2021/07/14(水) - 17:17
日本のケミカルブランド、ヴィプロスの定番製品であるブルーノ、ロッサーノ、W3を紹介しよう。性能にこだわるユーザーやプロに向けたエッジーな製品を開発するブランドの紹介とともに製品の特徴をお届けする。
NIPPOヴィーニファンティーニをサポートしていたケミカルブランドのヴィプロス。名前の由来はVIPにPROS(プロ)を加えた造語であるが、そこにブランドとしてのアイデンティティが隠されている。
ヴィプロスは価格競争が激化している自動車等のケミカル分野に一石を投じるべく、価格に囚われずに高クオリティな製品を作るという信念をもとに立ち上げられたブランドだ。プロユースの製品を性能等にこだわりのあるユーザーに使ってもらいたいというのがヴィプロスの想いだ。
ヴィプロスの強みは、プロたちの声をすくい上げて素早く製品に反映させる体制が構築されていること。「ケミカルは好みがはっきりしているので、様々なフィードバックを頂くのですが、ヴィプロスとしての独自性のある製品をお届けするようにしています」とはヴィプロス代表の白石さん。
ヴィプロスで展開しているケミカル類は非常に多岐に渡り、一つ一つにキャラクターに富んでいる。例えばムオンは多くの人に支持されるプロダクトであり、その性能は多くの人が体感できるとの声もあるようだ。ムオンもケイテンでのフィードバックを基にして生まれた派生品であり、ラインアップの充実度は製品が進化を遂げている証でもある。
"サスペンド系"チェーンオイル ブルーノ、ロッサーノ、W3
数あるラインアップの中からまず紹介するのは、青、赤、緑のカラーが映えるブルーノ、ロッサーノ、W3(ダブサン)という3種類。これらはサスペンド系オイルと呼ばれ、馴染みのあるドライやウェット、ワックス系とは異なる呼び方がされているプロダクトだ。
状態を保つ、維持するといった意味あいを持つ「サスペンド」が示すところは、金属表面に滴下されたオイルがその場に留まろうとする性能のこと。一般的な潤滑油は摩擦係数を小さくしようとすると粘度が低くサラサラとしたオイルとなり、チェーンに留まろうとする力を強くしようとすると粘度が高いオイルとなる。この相反する性能を実現したのがサスペンドだ。
サスペンド系は注油する前は水よりも粘度が低く、滴下すると同時に金属表面に広がるという特性を持っている。しかし、滴下後30秒ほどで油膜を張り、その場に留まる性能が発揮される。この状態のことをサスペンドと呼んでいる。アルミバットなどで簡易的にデモンストレーションできるため、一度やってみて欲しい。
一般的なオイルは定着させるまでに待機時間が必要だが、ブルーノとロッサーノはわずかな待機時間で浸透剤が揮発し、オイル成分のみが残り性能が発揮され始めるという。滴下後余分なオイルを拭き取らずに済みかつ、ライド前に注しても効果が発揮される手軽さも魅力だろう。
非常に薄い被膜が形成され潤滑性能を実現しているが、粘度に頼らずとも遠心力に負けない定着力を実現されており、油が飛散しない(汚れにくい)かつ耐久性も確保しているという。もちろん負荷がかかった時に性能が発揮される極圧性能を備えており、400km程の耐久性が目安となるという。
サスペンド系のラインアップはブルーノが基本プロダクトとして用意されており、さらに汚れにくいモデルとしてロッサーノ、水で洗い落とせるW3(Wash With Water、ダブサン)が展開されている。ロッサーノが汚れにくいというのは、定着する被膜の厚みをブルーノより薄く仕上げられるため。耐久度は落ちてしまうが、頻繁にチェーンメンテナンスを行い、綺麗なチェーンの状態を保ちたい方にぴったりだろう。
W3は水溶性を備えることでサッと汚れを落とせる性能を実現したモデル。水を含まない限りブルーノと同じ性能を発揮するが、水がかかると乳化して流れていくという。マウンテンバイクのレース会場で水を大胆に使った洗車方法を目の当たりにした時に着想を得たというルブリカントで、メンテナンス性を重視する時に活躍してくれるはずだ。
特に、水が付着する心配の少ないインドアサイクリングにおいては非常に効果的。サスペンド系の定着の良さから飛散しにくく床を汚す心配は少ないものの、それでも飛散してしまった油分を拭き取る時に水溶性であれば濡れ雑巾で拭くだけでサッと落とせるのは魅力的だろう。他にもアイデア次第で様々な使い方ができそうだ。
―インプレッション(ブルーノ)
日常的にロング系ライドを楽しんでいる私の場合、いろいろなチェーンケミカルを使って試してみているけれど、持ちが良く、汚れにくいという2点のバランスでもっとも使う頻度が高いのがこのブルーノだ。やや高価な点はネックなので、チェーンのリンク部の一コマ一コマに無駄がないように一滴づつ注油するようにしている。この挿しかたがヴィプロス推奨の挿し方でもある。
粘度の低い透明な青い液がチェーンのリンクに素早く浸透していき、油感がない。走ってみても実際に汚れを寄せ付けにくく、プーリーやギア歯にも油汚れの塊が付着しにくい。異音を包みこんで消してしまう粘性の高いオイルに比べればチェーンのノイズはある。チェーンがギアと接触する乾いた音がするが、回転が軽く、滑りの良い状態が長く続く。
雨にも流れにくい。雨が一日降り続くなかを走るような日でもチェーン表面が曇るような汚れは付着するが、油切れ状態にはなりにくい。晴れなら400km走っても潤滑性能が確実にキープされていて、その距離を超えるとノイズが徐々に気になるようになっていくが、条件が良ければ500kmを超えても油切れを感じない状態は維持されている。チェーン表面の皮膜は落ちても、リンク内には潤滑成分が残っている感じだ。
汚れないという謳い文句だが、まったく汚れないことはなく、やはり次第にホコリを集めてチェーン表面は黒くなり、手で触ると黒い汚れはつくことになる。汚れないオイルは無い、という結論。対して室内トレーナーでの使用なら長く使ってもほとんど汚れないと言っていいほど。(ただし室内使用に最適なダブサンがある)
ブルーノは四国一周サイクリングでも使用した。記事で紹介したとおり、付属の容器に注油2回ぶんを入れて携行して、1200kmの旅の途中で2回使用する計算で、400km走行毎に注油した。雨に降られる日もあったが、4日間で1日雨が降る条件でも1回の注油で400kmは確実にもつことを体験的に知っていたので、初回塗布とあわせて2回ぶんのブルーノ携行で12日間のツーリングに十分こと足りた。旅の途中に面倒なチェーンや駆動系のクリーニングも不要で、手を汚すこともない。最小限の容量の携行で済んだことでブルーノに大いに助けられたツーリングだった。
汚れないというブルーノとて汚れてしまうとおり、屋外で乗るロードバイクの場合はオイル系ケミカルで汚れないものはないというのが結論だが、ブルーノは高い潤滑性をもちながらも非常に汚れを寄せつけにくい特殊なオイルであることは確か。クリーニングの頻度と面倒さがかなり軽くできる。(CW編集部・綾野)
ヴィプロス ブルーノ
容量:62ml
価格:2,420円(税込)
ヴィプロス ロッサーノ
容量:62ml
価格:2,420円(税込)
ヴィプロス ダブサン
容量:62ml
価格:2,420円(税込)
text:Gakuto Fujiwara
impression:Makoto AYANO
NIPPOヴィーニファンティーニをサポートしていたケミカルブランドのヴィプロス。名前の由来はVIPにPROS(プロ)を加えた造語であるが、そこにブランドとしてのアイデンティティが隠されている。
ヴィプロスは価格競争が激化している自動車等のケミカル分野に一石を投じるべく、価格に囚われずに高クオリティな製品を作るという信念をもとに立ち上げられたブランドだ。プロユースの製品を性能等にこだわりのあるユーザーに使ってもらいたいというのがヴィプロスの想いだ。
ヴィプロスの強みは、プロたちの声をすくい上げて素早く製品に反映させる体制が構築されていること。「ケミカルは好みがはっきりしているので、様々なフィードバックを頂くのですが、ヴィプロスとしての独自性のある製品をお届けするようにしています」とはヴィプロス代表の白石さん。
ヴィプロスで展開しているケミカル類は非常に多岐に渡り、一つ一つにキャラクターに富んでいる。例えばムオンは多くの人に支持されるプロダクトであり、その性能は多くの人が体感できるとの声もあるようだ。ムオンもケイテンでのフィードバックを基にして生まれた派生品であり、ラインアップの充実度は製品が進化を遂げている証でもある。
"サスペンド系"チェーンオイル ブルーノ、ロッサーノ、W3
数あるラインアップの中からまず紹介するのは、青、赤、緑のカラーが映えるブルーノ、ロッサーノ、W3(ダブサン)という3種類。これらはサスペンド系オイルと呼ばれ、馴染みのあるドライやウェット、ワックス系とは異なる呼び方がされているプロダクトだ。
状態を保つ、維持するといった意味あいを持つ「サスペンド」が示すところは、金属表面に滴下されたオイルがその場に留まろうとする性能のこと。一般的な潤滑油は摩擦係数を小さくしようとすると粘度が低くサラサラとしたオイルとなり、チェーンに留まろうとする力を強くしようとすると粘度が高いオイルとなる。この相反する性能を実現したのがサスペンドだ。
サスペンド系は注油する前は水よりも粘度が低く、滴下すると同時に金属表面に広がるという特性を持っている。しかし、滴下後30秒ほどで油膜を張り、その場に留まる性能が発揮される。この状態のことをサスペンドと呼んでいる。アルミバットなどで簡易的にデモンストレーションできるため、一度やってみて欲しい。
一般的なオイルは定着させるまでに待機時間が必要だが、ブルーノとロッサーノはわずかな待機時間で浸透剤が揮発し、オイル成分のみが残り性能が発揮され始めるという。滴下後余分なオイルを拭き取らずに済みかつ、ライド前に注しても効果が発揮される手軽さも魅力だろう。
非常に薄い被膜が形成され潤滑性能を実現しているが、粘度に頼らずとも遠心力に負けない定着力を実現されており、油が飛散しない(汚れにくい)かつ耐久性も確保しているという。もちろん負荷がかかった時に性能が発揮される極圧性能を備えており、400km程の耐久性が目安となるという。
サスペンド系のラインアップはブルーノが基本プロダクトとして用意されており、さらに汚れにくいモデルとしてロッサーノ、水で洗い落とせるW3(Wash With Water、ダブサン)が展開されている。ロッサーノが汚れにくいというのは、定着する被膜の厚みをブルーノより薄く仕上げられるため。耐久度は落ちてしまうが、頻繁にチェーンメンテナンスを行い、綺麗なチェーンの状態を保ちたい方にぴったりだろう。
W3は水溶性を備えることでサッと汚れを落とせる性能を実現したモデル。水を含まない限りブルーノと同じ性能を発揮するが、水がかかると乳化して流れていくという。マウンテンバイクのレース会場で水を大胆に使った洗車方法を目の当たりにした時に着想を得たというルブリカントで、メンテナンス性を重視する時に活躍してくれるはずだ。
特に、水が付着する心配の少ないインドアサイクリングにおいては非常に効果的。サスペンド系の定着の良さから飛散しにくく床を汚す心配は少ないものの、それでも飛散してしまった油分を拭き取る時に水溶性であれば濡れ雑巾で拭くだけでサッと落とせるのは魅力的だろう。他にもアイデア次第で様々な使い方ができそうだ。
―インプレッション(ブルーノ)
日常的にロング系ライドを楽しんでいる私の場合、いろいろなチェーンケミカルを使って試してみているけれど、持ちが良く、汚れにくいという2点のバランスでもっとも使う頻度が高いのがこのブルーノだ。やや高価な点はネックなので、チェーンのリンク部の一コマ一コマに無駄がないように一滴づつ注油するようにしている。この挿しかたがヴィプロス推奨の挿し方でもある。
粘度の低い透明な青い液がチェーンのリンクに素早く浸透していき、油感がない。走ってみても実際に汚れを寄せ付けにくく、プーリーやギア歯にも油汚れの塊が付着しにくい。異音を包みこんで消してしまう粘性の高いオイルに比べればチェーンのノイズはある。チェーンがギアと接触する乾いた音がするが、回転が軽く、滑りの良い状態が長く続く。
雨にも流れにくい。雨が一日降り続くなかを走るような日でもチェーン表面が曇るような汚れは付着するが、油切れ状態にはなりにくい。晴れなら400km走っても潤滑性能が確実にキープされていて、その距離を超えるとノイズが徐々に気になるようになっていくが、条件が良ければ500kmを超えても油切れを感じない状態は維持されている。チェーン表面の皮膜は落ちても、リンク内には潤滑成分が残っている感じだ。
汚れないという謳い文句だが、まったく汚れないことはなく、やはり次第にホコリを集めてチェーン表面は黒くなり、手で触ると黒い汚れはつくことになる。汚れないオイルは無い、という結論。対して室内トレーナーでの使用なら長く使ってもほとんど汚れないと言っていいほど。(ただし室内使用に最適なダブサンがある)
ブルーノは四国一周サイクリングでも使用した。記事で紹介したとおり、付属の容器に注油2回ぶんを入れて携行して、1200kmの旅の途中で2回使用する計算で、400km走行毎に注油した。雨に降られる日もあったが、4日間で1日雨が降る条件でも1回の注油で400kmは確実にもつことを体験的に知っていたので、初回塗布とあわせて2回ぶんのブルーノ携行で12日間のツーリングに十分こと足りた。旅の途中に面倒なチェーンや駆動系のクリーニングも不要で、手を汚すこともない。最小限の容量の携行で済んだことでブルーノに大いに助けられたツーリングだった。
汚れないというブルーノとて汚れてしまうとおり、屋外で乗るロードバイクの場合はオイル系ケミカルで汚れないものはないというのが結論だが、ブルーノは高い潤滑性をもちながらも非常に汚れを寄せつけにくい特殊なオイルであることは確か。クリーニングの頻度と面倒さがかなり軽くできる。(CW編集部・綾野)
ヴィプロス ブルーノ
容量:62ml
価格:2,420円(税込)
ヴィプロス ロッサーノ
容量:62ml
価格:2,420円(税込)
ヴィプロス ダブサン
容量:62ml
価格:2,420円(税込)
text:Gakuto Fujiwara
impression:Makoto AYANO
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