2021/12/12(日) - 23:25
「スピードを上げると難しく豹変するコース」で繰り広げられたシーソーゲーム。一度は先行された織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を冷静に追い、そして抜き去った小坂光(宇都宮ブリッツェン)が自身2度目のシクロクロス全日本チャンピオンに輝いた。
最高気温が10度を超える好天の中、茨城県土浦市で開催されたシクロクロス全日本選手権最終種目の男子エリートレース。平坦基調ながら芝の公園の起伏やキャンバーを取り入れたコースは概ねドライながら、キャンバー区間のライン上など、一部に滑りやすい泥を残すコンディションで日本一を決める高速バトルが繰り広げられた。
号砲と共に81名が飛び出し、ディフェンディングチャンピオンの沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)がホールショットを決める。沢田と共に優勝候補に挙げられていた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、過去チャンピオンに輝いた竹之内悠(ToyoFrame)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)という4名が後続を置き去りにし、先頭グループを組み上げた。
織田や沢田らが刻むハイペースによって、2.7kmというロングコースながら周回数は10周回に決定。すると4名のトップグループのうち、2連シケインのバニーホップで沢田がチェーンを落としてしまう。すぐさま復帰し追走を試みた沢田だったが、ワンミスが命取りになる高速コースで背負った差はあまりにも大きかった。
沢田を引き離した先頭グループ内の、それぞれの走りは対照的だった。荒々しく踏む織田、冷静に駒を進める小坂、そしてスムーズかつしなやかに走る竹之内。ここ数年、脚の故障を抱えて以降調子の波に苦しんでいた竹之内だが、この日は中盤まで織田のペースに対応し、遅れてからもイーブンペースを守る仕上がりぶりを披露した。
大きな動きが生まれたのは、やはりトップグループの中で織田だけがバニーホップで越えるシケイン区間だった。スピード差を得て、そのまま次の緩い登りをがむしゃらに踏んだ織田は、数秒のリードで独走体制に持ち込むことに成功する。勝負の最前線に沢田不在の中、得意の勝ちパターンに持ち込んだかと思われた。
しかしその後方では「悠からのプレッシャーもありましたし、一気に追いつくよりも、余力を持ちながら差を詰めていこうと思った」と言う2番手小坂が虎視眈々と追走した。
5秒前後のリードを得て逃げる織田だったが、後半戦に移るにつれその勢いに陰りが出た。「一人旅が始まったときから異変は感じていたんですが、脚が攣ってしまったんです。全然踏めていないなと感じていて、光さんとのタイム差も縮まっていた」と振り返る。その異変に感づいていた小坂が追いつき、勝負は終盤戦で振り出しに戻った。
接戦に会場のボルテージが湧き上がる中、「泥セクションは僕の方が速く、そこをきっかけに攻めようと思った」と言う小坂が攻勢に出た。先行してシケインに入って織田の優位を潰し、続くピット横の直線区間でアタック。先行して泥区間に入るつもりだったと振り返る小坂だったが、「疲れていたのか、水分不足だったのか、原因は分かりません」と言う織田は足を攣らせ、反応できずに失速。ここで全日本チャンピオンジャージの行方が決まった。
織田の先行を許しながら、冷静なレース運びで逆転した小坂が一人でホームストレートにやってくる。宇都宮から駆けつけたファンの赤いチームフラッグが翻る中、力強く右手の拳を突き上げた。
「勝っちゃいました」と、自身も、そして周囲も驚く今季初勝利でのチャンピオン獲得。「正直言って、時と聖に勝てるイメージが全然ありませんでした。今日は自分のベストを尽くすだけだと思ったのですが、すごく冷静に走れた」と小坂は振り返る。
「先々週の能登のレースまでどんどん疲れが溜まっていて、全く自信がなかったんです。先週ようやくレースが無く、リセットできたのか、最後の追い込んだ練習では良い数字が出ていたんです。調子はかなり良かった」と加える。
「最後に(織田が)スプリント勝負を狙っているのかな、とも思いましたが、純粋にキツかったみたいですね。ピット前で踏んだ時にすぐに離れたので、これはいけると思いました」と勝負の瞬間を話す。フィニッシュ後は地面に倒れた織田と握手をし、その後27位で完走した父・正則(スワコレーシングチーム)と抱き合った。
「時と聖はめちゃくちゃ速いですが、僕や(竹之内)悠が速い場所も少なくない。何が起こるか分からないし、それを掴むために僕らは(選手活動を)やっている。そこをしっかり収めたのは自信になりました」と、自身2枚目のチャンピオンジャージに袖を通した小坂は話している。
表彰式で悔しさをにじませた織田が2位に入り、「海外を経験しているメンバーが前でレースしていたことは意味がありますね。(自分のコンディションは)嬉しいけど(結果は)悔しい。でも光が勝ったのは嬉しい」とライバルを讃える竹之内が2019年大会に続く表彰台に。
2年前から不調に悩まされる竹之内。「右脚の筋膜に腫瘍ができ、9月はまったく自転車に乗れませんでしたが、今これだけ乗れているなら、また以前のような調子を取り戻してヨーロッパに行って走りたい」と、欧州への再チャレンジに希望を見出している。
また、加藤健悟(臼杵レーシング)は全日本選手権で自身最高位となる5位。畑中勇介(KINAN Cycling team)や高木三千成(AX Cyclocross Team)など、スピード自慢の選手たちがトップ10入りを果たしている。
最高気温が10度を超える好天の中、茨城県土浦市で開催されたシクロクロス全日本選手権最終種目の男子エリートレース。平坦基調ながら芝の公園の起伏やキャンバーを取り入れたコースは概ねドライながら、キャンバー区間のライン上など、一部に滑りやすい泥を残すコンディションで日本一を決める高速バトルが繰り広げられた。
号砲と共に81名が飛び出し、ディフェンディングチャンピオンの沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)がホールショットを決める。沢田と共に優勝候補に挙げられていた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、過去チャンピオンに輝いた竹之内悠(ToyoFrame)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)という4名が後続を置き去りにし、先頭グループを組み上げた。
織田や沢田らが刻むハイペースによって、2.7kmというロングコースながら周回数は10周回に決定。すると4名のトップグループのうち、2連シケインのバニーホップで沢田がチェーンを落としてしまう。すぐさま復帰し追走を試みた沢田だったが、ワンミスが命取りになる高速コースで背負った差はあまりにも大きかった。
沢田を引き離した先頭グループ内の、それぞれの走りは対照的だった。荒々しく踏む織田、冷静に駒を進める小坂、そしてスムーズかつしなやかに走る竹之内。ここ数年、脚の故障を抱えて以降調子の波に苦しんでいた竹之内だが、この日は中盤まで織田のペースに対応し、遅れてからもイーブンペースを守る仕上がりぶりを披露した。
大きな動きが生まれたのは、やはりトップグループの中で織田だけがバニーホップで越えるシケイン区間だった。スピード差を得て、そのまま次の緩い登りをがむしゃらに踏んだ織田は、数秒のリードで独走体制に持ち込むことに成功する。勝負の最前線に沢田不在の中、得意の勝ちパターンに持ち込んだかと思われた。
しかしその後方では「悠からのプレッシャーもありましたし、一気に追いつくよりも、余力を持ちながら差を詰めていこうと思った」と言う2番手小坂が虎視眈々と追走した。
5秒前後のリードを得て逃げる織田だったが、後半戦に移るにつれその勢いに陰りが出た。「一人旅が始まったときから異変は感じていたんですが、脚が攣ってしまったんです。全然踏めていないなと感じていて、光さんとのタイム差も縮まっていた」と振り返る。その異変に感づいていた小坂が追いつき、勝負は終盤戦で振り出しに戻った。
接戦に会場のボルテージが湧き上がる中、「泥セクションは僕の方が速く、そこをきっかけに攻めようと思った」と言う小坂が攻勢に出た。先行してシケインに入って織田の優位を潰し、続くピット横の直線区間でアタック。先行して泥区間に入るつもりだったと振り返る小坂だったが、「疲れていたのか、水分不足だったのか、原因は分かりません」と言う織田は足を攣らせ、反応できずに失速。ここで全日本チャンピオンジャージの行方が決まった。
織田の先行を許しながら、冷静なレース運びで逆転した小坂が一人でホームストレートにやってくる。宇都宮から駆けつけたファンの赤いチームフラッグが翻る中、力強く右手の拳を突き上げた。
「勝っちゃいました」と、自身も、そして周囲も驚く今季初勝利でのチャンピオン獲得。「正直言って、時と聖に勝てるイメージが全然ありませんでした。今日は自分のベストを尽くすだけだと思ったのですが、すごく冷静に走れた」と小坂は振り返る。
「先々週の能登のレースまでどんどん疲れが溜まっていて、全く自信がなかったんです。先週ようやくレースが無く、リセットできたのか、最後の追い込んだ練習では良い数字が出ていたんです。調子はかなり良かった」と加える。
「最後に(織田が)スプリント勝負を狙っているのかな、とも思いましたが、純粋にキツかったみたいですね。ピット前で踏んだ時にすぐに離れたので、これはいけると思いました」と勝負の瞬間を話す。フィニッシュ後は地面に倒れた織田と握手をし、その後27位で完走した父・正則(スワコレーシングチーム)と抱き合った。
「時と聖はめちゃくちゃ速いですが、僕や(竹之内)悠が速い場所も少なくない。何が起こるか分からないし、それを掴むために僕らは(選手活動を)やっている。そこをしっかり収めたのは自信になりました」と、自身2枚目のチャンピオンジャージに袖を通した小坂は話している。
表彰式で悔しさをにじませた織田が2位に入り、「海外を経験しているメンバーが前でレースしていたことは意味がありますね。(自分のコンディションは)嬉しいけど(結果は)悔しい。でも光が勝ったのは嬉しい」とライバルを讃える竹之内が2019年大会に続く表彰台に。
2年前から不調に悩まされる竹之内。「右脚の筋膜に腫瘍ができ、9月はまったく自転車に乗れませんでしたが、今これだけ乗れているなら、また以前のような調子を取り戻してヨーロッパに行って走りたい」と、欧州への再チャレンジに希望を見出している。
また、加藤健悟(臼杵レーシング)は全日本選手権で自身最高位となる5位。畑中勇介(KINAN Cycling team)や高木三千成(AX Cyclocross Team)など、スピード自慢の選手たちがトップ10入りを果たしている。
シクロクロス全日本選手権2021 男子エリート
1位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェン) | 1:00:57 |
2位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1:01:15 |
3位 | 竹之内悠(ToyoFrame) | 1:1:17 |
4位 | 沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling) | 1:02:24 |
5位 | 加藤健悟(臼杵レーシング) | 1:02:33 |
6位 | 斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT) | 1:02:45 |
7位 | 丸山厚(BOMA/ROND CX) | 1:03:32 |
8位 | 島田真琴(ペダル) | 1:03:43 |
9位 | 畑中勇介(KINAN Cycling team) | 1:03:44 |
10位 | 高木三千成(AX Cyclocross Team) | 1:03:49 |
text:So Isobe
photo:Makoto AYANO
photo:Makoto AYANO
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