2021/11/08(月) - 18:51
シクロクロスヨーロッパ選手権でオランダ勢が勝利に次ぐ勝利。ラース・ファンデルハールが2019年以来の勝利を決め、ルシンダ・ブラントは世界選手権とオランダ選手権に続くチャンピオンジャージを手に入れている。
女子エリート:ヴァスを置き去りにしたブラントが勝利
2021年のシクロクロスヨーロッパ選手権の舞台は、オランダ北東部の州ドレンテ。2018年にオープンして以降、ロードオランダ選手権など各レースが開催されているサイクリングコース「VAMマウンテン」のアップダウンコースでヨーロッパチャンピオンジャージを賭けた戦いが繰り広げられた。
ゴミ焼却場の集積地の上に設けられた人工山には登坂距離150m/最大勾配15%の石畳登坂「VAMベルグ」が敷設され、フィニッシュラインはこの頂上。2日間に渡り、男女のジュニア、U23、エリートと合計6レースが行われた。なお昨年度のジュニアレースは新型コロナウイルス感染蔓延によって中止されていたため2年ぶりの開催となった。
初日のハイライトとなる女子エリートレースは、女子シクロクロス界を圧倒するオランダ軍団5名に対し、唯一カータ・ヴァス(ハンガリー)が割り込む形でスタート。チームプレーをさせまじとヴァスが積極的にペースアップを図ったものの、世界チャンピオンのルシンダ・ブラント(オランダ)が、ヴァスがピットイン&バイク交換をした隙にリードを奪った。
「他選手が苦しんでいたけれど、私は予想以上に走れていた」と振り返るブラントは、パンチ力が求められる短距離登坂コースで飛ぶように走り、追走するヴァスを引き離していく。「難しいコースだったけれど、今日勝つことはシーズンの中でも大きな目標だった」と言う世界チャンピオンはその後、誰の追い上げも許さなかった。
結果的に、40分近い独走劇を続けたブラントは2位グループに約1分もの大差をつけフィニッシュ。これまでオランダ選手権と世界選手権を制してきたブラントが、母国開催のヨーロッパ選手権を初めて制しトリプルクラウンを達成した。先日自身初となるワールドカップ優勝を挙げるなど波に乗るヴァスは2位がやっと。3位には元ヨーロッパ王者ヤラ・カステリン(オランダ)が入っている。
男子エリート:ファンデルハールが自身3年ぶりの勝利
今回は男女それぞれのカテゴリーに選手が散ったため、大会2日目のトリを務めた男子エリートレースに参戦したのは10ヶ国から僅か29名。ワウト・ファンアールト(ベルギー)やマチュー・ファンデルプール(オランダ)、トーマス・ピドコック(イギリス)の3名が未だシーズンインに向け準備を重ねる中、最も厚い選手層を誇るベルギーは8名を擁しタイトル保持(昨年優勝はエリ・イゼルビット)を目論んだ。
母国ファンの声援に後押しされたラース・ファンデルハール(オランダ)がホールショットを奪い、深く轍が刻まれた最初の泥セクションでは先頭付近で集団落車が発生し、ローレンス・スウェーク(ベルギー)やケヴィン・クーン(スイス)、ヨリス・ニューウェンハイス(オランダ)など上位入賞のチャンスがある選手たちがビハインドを背負う。今季ワールドカップ初優勝を飾るなど好調ぶりを発揮しているクィンティン・ヘルマンス以下ベルギー軍団が先頭グループを支配し、ファンデルハールとフェリペ・オルツ(スペイン)がその中に食い込む形となる。
ベルギーが6名を送り込んだ先頭グループからはオルツが遅れ、代わってジョシュア・ドゥバウ(フランス)がジョイン。全10周回中の3周目にはペースアップによって2分割され、遅れたグループからはファンデルハールがジャンプに成功するなどその好調ぶりを見せつける。一方マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)がアタックを仕掛ける背後ではイゼルビットがファンデルハールを従えたまま遅れ、そのまま勝負権を失ってしまった(イゼルビットは最終的に12位)。
レースが半分を消化した時点で先頭グループに残ったのはファントーレンハウトとヘルマンス、そしてトーン・アールツのベルギートリオ。ヘルマンスが5周目の登りで抜け出し、イゼルビットの道連れとなり遅れたファンデルハールは三たびの追走の末2番手グループを捉え、追い抜き、そして3周に及ぶ追走の末に「彼があれほど強いとは予測していなかった」と言うヘルマンスをキャッチ。ヘルマンスは追いつきざまに先行するファンデルハールに食らいついたものの、コンディションの差を見せつけるかのように走るファンデルハールはやがて独走体制に持ち込んだ。
ファンの声援に後押しされたファンデルハールが30秒リードで最後のVAMベルグを駆け上がる。両手で頭を抑え、そしてガッツポーズ。2019年1月以降長らく勝利から遠ざかっていた30歳が、過去1度制した経験を持つヨーロッパ選手権で勝った。
「調子が良かったけれど、すぐベルギー勢が僕のことを警戒しはじめた。戦略を立てなければならず、数で勝るベルギー勢に対してスマートに走らなければいけなかった。クィンティンに追いつくかどうか疑問だったけれどプッシュを続けた。美しく、そしてとてもタフなレースだった」とファンデルハールは振り返る。
「精神的なトラブルを抱え、レースを走る楽しみを見出す必要があった」と打ち明ける新チャンピオン。数年前にスヴェン(ネイス)のチームに移籍したことが功を奏した。今うまくいっているし、この恩恵をできるだけ長く続けたい」と話している。
また、男子U23では同カテゴリー世界チャンピオンのライアン・カンプ(オランダ)が、女子U23ではシリン・ファンアンローイ(オランダ)が制して勝利。6レースのうち、ベルギー勢は男子ジュニアの1勝のみに留まった。
女子エリート:ヴァスを置き去りにしたブラントが勝利
2021年のシクロクロスヨーロッパ選手権の舞台は、オランダ北東部の州ドレンテ。2018年にオープンして以降、ロードオランダ選手権など各レースが開催されているサイクリングコース「VAMマウンテン」のアップダウンコースでヨーロッパチャンピオンジャージを賭けた戦いが繰り広げられた。
ゴミ焼却場の集積地の上に設けられた人工山には登坂距離150m/最大勾配15%の石畳登坂「VAMベルグ」が敷設され、フィニッシュラインはこの頂上。2日間に渡り、男女のジュニア、U23、エリートと合計6レースが行われた。なお昨年度のジュニアレースは新型コロナウイルス感染蔓延によって中止されていたため2年ぶりの開催となった。
初日のハイライトとなる女子エリートレースは、女子シクロクロス界を圧倒するオランダ軍団5名に対し、唯一カータ・ヴァス(ハンガリー)が割り込む形でスタート。チームプレーをさせまじとヴァスが積極的にペースアップを図ったものの、世界チャンピオンのルシンダ・ブラント(オランダ)が、ヴァスがピットイン&バイク交換をした隙にリードを奪った。
「他選手が苦しんでいたけれど、私は予想以上に走れていた」と振り返るブラントは、パンチ力が求められる短距離登坂コースで飛ぶように走り、追走するヴァスを引き離していく。「難しいコースだったけれど、今日勝つことはシーズンの中でも大きな目標だった」と言う世界チャンピオンはその後、誰の追い上げも許さなかった。
結果的に、40分近い独走劇を続けたブラントは2位グループに約1分もの大差をつけフィニッシュ。これまでオランダ選手権と世界選手権を制してきたブラントが、母国開催のヨーロッパ選手権を初めて制しトリプルクラウンを達成した。先日自身初となるワールドカップ優勝を挙げるなど波に乗るヴァスは2位がやっと。3位には元ヨーロッパ王者ヤラ・カステリン(オランダ)が入っている。
男子エリート:ファンデルハールが自身3年ぶりの勝利
今回は男女それぞれのカテゴリーに選手が散ったため、大会2日目のトリを務めた男子エリートレースに参戦したのは10ヶ国から僅か29名。ワウト・ファンアールト(ベルギー)やマチュー・ファンデルプール(オランダ)、トーマス・ピドコック(イギリス)の3名が未だシーズンインに向け準備を重ねる中、最も厚い選手層を誇るベルギーは8名を擁しタイトル保持(昨年優勝はエリ・イゼルビット)を目論んだ。
母国ファンの声援に後押しされたラース・ファンデルハール(オランダ)がホールショットを奪い、深く轍が刻まれた最初の泥セクションでは先頭付近で集団落車が発生し、ローレンス・スウェーク(ベルギー)やケヴィン・クーン(スイス)、ヨリス・ニューウェンハイス(オランダ)など上位入賞のチャンスがある選手たちがビハインドを背負う。今季ワールドカップ初優勝を飾るなど好調ぶりを発揮しているクィンティン・ヘルマンス以下ベルギー軍団が先頭グループを支配し、ファンデルハールとフェリペ・オルツ(スペイン)がその中に食い込む形となる。
ベルギーが6名を送り込んだ先頭グループからはオルツが遅れ、代わってジョシュア・ドゥバウ(フランス)がジョイン。全10周回中の3周目にはペースアップによって2分割され、遅れたグループからはファンデルハールがジャンプに成功するなどその好調ぶりを見せつける。一方マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)がアタックを仕掛ける背後ではイゼルビットがファンデルハールを従えたまま遅れ、そのまま勝負権を失ってしまった(イゼルビットは最終的に12位)。
レースが半分を消化した時点で先頭グループに残ったのはファントーレンハウトとヘルマンス、そしてトーン・アールツのベルギートリオ。ヘルマンスが5周目の登りで抜け出し、イゼルビットの道連れとなり遅れたファンデルハールは三たびの追走の末2番手グループを捉え、追い抜き、そして3周に及ぶ追走の末に「彼があれほど強いとは予測していなかった」と言うヘルマンスをキャッチ。ヘルマンスは追いつきざまに先行するファンデルハールに食らいついたものの、コンディションの差を見せつけるかのように走るファンデルハールはやがて独走体制に持ち込んだ。
ファンの声援に後押しされたファンデルハールが30秒リードで最後のVAMベルグを駆け上がる。両手で頭を抑え、そしてガッツポーズ。2019年1月以降長らく勝利から遠ざかっていた30歳が、過去1度制した経験を持つヨーロッパ選手権で勝った。
「調子が良かったけれど、すぐベルギー勢が僕のことを警戒しはじめた。戦略を立てなければならず、数で勝るベルギー勢に対してスマートに走らなければいけなかった。クィンティンに追いつくかどうか疑問だったけれどプッシュを続けた。美しく、そしてとてもタフなレースだった」とファンデルハールは振り返る。
「精神的なトラブルを抱え、レースを走る楽しみを見出す必要があった」と打ち明ける新チャンピオン。数年前にスヴェン(ネイス)のチームに移籍したことが功を奏した。今うまくいっているし、この恩恵をできるだけ長く続けたい」と話している。
また、男子U23では同カテゴリー世界チャンピオンのライアン・カンプ(オランダ)が、女子U23ではシリン・ファンアンローイ(オランダ)が制して勝利。6レースのうち、ベルギー勢は男子ジュニアの1勝のみに留まった。
シクロクロスヨーロッパ選手権2021男子エリート結果
1位 | ラース・ファンデルハール(オランダ) | 1:01:44 |
2位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー) | +0:25 |
3位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー) | +0:54 |
4位 | トーン・アールツ(ベルギー) | +1:34 |
5位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー) | +1:52 |
6位 | イェンス・アダムス(ベルギー) | +2:07 |
7位 | ジョシュア・ドゥバウ(フランス) | +2:50 |
8位 | ヨリス・ニューウェンハイス(オランダ) | +2:58 |
9位 | ヤコブ・ドリゴーニ(イタリア) | +3:00 |
10位 | ダーン・ソエテ(ベルギー) | +3:05 |
シクロクロスヨーロッパ選手権2021女子エリート結果
1位 | ルシンダ・ブラント(オランダ) | 48:22 |
2位 | カータ・ヴァス(ハンガリー) | +0:56 |
3位 | ヤラ・カステリン(オランダ) | +1:02 |
4位 | セイリン・アルバラード(オランダ) | +1:29 |
5位 | デニセ・ベッツェマ(オランダ) | +2:01 |
6位 | エレーヌ・クラウツェル(フランス) | +2:21 |
7位 | アンマリー・ワースト(オランダ) | +2:34 |
8位 | アリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア) | +2:50 |
9位 | シルヴィア・ペルシコ(イタリア) | +2:58 |
10位 | サンヌ・カント(ベルギー) | +3:04 |
シクロクロスヨーロッパ選手権2021男子U23結果
1位 | ライアン・カンプ(オランダ) | 50:03 |
2位 | ニルス・ファンデプッテ(ベルギー) | +0:01 |
3位 | ティボー・ネイス(ベルギー) | +0:01 |
シクロクロスヨーロッパ選手権2021女子U23結果
1位 | シリン・ファンアンローイ(オランダ) | 44:09 |
2位 | パック・ピーテルス(オランダ) | +0:17 |
3位 | フェム・ファンエンペル(オランダ) | +1:13 |
シクロクロスヨーロッパ選手権2021男子ジュニア結果
1位 | アーロン・ドックス(ベルギー) | 47:06 |
2位 | デーヴィッド・ハフェルディングス(オランダ) | +0:47 |
3位 | ルカ・パレッティ(イタリア) | +0:48 |
シクロクロスヨーロッパ選手権2021男女子ジュニア結果
1位 | ゾーイ・バックステッド(イギリス) | 44:01 |
2位 | レオニーベントフェルド(オランダ) | +1:06 |
3位 | ニンケ・ヴィンケ(オランダ) | +1:30 |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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