2021/05/18(火) - 08:53
休息日前日の平坦ステージは様々な思惑が絡み合う慌ただしい一日に。山岳でライバルを振り落とし勝利したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がマリアチクラミーノに袖を通した。
5月17日(月)第10ステージ
ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★
ラクイラから休息の地フォリーニョを目指すジロ第10ステージ photo:CorVos
5月17日(月)第10ステージ ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★ image:RCS Sport
5月17日(月)第10ステージ ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★ image:RCS Sport
開幕以降、ノンストップで10日間走り続けてきたジロ・デ・イタリア。長い長い第1週の締めくくりとなる第10ステージは、2009年に発生した大地震により大きなダメージを受けたラクイラから休息の地フォリーニョまでの今大会最短距離となる139km。この日は4級山岳が一つだけというイージーコースだったものの、登りでのボーラ・ハンスグローエのハイペースによって複数のピュアスプリンターを振り落とした状態でスプリント勝負が行われることとなった。
2009年4月6日に発生し、300名以上の死亡者を出したラクイラ地震(マグニチュード6.3)の傷跡に触れながらジロ第10ステージがスタート。ニュートラルゾーンを経てスタートフラッグが振られると、すぐにシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)やウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)など、逃げでおなじみの選手達が先行。カレブ・ユアン(オーストラリア)のリタイアによって「スプリンターチーム」ではなくなったロット・スーダルもコービー・ホーセンス(ベルギー)を送り込んだ。
ガゼッタ・デッロ・スポルトを読むダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
マリアローザ初日を迎えたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
逃げるタコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)たち photo:CorVos
逃げグループを形成した5名
シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
サムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
タコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
コービー・ホーセンスコービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ワイルドカード枠で出場する4つのUCIプロチームからは、スプリント狙いのアルペシン・フェニックスを除く3チームが順当にメンバーを送り込み、第3ステージで逃げ切ったファンデルホールンも加わった逃げグループ。マリアローザ着用初日のエガン・ベルナル(コロンビア)擁するイネオス・グレナディアーズではなく、スプリンターチーム率いるメイン集団は短距離ステージゆえに僅か2分半の先行しか許さなかった。
47.5km地点の中間スプリントポイントでは逃げグループ、そしてメイン集団共に激しいポイント争いが勃発。先頭ではリーヴィが最大ポイントを獲り、その2分半後にはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を抑えたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)が全体の6位通過を果たしている。
踏切に捕まった逃げグループ photo:CorVos
集団前方で走るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
ライバルを振り落とすべくボーラ・ハンスグローエが山岳区間でペースアップ photo:CorVos
その後平和に踏切ストップをこなし、100km地点の4級山岳(標高655m/登坂距離6.7km/平均8%)を頂点とする山岳地帯に入るとボーラ・ハンスグローエがメイン集団の先頭に立ち、ハイペースを刻み始める。サガンの対抗馬を振り落とすためのこの動きは、目論見通りまずディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を脱落させ、40km以上を残して逃げグループを吸収後、マリアチクラミーノのティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)と欧州チャンピオンのジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)を脱落させることに成功。遅れたスプリンターはそれぞれアシスト勢と共に復帰を目指したものの、ボーラが手を緩めることなく突き進むメイン集団へ追いつくことはなかった。
4級を越えてもなおボーラはチーム力を消耗させながらもハイペースを維持。そんな状態で接近したボーナスタイムが懸かる中間スプリントでは首位ベルナルのイネオス・グレナディアーズと、15秒差の総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー)のドゥクーニンク・クイックステップが激しく火花を散らした。
ベルナルを連結したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がドゥクーニンクのリードアウトトレインを追い越し、逃げを試みたものの、エヴェネプールは自らその差を詰めてスプリント。ヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が先頭通過を阻んだものの、ボーナス2秒獲得(ベルナルは3位通過で1秒獲得)により総合タイム差は15秒から14秒に縮まっている。
こうして「平坦ステージ中の総合争い」が終わり、登りを耐えたスプリンターチームによる主導権争いが勃発。幹線道路でイスラエル・スタートアップネイションやドゥクーニンク・クイックステップなどが列車を並べ、残り1.5km地点からの右、左、左と直角コーナー連続区間に入ると再びボーラ・ハンスグローエのリードアウトトレインがリードを奪う。残り1kmの左コーナーでチームDSMのエースを担うはずだったマックス・カンター(ドイツ)が落車し、この分断によって前に位置していた約15名だけが勝負権を得ることとなった。
ガビリアやチモライを抑えて突き進むペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
昨年大会に続くジロ区間2勝目を射止めたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
細く曲がりくねったコースで、残り400mから加速したフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を先頭に、追撃するサガン、その背後にフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)というオーダーで残り100mまで続く緩い左コーナーを曲がっていく。リードアウトを終えたモラノをサガンが抜き去り、パワフルなスプリントでガビリアを抑え込んでフィニッシュラインへと到達した。
目まぐるしく動いた短距離ステージで終始主導権を握ったボーラ・ハンスグローエの作戦大成功。「チーム一人一人が素晴らしい走りを見せてくれた。山岳でライバルを振り落とすことができたけれど、それでも数名が生き残っていたので簡単な勝負ではなかった」と言うサガンが昨年大会の第10ステージに続くジロ・デ・イタリア区間2勝目をゲットした。ポイント賞ランキング上位メンバーが軒並み遅れたため、ランキング5位から急浮上したサガンがマリアチクラミーノに袖を通すこととなった。
マリアチクラミーノに袖を通したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
また、カンターの落車による分断は救済措置によってカウントされず、総合勢は全員サガンとのタイム差ゼロでフィニッシュ。例年よりも1日長い第1週を終え、ジロは今年初の休息日に入る。
5月17日(月)第10ステージ
ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★
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開幕以降、ノンストップで10日間走り続けてきたジロ・デ・イタリア。長い長い第1週の締めくくりとなる第10ステージは、2009年に発生した大地震により大きなダメージを受けたラクイラから休息の地フォリーニョまでの今大会最短距離となる139km。この日は4級山岳が一つだけというイージーコースだったものの、登りでのボーラ・ハンスグローエのハイペースによって複数のピュアスプリンターを振り落とした状態でスプリント勝負が行われることとなった。
2009年4月6日に発生し、300名以上の死亡者を出したラクイラ地震(マグニチュード6.3)の傷跡に触れながらジロ第10ステージがスタート。ニュートラルゾーンを経てスタートフラッグが振られると、すぐにシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)やウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)など、逃げでおなじみの選手達が先行。カレブ・ユアン(オーストラリア)のリタイアによって「スプリンターチーム」ではなくなったロット・スーダルもコービー・ホーセンス(ベルギー)を送り込んだ。
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逃げグループを形成した5名
シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
サムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
タコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
コービー・ホーセンスコービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ワイルドカード枠で出場する4つのUCIプロチームからは、スプリント狙いのアルペシン・フェニックスを除く3チームが順当にメンバーを送り込み、第3ステージで逃げ切ったファンデルホールンも加わった逃げグループ。マリアローザ着用初日のエガン・ベルナル(コロンビア)擁するイネオス・グレナディアーズではなく、スプリンターチーム率いるメイン集団は短距離ステージゆえに僅か2分半の先行しか許さなかった。
47.5km地点の中間スプリントポイントでは逃げグループ、そしてメイン集団共に激しいポイント争いが勃発。先頭ではリーヴィが最大ポイントを獲り、その2分半後にはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を抑えたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)が全体の6位通過を果たしている。
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その後平和に踏切ストップをこなし、100km地点の4級山岳(標高655m/登坂距離6.7km/平均8%)を頂点とする山岳地帯に入るとボーラ・ハンスグローエがメイン集団の先頭に立ち、ハイペースを刻み始める。サガンの対抗馬を振り落とすためのこの動きは、目論見通りまずディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を脱落させ、40km以上を残して逃げグループを吸収後、マリアチクラミーノのティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)と欧州チャンピオンのジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)を脱落させることに成功。遅れたスプリンターはそれぞれアシスト勢と共に復帰を目指したものの、ボーラが手を緩めることなく突き進むメイン集団へ追いつくことはなかった。
4級を越えてもなおボーラはチーム力を消耗させながらもハイペースを維持。そんな状態で接近したボーナスタイムが懸かる中間スプリントでは首位ベルナルのイネオス・グレナディアーズと、15秒差の総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー)のドゥクーニンク・クイックステップが激しく火花を散らした。
ベルナルを連結したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がドゥクーニンクのリードアウトトレインを追い越し、逃げを試みたものの、エヴェネプールは自らその差を詰めてスプリント。ヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が先頭通過を阻んだものの、ボーナス2秒獲得(ベルナルは3位通過で1秒獲得)により総合タイム差は15秒から14秒に縮まっている。
こうして「平坦ステージ中の総合争い」が終わり、登りを耐えたスプリンターチームによる主導権争いが勃発。幹線道路でイスラエル・スタートアップネイションやドゥクーニンク・クイックステップなどが列車を並べ、残り1.5km地点からの右、左、左と直角コーナー連続区間に入ると再びボーラ・ハンスグローエのリードアウトトレインがリードを奪う。残り1kmの左コーナーでチームDSMのエースを担うはずだったマックス・カンター(ドイツ)が落車し、この分断によって前に位置していた約15名だけが勝負権を得ることとなった。
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細く曲がりくねったコースで、残り400mから加速したフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を先頭に、追撃するサガン、その背後にフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)というオーダーで残り100mまで続く緩い左コーナーを曲がっていく。リードアウトを終えたモラノをサガンが抜き去り、パワフルなスプリントでガビリアを抑え込んでフィニッシュラインへと到達した。
目まぐるしく動いた短距離ステージで終始主導権を握ったボーラ・ハンスグローエの作戦大成功。「チーム一人一人が素晴らしい走りを見せてくれた。山岳でライバルを振り落とすことができたけれど、それでも数名が生き残っていたので簡単な勝負ではなかった」と言うサガンが昨年大会の第10ステージに続くジロ・デ・イタリア区間2勝目をゲットした。ポイント賞ランキング上位メンバーが軒並み遅れたため、ランキング5位から急浮上したサガンがマリアチクラミーノに袖を通すこととなった。
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また、カンターの落車による分断は救済措置によってカウントされず、総合勢は全員サガンとのタイム差ゼロでフィニッシュ。例年よりも1日長い第1週を終え、ジロは今年初の休息日に入る。
ジロ・デ・イタリア2021第10ステージ結果
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:10:56 |
2位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
3位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | |
4位 | ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル) | |
5位 | ジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | |
6位 | ドリス・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | |
7位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2Rシトロエン) | |
8位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) | |
9位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | |
10位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
61位 | 新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス) |
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 108pts |
2位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 91pts |
3位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 91pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 51pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 48pts |
3位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 44pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 115:34:02 |
2位 | バイクエクスチェンジ | 0:03:26 |
3位 | トレック・セガフレード | 0:05:47 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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