2021/01/30(土) - 17:31
世界中が新型コロナウイルスによるパンデミック状況にある中、今週末ベルギーのオステンドにてシクロクロス世界選手権が開催される。ベルギー最西端に位置するビーチと競馬場の敷地を使ったシクロクロス大国ベルギーらしいダイナミックなコースで今年のアルカンシエルを決める勝負が行われる。
今回世界一を決めるコースとして選ばれたオステンドは、2017年のベルギーナショナル選手権が行われた場所だ。幹線道路を跨ぐ超巨大なフライオーバーが設置されビーチのサンドセクションに突っ込んでいくという今まで見たことのないほどのシクロクロス大国らしいダイナミックなコースレイアウト、そして当時はビーチを何万人という埋め尽くす観客の中素晴らしいレースが展開され筆者の記憶に強く残っている。
今回の世界選手権は、規模が大きすぎるため無観客での開催は最後まで危ぶまれていたが(こちらのレースでは基本入場料がある)オステンド市などの尽力により12月末に開催が決定された。しかし、それからもベルギー国内での新型コロナウイルスの感染状況が悪化し開催は最後まで危ぶまれている状況であった。1月15日には男女ジュニアのレースがキャンセルとなり参加者人数の削減が行われた。
そして世界選手権の行われる1週間前、1月23日にオステンドでコロナウイルスの南アフリカ変異種の感染者が確認されたことでさらに状況が厳しいものとなった。これにより中止の可能性も出たが、厳重な感染対策を敷くことと開催に関わる人員を最大限に減らすことで開催4日前、26日に開催されるという最終的な決定がなされた。
メディア関係者も約半数近くが削減、各国の連盟関係者、チームスタッフも大幅に制限されるほどだ。筆者もこの影響を多大に受け現地に辿り着くまで会場に入ることができるか全く分からない、ほぼ無理であろうという状況であった。この時のエピソードはまた別の機会で公開したいと思う。
コースはビーチリゾートの広大な砂浜区間と幹線道路を挟んだ対岸にある競馬場の敷地を超巨大なフライオーバーで繋げたものだ。スタートしすぐに巨大フライオーバーに向かいサンドセクションへと突入する。このフライオーバーは巨大さもさることながら昨年のデューベンドルフのものを彷彿とさせる斜度のきつさだ。実際に歩いで上まで登ってみたが、斜度に加え頂上付近からビーチ側までに向かうにつれ海風による爆風を受けるので身体への負担は相当なものになると想像できる。
そしてビーチへと全速力で突っ込んでいく。サンドセクションは手前(幹線道路側)が砂が柔らかく深い。波打ち際に近付くほど砂は締まり固くなっていくのでフライオーバーでどれだけ加速できるかがキーとなる。手前の深く柔らかい砂でラインをミスすれば一気に失速してポジションを落としてしまうだろう。
その後、波打ち際を走り再び柔らかく深いサンドセクションを抜けて巨大フライオーバーをもう一度駆け上がる。この序盤の難関なサンドセクションが勝負の鍵になるのは間違いないだろう。後半の競馬場を使ったコースは基本芝生で構成され、路面はそれほど悪くないがスピードが全く落ちないヨーロッパらしいレイアアウトである。
スタートゴールゾーン以外はキャンバーこそないが細かく足を削ってくるであろうアップダウンも多い。サンドセクションで稼いだリードをここでどれだけ維持できるかも勝敗に大きく左右されると予想される。超テクニカルかつパワーを要すビーチセクション、ハイスピードを維持し続ける競馬場セクションと全く休みどころのない世界一を決めるのに相応しいタフコースだ。
男子エリートの優勝最有力候補はやはり現世界チャンピオンのマチュー・ファンデルプールとここオステンドでの2017年ベルギー選手権を制したワウト・ファンアールトの二人であろう。現地での予想も完全に真っ二つに二分している。
筆者がコース試走をチェックした29日にはマチューは試走に姿を現さなかったためその調子などをこの目で見ることはできなかったが現地紙やメディアを見る限りしっかりと整えてきており調子は良さそうだ。
対するワウトはこの日午前中に入念に試走をこなしているのに印象を受けた。砂が得意でありこのコースでの勝利と良いイメージがあるためか自身に満ち溢れた雰囲気を纏っており他選手が苦戦するサンドセクションを確実に制しておりレベルの違う速さを見せていた。日曜のレースではこの二人による凄まじいバトルになるだろう。
上位の戦いに食い込んでくるであろう選手はやはりベルギー、オランダ勢がやはり抜きん出ておりワウトと同じく砂が得意でこのオステンドでのベルギー選手権で3位に入っているローレンス・スウィーク、マイケル・ファントーレンハウト、トーン・アールツ、ラース・ファンデルハール、コルネ・ファンケッセルが有力だ。
その中で唯一のイギリス代表、今シーズン強さをみせているトム・ピドコックもベルギー国内では有力候補として上がっており彼も上位の戦いにしっかりと食い込んでくるだろう。
女子エリートはパワー、そして今シーズンの調子から優勝候補筆頭はオランダのルシンダ・ブラントであろう。彼女のチームの監督であるシクロクロスレジェンド、スヴェン・ネイスが付きっきりでコース試走を行うほどの力の入りっぷりで完璧な体制で明日の戦いへ臨む。
そこに絡んでくるのは間違いなく現王者セイリン・アルバラードであろう。今シーズンはルシンダ・ブラントに押され気味であったがシーズン後半きっちりと調子を上げてきており先週のワールドカップ最終戦では強い走りをみせて勝利。アルカンシエルを防衛する準備がしっかりと整っており今日の試走でもその自信からか非常にリラックスしており調子の良さが伺えた。試走を見た感じサンドセクションを誰よりも入念にチェックし高いレベルで乗りこなしていたデニセ・ベッツィマが優勝争いに食い込んでくるのではと感じた。
現ベルギー王者であるサンヌ・カント、今シーズンのワールドカップで強さをみせているクララ・ホンシンガーらも有力候補だ。
男子U23は現王者ライアン・カンプ、ニールス・ヴァンデプゥット、ピム・ロンハールが優勝有力候補であろう。女子U23も現王者マリオン・ノーブルリブロール、アンナ・ケイ、そして試走では砂区間を時間いっぱい使い入念にチェックしていたカータ・ヴァスも最有力候補に挙げられるだろう。
text&photo:Nobuhiko Tanabe in Oostende, Belgium
今回世界一を決めるコースとして選ばれたオステンドは、2017年のベルギーナショナル選手権が行われた場所だ。幹線道路を跨ぐ超巨大なフライオーバーが設置されビーチのサンドセクションに突っ込んでいくという今まで見たことのないほどのシクロクロス大国らしいダイナミックなコースレイアウト、そして当時はビーチを何万人という埋め尽くす観客の中素晴らしいレースが展開され筆者の記憶に強く残っている。
今回の世界選手権は、規模が大きすぎるため無観客での開催は最後まで危ぶまれていたが(こちらのレースでは基本入場料がある)オステンド市などの尽力により12月末に開催が決定された。しかし、それからもベルギー国内での新型コロナウイルスの感染状況が悪化し開催は最後まで危ぶまれている状況であった。1月15日には男女ジュニアのレースがキャンセルとなり参加者人数の削減が行われた。
そして世界選手権の行われる1週間前、1月23日にオステンドでコロナウイルスの南アフリカ変異種の感染者が確認されたことでさらに状況が厳しいものとなった。これにより中止の可能性も出たが、厳重な感染対策を敷くことと開催に関わる人員を最大限に減らすことで開催4日前、26日に開催されるという最終的な決定がなされた。
メディア関係者も約半数近くが削減、各国の連盟関係者、チームスタッフも大幅に制限されるほどだ。筆者もこの影響を多大に受け現地に辿り着くまで会場に入ることができるか全く分からない、ほぼ無理であろうという状況であった。この時のエピソードはまた別の機会で公開したいと思う。
コースはビーチリゾートの広大な砂浜区間と幹線道路を挟んだ対岸にある競馬場の敷地を超巨大なフライオーバーで繋げたものだ。スタートしすぐに巨大フライオーバーに向かいサンドセクションへと突入する。このフライオーバーは巨大さもさることながら昨年のデューベンドルフのものを彷彿とさせる斜度のきつさだ。実際に歩いで上まで登ってみたが、斜度に加え頂上付近からビーチ側までに向かうにつれ海風による爆風を受けるので身体への負担は相当なものになると想像できる。
そしてビーチへと全速力で突っ込んでいく。サンドセクションは手前(幹線道路側)が砂が柔らかく深い。波打ち際に近付くほど砂は締まり固くなっていくのでフライオーバーでどれだけ加速できるかがキーとなる。手前の深く柔らかい砂でラインをミスすれば一気に失速してポジションを落としてしまうだろう。
その後、波打ち際を走り再び柔らかく深いサンドセクションを抜けて巨大フライオーバーをもう一度駆け上がる。この序盤の難関なサンドセクションが勝負の鍵になるのは間違いないだろう。後半の競馬場を使ったコースは基本芝生で構成され、路面はそれほど悪くないがスピードが全く落ちないヨーロッパらしいレイアアウトである。
スタートゴールゾーン以外はキャンバーこそないが細かく足を削ってくるであろうアップダウンも多い。サンドセクションで稼いだリードをここでどれだけ維持できるかも勝敗に大きく左右されると予想される。超テクニカルかつパワーを要すビーチセクション、ハイスピードを維持し続ける競馬場セクションと全く休みどころのない世界一を決めるのに相応しいタフコースだ。
男子エリートの優勝最有力候補はやはり現世界チャンピオンのマチュー・ファンデルプールとここオステンドでの2017年ベルギー選手権を制したワウト・ファンアールトの二人であろう。現地での予想も完全に真っ二つに二分している。
筆者がコース試走をチェックした29日にはマチューは試走に姿を現さなかったためその調子などをこの目で見ることはできなかったが現地紙やメディアを見る限りしっかりと整えてきており調子は良さそうだ。
対するワウトはこの日午前中に入念に試走をこなしているのに印象を受けた。砂が得意でありこのコースでの勝利と良いイメージがあるためか自身に満ち溢れた雰囲気を纏っており他選手が苦戦するサンドセクションを確実に制しておりレベルの違う速さを見せていた。日曜のレースではこの二人による凄まじいバトルになるだろう。
上位の戦いに食い込んでくるであろう選手はやはりベルギー、オランダ勢がやはり抜きん出ておりワウトと同じく砂が得意でこのオステンドでのベルギー選手権で3位に入っているローレンス・スウィーク、マイケル・ファントーレンハウト、トーン・アールツ、ラース・ファンデルハール、コルネ・ファンケッセルが有力だ。
その中で唯一のイギリス代表、今シーズン強さをみせているトム・ピドコックもベルギー国内では有力候補として上がっており彼も上位の戦いにしっかりと食い込んでくるだろう。
女子エリートはパワー、そして今シーズンの調子から優勝候補筆頭はオランダのルシンダ・ブラントであろう。彼女のチームの監督であるシクロクロスレジェンド、スヴェン・ネイスが付きっきりでコース試走を行うほどの力の入りっぷりで完璧な体制で明日の戦いへ臨む。
そこに絡んでくるのは間違いなく現王者セイリン・アルバラードであろう。今シーズンはルシンダ・ブラントに押され気味であったがシーズン後半きっちりと調子を上げてきており先週のワールドカップ最終戦では強い走りをみせて勝利。アルカンシエルを防衛する準備がしっかりと整っており今日の試走でもその自信からか非常にリラックスしており調子の良さが伺えた。試走を見た感じサンドセクションを誰よりも入念にチェックし高いレベルで乗りこなしていたデニセ・ベッツィマが優勝争いに食い込んでくるのではと感じた。
現ベルギー王者であるサンヌ・カント、今シーズンのワールドカップで強さをみせているクララ・ホンシンガーらも有力候補だ。
男子U23は現王者ライアン・カンプ、ニールス・ヴァンデプゥット、ピム・ロンハールが優勝有力候補であろう。女子U23も現王者マリオン・ノーブルリブロール、アンナ・ケイ、そして試走では砂区間を時間いっぱい使い入念にチェックしていたカータ・ヴァスも最有力候補に挙げられるだろう。
text&photo:Nobuhiko Tanabe in Oostende, Belgium
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