2020/11/04(水) - 10:29
ド平坦からの激坂山岳。全く異なるキャラクターを組み合わせたブエルタ最終週初日の個人TTで、1秒差のステージ優勝を遂げたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨロホを再奪還。リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)も好走したものの、ログリッチから39秒遅れの総合2位に甘んじた。
アングリル決戦と休息日を経てもなお、第75回ブエルタ・ア・エスパーニャの総合争いは加熱するばかり。第3週の幕開けとなる第13ステージに、今大会唯一となる個人タイムトライアルがやってきた。
ガリシア州の沿岸部、リアス式海岸の語源となった海岸線を北上する33.7kmの「時間との戦い」は、フィニッシュまで残り1.8kmを切ったところで3級山岳ミラドール・デ・エサロ(全長1.8km)が登場することが全選手にとっての悩みのタネ。
これまで2012年と2016年に山頂フィニッシュとして登場しているミラドール・デ・エサロは、登坂距離こそ短いものの、平均14.8%、最大29%に達する、勾配だけで見れば一昨日のアングリルに負けず劣らずの難関登坂。平坦と激坂という明確な2つのキャラクターを持つコースであるため、主催者はミラドール・デ・エサロの麓にバイク交換エリアを設けた。
好転続きのブエルタ。総合成績でリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)から3時間41分33秒遅れている最下位(151位)ミカエル・ドラージュ(フランス、グルパマFDJ)を先頭にスタート。前半出走選手の中で指標となるタイムを刻んだのは、50番手出走のレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。
フランスナショナルチャンピオンのスキンスーツを着る「クレルモン=フェランのTGV」は、第2中間計測で暫定首位アレックス・エドモンソン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)を抜き、47分37秒でフィニッシュ。1時間近くホットシートに座っていたカヴァニャだったが、そのタイムを全ての中間計測でトップタイムを叩き出したネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)が塗り替えた。
ポルトガルTT選手権を過去4回制しているオリヴェイラだったが、第1中間計測で0.01秒、第2中間計測で0.2秒上回るという接戦を演じたウィリアム・バルタ(アメリカ、CCCチーム)が、最後の激坂区間で9秒上回ってフィニッシュ。「自分の頑張りに満足しているし、これ以上できることは無い程追い込んだ。最後の1kmは耐え難いほど辛かった」という、グランツール2度目の24歳が暫定首位に浮上して総合上位勢の到着を待った。
総合成績トップ20が2分間隔でスタート。「今日のパフォーマンスは悪夢のようだった。ペースも自分本来のポジションも見つけることができなかった」と言う総合5位/マイヨブランコのエンリク・マス(スペイン、モビスター)は最終的にステージ16位に沈んだが、総合6位ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)と3分20秒以上タイム差が開いていたことで辛くも総合成績をキープする。
35秒遅れの総合4位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)は47分56秒、32秒遅れ総合3位のヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は47分04秒と好走。残すは総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)と、総合首位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の到着を待つばかり。
ログリッチは第1中間計測で5番手とスロースタートだったものの、中盤以降ギアを切り替える走りで第2中間計測を3位通過。カラパスも善戦したものの、TTスペシャリストでもあるログリッチに対し第1中間計測で04秒18遅れ、第2中間計測を前に10秒差をつけられ、バーチャルでマイヨロホを明け渡す。第2中間計測では19秒10遅れ(総合成績で09秒10遅れ)と、登坂区間に希望を残した状態で互いにバイク交換を行い、3級山岳ミラドール・デ・エサロの登りが始まった。
マイヨプントスを着るログリッチのペースは登りでも落ちなかった。「今日は自分に強さを感じた。もっと苦しむかと思っていたので(調子が良く)意外だった」と振り返るログリッチは、ツール・ド・フランス第20ステージでタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に負けた借りを返すかのごとく、ダンシングを織り交ぜながら激坂を駆け上がる。猛烈なペースで登坂をこなしたログリッチのタイムは46分39秒。長時間ホットシートを守り抜いてきたバルタのプロ初勝利への希望は、僅か1秒差で打ち崩された。
カラパスもステージ7位と決して悪くない走りだったものの、マイヨロホを懸けて戦うログリッチからは49秒失ってフィニッシュ。ログリッチが今大会ステージ4勝目、そして39秒差での総合逆転を手に入れた。
「多くの人は僕が簡単にタイムを稼ぐのだと思っていただろうが、タイムトライアルは全員に平等な機会が与えられる。(ポーカーの)フルハウスは常に最高の手札ではないことをみんな知っているだろう。幸運にも今日は脚が良く、いいタイムトライアルができた」と、決して安パイな勝利ではなかったと語るログリッチにとっては、今大会3度目のマイヨロホ着用だ。
少ないようで決して少なくない39秒差。再びマイヨロホを手放したカラパスだが、「このブエルタには総合優勝するために来た。その目標は変わっていない。まだこのブエルタを勝つ可能はまだまだ多く残されている。何が起こってもおかしくないような厳しい日がまだ残っている」と再々逆転に向けてモチベーションを失ってはいない。
ブエルタ最終週の初日に総合ワンツーが入れ替わり、遅れた総合10位ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)に代わり、好走したダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)が総合10位に浮上。この先3つの丘陵ステージを挟み、土曜日には最終決戦の場となる超級山岳ラ・コバティーリャ峠が登場。カラパスら総合2位以下の選手たちはこの第17ステージまで待つのか、あるいは丘陵ステージで総攻撃を仕掛けてくるのか。その行方に注目したい。
アングリル決戦と休息日を経てもなお、第75回ブエルタ・ア・エスパーニャの総合争いは加熱するばかり。第3週の幕開けとなる第13ステージに、今大会唯一となる個人タイムトライアルがやってきた。
ガリシア州の沿岸部、リアス式海岸の語源となった海岸線を北上する33.7kmの「時間との戦い」は、フィニッシュまで残り1.8kmを切ったところで3級山岳ミラドール・デ・エサロ(全長1.8km)が登場することが全選手にとっての悩みのタネ。
これまで2012年と2016年に山頂フィニッシュとして登場しているミラドール・デ・エサロは、登坂距離こそ短いものの、平均14.8%、最大29%に達する、勾配だけで見れば一昨日のアングリルに負けず劣らずの難関登坂。平坦と激坂という明確な2つのキャラクターを持つコースであるため、主催者はミラドール・デ・エサロの麓にバイク交換エリアを設けた。
好転続きのブエルタ。総合成績でリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)から3時間41分33秒遅れている最下位(151位)ミカエル・ドラージュ(フランス、グルパマFDJ)を先頭にスタート。前半出走選手の中で指標となるタイムを刻んだのは、50番手出走のレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。
フランスナショナルチャンピオンのスキンスーツを着る「クレルモン=フェランのTGV」は、第2中間計測で暫定首位アレックス・エドモンソン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)を抜き、47分37秒でフィニッシュ。1時間近くホットシートに座っていたカヴァニャだったが、そのタイムを全ての中間計測でトップタイムを叩き出したネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)が塗り替えた。
ポルトガルTT選手権を過去4回制しているオリヴェイラだったが、第1中間計測で0.01秒、第2中間計測で0.2秒上回るという接戦を演じたウィリアム・バルタ(アメリカ、CCCチーム)が、最後の激坂区間で9秒上回ってフィニッシュ。「自分の頑張りに満足しているし、これ以上できることは無い程追い込んだ。最後の1kmは耐え難いほど辛かった」という、グランツール2度目の24歳が暫定首位に浮上して総合上位勢の到着を待った。
総合成績トップ20が2分間隔でスタート。「今日のパフォーマンスは悪夢のようだった。ペースも自分本来のポジションも見つけることができなかった」と言う総合5位/マイヨブランコのエンリク・マス(スペイン、モビスター)は最終的にステージ16位に沈んだが、総合6位ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)と3分20秒以上タイム差が開いていたことで辛くも総合成績をキープする。
35秒遅れの総合4位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)は47分56秒、32秒遅れ総合3位のヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は47分04秒と好走。残すは総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)と、総合首位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の到着を待つばかり。
ログリッチは第1中間計測で5番手とスロースタートだったものの、中盤以降ギアを切り替える走りで第2中間計測を3位通過。カラパスも善戦したものの、TTスペシャリストでもあるログリッチに対し第1中間計測で04秒18遅れ、第2中間計測を前に10秒差をつけられ、バーチャルでマイヨロホを明け渡す。第2中間計測では19秒10遅れ(総合成績で09秒10遅れ)と、登坂区間に希望を残した状態で互いにバイク交換を行い、3級山岳ミラドール・デ・エサロの登りが始まった。
マイヨプントスを着るログリッチのペースは登りでも落ちなかった。「今日は自分に強さを感じた。もっと苦しむかと思っていたので(調子が良く)意外だった」と振り返るログリッチは、ツール・ド・フランス第20ステージでタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に負けた借りを返すかのごとく、ダンシングを織り交ぜながら激坂を駆け上がる。猛烈なペースで登坂をこなしたログリッチのタイムは46分39秒。長時間ホットシートを守り抜いてきたバルタのプロ初勝利への希望は、僅か1秒差で打ち崩された。
カラパスもステージ7位と決して悪くない走りだったものの、マイヨロホを懸けて戦うログリッチからは49秒失ってフィニッシュ。ログリッチが今大会ステージ4勝目、そして39秒差での総合逆転を手に入れた。
「多くの人は僕が簡単にタイムを稼ぐのだと思っていただろうが、タイムトライアルは全員に平等な機会が与えられる。(ポーカーの)フルハウスは常に最高の手札ではないことをみんな知っているだろう。幸運にも今日は脚が良く、いいタイムトライアルができた」と、決して安パイな勝利ではなかったと語るログリッチにとっては、今大会3度目のマイヨロホ着用だ。
少ないようで決して少なくない39秒差。再びマイヨロホを手放したカラパスだが、「このブエルタには総合優勝するために来た。その目標は変わっていない。まだこのブエルタを勝つ可能はまだまだ多く残されている。何が起こってもおかしくないような厳しい日がまだ残っている」と再々逆転に向けてモチベーションを失ってはいない。
ブエルタ最終週の初日に総合ワンツーが入れ替わり、遅れた総合10位ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)に代わり、好走したダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)が総合10位に浮上。この先3つの丘陵ステージを挟み、土曜日には最終決戦の場となる超級山岳ラ・コバティーリャ峠が登場。カラパスら総合2位以下の選手たちはこの第17ステージまで待つのか、あるいは丘陵ステージで総攻撃を仕掛けてくるのか。その行方に注目したい。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第13ステージ結果
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 46:39 |
2位 | ウィリアム・バルタ(アメリカ、CCCチーム) | 0:01 |
3位 | ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 0:10 |
4位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:25 |
5位 | ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ) | 0:41 |
6位 | マッティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:46 |
7位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:49 |
8位 | レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0;58 |
9位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 0:59 |
10位 | ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、サンウェブ) | 1:07 |
11位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 1:12 |
12位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | |
13位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 1:17 |
14位 | ヤニック・シュタイムレ(ドイツ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 1:29 |
15位 | テイメン・アレンスマン(ドイツ、サンウェブ) | 1:30 |
16位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 1:43 |
17位 | クレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル) | 1:44 |
18位 | アレックス・エドモンソン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) | 1:45 |
19位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 1:54 |
20位 | ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング) | 1:56 |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 49:16:16 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:39 |
3位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:47 |
4位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 1:42 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 3:23 |
6位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 6:15 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 7:14 |
8位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 8:39 |
9位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 8:48 |
10位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 9:23 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 76pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 30pts |
3位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) | 27pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 172pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 113pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 103pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 49:19:39 |
2位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 5:25 |
3位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 7:22 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 148:09:15 |
2位 | ユンボ・ヴィズマ | 3:50 |
3位 | アスタナ | 33:52 |
text:So Isobe
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