2022/01/24(月) - 11:58
フルメンバーが出揃ったCX世界選前最終レース。男女ともに緊張感溢れる戦いが繰り広げられ、マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)とエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が勝利を射止めた。
世界選手権前最後のレースであり、今シーズン最後のUCIシクロクロスワールドカップが、オランダは北ブラバント州のホーヘルハイデで開催。1週間後に迫った世界選手権に向けて緊張感が高まる中、最終調整に臨むスター選手たちがこぞって集結。大一番に向けての感触を確かめた。
2年連続で世界選直前レースとなったホーヘルハイデは、名物の長い登坂ストレートに代表されるハイスピードレイアウトが特徴。高速かつテクニカルな森林セクションや高低差の大きなキャンバーなど、ワンミスで大きな差がつく気を抜けないコースで、男女レースともに激しい駆け引きが繰り広げられた。
女子:フォスが貫禄の勝利。ブラントを2戦連続で退ける
群雄割拠の女子エリートレースでは序盤に10名を超えるトップ選手たちが先頭グループを組み、ベルギー選手権で13連覇したばかりのサンヌ・カント(ベルギー、IKOクレラン)がその後ろ。やがて、W杯のU23ランキングリーダージャージを着るパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)の加速によって、先頭集団が絞り込まれた。
レース時間が30分を超えたタイミングで先頭グループを形成したのは世界女王ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)と、そのブラントを破って新オランダ女王となったマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)、ピーテルス、そしてフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)の5人。積極的に踏むピーテルスの背後ではヴァスが脱落し、全7周回中の6周目にはブラントが加速したことでファンエンペルも振り落とされた。
勝負が動いたのは最終周回だった。ブラントが遅れているタイミングで、それまで息を潜めていたフォスが急加速し、直登区間を誰よりも速くクリア。一気に10秒以上の差を稼ぎ出したフォスが、フィニッシュまでの残り区間でリードを維持しきった。
下ハンドルを握って最終ストレートを駆け上がり、新オランダ女王がフィニッシュライン上でガッツポーズ。世界選手権の優勝候補筆頭と目されていたブラントを2戦連続で破り、その存在感を今一度証明してみせた。
「チャンスがあるとしたら登坂区間だと思っていたし、実際その区間は毎周回うまく走れていた。レース中の身体の感触も良かったけれど、序盤に仕掛けるのは時期尚早だと思っていた」と、誰よりも勝ち方を知るフォスは振り返る。「自分のCXシーズンに満足。いい感じのまま(世界選手権開催地の)アメリカに向かうことができるけれど、世界選手権は毎年世界選手権だけのレースがある」と、気持ちを新たに引き締めている。
また、フォスにこそ破れたものの、W杯のシリーズランキングは15戦中6勝を挙げたブラントの手に。「ライバルたちが昨日レースを走らなかった分負けたと思いたい。レースレベルは非常に高く、脚と経験値の両方で抜きん出るフォスは来週の優勝候補。オランダ勢は全員一緒に火曜日にアメリカに渡るので、誰も有利・不利が無い状態」と、連覇が懸かる世界選手権を見据えている。
男子エリート:ファンデルハールの落車で混乱、イゼルビットがロングスパート成功
男子エリートレースで抜群のスタートダッシュを決めたのはクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)。W杯ランキングリーダーのエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)や、世界選手権優勝候補の一人であるトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が15番手前後からの追い上げを強いられる中、欧州王者&新オランダ王者のラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)がレースをリードした。
この序盤、レース前インタビューで「良い走りをして世界選手権に繋げたい」と話したファンデルハールをフォローできたのはヘルマンスただ一人。大きなリードを得た2人を引き戻すべく3位グループ内からはピドコックが追走し、全9周回中の3周目に2人をキャッチする。ペースの上がりきった集団内では安定感ある走りが持ち味のトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)がバニーホップをミスして身体を強打するなど、普段以上に緊張感溢れるレースが繰り広げられた。
「世界選手権前の最終レースなので昨日と違って誰もが”フルガス”で挑んでくるだろう」とピドコックが言う通りのハイスピードバトル。すると、ピドコックに続く2番手を走っていたファンデルハールが轍が刻まれた下りコーナーでクラッシュしてしまう。限られたライン上で次々と後続選手が突っ込み、チェーントラブルに見舞われたコルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンス・サーカスCXチーム)はリタイア。こうして、思いがけずピドコックが大きなリードを得ることとなった。
今季W杯で2勝を挙げているピドコックがそのまま独走を続けるかと思われたものの、一時20秒以上のビハインドを背負ったファンデルハールはイゼルビットとマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)を引き連れ、猛然と追走を試みる。全9周回中の8周目にはイゼルビットが単独追撃の末ピドコックを捉え、続いてファンデルハールとファントーレンハウトも合流。一時決まりかけたかに見えたレースは、最終盤に振り出しへと戻った。
最終周回突入とともに強烈なアタックを仕掛けたのはイゼルビットだった。後ろを振り返りながら踏み込み、ハイスピードコーナーを攻めるW杯リーダーは、約3秒の決して少なくないアドバンテージを奪い取る。2位グループからは轍の処理に長けるピドコックが抜け出して迫ったものの、イゼルビットは距離を詰められながらもフィニッシュラインまでノーミスで逃げ切った。
今季最高の緊張感を伴うスピードレースで、イゼルビットが世界選手権に弾みをつける逆転勝利。最終ストレートのスプリントでピドコックを抜き去ったファンデルハールが2位に入り、ミスしながらも仕上がりぶりを披露する結果に。「落車で他選手のレースを台無しにしてしまったので申し訳なく思う。今日の結果自体は重要ではないけれど、2位はスーパーグッド。ずっといい感触で走れていたことが一番の収穫だった」と話している。
強さを誇示したイゼルビットはW杯ランキングリーダーも確定。「スタートが悪かったことで落車に巻き込まれてしまった。ファントーレンハウトがハイペースを刻んでくれたのでピドコックまで追いつくことができた。彼をパスできるとは思わなかったけれど満足している」と加えている。
一方3位に終わったピドコックは「リードしている時に踏みすぎたのかもしれない。エリがアタックしていた時は注意しておらず自分のミス。世界選手権のコースは今回と似ているし、今回争った4,5人くらいの争いになると思う」と予見している。
世界選手権前最後のレースであり、今シーズン最後のUCIシクロクロスワールドカップが、オランダは北ブラバント州のホーヘルハイデで開催。1週間後に迫った世界選手権に向けて緊張感が高まる中、最終調整に臨むスター選手たちがこぞって集結。大一番に向けての感触を確かめた。
2年連続で世界選直前レースとなったホーヘルハイデは、名物の長い登坂ストレートに代表されるハイスピードレイアウトが特徴。高速かつテクニカルな森林セクションや高低差の大きなキャンバーなど、ワンミスで大きな差がつく気を抜けないコースで、男女レースともに激しい駆け引きが繰り広げられた。
女子:フォスが貫禄の勝利。ブラントを2戦連続で退ける
群雄割拠の女子エリートレースでは序盤に10名を超えるトップ選手たちが先頭グループを組み、ベルギー選手権で13連覇したばかりのサンヌ・カント(ベルギー、IKOクレラン)がその後ろ。やがて、W杯のU23ランキングリーダージャージを着るパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)の加速によって、先頭集団が絞り込まれた。
レース時間が30分を超えたタイミングで先頭グループを形成したのは世界女王ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)と、そのブラントを破って新オランダ女王となったマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)、ピーテルス、そしてフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)の5人。積極的に踏むピーテルスの背後ではヴァスが脱落し、全7周回中の6周目にはブラントが加速したことでファンエンペルも振り落とされた。
勝負が動いたのは最終周回だった。ブラントが遅れているタイミングで、それまで息を潜めていたフォスが急加速し、直登区間を誰よりも速くクリア。一気に10秒以上の差を稼ぎ出したフォスが、フィニッシュまでの残り区間でリードを維持しきった。
下ハンドルを握って最終ストレートを駆け上がり、新オランダ女王がフィニッシュライン上でガッツポーズ。世界選手権の優勝候補筆頭と目されていたブラントを2戦連続で破り、その存在感を今一度証明してみせた。
「チャンスがあるとしたら登坂区間だと思っていたし、実際その区間は毎周回うまく走れていた。レース中の身体の感触も良かったけれど、序盤に仕掛けるのは時期尚早だと思っていた」と、誰よりも勝ち方を知るフォスは振り返る。「自分のCXシーズンに満足。いい感じのまま(世界選手権開催地の)アメリカに向かうことができるけれど、世界選手権は毎年世界選手権だけのレースがある」と、気持ちを新たに引き締めている。
また、フォスにこそ破れたものの、W杯のシリーズランキングは15戦中6勝を挙げたブラントの手に。「ライバルたちが昨日レースを走らなかった分負けたと思いたい。レースレベルは非常に高く、脚と経験値の両方で抜きん出るフォスは来週の優勝候補。オランダ勢は全員一緒に火曜日にアメリカに渡るので、誰も有利・不利が無い状態」と、連覇が懸かる世界選手権を見据えている。
男子エリート:ファンデルハールの落車で混乱、イゼルビットがロングスパート成功
男子エリートレースで抜群のスタートダッシュを決めたのはクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)。W杯ランキングリーダーのエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)や、世界選手権優勝候補の一人であるトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が15番手前後からの追い上げを強いられる中、欧州王者&新オランダ王者のラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)がレースをリードした。
この序盤、レース前インタビューで「良い走りをして世界選手権に繋げたい」と話したファンデルハールをフォローできたのはヘルマンスただ一人。大きなリードを得た2人を引き戻すべく3位グループ内からはピドコックが追走し、全9周回中の3周目に2人をキャッチする。ペースの上がりきった集団内では安定感ある走りが持ち味のトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)がバニーホップをミスして身体を強打するなど、普段以上に緊張感溢れるレースが繰り広げられた。
「世界選手権前の最終レースなので昨日と違って誰もが”フルガス”で挑んでくるだろう」とピドコックが言う通りのハイスピードバトル。すると、ピドコックに続く2番手を走っていたファンデルハールが轍が刻まれた下りコーナーでクラッシュしてしまう。限られたライン上で次々と後続選手が突っ込み、チェーントラブルに見舞われたコルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンス・サーカスCXチーム)はリタイア。こうして、思いがけずピドコックが大きなリードを得ることとなった。
今季W杯で2勝を挙げているピドコックがそのまま独走を続けるかと思われたものの、一時20秒以上のビハインドを背負ったファンデルハールはイゼルビットとマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)を引き連れ、猛然と追走を試みる。全9周回中の8周目にはイゼルビットが単独追撃の末ピドコックを捉え、続いてファンデルハールとファントーレンハウトも合流。一時決まりかけたかに見えたレースは、最終盤に振り出しへと戻った。
最終周回突入とともに強烈なアタックを仕掛けたのはイゼルビットだった。後ろを振り返りながら踏み込み、ハイスピードコーナーを攻めるW杯リーダーは、約3秒の決して少なくないアドバンテージを奪い取る。2位グループからは轍の処理に長けるピドコックが抜け出して迫ったものの、イゼルビットは距離を詰められながらもフィニッシュラインまでノーミスで逃げ切った。
今季最高の緊張感を伴うスピードレースで、イゼルビットが世界選手権に弾みをつける逆転勝利。最終ストレートのスプリントでピドコックを抜き去ったファンデルハールが2位に入り、ミスしながらも仕上がりぶりを披露する結果に。「落車で他選手のレースを台無しにしてしまったので申し訳なく思う。今日の結果自体は重要ではないけれど、2位はスーパーグッド。ずっといい感触で走れていたことが一番の収穫だった」と話している。
強さを誇示したイゼルビットはW杯ランキングリーダーも確定。「スタートが悪かったことで落車に巻き込まれてしまった。ファントーレンハウトがハイペースを刻んでくれたのでピドコックまで追いつくことができた。彼をパスできるとは思わなかったけれど満足している」と加えている。
一方3位に終わったピドコックは「リードしている時に踏みすぎたのかもしれない。エリがアタックしていた時は注意しておらず自分のミス。世界選手権のコースは今回と似ているし、今回争った4,5人くらいの争いになると思う」と予見している。
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第15戦 女子結果
1位 | マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 52:14 |
2位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:10 |
3位 | パック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) | +0:11 |
4位 | フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +0:18 |
5位 | カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス) | +0:21 |
6位 | シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:55 |
7位 | シルヴィア・ペルシコ(イタリア) | +1:27 |
8位 | デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +1:27 |
9位 | エヴァ・リヒナー(イタリア) | +2:00 |
10位 | セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) | +2:32 |
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第15戦 男子エリート結果
1位 | エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | 1:00:18 |
2位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:02 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:03 |
4位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +0:05 |
5位 | トーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:54 |
6位 | メース・ヘンドリクス(オランダ、IKOクレラン) | +1:03 |
7位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム) | +1:07 |
8位 | トム・メーウセン(ベルギー、CXチームデスシャフト・グループヘンス・マースコンテナーズ) | +1:08 |
9位 | トーン・ファンデボッシュ(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +1:10 |
10位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +1:20 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
Amazon.co.jp