2021/07/10(土) - 10:50
今大会4勝目とともに、エディ・メルクスに並ぶツール通算34勝目を挙げたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)。巧みなリードアウトを見せ自身も2位に入ったモルコフや、3位のフィリプセン、カヴェンディッシュを祝福するエディ・メルクス氏のコメントなどを紹介します。
ステージ1位&マイヨヴェール(ポイント賞) マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ステージ4勝目、そしてステージ通算34勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
何も考えられない。キャリアの中でも厳しい状況なかでの勝利だった。この暑さに加え強い風、そして220kmを走り…くたくただよ。チームメイトはただただ素晴らしく、僕のために力を尽くして完璧なポジションまで運んでくれた。
長い間、もう勝てないと思っていた。だが僕らは勝利のためにすべてを捧げ、驚異的な力でレースをコントロールしてくれた。僕自身は限界ギリギリだった。緩やかな登りで(ダヴィデ)バッレリーニが前を引いてくれ、イバン・ガルシアが良い飛び出しを見せたが、モルコフが引き戻してくれた。その後は冷静なレース運びができた。
ラスト4、5kmは路面がスリッピーだったためパンクしたかと思ったが、みんなも同じ反応をしていたため道路のせいだということがわかったが、スピードを少し緩めなくてはならなかった。また、今日はもう1つ問題があったんだ。コミッセールから、第1ステージのラウンドアバウトでブアニに頭突きしたと注意されたんだ。だがそんなことしていない。単純に僕は肩幅が狭いから肩を当てると頭突きしたように見えただけだ。
だから今日は他の選手が寄せてきても、頭が当たらないようにする必要があった。だが、(位置取りで)最も安全な方法は頭を使うことなんだ。もちろん肘なんてもってのほかだし、そんなことすれば何が起こるか、わかるだろ?そのせいもあり、ポジションを少し下げてしまったんだ。
表彰台で34勝目を示すマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
(エディ・メルクスの34勝に並んだと)知っているが、意識はしていない。ツールで最初に挙げた勝利と同様、ステージ優勝しただけだ。小さい頃の夢であったツールでステージ優勝をした。それだけだ。
エディ・メルクスと比べるようなことはできない。だが、僕の勝利が自転車が好きな子どもたちに影響を与えられるのなら、それが一番大切かつ最大の喜びだ。子どもの頃から夢見ていたツールのステージ優勝を34回もできるなんて信じられない。想像もしていなかったことだが、努力を重ねた結果でもある。
ステージ2位 ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
モルコフの後ろで最終コーナーを抜けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
最後の左コーナーでトレインが乱れ、他のチームが被さってきてしまった。バッレリーニが早く行き過ぎてしまったので、敢えてついていかずチームDSMの選手を間に入れたんだ。アドリブが求められる状況だった。早めに仕掛けたイバン・ガルシアのスリップストリームに入り、それが結果的に良いリードアウトになってくれた。
ラスト50mまで前を引き、僕の後ろにカヴェンディッシュがいてステージを獲ってくれるとわかっていた。最後はバイクを前に出し、カヴェンディッシュのジャージを守るため、他のスプリンターにポイントを取らせないようにしたんだ。また、個人的にツールでステージ2位は過去最高の結果だよ。
ステージ3位 ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
今大会5度目のトップ3に入るも勝利が遠いジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
勝つことができず残念だが、カヴェンディッシュの方が速かった。今日は脚の状態も良く自信もあったのだが、勝つにはスピードが足りなかった。彼の後ろでフィニッシュできたので恥じることは何もない。彼が達成したことは素晴らしい。だが、もちろん僕には僕の野心がある。この後も勝利を目指し頑張るよ。
ステージ4位 イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)
先行するも追いつかれるイバン・ガルシア(スペイン、モビスター) photo:CorVos
エンリク(マス)を風から守るために走っていたので、スプリントするつもりはなかった。だがここ数日、トップスプリンターたちと渡り合えていたので自分の力を試してみたんだ。ティーニュ(第9ステージ)で風邪を引いてしまっているため、それを早く治してまた挑戦するのが今後の目標だよ。
マイヨジョーヌ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
マイヨジョーヌを着てピレネーに挑むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
今日はとても長く、厳しいステージだった。退屈な時間もあったが最後は慌ただしく、色んなことが起こった1日だった。子どもの頃に観ていたロケットマンのように勝つカヴェンディッシュを覚えているよ。とてもクレイジーな勝ち方をしていた彼をリスペクトしている。
彼(落車したラファウ・マイカ)はこれまで良い走りをしていたし、ツールの最終週で僕をアシストするため準備をしてくれていた。骨折がなく明日もまたレースできることを願っている。もし失うことがあればそれは大きな損失なので、とにかく彼の無事を祈っているよ。
落車でリタイアしたロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル)
地面に強く叩きつけられてから、みんながブレーキをかけた理由がわかった。路面に石が転がり滑りやすくなっていたんだ。ハイスピードからの落車で、後ろから他の選手に衝突され、傾斜面を長く滑り落ちてしまった。最悪の結末だよ。「自分で骨折しているのがわかった」と言っていたカレブ(ユアン)と同じように、僕も自分の状態を把握できていた。骨折はなかったが、立ち上がることができないほど背中が痛み、バイクに跨ることができなかった。出場予定の五輪に向け、まずは回復に励みたい。またヘルメットのおかげで頭は無事だったよ。
マシュー・ホワイト監督(バイクエクスチェンジ)
落車しリタイアしたルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) photo:CorVos
ルーカス(ハミルトン)とサイモン(イェーツ)には辛い現実となった。彼らがこのツールに向け、どれほどの努力を積み重ねてきたかを思うと非常に残念だ。これでピレネーに向かう3人いるクライマーのうち、2人を失ってしまった。作戦を変更しなければならないが、優先すべきことは彼ら2人の状態を確認し、回復を願うことだ。
パトリック・ルフェーブルGM(ドゥクーニンク・クイックステップ)
僕はエディ(メルクス)の大ファンだが、記録は破るためにある。カヴェンディッシュがその記録を更新することができれば、それ以上に素晴らしいことはない。彼が乗り越えてきた数々の苦難を考えれば、これ以上の勝利なんて必要ないのだが、彼はまだ勝てるだろう。それが数年前までの彼とは違う点だ。彼は同じ選手でありながら、感じているストレスが全く異なっている。
エディ・メルクス(ベルギー)
私がツールで挙げた34勝には、スプリントの他に山岳やタイムトライアル、下りでアタックして掴んだ勝利も含まれている。それに5度の総合優勝と、マイヨジョーヌを96日間に渡り着用した。みんなこれらの功績を忘れてはいないだろうか。もちろん彼の功績を軽視するつもりはない。また、彼が困難を乗り越え再び自転車を愛するに至ったことは、若い人々への良いメッセージになるだろう。
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
ステージ1位&マイヨヴェール(ポイント賞) マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
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長い間、もう勝てないと思っていた。だが僕らは勝利のためにすべてを捧げ、驚異的な力でレースをコントロールしてくれた。僕自身は限界ギリギリだった。緩やかな登りで(ダヴィデ)バッレリーニが前を引いてくれ、イバン・ガルシアが良い飛び出しを見せたが、モルコフが引き戻してくれた。その後は冷静なレース運びができた。
ラスト4、5kmは路面がスリッピーだったためパンクしたかと思ったが、みんなも同じ反応をしていたため道路のせいだということがわかったが、スピードを少し緩めなくてはならなかった。また、今日はもう1つ問題があったんだ。コミッセールから、第1ステージのラウンドアバウトでブアニに頭突きしたと注意されたんだ。だがそんなことしていない。単純に僕は肩幅が狭いから肩を当てると頭突きしたように見えただけだ。
だから今日は他の選手が寄せてきても、頭が当たらないようにする必要があった。だが、(位置取りで)最も安全な方法は頭を使うことなんだ。もちろん肘なんてもってのほかだし、そんなことすれば何が起こるか、わかるだろ?そのせいもあり、ポジションを少し下げてしまったんだ。
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(エディ・メルクスの34勝に並んだと)知っているが、意識はしていない。ツールで最初に挙げた勝利と同様、ステージ優勝しただけだ。小さい頃の夢であったツールでステージ優勝をした。それだけだ。
エディ・メルクスと比べるようなことはできない。だが、僕の勝利が自転車が好きな子どもたちに影響を与えられるのなら、それが一番大切かつ最大の喜びだ。子どもの頃から夢見ていたツールのステージ優勝を34回もできるなんて信じられない。想像もしていなかったことだが、努力を重ねた結果でもある。
ステージ2位 ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
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最後の左コーナーでトレインが乱れ、他のチームが被さってきてしまった。バッレリーニが早く行き過ぎてしまったので、敢えてついていかずチームDSMの選手を間に入れたんだ。アドリブが求められる状況だった。早めに仕掛けたイバン・ガルシアのスリップストリームに入り、それが結果的に良いリードアウトになってくれた。
ラスト50mまで前を引き、僕の後ろにカヴェンディッシュがいてステージを獲ってくれるとわかっていた。最後はバイクを前に出し、カヴェンディッシュのジャージを守るため、他のスプリンターにポイントを取らせないようにしたんだ。また、個人的にツールでステージ2位は過去最高の結果だよ。
ステージ3位 ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
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ステージ4位 イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)
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エンリク(マス)を風から守るために走っていたので、スプリントするつもりはなかった。だがここ数日、トップスプリンターたちと渡り合えていたので自分の力を試してみたんだ。ティーニュ(第9ステージ)で風邪を引いてしまっているため、それを早く治してまた挑戦するのが今後の目標だよ。
マイヨジョーヌ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
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今日はとても長く、厳しいステージだった。退屈な時間もあったが最後は慌ただしく、色んなことが起こった1日だった。子どもの頃に観ていたロケットマンのように勝つカヴェンディッシュを覚えているよ。とてもクレイジーな勝ち方をしていた彼をリスペクトしている。
彼(落車したラファウ・マイカ)はこれまで良い走りをしていたし、ツールの最終週で僕をアシストするため準備をしてくれていた。骨折がなく明日もまたレースできることを願っている。もし失うことがあればそれは大きな損失なので、とにかく彼の無事を祈っているよ。
落車でリタイアしたロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル)
地面に強く叩きつけられてから、みんながブレーキをかけた理由がわかった。路面に石が転がり滑りやすくなっていたんだ。ハイスピードからの落車で、後ろから他の選手に衝突され、傾斜面を長く滑り落ちてしまった。最悪の結末だよ。「自分で骨折しているのがわかった」と言っていたカレブ(ユアン)と同じように、僕も自分の状態を把握できていた。骨折はなかったが、立ち上がることができないほど背中が痛み、バイクに跨ることができなかった。出場予定の五輪に向け、まずは回復に励みたい。またヘルメットのおかげで頭は無事だったよ。
マシュー・ホワイト監督(バイクエクスチェンジ)
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ルーカス(ハミルトン)とサイモン(イェーツ)には辛い現実となった。彼らがこのツールに向け、どれほどの努力を積み重ねてきたかを思うと非常に残念だ。これでピレネーに向かう3人いるクライマーのうち、2人を失ってしまった。作戦を変更しなければならないが、優先すべきことは彼ら2人の状態を確認し、回復を願うことだ。
パトリック・ルフェーブルGM(ドゥクーニンク・クイックステップ)
僕はエディ(メルクス)の大ファンだが、記録は破るためにある。カヴェンディッシュがその記録を更新することができれば、それ以上に素晴らしいことはない。彼が乗り越えてきた数々の苦難を考えれば、これ以上の勝利なんて必要ないのだが、彼はまだ勝てるだろう。それが数年前までの彼とは違う点だ。彼は同じ選手でありながら、感じているストレスが全く異なっている。
エディ・メルクス(ベルギー)
私がツールで挙げた34勝には、スプリントの他に山岳やタイムトライアル、下りでアタックして掴んだ勝利も含まれている。それに5度の総合優勝と、マイヨジョーヌを96日間に渡り着用した。みんなこれらの功績を忘れてはいないだろうか。もちろん彼の功績を軽視するつもりはない。また、彼が困難を乗り越え再び自転車を愛するに至ったことは、若い人々への良いメッセージになるだろう。
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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