2020/12/27(日) - 15:33
イタリアの老舗レーシングブランド、コルナゴから"CLX Disc"をインプレッション。先代のトップレーシングモデル"V2-r"のデザインをそのまま受け継いだミドルグレードディスクロードが見せる走りとは。
イタリア御三家と呼び声高い老舗レーシングブランド、コルナゴ。溶接工であったエルネスト・コルナゴ氏が自身の名を冠し興して以来、60年以上の長きに渡りそのレーシングスピリットを保ち続けてきた。
ユニークなクローバーマークのブランドロゴにあしらわれたアルカンシエルが象徴するように、幾人もの世界王者の走りを支えてきたコルナゴのレーシングバイクは、多くの歴史的な勝利と共にあった。
記憶に新しいのは、今年のツール・ド・フランス。シャンゼリゼを目前にした土曜日、2017年から緊密なパートナーシップを築くUAEチーム・エミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が、同郷のログリッチをラ・プランシュ・デ・ベルフィーユへ至るタイムトライアルで劇的な逆転を決め、マイヨジョーヌを獲得。コルナゴ史上初となるツール・ド・フランス総合優勝の栄冠を勝ち取った。
今回インプレッションするのは、そんなレースへの情熱を絶やすことなく燃やし続けてきたコルナゴのミドルグレードモデル"CLX Disc"。4回のフルモデルチェンジを挟みつつ、10年以上の長きに渡りラインアップの屋台骨を支え続けてきた中核モデルにディスクブレーキ仕様が登場した。
ロングライドを快速で走り抜けるための、いわゆるグランフォンドバイクとしてデビューした初代CLXだが、ここ数年は一気にレーシングモデルとしての性格を強めてきた。先代モデルからは、デビュー時のハイエンドモデルのフレーム形状を承継したセカンドグレードレーサーとして開発されている。
今作のCLX Discのベースとなったのは、一世代前のコルナゴの山岳オールラウンダー"V2-r"。ポガチャルが駆った最新モデル、V3-rに多くのDNAを残したピュアレーシングバイクのフレームデザインをほぼそのまま受け継ぎ、カーボングレードを調整することでより幅広い層のライダーがその性能を楽しめるようになった。
細身でシンプルなアウトラインとプロ選手の要求を満たすレーシングジオメトリーを採用することで優れた軽量性と走行性能を両立したCLXは、クラシカルなレーシングバイクの王道を行く。一方で、カムテール形状のダウンチューブやフレーム内蔵式のシートクランプなど、エアロダイナミクスを高める設計も引き継いでおり、現代のレースバイクに相応しい設計が施されている。
ヘッドからフォークにかけてのデザインはCLX独自のもの。フォーククラウンとヘッドチューブを一体化させたインテグレートデザインによってより優れたエアロダイナミクスを実現。コルナゴ伝統のストレートフォークは、最大28Cまでのタイヤクリアランスを確保。ワイドタイヤがスタンダードとなった現代のレースバイクとして必要十分なスペックを備えたレースレディな仕様だ。
V2-rとの大きな違いはシートポスト規格。専用のカムテールエアロピラーだったV2-rとは異なり、CLXは汎用性に優れた27.2mm径の丸型ポストを採用している。一方で、BB規格は継承しており、コルナゴが提唱するスレッド式BBの整備性と圧入式BBの横剛性を両立する「スレッドフィット82.5」を採用している。
コルナゴレーシングバイクの血脈を確かに受け継ぐCLX Disc。入門レーサーにとって過不足ない性能を持つモデルとして、R7000系105でパッケージングされた完成車が展開されている。ブレーキローターは前160mm、後140mmという仕様。ハンドルおよびステム、シートポストはデダのZEROで統一されている。
ホイールはフルクラムのRacing 900 DBとされているが、現在購入時にアップチャージすることでグレードアップ出来るキャンペーンが実施中だ。プラス50,000円でRACING3 DBに、プラス95,000円でWIND 40DBへと変更できる。単体で購入するよりもリーズナブルな価格で、フレームのポテンシャルを引き出すハイスペックホイールを手に入れられる。
今回のインプレッションでは、ノーマルのRacing 900 DB仕様に加え、RACING3 DBへと交換した状態でのテストも実施。ついにツールを制したコルナゴレーシングバイクの直系たるミドルグレードの走りはいかなるものか。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「コルナゴイズムを貫きつつ万人受けする懐の広さを見せた一台」錦織大祐(フォーチュンバイク)
コルナゴの懐の深さを感じさせてくれるバイクですね。トータルバランスが良くて、目立った欠点というものが無いのでとても扱いやすい。それでいて、しっかりと「コルナゴらしさ」が匂い立ってくるのが、このブランドの凄いところなんだと思います。
もともとCLXはエンデュランス系のバイクとしてデビューしていて、以前のモデルはその印象が強かったのですが、このバイクはかなり軽快感がアップしていて驚きました。ダンシングでバイクを振ってもスパスパ走ってくれて、V2-rぽい乗り味だな、と思っていたのですが、同じモールドを使っているんですね。納得です。
振動吸収性も申し分ないですし、直進安定性も非常に高い。ビシッと直線を引いたようにシャープな走りができます。曲がるためにはしっかりきっかけを与えてあげないといけないのですが、曲がり始めればスパッと鋭く曲がっていけます。ニュートラルなフィーリングに近づけつつも、コルナゴらしいハンドリングは健在ですね。
比較的剛性感もあるので、高いトルクでガツガツと踏んでいくよりも、少し軽めのギアで気持ちよく回していく方がフレームのテンポとはマッチするでしょう。それは登りでも平坦でも共通する性格ですね。
トラディショナルなフレームワークで、実際に乗ってみても上品な乗り味なのですが、意外と空力も良いですね。風を切っているような音も少なくて、フォーク周りから綺麗に空気が流れているように感じました。
ヘッドチューブが少し長めですから、余裕のあるポジションで長距離を走りたいという人でも綺麗なシルエットで組みやすいのはうれしいですね。最近はミドルグレードでもケーブルフル内装のバイクも登場してきており、トラディショナルなルックスとケーブルルーティングで、なおかつ走りもしっかりしている自転車というのは、これからどんどん貴重な存在になっていくのではないかとも感じています。
ビギナーがロードバイクに慣れていくにつれて、ポジション変更というのは避けられないことです。性能を第一にするレーシングバイクであれば、身体を自転車に合わせるという考えもアリでしょうが、基本は自分に自転車を合わせるべきです。だから、このCLXのように、当たり前に、普通に組まれたバイクというのは、このご時世では非常に貴重な存在だと思います。例えトレンドから外れていたとしても、バイクを自分のモノとしてチューニングしていくプロセスはロードバイクの醍醐味ですし、その体験を含めて選ばれるべき一台ですね。
そういったスペックや仕様の面でも、走行性能の面でも良い意味で癖が無く上品に纏め上げられたバイクなので、この105仕様で30万円前半というプライスは非常にリーズナブルだと思いますね。一つ問題があるとすれば、これを1台目に選んでしまうと目が肥えてしまって2台目が選びにくいことくらいでしょうか(笑)。
もちろんノーマルのパッケージでもしっかり走ってくれますが、フレームのポテンシャルが高いのでしっかりしたホイールを入れてあげると、走りに磨きがかかりますね。今回はRACING3でも試してみましたが、やはりホイールが良くなるとフレームの良さが際立ちます。より俊敏になって安定感も向上し、ハンドリングもキレが増して、フレームの性格が素直に分かりやすくなります。
現在キャンペーン中だというRACING3へのアップグレードでも十分効果はありますし、より軽くて剛性のあるカーボンホイールであればより劇的でしょう。ホビーライダーであれば、不満がでることはおそらく無いのではないでしょうか。
コルナゴはレーシングブランドというイメージを持っている方も多いと思います。あまりレーシーに走るのではないから、自分にはコルナゴは分不相応だ、という方が。でもそれはあまりにも勿体ないですね。このCLXは、しっかりとコルナゴイズムを貫きつつも、このグレードのバイクを必要とするライダーのニーズを把握したうえで作られていますから。
「老舗の世界観が詰まったロードバイクの教科書的なミドルグレード」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
コルナゴらしいハンドリングが魅力的なミドルグレードバイクですね。乗っていて楽しくクルージングできるような、マイルドな踏み味が特徴的ですね。いかにもイタリアンバイクといった雰囲気が見た目からも乗り味からも出ていて、そういったものをバイクに求める人にはリーズナブルな価格と相まってオススメできる一台です。
羽が生えたように軽いとか、絨毯のように快適とか、一言でここが特徴的だと言えるような尖ったアピールポイントがあるバイクではなく、どちらかといえば非常にオールラウンドでバランスの取れた性能が身上のバイクでしょう。
走る、曲がる、止まるといった、ロードバイクに求められる性能を疎かにせず、真面目に作りこんだ一台だと思います。価格的には初めてのカーボンロードにピッタリな位置づけだと思うのですが、このバイクを選んでおけばどんな乗り方をするにしても大きな不満を感じることはないでしょう。
ビギナーが乗れば「ロードバイクってこういうものか!」と感じられるでしょうし、ベテランサイクリストが乗っても「そうそう、ロードバイクってこういう乗り物だよね」と言えるような、そんな良い意味で教科書的な一台ですね。
剛性面でもちょうどいいバランスで、程よくBB周りがしなるので嫌な硬さは感じません。かと言って、力が逃げるようなヤワさもないので踏み込んでいっても挙動が安定していますし、登りでダンシングしても引きずるような重さもありません。どんなコースでも軽やかに走ることができると思います。重量と剛性感、そして強度のバランスの取り方が非常に上手い。これは老舗の中でも、カーボンを良く知っているコルナゴならではのバランス感覚なのでしょう。
スルーアクスルの効果もあって、足元の剛性感もかなりしっかりしているのでコーナーリングやブレーキングでも安心できます。数年前のディスクロードですと、左右の剛性感が明らかに異なっているものもありましたが、このバイクではそういったこともありません。
いわゆるコルナゴハンドリングというものは健在で、非常に安定感のある直進性と機敏な運動性が同居している感覚は、まるで2台のバイクが瞬時に入れ替わっているのではないかというくらい。手放し運転が怖い人でもコルナゴであれば怖くないのではないでしょうか。
ロードバイクとしてお手本のようなバイクで、このアセンブルでこの価格というのは、非常にリーズナブルだと思いますね。サイズも豊富ですし、自分にフィットした一台を見つけやすい。ゆったりと乗りたいならワンサイズ上げたり、逆に小さめのサイズでキビキビ走らせたり、そういった乗り方に合わせて選ぶことだってできます。ただ、サイズが細かいというのは選択肢が多いということでもありますから、しっかりとノウハウのあるショップで相談してみてほしいですね。
また、今回はホイールアップグレードができるということでRACING3を履いて試してみましたが、ノーマル仕様に比べると全体的に身のこなしが鋭くなりますね。ホイール自体の剛性が上がり、重量も軽くなりますから、特に加速感が大きく改善されます。5万円のアップチャージであれば、コストパフォーマンスは高いのではないでしょうか。
ロングライドをマイペースで走るのであればノーマル仕様で、よりアップダウンの多いコースを走ったり、たまにイベントへの参加も視野に入れていたりする方であればRACING3へアップグレードするといいでしょう。
フレームの完成度が高いので、ビギナーはもちろん2台目を考えている方にも間違いなくオススメできるバイクです。週末に100kmのサイクリングへ出かけたくて、イタリアンバイクが気になるという方にはぜひオススメしたいですね。
コルナゴ CLX Disc
BB規格:スレッドフィット82.5
対応BB:プレスフィットBB86
タイヤクリアランス:最大28C
O.L.D寸法:フロント100mm、リア142mm
スルーアクスル径:12mm
サイズ:420S / 450S / 480S / 500S / 520S / 540S / 560S / 580S
カラー:CJRD / CJWH
価格:329,000円(税抜、105完成車)
インプレッションライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
イタリア御三家と呼び声高い老舗レーシングブランド、コルナゴ。溶接工であったエルネスト・コルナゴ氏が自身の名を冠し興して以来、60年以上の長きに渡りそのレーシングスピリットを保ち続けてきた。
ユニークなクローバーマークのブランドロゴにあしらわれたアルカンシエルが象徴するように、幾人もの世界王者の走りを支えてきたコルナゴのレーシングバイクは、多くの歴史的な勝利と共にあった。
記憶に新しいのは、今年のツール・ド・フランス。シャンゼリゼを目前にした土曜日、2017年から緊密なパートナーシップを築くUAEチーム・エミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が、同郷のログリッチをラ・プランシュ・デ・ベルフィーユへ至るタイムトライアルで劇的な逆転を決め、マイヨジョーヌを獲得。コルナゴ史上初となるツール・ド・フランス総合優勝の栄冠を勝ち取った。
今回インプレッションするのは、そんなレースへの情熱を絶やすことなく燃やし続けてきたコルナゴのミドルグレードモデル"CLX Disc"。4回のフルモデルチェンジを挟みつつ、10年以上の長きに渡りラインアップの屋台骨を支え続けてきた中核モデルにディスクブレーキ仕様が登場した。
ロングライドを快速で走り抜けるための、いわゆるグランフォンドバイクとしてデビューした初代CLXだが、ここ数年は一気にレーシングモデルとしての性格を強めてきた。先代モデルからは、デビュー時のハイエンドモデルのフレーム形状を承継したセカンドグレードレーサーとして開発されている。
今作のCLX Discのベースとなったのは、一世代前のコルナゴの山岳オールラウンダー"V2-r"。ポガチャルが駆った最新モデル、V3-rに多くのDNAを残したピュアレーシングバイクのフレームデザインをほぼそのまま受け継ぎ、カーボングレードを調整することでより幅広い層のライダーがその性能を楽しめるようになった。
細身でシンプルなアウトラインとプロ選手の要求を満たすレーシングジオメトリーを採用することで優れた軽量性と走行性能を両立したCLXは、クラシカルなレーシングバイクの王道を行く。一方で、カムテール形状のダウンチューブやフレーム内蔵式のシートクランプなど、エアロダイナミクスを高める設計も引き継いでおり、現代のレースバイクに相応しい設計が施されている。
ヘッドからフォークにかけてのデザインはCLX独自のもの。フォーククラウンとヘッドチューブを一体化させたインテグレートデザインによってより優れたエアロダイナミクスを実現。コルナゴ伝統のストレートフォークは、最大28Cまでのタイヤクリアランスを確保。ワイドタイヤがスタンダードとなった現代のレースバイクとして必要十分なスペックを備えたレースレディな仕様だ。
V2-rとの大きな違いはシートポスト規格。専用のカムテールエアロピラーだったV2-rとは異なり、CLXは汎用性に優れた27.2mm径の丸型ポストを採用している。一方で、BB規格は継承しており、コルナゴが提唱するスレッド式BBの整備性と圧入式BBの横剛性を両立する「スレッドフィット82.5」を採用している。
コルナゴレーシングバイクの血脈を確かに受け継ぐCLX Disc。入門レーサーにとって過不足ない性能を持つモデルとして、R7000系105でパッケージングされた完成車が展開されている。ブレーキローターは前160mm、後140mmという仕様。ハンドルおよびステム、シートポストはデダのZEROで統一されている。
ホイールはフルクラムのRacing 900 DBとされているが、現在購入時にアップチャージすることでグレードアップ出来るキャンペーンが実施中だ。プラス50,000円でRACING3 DBに、プラス95,000円でWIND 40DBへと変更できる。単体で購入するよりもリーズナブルな価格で、フレームのポテンシャルを引き出すハイスペックホイールを手に入れられる。
今回のインプレッションでは、ノーマルのRacing 900 DB仕様に加え、RACING3 DBへと交換した状態でのテストも実施。ついにツールを制したコルナゴレーシングバイクの直系たるミドルグレードの走りはいかなるものか。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「コルナゴイズムを貫きつつ万人受けする懐の広さを見せた一台」錦織大祐(フォーチュンバイク)
コルナゴの懐の深さを感じさせてくれるバイクですね。トータルバランスが良くて、目立った欠点というものが無いのでとても扱いやすい。それでいて、しっかりと「コルナゴらしさ」が匂い立ってくるのが、このブランドの凄いところなんだと思います。
もともとCLXはエンデュランス系のバイクとしてデビューしていて、以前のモデルはその印象が強かったのですが、このバイクはかなり軽快感がアップしていて驚きました。ダンシングでバイクを振ってもスパスパ走ってくれて、V2-rぽい乗り味だな、と思っていたのですが、同じモールドを使っているんですね。納得です。
振動吸収性も申し分ないですし、直進安定性も非常に高い。ビシッと直線を引いたようにシャープな走りができます。曲がるためにはしっかりきっかけを与えてあげないといけないのですが、曲がり始めればスパッと鋭く曲がっていけます。ニュートラルなフィーリングに近づけつつも、コルナゴらしいハンドリングは健在ですね。
比較的剛性感もあるので、高いトルクでガツガツと踏んでいくよりも、少し軽めのギアで気持ちよく回していく方がフレームのテンポとはマッチするでしょう。それは登りでも平坦でも共通する性格ですね。
トラディショナルなフレームワークで、実際に乗ってみても上品な乗り味なのですが、意外と空力も良いですね。風を切っているような音も少なくて、フォーク周りから綺麗に空気が流れているように感じました。
ヘッドチューブが少し長めですから、余裕のあるポジションで長距離を走りたいという人でも綺麗なシルエットで組みやすいのはうれしいですね。最近はミドルグレードでもケーブルフル内装のバイクも登場してきており、トラディショナルなルックスとケーブルルーティングで、なおかつ走りもしっかりしている自転車というのは、これからどんどん貴重な存在になっていくのではないかとも感じています。
ビギナーがロードバイクに慣れていくにつれて、ポジション変更というのは避けられないことです。性能を第一にするレーシングバイクであれば、身体を自転車に合わせるという考えもアリでしょうが、基本は自分に自転車を合わせるべきです。だから、このCLXのように、当たり前に、普通に組まれたバイクというのは、このご時世では非常に貴重な存在だと思います。例えトレンドから外れていたとしても、バイクを自分のモノとしてチューニングしていくプロセスはロードバイクの醍醐味ですし、その体験を含めて選ばれるべき一台ですね。
そういったスペックや仕様の面でも、走行性能の面でも良い意味で癖が無く上品に纏め上げられたバイクなので、この105仕様で30万円前半というプライスは非常にリーズナブルだと思いますね。一つ問題があるとすれば、これを1台目に選んでしまうと目が肥えてしまって2台目が選びにくいことくらいでしょうか(笑)。
もちろんノーマルのパッケージでもしっかり走ってくれますが、フレームのポテンシャルが高いのでしっかりしたホイールを入れてあげると、走りに磨きがかかりますね。今回はRACING3でも試してみましたが、やはりホイールが良くなるとフレームの良さが際立ちます。より俊敏になって安定感も向上し、ハンドリングもキレが増して、フレームの性格が素直に分かりやすくなります。
現在キャンペーン中だというRACING3へのアップグレードでも十分効果はありますし、より軽くて剛性のあるカーボンホイールであればより劇的でしょう。ホビーライダーであれば、不満がでることはおそらく無いのではないでしょうか。
コルナゴはレーシングブランドというイメージを持っている方も多いと思います。あまりレーシーに走るのではないから、自分にはコルナゴは分不相応だ、という方が。でもそれはあまりにも勿体ないですね。このCLXは、しっかりとコルナゴイズムを貫きつつも、このグレードのバイクを必要とするライダーのニーズを把握したうえで作られていますから。
「老舗の世界観が詰まったロードバイクの教科書的なミドルグレード」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
コルナゴらしいハンドリングが魅力的なミドルグレードバイクですね。乗っていて楽しくクルージングできるような、マイルドな踏み味が特徴的ですね。いかにもイタリアンバイクといった雰囲気が見た目からも乗り味からも出ていて、そういったものをバイクに求める人にはリーズナブルな価格と相まってオススメできる一台です。
羽が生えたように軽いとか、絨毯のように快適とか、一言でここが特徴的だと言えるような尖ったアピールポイントがあるバイクではなく、どちらかといえば非常にオールラウンドでバランスの取れた性能が身上のバイクでしょう。
走る、曲がる、止まるといった、ロードバイクに求められる性能を疎かにせず、真面目に作りこんだ一台だと思います。価格的には初めてのカーボンロードにピッタリな位置づけだと思うのですが、このバイクを選んでおけばどんな乗り方をするにしても大きな不満を感じることはないでしょう。
ビギナーが乗れば「ロードバイクってこういうものか!」と感じられるでしょうし、ベテランサイクリストが乗っても「そうそう、ロードバイクってこういう乗り物だよね」と言えるような、そんな良い意味で教科書的な一台ですね。
剛性面でもちょうどいいバランスで、程よくBB周りがしなるので嫌な硬さは感じません。かと言って、力が逃げるようなヤワさもないので踏み込んでいっても挙動が安定していますし、登りでダンシングしても引きずるような重さもありません。どんなコースでも軽やかに走ることができると思います。重量と剛性感、そして強度のバランスの取り方が非常に上手い。これは老舗の中でも、カーボンを良く知っているコルナゴならではのバランス感覚なのでしょう。
スルーアクスルの効果もあって、足元の剛性感もかなりしっかりしているのでコーナーリングやブレーキングでも安心できます。数年前のディスクロードですと、左右の剛性感が明らかに異なっているものもありましたが、このバイクではそういったこともありません。
いわゆるコルナゴハンドリングというものは健在で、非常に安定感のある直進性と機敏な運動性が同居している感覚は、まるで2台のバイクが瞬時に入れ替わっているのではないかというくらい。手放し運転が怖い人でもコルナゴであれば怖くないのではないでしょうか。
ロードバイクとしてお手本のようなバイクで、このアセンブルでこの価格というのは、非常にリーズナブルだと思いますね。サイズも豊富ですし、自分にフィットした一台を見つけやすい。ゆったりと乗りたいならワンサイズ上げたり、逆に小さめのサイズでキビキビ走らせたり、そういった乗り方に合わせて選ぶことだってできます。ただ、サイズが細かいというのは選択肢が多いということでもありますから、しっかりとノウハウのあるショップで相談してみてほしいですね。
また、今回はホイールアップグレードができるということでRACING3を履いて試してみましたが、ノーマル仕様に比べると全体的に身のこなしが鋭くなりますね。ホイール自体の剛性が上がり、重量も軽くなりますから、特に加速感が大きく改善されます。5万円のアップチャージであれば、コストパフォーマンスは高いのではないでしょうか。
ロングライドをマイペースで走るのであればノーマル仕様で、よりアップダウンの多いコースを走ったり、たまにイベントへの参加も視野に入れていたりする方であればRACING3へアップグレードするといいでしょう。
フレームの完成度が高いので、ビギナーはもちろん2台目を考えている方にも間違いなくオススメできるバイクです。週末に100kmのサイクリングへ出かけたくて、イタリアンバイクが気になるという方にはぜひオススメしたいですね。
コルナゴ CLX Disc
BB規格:スレッドフィット82.5
対応BB:プレスフィットBB86
タイヤクリアランス:最大28C
O.L.D寸法:フロント100mm、リア142mm
スルーアクスル径:12mm
サイズ:420S / 450S / 480S / 500S / 520S / 540S / 560S / 580S
カラー:CJRD / CJWH
価格:329,000円(税抜、105完成車)
インプレッションライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
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ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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