2010/06/05(土) - 07:08
今年からツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)主催に変更されたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(UCIプロツアー)が6月6日から13日までの8日間に渡って、フランス・ドーフィネ地方の山岳地帯で開催される。ラルプ・デュエズの頂上ゴールを含む難コースに、ツールに照準を合わすオールラウンダーが挑む!
主催者がASOに変更され、パワーアップしたドーフィネ
正式名称クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、フランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)を舞台にした8日間のステージレース。1947年に第1回大会が開催された歴史ある大会だ。
これまで長年に渡って地元新聞のドーフィネ・リベレ社が運営していたが、2010年からツールと同じASOが主催者に。これによりASOがフランスのトップレースをほぼ席巻したことになる。なお、ステータスはヒストリカルレースではなく、プロツアーレースのままだ。
初日はツール・ド・スイスに面したレマン湖の畔に位置するエヴィアン=レ=バンでのプロローグ(個人タイムトライアル)。6.8kmのコースには高低差109mの4級山岳が設定されている。難易度の低いカテゴリー山岳が設定された第1&第2ステージは、スプリンターにもチャンスがある。
第3ステージは距離49kmの本格的な個人タイムトライアル。ここでのタイムはドーフィネの総合争いだけでなく、ツールに向けての仕上がりを見る指標になる。
第4ステージからは3日連続で厳しい山岳コースが登場。スキー場として知られる1級山岳リゾール(標高1870m)の頂上ゴールが設定された今大会最長の第4ステージで、早速総合成績は変動を見せるだろう。しかしまだまだリゾールは足慣らしに過ぎない。
第5ステージは序盤に2級山岳ロータレ峠(標高2058m)を越え、標高310mまで下ってから超級山岳シャンルース(標高1750m)に挑む。このシャンルースは平均勾配7.5%で登坂距離17.5km。グルノーブルのゴール地点には、シャンルースで飛び出した選手、もしくは少人数グループが飛び込んでくるだろう。
そして今大会の目玉が超級山岳ラルプ・デュエズにゴールする第6ステージだ。主催者がASOに代わったことで、名物山岳がドーフィネデビューを飾る。しかもその九十九折りに至るまでの道のりは過酷だ。
ラルプ・デュエズ手前の最大の難関は、ラスト52km地点に鎮座するのは超級山岳グランドン峠。平均勾配7.2%・登坂距離19.5kmのこの難関山岳を越えて、ようやく九十九折りの名物山岳が姿を現す。ツールでお馴染みのラルプ・デュエズは、平均勾配7.9%・登坂距離13.8km。ここで総合争いが決着するのは間違いない。ツールに向けて明暗が分かれるのもこの上りだろう。
仮にラルプ・デュエズで決定的なタイム差がつかなかった場合は、総合争いは最終日の第7ステージまでもつれ込む。最終ステージは終盤に3級山岳を含む周回コースを5周するアップダウンコース。3級山岳は登坂距離が2.4kmと短いが、平均勾配が9.2%に達する。決して侮ることの出来ない上りだ。
コンタドールの大会初制覇を阻止するのは果たして誰だ?
ツール開幕まで1ヶ月を切った時期に開催されることから、ツールの重要な調整レースとして、多数のオールラウンダーが出場するのが通例。6月12日にスイスで開幕するツール・ド・スイスと並んで、ツールの前哨戦として知られている。
昨年大会2連覇を達成したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)はCASが出場停止の有効範囲を全世界に拡大させたことで出場不可。未だかつて誰も達成していない大会3連覇の夢は途絶えた。
今年の総合優勝候補の筆頭は、間違いなくアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)だ。3度目のツール制覇を虎視眈々と狙うコンタドールは、調整のために4月25日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ以降レースに出場していない。
ツールのコース下見を終え、万全のコンディションが予想されるコンタドールは圧倒的な走りを見せるのか?これまで2007年大会で総合6位、2009年大会で総合3位。意外にもまだこのドーフィネで優勝経験は無い。
コンタドールの対抗馬として期待されるのが、今年2連覇の懸かったジロ・デ・イタリアを蹴ってまでツールを狙うデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)だ。メンショフは5月のツール・ド・ロマンディで総合3位(バルベルデの総合優勝剥奪により総合2位に)。昨年のジロで見せた粘り強い走りでコンタドールに立ち向かう。
同じくツールを狙うオールラウンダーとしてサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)にも注目。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位に入った北京五輪金メダリストは、ツールに向けて調子を上げているはずだ。
チームとして3連覇が懸かったケースデパーニュは、山岳力に長けたマウリシオ・ソレール(コロンビア)と、2001年と2007年大会の総合優勝者クリストフ・モロー(フランス)を中心に据える。しかしチームが総力を上げてもコンタドールに対抗出来るかどうかは分からない。
アームストロングを欠くレディオシャックはヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)とクリストファー・ホーナー(アメリカ)のダブルエース体制だろう。かつてのチームリーダーであるコンタドールに、どこまで力が通用するか。アームストロングは12日に開幕するツール・ド・スイスに出場する予定だ。
初日のプロローグと第3ステージの個人タイムトライアルでタイムを稼ぐことが出来れば、デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)にも上位入賞のチャンスがあるだろう。ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームHTC・コロンビア)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らの動きにも注意したい。
平坦ステージでの活躍が期待されるのは、ジロを欠場したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)やエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)、フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)、ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)ら。リクイガスはジロの勢いをこのドーフィネに引き継ぐことが出来るだろうか。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
主催者がASOに変更され、パワーアップしたドーフィネ
正式名称クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、フランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)を舞台にした8日間のステージレース。1947年に第1回大会が開催された歴史ある大会だ。
これまで長年に渡って地元新聞のドーフィネ・リベレ社が運営していたが、2010年からツールと同じASOが主催者に。これによりASOがフランスのトップレースをほぼ席巻したことになる。なお、ステータスはヒストリカルレースではなく、プロツアーレースのままだ。
初日はツール・ド・スイスに面したレマン湖の畔に位置するエヴィアン=レ=バンでのプロローグ(個人タイムトライアル)。6.8kmのコースには高低差109mの4級山岳が設定されている。難易度の低いカテゴリー山岳が設定された第1&第2ステージは、スプリンターにもチャンスがある。
第3ステージは距離49kmの本格的な個人タイムトライアル。ここでのタイムはドーフィネの総合争いだけでなく、ツールに向けての仕上がりを見る指標になる。
第4ステージからは3日連続で厳しい山岳コースが登場。スキー場として知られる1級山岳リゾール(標高1870m)の頂上ゴールが設定された今大会最長の第4ステージで、早速総合成績は変動を見せるだろう。しかしまだまだリゾールは足慣らしに過ぎない。
第5ステージは序盤に2級山岳ロータレ峠(標高2058m)を越え、標高310mまで下ってから超級山岳シャンルース(標高1750m)に挑む。このシャンルースは平均勾配7.5%で登坂距離17.5km。グルノーブルのゴール地点には、シャンルースで飛び出した選手、もしくは少人数グループが飛び込んでくるだろう。
そして今大会の目玉が超級山岳ラルプ・デュエズにゴールする第6ステージだ。主催者がASOに代わったことで、名物山岳がドーフィネデビューを飾る。しかもその九十九折りに至るまでの道のりは過酷だ。
ラルプ・デュエズ手前の最大の難関は、ラスト52km地点に鎮座するのは超級山岳グランドン峠。平均勾配7.2%・登坂距離19.5kmのこの難関山岳を越えて、ようやく九十九折りの名物山岳が姿を現す。ツールでお馴染みのラルプ・デュエズは、平均勾配7.9%・登坂距離13.8km。ここで総合争いが決着するのは間違いない。ツールに向けて明暗が分かれるのもこの上りだろう。
仮にラルプ・デュエズで決定的なタイム差がつかなかった場合は、総合争いは最終日の第7ステージまでもつれ込む。最終ステージは終盤に3級山岳を含む周回コースを5周するアップダウンコース。3級山岳は登坂距離が2.4kmと短いが、平均勾配が9.2%に達する。決して侮ることの出来ない上りだ。
コンタドールの大会初制覇を阻止するのは果たして誰だ?
ツール開幕まで1ヶ月を切った時期に開催されることから、ツールの重要な調整レースとして、多数のオールラウンダーが出場するのが通例。6月12日にスイスで開幕するツール・ド・スイスと並んで、ツールの前哨戦として知られている。
昨年大会2連覇を達成したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)はCASが出場停止の有効範囲を全世界に拡大させたことで出場不可。未だかつて誰も達成していない大会3連覇の夢は途絶えた。
今年の総合優勝候補の筆頭は、間違いなくアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)だ。3度目のツール制覇を虎視眈々と狙うコンタドールは、調整のために4月25日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ以降レースに出場していない。
ツールのコース下見を終え、万全のコンディションが予想されるコンタドールは圧倒的な走りを見せるのか?これまで2007年大会で総合6位、2009年大会で総合3位。意外にもまだこのドーフィネで優勝経験は無い。
コンタドールの対抗馬として期待されるのが、今年2連覇の懸かったジロ・デ・イタリアを蹴ってまでツールを狙うデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)だ。メンショフは5月のツール・ド・ロマンディで総合3位(バルベルデの総合優勝剥奪により総合2位に)。昨年のジロで見せた粘り強い走りでコンタドールに立ち向かう。
同じくツールを狙うオールラウンダーとしてサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)にも注目。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位に入った北京五輪金メダリストは、ツールに向けて調子を上げているはずだ。
チームとして3連覇が懸かったケースデパーニュは、山岳力に長けたマウリシオ・ソレール(コロンビア)と、2001年と2007年大会の総合優勝者クリストフ・モロー(フランス)を中心に据える。しかしチームが総力を上げてもコンタドールに対抗出来るかどうかは分からない。
アームストロングを欠くレディオシャックはヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)とクリストファー・ホーナー(アメリカ)のダブルエース体制だろう。かつてのチームリーダーであるコンタドールに、どこまで力が通用するか。アームストロングは12日に開幕するツール・ド・スイスに出場する予定だ。
初日のプロローグと第3ステージの個人タイムトライアルでタイムを稼ぐことが出来れば、デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)にも上位入賞のチャンスがあるだろう。ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームHTC・コロンビア)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らの動きにも注意したい。
平坦ステージでの活躍が期待されるのは、ジロを欠場したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)やエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)、フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)、ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)ら。リクイガスはジロの勢いをこのドーフィネに引き継ぐことが出来るだろうか。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos