2021/01/17(日) - 09:17
リドレーからフルモデルチェンジを果たしたFenixをインプレッション。ケーブルフル内装によって空力向上を実現した、エアロエンデュランスレーサーの真価に迫る。
リドレー Fenix (c)Makoto AYANO/cyclowired.jp
自転車競技を国技として、数多くのクラシックレースやシクロクロスレースを開催するベルギー・フランドル地方に拠点を置くバイクブランドがリドレーだ。ルーツとなったペイント業からバイクの製造を手掛けるようになったリドレーは、高性能なバイクを送り出し瞬く間にトップブランドの一角として認知されるようになった。
その原動力となったのが、同郷のワールドチーム、ロット・スーダルとの緊密なパートナーシップ。カレブ・ユアン(オーストラリア)、やフィリップ・ジルベール(ベルギー)といった強力な選手らと共にトップレースで活躍し、その存在をアピールし続けてきた。
エアロロードのNOAHシリーズや軽量オールラウンダーのHeliumシリーズと共に、リドレーバイクラインアップの柱となるのがエンデュランスモデルのFenixシリーズだ。2013年の登場以来、「北の地獄」と称されるパリ~ルーベを筆頭とした過酷なクラシックレースに投入された実績を持つレーシングエンデュランスロードとして人気を集めてきた。
独自のコックピットシステム"F-Steerer"を搭載ケーブルフル内装を実現
細身のストレートフォークへと変更されている
最大タイヤ幅は28mmとされている
リドレーといえば、バイク開発において必ず石畳(パヴェ)での走行試験を行っていることでも知られており、"Tested on Pave"と記されたステッカーはベルギーの大地に認められた証でもある。過酷なパヴェを含むクラシックレースを制するために開発されたFenixシリーズは、まさにリドレーのバイク哲学を凝縮したような一台だと言えるだろう。
そんなFenixが2021モデルとしてフルモデルチェンジ。エッジの立ったダイヤモンドシェイプのトップ&ダウンチューブなど、前作のエッセンスを受け継ぎつつ、よりレーシーで洗練されたバイクへと進化した。
モデル名を示すロゴがトップチューブに配置される
純正のステム一体型ハンドルもラインアップされている
細く扁平したシートステーが快適性を生み出す
ハンドルにはメーターマウント用の台座も設けられる
先代からの最も大きな変化、そしてテーマとなっているのが空力性能の向上。エアロロードの枠を超え、レーシングバイク全般に波及してきたエアロ化の波が、ロンドやパリ~ルーベをターゲットとしたクラシックレーサーであるFenixにも到達した。
エアロダイナミクス向上のため、リドレーが新型Fenixに与えたのは、ケーブルフル内装システム。NOAH FAST DiscやHelium SLXで実績を積んだ"F-Steerer(エフ・ステアラー)"という独自のコックピットシステムを搭載し、ハンドル周辺のケーブル露出を一切排除したことで空気抵抗を低減することに成功している。
F-Steererシステムの採用を受け、フォークの形状も一新。ベンドフォークを採用していた先代に対し、新型Fenixではクラウンからエンドに至るまでほぼ断面積に変化がないほど極細のストレートフォークへと変更されている。カムテールデザインを採用することでエアロに配慮しつつ、突き上げを緩和することを狙った設計だ。
チェーンステーの付け根には"Tested on Pave"と記されたステッカーが
ベンドしたシートステーとエンドの上方に接続されるシートステーが高いトラクションを生み出す
加えてシートクランプはスマートな臼式とされ、わずかな乱流の発生を抑えるデザインに。一方で、真円形状のトラディショナルな規格を採用したり、荒れた路面でシートポストのずれ落ちを防ぐためのストッパーを標準で装備するあたりが"Tested on Pave"たる所以だろう。
リアトライアングルも一新されており、より薄く扁平させたシートステーやエンド付近でベンドさせたチェーンステーなど、縦方向への柔軟性を最大限に追求したデザインが与えられている。更にホイールベースを長めに取ることで、直進安定性を向上させた。
コンパクトなリアトライアングルデザイン
BB86を採用したハンガーやシートチューブはトラディショナルでシンプルなデザイン
丸型ポストと臼式シートクランプを組み合わせ空力と快適性を両立
これらのフレームワークに加え、弾性率の異なる30T/24T HMカーボンを適材適所に使用することで剛性と強度、快適性を両立し、Fenixはエンデュランスレーサーとして理想的な性能を獲得した。
リドレーの新たな中核モデルとなるFenixはフレームセットおよび、コンポーネントがセットとなったBike Craftに対応。シマノ DURA-ACEおよびULTEGRAの電動/機械式モデルが選択可能だ。今回のインプレッションバイクは機械式ULTEGRAにウルサスのミドルハイトカーボンホイール"TC37"、コンチネンタルのGP5000を組み合わせた一台だ。それではインプレッションへ移ろう。
― インプレッション
「最新エンデュランスバイクのベンチマークとなる一台」錦織大祐(フォーチュンバイク)
現代のエンデュランスバイクとして、まさしくド真ん中を射抜くバランスの取れたバイクですね。エアロ化やディスブレーキ化といった数々の新たな変化が起きている中で、エンデュランスバイクのベンチマークの一つになるモデルだと感じました。
やはり特筆すべきは振動吸収性の高さでしょう。路面が荒れていても、視点がブレない。常に安定した状態でバイクの上にいられるのは、あらゆるシーンで大きなメリットです。その中でもペダリングに対してしっかりと後輪が反応してくれるダイレクト感は歴代モデルの中でも一番ですね。よりシャープでキレの良い反応に仕上がっています。
「最新エンデュランスバイクのベンチマークとなる一台」錦織大祐(フォーチュンバイク)
石畳で鍛えられた、というのがリドレーの掲げる大きな看板ですが、では石畳で何を鍛えたのか?それは単なる振動吸収性の高さではないと思うんですよね。私も実際にベルギーの石畳を走ったのですが、単に振動吸収性があれば速く走れるものではなくて、しっかりと車輪が接地して前へと進むことが出来ないと石畳に跳ね返されてしまう。トラクションが無いとバイクコントロールを失ってしまうんですよ。
つまり、石畳で鍛えられたという言葉が示すのは、非常に不安定な状況でいかに自転車を前に進ませるか、という目標を掲げて開発されているということで、実際にリドレーのバイクに乗ると納得感があるんですよね。
「レーシングな性能にも磨きがかかり、グレードが一段階上がったような印象」錦織大祐(フォーチュンバイク) バーティカルコンプライアンスとして数字で比較すると、もっと大きく変形しているバイクも存在します。しかし、ただ振動をいなすだけでなく、余計な部分を動かさずに前へ進む、そして走ることで生まれる不安定な状況を制御しバイクとライダーを安定させる、そういった非常に複雑な動作を連続して要求される石畳において、非常に上手く応えてくれるのがリドレーです。
もちろん、日本には石畳なんてほぼ無いです。でも、視点を変えればもともと自転車は不安定な乗り物ですよね。疲れてきてぺダリングが乱れたり、知らない道を走ったりすると挙動が乱れてしまう。そういった外乱に対しても、しっかり応答して安定感のある走りを出来るのは大きなアドバンテージとなるでしょう。
今回のモデルチェンジでは、そんなFenixの良さはそのままに、よりクリアな乗り味を手に入れていると感じます。挙動の軽さや反応性、そういったレーシングな性能にも磨きがかかり、グレードが一段階上がったような印象です。
リドレーが研究してきたケーブル内装システムによる空力の向上も、乗車時間が長ければ長いほど恩恵を受けられるわけで、相性は非常に良いですよね。これまでのブランドとしての実績やフィロソフィーと、プロダクトの方向性が綺麗に融合しているバイクというのは、良いモデルが多いですよ。
エンデュランスバイクという概念が拡大してしまっていて、グラベルロードとの境界線があいまいになっているブランドもありますが、その点Fenixはあくまで舗装路を走るうえで、長く、速く走ることに焦点を合わせて開発されていると感じます。
対象としているユーザーや乗り方も非常に幅広く、懐の深い一台です。安定感をもたらしてくれる乗り味は、初中級者にはもちろんピッタリなのですが、レーサーの中でも相性の良い人がいると思います。スタックが少し高めなので、そこさえクリアできればホビーレースでも十分戦うことが出来るバイクではないでしょうか。
歴代のFenixユーザーで、ディスクブレーキバイクを探していた人にはピッタリでしょう。一方で「石畳とか走らないしな」なんてイメージでリドレーじゃない、Fenixじゃない、という方にも、ぜひ一度乗ってみてほしいですね。食わず嫌いが勿体ないと思える、完成度の高いバイクですから。
「しなやかな乗り味が身上 誰でも乗り心地の良さを体感できる一台」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
とても乗りやすく、誰でも乗り心地の良さを体感できるバイクだと思います。Tested on Pave、とフレームにも書かれていますが、荒れた道を走るとよく分かります。大きな衝撃をしっかりと緩和してくれ、常に路面にトラクションを掛け続けられるしなやかさが最大の特徴です。
「しなやかな乗り味が身上 誰でも乗り心地の良さを体感できる一台」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
いわゆる加速や登坂といった分野においては、際立って優れているわけではないのですが、決して他のバイクに後れを取っているわけでもありません。一般的なレベルのライダーが乗っている際に不満を感じることは無いでしょう。そういった性能よりも、快適性や振動吸収性の良さが印象的なバイクです。
とはいえ、踏んだ時に柔らかくて進まないというわけではなく、加速感もそこそこでアマチュアライダーにとっては踏みやすいペダリングフィールです。登りでもウィップ感があるので、少しタメながらしっかり踏んでいけますね。
むしろ荒れた路面でもスピードが落ちづらく、しっかり前へ進んでくれるような、速さのためのしなやかさという側面が大きいと思います。リアトライアングルの造形はかなり複雑ですが、良い働きをしているのだと感じました。
ケーブルフル内装システムを採用していて、ルックスもスマートになり更に空力も向上しているというのは、ユーザーにとってはメリット大でしょう。フレームとケーブルの擦れ傷の心配も無くなりますし、ポジションさえしっかり出せれば最高ですね。メンテナンス性についてはショップスタッフの問題ですので(笑)
ただ、独特のコラム形状の影響か、少しハンドリングにクセがありますね。ダンシングでハンドルをこねるように動かした際、すこし前輪の挙動が遅れてくるような印象です。コーナーリング時には大きな違和感は無かったですが、直進安定性の高さもあってすこしアンダーステアの傾向を感じました。クリップに寄せるためには慣れが必要だと思います。
「シンプルで軽量でありながら快適に走れるバイクを探している方にはぜひオススメしたい」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
総じてフレームがしなやかなので、ホイールにはキビキビ走る軽量で硬めのモデルがマッチするでしょう。今回はウルサスのカーボンホイールが入っていましたが、相性は良かったと思います。もう少し乗り心地に振るのであればシマノのカーボンホイールもいいでしょうし、よりディープなホイールで高速域に振っても面白そうですね。
出来れば少し太いタイヤを履かせれば、このバイクの良さを更に引き出せると思います。32Cタイヤを入れることが出来れば、オールロードバイクのような使い方も出来るのではないでしょうか。
バイクのキャラクターが明確なので、乗り込んでいくうちに自然とカスタムの方向性も定まってくるでしょう。最近のエンデュランスロードはギミックがついていて重量が嵩むものも多いですし、よりシンプルで軽量でありながら快適に走れるバイクを探している方にはぜひオススメしたいですね。
リドレー Fenix (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
リドレー Fenix
サイズ:XS / S / M
カラー:Black-White-Red(FSD30As)
フレーム:30T/24T HMカーボン
フォーク:フルカーボン
フレーム重量:980g(XS)/ 1,006g(S)/ 1,029g(M)
フォーク重量:379g(コラム長300mm)
BB規格:BB86
ローター径:140mm /160mm 対応
シートポスト径:27.2mm
最大タイヤ幅:28mm
体重制限:110 kg
フレームセット価格:280,000円(税別)
Bike Craft価格:
シマノ DURA-ACE R9100 DI2 / 626,000円(税別)
シマノ DURA-ACE R9100 / 502,000円(税別)
シマノ ULTEGRA R8000 DI2/ 464,000円(税別)
シマノ ULTEGRA R8000 / 391,000円(税別)
インプレッションライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
小西真澄(ワイズロードお茶の水) 小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto AYANO
![リドレー Fenix](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/01-impre2020dec-238.jpg)
自転車競技を国技として、数多くのクラシックレースやシクロクロスレースを開催するベルギー・フランドル地方に拠点を置くバイクブランドがリドレーだ。ルーツとなったペイント業からバイクの製造を手掛けるようになったリドレーは、高性能なバイクを送り出し瞬く間にトップブランドの一角として認知されるようになった。
その原動力となったのが、同郷のワールドチーム、ロット・スーダルとの緊密なパートナーシップ。カレブ・ユアン(オーストラリア)、やフィリップ・ジルベール(ベルギー)といった強力な選手らと共にトップレースで活躍し、その存在をアピールし続けてきた。
エアロロードのNOAHシリーズや軽量オールラウンダーのHeliumシリーズと共に、リドレーバイクラインアップの柱となるのがエンデュランスモデルのFenixシリーズだ。2013年の登場以来、「北の地獄」と称されるパリ~ルーベを筆頭とした過酷なクラシックレースに投入された実績を持つレーシングエンデュランスロードとして人気を集めてきた。
![独自のコックピットシステム](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/02-impre2020dec-247.jpg)
![細身のストレートフォークへと変更されている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/03-impre2020dec-272.jpg)
![最大タイヤ幅は28mmとされている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/04-impre2020dec-270.jpg)
リドレーといえば、バイク開発において必ず石畳(パヴェ)での走行試験を行っていることでも知られており、"Tested on Pave"と記されたステッカーはベルギーの大地に認められた証でもある。過酷なパヴェを含むクラシックレースを制するために開発されたFenixシリーズは、まさにリドレーのバイク哲学を凝縮したような一台だと言えるだろう。
そんなFenixが2021モデルとしてフルモデルチェンジ。エッジの立ったダイヤモンドシェイプのトップ&ダウンチューブなど、前作のエッセンスを受け継ぎつつ、よりレーシーで洗練されたバイクへと進化した。
![モデル名を示すロゴがトップチューブに配置される](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/05-impre2020dec-242.jpg)
![純正のステム一体型ハンドルもラインアップされている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/06-impre2020dec-254.jpg)
![細く扁平したシートステーが快適性を生み出す](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/07-impre2020dec-258.jpg)
![ハンドルにはメーターマウント用の台座も設けられる](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/08-impre2020dec-266.jpg)
先代からの最も大きな変化、そしてテーマとなっているのが空力性能の向上。エアロロードの枠を超え、レーシングバイク全般に波及してきたエアロ化の波が、ロンドやパリ~ルーベをターゲットとしたクラシックレーサーであるFenixにも到達した。
エアロダイナミクス向上のため、リドレーが新型Fenixに与えたのは、ケーブルフル内装システム。NOAH FAST DiscやHelium SLXで実績を積んだ"F-Steerer(エフ・ステアラー)"という独自のコックピットシステムを搭載し、ハンドル周辺のケーブル露出を一切排除したことで空気抵抗を低減することに成功している。
F-Steererシステムの採用を受け、フォークの形状も一新。ベンドフォークを採用していた先代に対し、新型Fenixではクラウンからエンドに至るまでほぼ断面積に変化がないほど極細のストレートフォークへと変更されている。カムテールデザインを採用することでエアロに配慮しつつ、突き上げを緩和することを狙った設計だ。
![チェーンステーの付け根には](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/09-impre2020dec-289.jpg)
![ベンドしたシートステーとエンドの上方に接続されるシートステーが高いトラクションを生み出す](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/10-impre2020dec-285.jpg)
加えてシートクランプはスマートな臼式とされ、わずかな乱流の発生を抑えるデザインに。一方で、真円形状のトラディショナルな規格を採用したり、荒れた路面でシートポストのずれ落ちを防ぐためのストッパーを標準で装備するあたりが"Tested on Pave"たる所以だろう。
リアトライアングルも一新されており、より薄く扁平させたシートステーやエンド付近でベンドさせたチェーンステーなど、縦方向への柔軟性を最大限に追求したデザインが与えられている。更にホイールベースを長めに取ることで、直進安定性を向上させた。
![コンパクトなリアトライアングルデザイン](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/11-impre2020dec-280.jpg)
![BB86を採用したハンガーやシートチューブはトラディショナルでシンプルなデザイン](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/12-impre2020dec-291.jpg)
![丸型ポストと臼式シートクランプを組み合わせ空力と快適性を両立](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/13-impre2020dec-293.jpg)
これらのフレームワークに加え、弾性率の異なる30T/24T HMカーボンを適材適所に使用することで剛性と強度、快適性を両立し、Fenixはエンデュランスレーサーとして理想的な性能を獲得した。
リドレーの新たな中核モデルとなるFenixはフレームセットおよび、コンポーネントがセットとなったBike Craftに対応。シマノ DURA-ACEおよびULTEGRAの電動/機械式モデルが選択可能だ。今回のインプレッションバイクは機械式ULTEGRAにウルサスのミドルハイトカーボンホイール"TC37"、コンチネンタルのGP5000を組み合わせた一台だ。それではインプレッションへ移ろう。
― インプレッション
「最新エンデュランスバイクのベンチマークとなる一台」錦織大祐(フォーチュンバイク)
現代のエンデュランスバイクとして、まさしくド真ん中を射抜くバランスの取れたバイクですね。エアロ化やディスブレーキ化といった数々の新たな変化が起きている中で、エンデュランスバイクのベンチマークの一つになるモデルだと感じました。
やはり特筆すべきは振動吸収性の高さでしょう。路面が荒れていても、視点がブレない。常に安定した状態でバイクの上にいられるのは、あらゆるシーンで大きなメリットです。その中でもペダリングに対してしっかりと後輪が反応してくれるダイレクト感は歴代モデルの中でも一番ですね。よりシャープでキレの良い反応に仕上がっています。
![「最新エンデュランスバイクのベンチマークとなる一台」錦織大祐(フォーチュンバイク)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/14-impre2020dec-866.jpg)
石畳で鍛えられた、というのがリドレーの掲げる大きな看板ですが、では石畳で何を鍛えたのか?それは単なる振動吸収性の高さではないと思うんですよね。私も実際にベルギーの石畳を走ったのですが、単に振動吸収性があれば速く走れるものではなくて、しっかりと車輪が接地して前へと進むことが出来ないと石畳に跳ね返されてしまう。トラクションが無いとバイクコントロールを失ってしまうんですよ。
つまり、石畳で鍛えられたという言葉が示すのは、非常に不安定な状況でいかに自転車を前に進ませるか、という目標を掲げて開発されているということで、実際にリドレーのバイクに乗ると納得感があるんですよね。
![「レーシングな性能にも磨きがかかり、グレードが一段階上がったような印象」錦織大祐(フォーチュンバイク)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/15-impre2020dec-890.jpg)
もちろん、日本には石畳なんてほぼ無いです。でも、視点を変えればもともと自転車は不安定な乗り物ですよね。疲れてきてぺダリングが乱れたり、知らない道を走ったりすると挙動が乱れてしまう。そういった外乱に対しても、しっかり応答して安定感のある走りを出来るのは大きなアドバンテージとなるでしょう。
今回のモデルチェンジでは、そんなFenixの良さはそのままに、よりクリアな乗り味を手に入れていると感じます。挙動の軽さや反応性、そういったレーシングな性能にも磨きがかかり、グレードが一段階上がったような印象です。
リドレーが研究してきたケーブル内装システムによる空力の向上も、乗車時間が長ければ長いほど恩恵を受けられるわけで、相性は非常に良いですよね。これまでのブランドとしての実績やフィロソフィーと、プロダクトの方向性が綺麗に融合しているバイクというのは、良いモデルが多いですよ。
エンデュランスバイクという概念が拡大してしまっていて、グラベルロードとの境界線があいまいになっているブランドもありますが、その点Fenixはあくまで舗装路を走るうえで、長く、速く走ることに焦点を合わせて開発されていると感じます。
対象としているユーザーや乗り方も非常に幅広く、懐の深い一台です。安定感をもたらしてくれる乗り味は、初中級者にはもちろんピッタリなのですが、レーサーの中でも相性の良い人がいると思います。スタックが少し高めなので、そこさえクリアできればホビーレースでも十分戦うことが出来るバイクではないでしょうか。
歴代のFenixユーザーで、ディスクブレーキバイクを探していた人にはピッタリでしょう。一方で「石畳とか走らないしな」なんてイメージでリドレーじゃない、Fenixじゃない、という方にも、ぜひ一度乗ってみてほしいですね。食わず嫌いが勿体ないと思える、完成度の高いバイクですから。
「しなやかな乗り味が身上 誰でも乗り心地の良さを体感できる一台」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
とても乗りやすく、誰でも乗り心地の良さを体感できるバイクだと思います。Tested on Pave、とフレームにも書かれていますが、荒れた道を走るとよく分かります。大きな衝撃をしっかりと緩和してくれ、常に路面にトラクションを掛け続けられるしなやかさが最大の特徴です。
![「しなやかな乗り味が身上 誰でも乗り心地の良さを体感できる一台」小西真澄(ワイズロードお茶の水)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/16-impre2020dec-918.jpg)
いわゆる加速や登坂といった分野においては、際立って優れているわけではないのですが、決して他のバイクに後れを取っているわけでもありません。一般的なレベルのライダーが乗っている際に不満を感じることは無いでしょう。そういった性能よりも、快適性や振動吸収性の良さが印象的なバイクです。
とはいえ、踏んだ時に柔らかくて進まないというわけではなく、加速感もそこそこでアマチュアライダーにとっては踏みやすいペダリングフィールです。登りでもウィップ感があるので、少しタメながらしっかり踏んでいけますね。
むしろ荒れた路面でもスピードが落ちづらく、しっかり前へ進んでくれるような、速さのためのしなやかさという側面が大きいと思います。リアトライアングルの造形はかなり複雑ですが、良い働きをしているのだと感じました。
ケーブルフル内装システムを採用していて、ルックスもスマートになり更に空力も向上しているというのは、ユーザーにとってはメリット大でしょう。フレームとケーブルの擦れ傷の心配も無くなりますし、ポジションさえしっかり出せれば最高ですね。メンテナンス性についてはショップスタッフの問題ですので(笑)
ただ、独特のコラム形状の影響か、少しハンドリングにクセがありますね。ダンシングでハンドルをこねるように動かした際、すこし前輪の挙動が遅れてくるような印象です。コーナーリング時には大きな違和感は無かったですが、直進安定性の高さもあってすこしアンダーステアの傾向を感じました。クリップに寄せるためには慣れが必要だと思います。
![「シンプルで軽量でありながら快適に走れるバイクを探している方にはぜひオススメしたい」小西真澄(ワイズロードお茶の水)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/17-impre2020dec-947.jpg)
総じてフレームがしなやかなので、ホイールにはキビキビ走る軽量で硬めのモデルがマッチするでしょう。今回はウルサスのカーボンホイールが入っていましたが、相性は良かったと思います。もう少し乗り心地に振るのであればシマノのカーボンホイールもいいでしょうし、よりディープなホイールで高速域に振っても面白そうですね。
出来れば少し太いタイヤを履かせれば、このバイクの良さを更に引き出せると思います。32Cタイヤを入れることが出来れば、オールロードバイクのような使い方も出来るのではないでしょうか。
バイクのキャラクターが明確なので、乗り込んでいくうちに自然とカスタムの方向性も定まってくるでしょう。最近のエンデュランスロードはギミックがついていて重量が嵩むものも多いですし、よりシンプルで軽量でありながら快適に走れるバイクを探している方にはぜひオススメしたいですね。
![リドレー Fenix](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/07/18-impre2020dec-278.jpg)
リドレー Fenix
サイズ:XS / S / M
カラー:Black-White-Red(FSD30As)
フレーム:30T/24T HMカーボン
フォーク:フルカーボン
フレーム重量:980g(XS)/ 1,006g(S)/ 1,029g(M)
フォーク重量:379g(コラム長300mm)
BB規格:BB86
ローター径:140mm /160mm 対応
シートポスト径:27.2mm
最大タイヤ幅:28mm
体重制限:110 kg
フレームセット価格:280,000円(税別)
Bike Craft価格:
シマノ DURA-ACE R9100 DI2 / 626,000円(税別)
シマノ DURA-ACE R9100 / 502,000円(税別)
シマノ ULTEGRA R8000 DI2/ 464,000円(税別)
シマノ ULTEGRA R8000 / 391,000円(税別)
インプレッションライダーのプロフィール
![錦織大祐(フォーチュンバイク)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/25/impre2016_5-532.jpg)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
![小西真澄(ワイズロードお茶の水)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/07/19-impre2020dec-673.jpg)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto AYANO
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