2021/09/20(月) - 07:07
2021年9月19日、ベルギー西部のフランドル地方でUCIロード世界選手権が開幕した。世界最速男を決める男子エリート個人タイムトライアルで地元出身のワウト・ファンアールト(ベルギー)と接戦を繰り広げたフィリッポ・ガンナ(イタリア)が5秒差で2年連続アルカンシェル獲得を果たしている。
フランドル地方の平野を舞台にした高速バトル
例年とは異なり、男子エリートの個人タイムトライアルに始まり、同ロードレースで締めくくられるロード世界選手権。北海に面したクノックヘイストから内陸部のブルージュまで駆け抜ける43.3kmコースは平坦&直線基調。スタート&フィニッシュ付近には街中のテクニカルコーナーが点在するものの、登坂力やダウンヒルテクニックを全く必要としないコースは純粋な平地巡航スピードを選手たちに要求した。
39か国から集まった55名の挑戦者の中で、ガンナとファンアールトの走りはずば抜けていた。
1年前に地元イタリアのイモラで初めて世界選手権男子エリート個人タイムトライアル制覇を達成し、今シーズンの個人タイムトライアルでジロ・デ・イタリアのステージ2勝を含む4勝を飾っていたガンナと、ツール・ド・フランスで3種(集団スプリント、難関山岳、集団スプリント)のステージ3勝を飾って真のオールラウンドぶりを発揮していたファンアールト。コンディションの面では、金メダルを獲得した東京五輪トラック団体追い抜きにフォーカスしていたガンナがロード強度への順応に遅れていた一方で、ファンアールトは直前のツアー・オブ・ブリテンでステージ4勝&総合優勝という好調ぶり。地元ベルギー開催を追い風にして、コース沿道の観客を全員味方につけるファンアールトは下馬評通り序盤から他を圧倒した。
同じくベルギー出身で、当時19歳ながら2019年大会の男子エリートで銀メダルを獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が長時間ホットシートをキープしていた。前半にボトルが脱落するトラブルに見舞われながらも、21歳エヴェネプールが後半にかけてむしろペースアップ。直前のヨーロッパ選手権を制したシュテファン・キュング(スイス)やカスパー・アスグリーン(デンマーク)にタイムを更新されることなく、エヴェネプールがホットシートに座って最終2名の走りを見ることに。
ファンアールトは注目の第1計測(13.8km地点)でエヴェネプールから早速28秒リードし、最終走者ガンナが6秒差で続く出だし。フランドル地方にしては珍しく雨も降らず、風も吹かない穏やかな平坦コースを、時に60km/hに迫るスピードで快走したファンアールトが第2計測(33.3km地点)でエヴェネプールとのタイム差を31秒に。しかし、序盤から常に無線でライバルのタイムを確認しながら走っていたガンナが、このフィニッシュまでちょうど10kmを残した第2計測でファンアールトにほぼ並んだ。
大歓声を送る観客をかき分けながら進んだファンアールトと、スローダウンを促すジェスチャーを飛ばす観客に見守られて走ったガンナ。まずはファンアールトがエヴェネプールのタイムを38秒更新する47分53秒でフィニッシュして暫定トップに立つ。ファンアールトが呼吸を整えてバイクを降り、ヘルメットを取って振り返った視界に映ったのは、片手を突き上げてフィニッシュラインを切るガンナの姿だった。
優勝タイム47分47秒。平均スピード54.355km/hをマークしたガンナがファンアールトを5秒37という僅差で下した。ガンナは第1計測で6秒遅れたものの、第2計測までにその遅れを帳消しにし、ラスト10kmをファンアールトよりも6秒早く走った。
「コーナリングの僅かなスピード差で勝負が決まる世界。44kmを走って6秒差というのは、互角の勝負だったと言える」。僅差の勝負を制し、2年連続でアルカンシェルを獲得したガンナは語る。
「今シーズンが始まった時、東京五輪(団体追い抜き)とこの世界選手権(個人タイムトライアル)を目標に据えていた。この2大会で金メダルを獲得するなんて本当にファンタスティックだ。これから1年間、敬意を払ってアルカンシェルに恥じない走りをしたい」。1994年にスタートした個人タイムトライアルの歴史の中で、ガンナはマイケル・ロジャース(オーストラリア)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)、トニー・マルティン(ドイツ)、ローハン・デニス(オーストラリア)に続いて大会連覇を達成した。
ファンアールトは2年連続の銀メダル。シクロクロスでは3回世界チャンピオンを経験しているが、まだロード/個人タイムトライアルでアルカンシェルを獲得したことがない。2019年の銀メダルに続く銅メダル獲得となったエヴェネプールとともに、ファンアールトは地元ベルギーチームを率いて1週間後のロードレースで再び頂点を目指す。なお、優勝したガンナはロードレースには出場しない。
4位アスグリーン、5位キュングに次いで6位に入ったのは、これまで13回世界選手権個人タイムトライアルに出場し、2011年、2012年、2013年、そして2016年大会の優勝を含めて7つのメダルを獲得しているマルティン。出場13回の中で最低リザルトが9位という鉄人は、6位の成績で最後の個人タイムトライアルを終えた。36歳のマルティンは水曜日のミックスドリレーを最後に現役を退くことを明かしている。
フランドル地方の平野を舞台にした高速バトル
例年とは異なり、男子エリートの個人タイムトライアルに始まり、同ロードレースで締めくくられるロード世界選手権。北海に面したクノックヘイストから内陸部のブルージュまで駆け抜ける43.3kmコースは平坦&直線基調。スタート&フィニッシュ付近には街中のテクニカルコーナーが点在するものの、登坂力やダウンヒルテクニックを全く必要としないコースは純粋な平地巡航スピードを選手たちに要求した。
39か国から集まった55名の挑戦者の中で、ガンナとファンアールトの走りはずば抜けていた。
1年前に地元イタリアのイモラで初めて世界選手権男子エリート個人タイムトライアル制覇を達成し、今シーズンの個人タイムトライアルでジロ・デ・イタリアのステージ2勝を含む4勝を飾っていたガンナと、ツール・ド・フランスで3種(集団スプリント、難関山岳、集団スプリント)のステージ3勝を飾って真のオールラウンドぶりを発揮していたファンアールト。コンディションの面では、金メダルを獲得した東京五輪トラック団体追い抜きにフォーカスしていたガンナがロード強度への順応に遅れていた一方で、ファンアールトは直前のツアー・オブ・ブリテンでステージ4勝&総合優勝という好調ぶり。地元ベルギー開催を追い風にして、コース沿道の観客を全員味方につけるファンアールトは下馬評通り序盤から他を圧倒した。
同じくベルギー出身で、当時19歳ながら2019年大会の男子エリートで銀メダルを獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が長時間ホットシートをキープしていた。前半にボトルが脱落するトラブルに見舞われながらも、21歳エヴェネプールが後半にかけてむしろペースアップ。直前のヨーロッパ選手権を制したシュテファン・キュング(スイス)やカスパー・アスグリーン(デンマーク)にタイムを更新されることなく、エヴェネプールがホットシートに座って最終2名の走りを見ることに。
ファンアールトは注目の第1計測(13.8km地点)でエヴェネプールから早速28秒リードし、最終走者ガンナが6秒差で続く出だし。フランドル地方にしては珍しく雨も降らず、風も吹かない穏やかな平坦コースを、時に60km/hに迫るスピードで快走したファンアールトが第2計測(33.3km地点)でエヴェネプールとのタイム差を31秒に。しかし、序盤から常に無線でライバルのタイムを確認しながら走っていたガンナが、このフィニッシュまでちょうど10kmを残した第2計測でファンアールトにほぼ並んだ。
大歓声を送る観客をかき分けながら進んだファンアールトと、スローダウンを促すジェスチャーを飛ばす観客に見守られて走ったガンナ。まずはファンアールトがエヴェネプールのタイムを38秒更新する47分53秒でフィニッシュして暫定トップに立つ。ファンアールトが呼吸を整えてバイクを降り、ヘルメットを取って振り返った視界に映ったのは、片手を突き上げてフィニッシュラインを切るガンナの姿だった。
優勝タイム47分47秒。平均スピード54.355km/hをマークしたガンナがファンアールトを5秒37という僅差で下した。ガンナは第1計測で6秒遅れたものの、第2計測までにその遅れを帳消しにし、ラスト10kmをファンアールトよりも6秒早く走った。
「コーナリングの僅かなスピード差で勝負が決まる世界。44kmを走って6秒差というのは、互角の勝負だったと言える」。僅差の勝負を制し、2年連続でアルカンシェルを獲得したガンナは語る。
「今シーズンが始まった時、東京五輪(団体追い抜き)とこの世界選手権(個人タイムトライアル)を目標に据えていた。この2大会で金メダルを獲得するなんて本当にファンタスティックだ。これから1年間、敬意を払ってアルカンシェルに恥じない走りをしたい」。1994年にスタートした個人タイムトライアルの歴史の中で、ガンナはマイケル・ロジャース(オーストラリア)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)、トニー・マルティン(ドイツ)、ローハン・デニス(オーストラリア)に続いて大会連覇を達成した。
ファンアールトは2年連続の銀メダル。シクロクロスでは3回世界チャンピオンを経験しているが、まだロード/個人タイムトライアルでアルカンシェルを獲得したことがない。2019年の銀メダルに続く銅メダル獲得となったエヴェネプールとともに、ファンアールトは地元ベルギーチームを率いて1週間後のロードレースで再び頂点を目指す。なお、優勝したガンナはロードレースには出場しない。
4位アスグリーン、5位キュングに次いで6位に入ったのは、これまで13回世界選手権個人タイムトライアルに出場し、2011年、2012年、2013年、そして2016年大会の優勝を含めて7つのメダルを獲得しているマルティン。出場13回の中で最低リザルトが9位という鉄人は、6位の成績で最後の個人タイムトライアルを終えた。36歳のマルティンは水曜日のミックスドリレーを最後に現役を退くことを明かしている。
ロード世界選手権2021男子エリート個人タイムトライアル結果
1位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア) | 47:47 | 54.370km/h |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー) | +0:05 | 54.257km/h |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | +0:43 | 53.549km/h |
4位 | カスパー・アスグリーン(デンマーク) | +0:45 | 53.512km/h |
5位 | シュテファン・キュング(スイス) | +1:06 | 53.129km/h |
6位 | トニー・マルティン(ドイツ) | +1:17 | 52.930km/h |
7位 | シュテファン・ビッセガー(スイス) | +1:25 | 52.787km/h |
8位 | イーサン・ヘイター(イギリス) | +1:26 | 52.769km/h |
9位 | エドアルド・アッフィニ(イタリア) | +1:48 | 52.379km/h |
10位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) | +1:52 | 52.309km/h |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos
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