、シートチューブもエアロロードらしいデザインだ。
リドレーはハンドル周りのケーブルをフル内装するためにD型断面のコラムを採用。ケーブル類を全て収納し、エアロ形状のステム一体型ハンドルを用いることで、空気抵抗削減を目指している。またKanzo Fastにはハンドルのドロップ部が16°フレアしたグラベル向けのモデルがアセンブルされていることもトピックだ。
グラベル走行での振動吸収性を確保するために、Kanzo FastではNoah Fastよりもシートステーとシートチューブの交点が下げられている。最大42mm幅のタイヤクリアランスも備えられているため、ワイドタイヤのエアボリュームによる快適性やグリップ力も発揮させられるだろう。
Kanzo Fastはフロントディレイラーの取付台座が省略された、フロントシングル専用マシンだ。ボトムブラケットの規格はBB86。フレーム重量はSサイズで1,170g、フォーク重量は490g。フレーム価格はハンドル、シートポスト込みで396,000円(税込)。
高速でグラベルを駆け抜けるためのレーシングマシン"Kanzo Fast"をテストしたのは、スポーツバイクファクトリーの鈴木卓史。エアロロード然としたグラベルバイクの印象は如何に。
-インプレッション
「ハイスピード走行が気持ち良いバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
KANZO FASTはハイスピードで走ることが楽しいバイクだったので、ほぼロードバイクだなと感じました。NOAH FASTをベースとしていることが納得できる走行性能は実現していますね。
剛性が高くて反応性に優れているフレームの基本性能に、フロント周りのエアロ形状が与えられたことで、北米のグラベルレースで速いスピードで駆け抜けるグループで走りたい方に適したバイクに作られています。もしくは今ロードバイクに乗っている人で、グラベルに興味がある人には相性が抜群に良いです。
見た目はロードバイクですが、42Cまで装着できるタイヤクリアランスがグラベルバイクらしいところだと思う。グラベルを走るときは太めのタイヤを履き、舗装路の割合が高くなるライドでは32Cのタイヤを装着してもいいと思う。
フレームとしての衝撃吸収性はそこそこですが、アセンブルされている40Cオーバーのタイヤが快適さや、低速走行での安定性を発揮してくれるし、荒れた路面で走る楽しさを感じさせてくれます。ベルギーの石畳を熟知しているだけあり、KANZO FASTの味を上手く付けていると思いました。
加えて走っていて感じたのは、直進安定性が高いハンドリング性能でした。ヘッドアングルが寝ているためか、ダンシングの時にハンドルが真っ直ぐ向こうとします。低速でも扱いやすく、オフロードの急坂を登ってみましたが、思った以上にスムーズに走れましたね。
フロントシングル専用と割り切った作りですが、平地で物足りなさを感じることは無く、急坂でもリアのビッグギアだけで十分足りました。フロントシングルはシンプルで、チェーン落ちのリスクも回避できるので走りに集中できると思います。
このバイクをオススメしたいのは、グラベルでも速く走りたい方、人と競いたい方。ロードのようにカスタマイズできるし、そのままグラベルにも行ける安心感があるから、様々な使い方ができるはず。河川敷のグラベルで楽しく走って気分転換したい時にぴったりなバイクだと思いますね。
リドレー Kanzo Fast
フレーム:30T/24T HMカーボン
フォーク:フルカーボン
フレーム重量:1,150g(XS)/ 1,170g(S)/ 1,190g(M)
フォーク重量:490g(コラム長300mm)
ヘッドサイズ:1-1/8 - 1-1/4
BB規格:BB86
シートポスト:Kanzo Fast Aero Seatpost(付属)
ハンドル/ステム:Kanzo Fast Integrated Cockpit(付属)
最大タイヤ幅:42mm
フレーム価格:396,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
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