5月30日に閉幕した今年のツアー・オブ・ジャパンは増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の個人総合優勝に注目が集まったが、各賞ジャージを10代の選手が獲得するという快挙もあった。増田と、新人賞の留目夕陽(日本ナショナルチーム)、ポイント賞の川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)のコメントを紹介する。


増田成幸「東京五輪に備えて最高のパフォーマンスを発揮することが目標だった」

マスク越しに安堵の表情を見せる増田成幸(宇都宮ブリッツェン)マスク越しに安堵の表情を見せる増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato
初日の富士山で他を圧倒するものの、翌日はあわやリーダージャージを失う可能性もあった増田成幸。自分のチームが原因の落車により危機を招くことになってしまったが、終盤に大人数の先頭集団が崩壊したことや、メイン集団で他チームの協力を得られるなど展開に恵まれたこともあり、総合首位を守った。18歳の留目夕陽と19歳の川野碧己と共に表彰台に上がった増田は、若手選手に刺激を受けたと話す。

「ステージレースの総合優勝は2016年のツール・ド・北海道以来ですね。今年は東京五輪に備えて自分のこれまでのキャリアで最高のパフォーマンスを発揮することをひとつの目標に据えて取り組んできたので、その成果の表れだと思います。東京ステージをスタートする瞬間は、例年ならやっと最終日という気持ちで望むことが多いのですが、今日は体の疲労を感じることも特になく、「あ、今日で終わりか」という感じでした。調子の良し悪しもあるかもしれませんが、強い選手は関係なく勝てるので、それが本物の強さだと思いますし、37歳にしてそれを目指しています」

リーダージャージの増田成幸自ら集団を牽引するリーダージャージの増田成幸自ら集団を牽引する photo:Kensaku SAKAI若手のチームメイトに声を掛けながら走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン)若手のチームメイトに声を掛けながら走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato

「今日表彰台に上がった川野選手や留目選手はまだ10代の選手だし、今回のチームメイトも自分より10歳以上若い選手ばかりで、自分にとって良い刺激になりました。チームメイトの小嶋渓円選手は、初めてのステージレースで、初めてのリーダーチームで、初めての集団コントロールと、全てが初めてでした。こういう経験が選手を成長させると思うし、色々うまくいかない部分もあったけれど、自分も同じくらいの年代の気持ちで走ることが出来たし、楽しかったです。

本来のツアー・オブ・ジャパンは8日間でやるものだと思っていますが、今年はこの状況下なので最低限の3日間でもレースが開催されたことには敬意を表します。とにかく世の中の状況が少しでも落ち着いて、来年以降は元のツアー・オブ・ジャパンに戻って欲しいと思っています」



新人賞・留目夕陽「富士山ステージのおかげで新人賞を獲れた」

新人賞 留目夕陽(日本ナショナルチーム)新人賞 留目夕陽(日本ナショナルチーム) photo:Satoru Kato
初日の富士山ステージでは勾配が厳しくなるふじあざみライン中盤で単独先行する力を見せ、個人総合10位で終えて新人賞を獲得した留目夕陽。昨年のインカレ代替大会のロードレースで、オープン参加ながら強豪大学生選手らを下して優勝した高校生として注目された。その勢いは今年に入ってもとどまることなく、3月の西日本チャレンジロードでは国内トップチームのエリート選手を相手に優勝。Jプロツアーでも積極的なレースを見せる。

インカレ代替レースの群馬CSC、西日本チャレンジの広島中央公園、さらに2019年のJBCF宇都宮クリテリウム のE1で優勝など、勝ったレースを並べるとオールラウンダーかパンチャーかという印象もあるが、本人はクライマーを自認する。

富士山ステージでは、上位2人に最後まで食らいついた留目夕陽(日本ナショナルチーム)富士山ステージでは、上位2人に最後まで食らいついた留目夕陽(日本ナショナルチーム) photo:Kensaku SAKAI
「単発の登りよりも長い登りが得意です。今回は富士山ステージがあったから新人賞ジャージを獲れた思っています。逆に富士山が無かったらどうしようもなかったですね。これまで勝ったレースは運に恵まれていたこともありますが、登りのように淡々と踏むことが出来たから、宇都宮クリテリウムでも勝てたと思っています。

この3日間の経験が今後につなげるステップアップになったと思います。チームメイトと協調して自分の総合順位を上げるとか、あわよくばステージ優勝を狙うとか、それはうまくいきませんでしたけどね。

相模原ステージからは新人賞ジャージを着て走った留目夕陽(日本ナショナルチーム)相模原ステージからは新人賞ジャージを着て走った留目夕陽(日本ナショナルチーム) photo:Satoru Katoこの後はツール・ド・ラヴニールに向けて準備をしていきます。昨年は海外に行けなかったので、これが初の海外レースになりそうです。レース日数も長いので、距離を乗りつつ強度の高い練習を何日も続けられるようにしないとラヴニールは闘えないと思うので、もっと精進していきます。

コロナの影響もあるので行けるのかどうかもわからないけれど、行ける前提でやれることはやり切っておかないといけないと思うし、仮に今年が無くなっても来年、再来年に必ず活きると考えて練習していきたいと思います」



ポイント賞・川野碧己「東京ステージだけのために連れてきてもらった」

ポイント賞 川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)ポイント賞 川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Satoru Kato
「数少ないチャンスを物にする」とはよく言うが、東京ステージで優勝した川野碧己がまさにそれだ。所属する弱虫ペダルサイクリングチームはUCI登録するチームではないので、ツアー・オブ・ジャパンが本来のUCI2.1クラスで開催されていたら出場出来ない。チームにとっても大きな1勝をもたらした。

今年3月の神宮外苑クリテリウムでは、今回の東京ステージ同様に小集団の逃げ切りで勝っているから、川野の勝ちパターンでもあったか。

東京ステージ残り2周、川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小林海(マトリックスパワータグ)の2名が先行する東京ステージ残り2周、川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小林海(マトリックスパワータグ)の2名が先行する photo:Satoru Kato「スプリントには自信を持っているけれど、集団に戻って勝負できるだけの脚が残っていないと感じていたので、逃げ切りたい人だけに絞っていきたいと考えました。2人になって小林海さんも個人総合のタイムがあるので積極的に引いていましたが、同じくらいの疲労度なら勝てると考えていました。

勝負が決まった時は何が起きたのか分からなかったけれど、気づいた時は嬉しかったし、東京ステージだけのために連れてきてもらっていたので、しっかり結果を残せて良かったです。前日の相模原で9位に入ってポイントを取れていたので、このまま行けばポイント賞を獲れるかもと考えていました。こういうジャージを着たことが無かったので、出来れば着て走りたかったですね」

東京ステージ フィニッシュの瞬間は雄叫びを上げて喜びを爆発させた川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)東京ステージ フィニッシュの瞬間は雄叫びを上げて喜びを爆発させた川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Kensaku SAKAI
「今年から大学の先輩でもある大前翔選手(愛三工業レーシングチーム)にコーチングしてもらっていて、それ以来好調が続いているので、このまま維持してもっと上のレベルでも通用するようになりたいです」

text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, Kensaku SAKAI

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