2021/06/25(金) - 19:13
世界のトップアスリートが集う東京オリンピックまであと1ヶ月。次代を担う日本国内の若手選手に向けて、来日を控えるトップMTB選手へのインタビュー、そしてメッセージを連載形式で紹介していきたい。第一弾は世界選手権を8度制したオリンピックチャンピオンのニノ・シューター(スコット・スラム)だ。
2019年10月、静岡県・修善寺の東京2020オリンピックMTBコースに集った世界トップMTB選手たちが、観客すべての心を動かした。この日は東京五輪テストイベント、画面の中でしか観られなかった世界中のMTBアスリートが、世界最高のスキルを駆使した。目の前のヒルクライムを全力で駆け上がり、とてつもない歓声の中を走った。これまで日本では観ることのできなかったレースが行われた。
「あの熱量を、この感動を、このスポーツの素晴らしさを、次の世代に」
その想いから、東京オリンピックでのレース観戦を楽しみにする方々、これから世界に挑戦するキッズ・ジュニアのアスリート、そして彼等をサポートするご家族の方々へのメッセージになればと、オリンピックMTBアスリートに協力を頂き、インタビューを行った。
オリンピックや世界選手権のメダルを獲得してきたトップアスリートがどのようにMTBに出会い、どんな気持ちを大切にしてプロ選手になったのか。これからチャレンジをするみんなに大事にして欲しいことを含め、アスリートからのメッセージをお届けする。インタビュアー:鈴木禄徳(PAXPROJECT)
ニノ・シューター プロフィール
世界選手権8回優勝、ワールドカップ総合優勝7回、リオオリンピック金メダル。このような輝かしい成績と共に、ライバルとのバトルの合間であってもスタイリッシュなジャンプでレースを更に盛り上げるのが彼のスタイル。2010年代のMTBクロスカントリーの新たな歴史を作ってきた最高のMTBアスリート”N1NO”、ニノからのアイディアとメッセージを日本のライダーのみんなお届けする。
スイス出身、1986年生まれ35歳
スコット・スラムMTBレーシングチーム所属
東京オリンピックスイス代表
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Q1:どのようにしてMTBと出会った?誰かの影響?
実は元々のメインにしていたスポーツはアルペンスキーで、MTBはスキーのための練習だったんだ。夏の間のトレーニングとして兄と一緒に乗り始めた。
7歳の頃、自分達が住む村の近くでのレースに兄と一緒に参加したら、初参加だったけどとても良い結果だった。それがとても嬉しくて、その日から、スキーはおしまいにしてMTBレースに向けて真剣に取り組むようになったよ。両親と兄と家族でMTBレースにハマったのが大きな影響だね。
Q2: 子供の頃憧れた選手は?
実は最初はあまり自分のアイドルみたいな選手はいなかったんだだけど、チームマネージャーでスイスのMTBの英雄であるトーマス・フリシュクネヒトと同じチームに入れた時に、「これはクールだぜ!」と喜んだのを覚えているよ。
Q3:ジュニアや子供の時を思い返して、どんな気持ちでトレーニングに取組んで欲しいですか?
楽しむこと! 「Fun is Fast !(楽しいのが最速!)」だよ。ジュニアやキッズのみんなが練習する時にはいつも、好きな事を心の底から楽しむ事が一番大事なんだと考えて欲しい。MTBに乗る事をいつまでも楽しみ続けるのが、より速くなるのに最高の方法なんだ。
Q4:どのようにMTBのテクニックを学びましたか? オススメのトレーニング方法などはありますか?
難しいトレイルを走るのに挑戦したり、自分が出来なかった事を少しずつでもチャレンジし続けよう。
もし、足を着いてしまったり、失敗してしまった時は、3回チャレンジしてみよう。そして自分より上手な選手やコーチと一緒に走ると、何をどうすればクリアできるのか、何が出来ないのかを気づくことができる。だから良いライダーの後ろに着いて走ると色々な事を学べるよ。
Q5:ジュニア時代はどのくらいレースに出て、どのくらい練習しましたか?
トレーニングの量やレースは住んでいる国やエリアによって環境が全く異なるから、正解はないのかもしれない。でも、スイスでは強い選手が国中から集まる良いシリーズ戦があったので、あまり遠征に時間を掛けずに多くのレースに参加できたんだ。レースに参加する事で毎回色々な事を経験して学べるし、次は負けたくないとか、どうやって走ろうとか、練習をするモチベーションになるんだ。
Q6:レースで勝つ為に大事だと思うことを3つ教えてください。
Self confidence (自分に自信を持つ)
Talent(自分の得意なことを伸ばす)
Determination (気持ちを強く持つ)
Q7:学生時代はどう過ごしましたか?
僕はスイスの山中の小さな村で育って、学校に通っていた。だから普通の学校生活を過ごしていたと思うけど、田舎だから周りには何もなくて、いつも外で遊びまわっていたね。
通学も帰宅後も自転車で走り回っていたのが僕の日常生活だね。いつも自転車に乗ってたと思うよ。
Q8:どのようにプロ選手への道が開けたのでしょうか?
ジュニアとU23の世界選手権で優勝出来たことがきっかけで、プロへの扉が開けたね。トーマス・フリシュクネヒトとの出会いで世界が広がったのもあるかな。
Q9: 現在プロ選手としてどう生活を楽しんでいますか?
自分が楽しいと感じられる事を真剣にすること、そしてMTBに乗ることを、僕は本当に心から愛しているんだ。僕がこれまで良い結果を得られた理由はそれに尽きると思う。
プロ選手として、世界中をMTBと一緒に旅をして、地球上の色々な素晴らしい場所を走り回れる。これは僕が若い頃からずっと魅力的で何も変わらない。僕はMTBに乗ることが本当に好きなんだ。
Q10:最後に今乗っているバイクについて教えてください。お気に入りのポイントはどこですか?
この6月に発表されたばかりの新型のSCOTT SPARKに乗っているよ。新型はサスペンションが前後120mmストロークになって、リアショックがフレームに内蔵されたのがポイントだけど、これはとても大きな変化だね。
ストロークが伸びたのに合わせて、変更されたジオメトリーはとてもダウンヒルが速く走れるだけじゃなくて、上りでもロスなく効率的に走れるんだ。見た目もカッコいいし、速いし、最高だよ。
スタイリッシュなジャンプでレースを盛り上げるのニノ。彼自身がMTBを楽しんでいて、それを観ているファンのみんなと共有したい、このスポーツの楽しさを世界中に伝えたいという想いがそこにあるのだと、今回のインタビュー通して改めて実感できた。
ニノはより多くのライダーがライディングスキルを向上させ、レースで目標の結果が出せる事を願っている。それを実現させるため、色々な練習方法などをチームYoutubeチャンネルで公開しているので、トレーニングを行うためののイメージ作りに役立てるといいだろう。
東京オリンピック本戦では、TVの前でも現地でもニノの素晴らしいライディングや白熱するバトルが見られるはず。ニノの走りで、MTBのパワーを感じよう。
そしてMTBに乗って、心からライドを楽しもう。ニノのように。
筆者プロフィール:鈴木禄徳(PAXPROJECT)
オフロードが特に大好きな雑食系アマチュアサイクリスト。幼少期からMTBを中心に、アニメ聖地巡礼から海外レース遠征まで幅広い自転車の楽しみ方を経験。
現在はアマチュアMTB/CXチーム「PAXPROJECT」のキャプテンとして、「明るく、楽しく、でも競技はガチで」をモットーにレース参戦と仲間と一緒にレベルアップすることに没頭。誰も観ていないジャンプで、数少ない観客(ほぼ友人のみ)を魅了する走りが信条。
PAXPROJECT
Notes
Special Thanks Koichiro Nakamura
2019年10月、静岡県・修善寺の東京2020オリンピックMTBコースに集った世界トップMTB選手たちが、観客すべての心を動かした。この日は東京五輪テストイベント、画面の中でしか観られなかった世界中のMTBアスリートが、世界最高のスキルを駆使した。目の前のヒルクライムを全力で駆け上がり、とてつもない歓声の中を走った。これまで日本では観ることのできなかったレースが行われた。
「あの熱量を、この感動を、このスポーツの素晴らしさを、次の世代に」
その想いから、東京オリンピックでのレース観戦を楽しみにする方々、これから世界に挑戦するキッズ・ジュニアのアスリート、そして彼等をサポートするご家族の方々へのメッセージになればと、オリンピックMTBアスリートに協力を頂き、インタビューを行った。
オリンピックや世界選手権のメダルを獲得してきたトップアスリートがどのようにMTBに出会い、どんな気持ちを大切にしてプロ選手になったのか。これからチャレンジをするみんなに大事にして欲しいことを含め、アスリートからのメッセージをお届けする。インタビュアー:鈴木禄徳(PAXPROJECT)
ニノ・シューター プロフィール
世界選手権8回優勝、ワールドカップ総合優勝7回、リオオリンピック金メダル。このような輝かしい成績と共に、ライバルとのバトルの合間であってもスタイリッシュなジャンプでレースを更に盛り上げるのが彼のスタイル。2010年代のMTBクロスカントリーの新たな歴史を作ってきた最高のMTBアスリート”N1NO”、ニノからのアイディアとメッセージを日本のライダーのみんなお届けする。
スイス出身、1986年生まれ35歳
スコット・スラムMTBレーシングチーム所属
東京オリンピックスイス代表
Q1:どのようにしてMTBと出会った?誰かの影響?
実は元々のメインにしていたスポーツはアルペンスキーで、MTBはスキーのための練習だったんだ。夏の間のトレーニングとして兄と一緒に乗り始めた。
7歳の頃、自分達が住む村の近くでのレースに兄と一緒に参加したら、初参加だったけどとても良い結果だった。それがとても嬉しくて、その日から、スキーはおしまいにしてMTBレースに向けて真剣に取り組むようになったよ。両親と兄と家族でMTBレースにハマったのが大きな影響だね。
Q2: 子供の頃憧れた選手は?
実は最初はあまり自分のアイドルみたいな選手はいなかったんだだけど、チームマネージャーでスイスのMTBの英雄であるトーマス・フリシュクネヒトと同じチームに入れた時に、「これはクールだぜ!」と喜んだのを覚えているよ。
Q3:ジュニアや子供の時を思い返して、どんな気持ちでトレーニングに取組んで欲しいですか?
楽しむこと! 「Fun is Fast !(楽しいのが最速!)」だよ。ジュニアやキッズのみんなが練習する時にはいつも、好きな事を心の底から楽しむ事が一番大事なんだと考えて欲しい。MTBに乗る事をいつまでも楽しみ続けるのが、より速くなるのに最高の方法なんだ。
Q4:どのようにMTBのテクニックを学びましたか? オススメのトレーニング方法などはありますか?
難しいトレイルを走るのに挑戦したり、自分が出来なかった事を少しずつでもチャレンジし続けよう。
もし、足を着いてしまったり、失敗してしまった時は、3回チャレンジしてみよう。そして自分より上手な選手やコーチと一緒に走ると、何をどうすればクリアできるのか、何が出来ないのかを気づくことができる。だから良いライダーの後ろに着いて走ると色々な事を学べるよ。
Q5:ジュニア時代はどのくらいレースに出て、どのくらい練習しましたか?
トレーニングの量やレースは住んでいる国やエリアによって環境が全く異なるから、正解はないのかもしれない。でも、スイスでは強い選手が国中から集まる良いシリーズ戦があったので、あまり遠征に時間を掛けずに多くのレースに参加できたんだ。レースに参加する事で毎回色々な事を経験して学べるし、次は負けたくないとか、どうやって走ろうとか、練習をするモチベーションになるんだ。
Q6:レースで勝つ為に大事だと思うことを3つ教えてください。
Self confidence (自分に自信を持つ)
Talent(自分の得意なことを伸ばす)
Determination (気持ちを強く持つ)
Q7:学生時代はどう過ごしましたか?
僕はスイスの山中の小さな村で育って、学校に通っていた。だから普通の学校生活を過ごしていたと思うけど、田舎だから周りには何もなくて、いつも外で遊びまわっていたね。
通学も帰宅後も自転車で走り回っていたのが僕の日常生活だね。いつも自転車に乗ってたと思うよ。
Q8:どのようにプロ選手への道が開けたのでしょうか?
ジュニアとU23の世界選手権で優勝出来たことがきっかけで、プロへの扉が開けたね。トーマス・フリシュクネヒトとの出会いで世界が広がったのもあるかな。
Q9: 現在プロ選手としてどう生活を楽しんでいますか?
自分が楽しいと感じられる事を真剣にすること、そしてMTBに乗ることを、僕は本当に心から愛しているんだ。僕がこれまで良い結果を得られた理由はそれに尽きると思う。
プロ選手として、世界中をMTBと一緒に旅をして、地球上の色々な素晴らしい場所を走り回れる。これは僕が若い頃からずっと魅力的で何も変わらない。僕はMTBに乗ることが本当に好きなんだ。
Q10:最後に今乗っているバイクについて教えてください。お気に入りのポイントはどこですか?
この6月に発表されたばかりの新型のSCOTT SPARKに乗っているよ。新型はサスペンションが前後120mmストロークになって、リアショックがフレームに内蔵されたのがポイントだけど、これはとても大きな変化だね。
ストロークが伸びたのに合わせて、変更されたジオメトリーはとてもダウンヒルが速く走れるだけじゃなくて、上りでもロスなく効率的に走れるんだ。見た目もカッコいいし、速いし、最高だよ。
スタイリッシュなジャンプでレースを盛り上げるのニノ。彼自身がMTBを楽しんでいて、それを観ているファンのみんなと共有したい、このスポーツの楽しさを世界中に伝えたいという想いがそこにあるのだと、今回のインタビュー通して改めて実感できた。
ニノはより多くのライダーがライディングスキルを向上させ、レースで目標の結果が出せる事を願っている。それを実現させるため、色々な練習方法などをチームYoutubeチャンネルで公開しているので、トレーニングを行うためののイメージ作りに役立てるといいだろう。
東京オリンピック本戦では、TVの前でも現地でもニノの素晴らしいライディングや白熱するバトルが見られるはず。ニノの走りで、MTBのパワーを感じよう。
そしてMTBに乗って、心からライドを楽しもう。ニノのように。
筆者プロフィール:鈴木禄徳(PAXPROJECT)
オフロードが特に大好きな雑食系アマチュアサイクリスト。幼少期からMTBを中心に、アニメ聖地巡礼から海外レース遠征まで幅広い自転車の楽しみ方を経験。
現在はアマチュアMTB/CXチーム「PAXPROJECT」のキャプテンとして、「明るく、楽しく、でも競技はガチで」をモットーにレース参戦と仲間と一緒にレベルアップすることに没頭。誰も観ていないジャンプで、数少ない観客(ほぼ友人のみ)を魅了する走りが信条。
PAXPROJECT
Notes
Special Thanks Koichiro Nakamura
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