2020/10/30(金) - 10:04
大会2度目の集団スプリントで先着したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)は"位置取り争い中の危険行為"によって降格し、2番手パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が繰り上げ優勝。総合上位勢は久々の平穏な1日を過ごした。
前日に1級山岳モンカルビリョに登りつめ、2日後に4つの1級山岳が詰め込まれた獲得標高4,700m(今大会最高)の山場を控えるブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージが走るのは、第4ステージ以来6日ぶり、体感的にはそれ以上ぶりに感じるフラットステージ。
ブルゴス近郊のシド・カンペアドール軍事基地をスタートし、カスティーリャ・イ・レオン州の平野(と言っても常に標高800m前後の高地)を駆け抜ける157.7kmは1つのカテゴリー山岳も無いド平坦。スタート前こそブルゴス名物の強風が心配されたものの、蓋を開けてみれば晴天、気温15度、そして微風という好条件。非常に落ち着いた、スプリントステージらしい、リラックスした展開がステージ後半まで続くこととなる。
ここまで数日間は逃げ切りにチャンスを見出す選手たちが大きな逃げグループを形成したものの、この日はスプリンターにとっての数少ない活躍の場とあって、積極的なアタック合戦は掛からない。スタート後わずか1kmでフアン・オソリオ(コロンビア、ブルゴスBH)とアリツ・バグエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)の2名だけが抜け出し、最大5分程度の差を得て平坦コースを駆け抜けた。
セカンドディヴィジョンのUCIプロチーム、つまりワイルドカード枠で出場権を得たチームの選手が逃げ、メイン集団の先頭をUCIワールドチームが固めるという、定石通りの展開で距離を消化していく。
マイヨロホのリチャル・カラパス(エクアドル)擁するイネオス・グレナディアーズと、この日31歳になったばかりのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマといった総合系チームはもちろん、ドゥクーニンク・クイックステップとトタル・ディレクトエネルジーなどスプリンターチームも牽引役を出してメイン集団をコントロールした。
この日の大部分を占めたオソリオとバグエスのタンデム走行が終わりを告げたのは、残り21.5km地点のことだった。残り21km地点に控えるクルマ一台分の幅の古橋を安全なポジションで通過するべく各チームがメイン集団のペースを上げ、その動きの中で二人は引き戻される。比較的早いタイミングでの吸収だったが、グルパマFDJ、ボーラ・ハンスグローエ、モビスター、そしてロット・スーダルといった各チームが集団先頭を蓋したため、次なるアタックが生まれる余地は無かった。
残り13km地点では総合2位&マイヨプントスのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がパンクで後退したが、素早くバイク交換を行い、危険な状態に陥ることもなく集団復帰に成功する。緩斜面の下りを経てアギラル・デ・カンポーの街に入り、残り1.4kmのヘアピンコーナーから向かい風区間へ。
アシストを3枚揃えたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が優位を維持し、ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)に連れられたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がエミルス・リエピンス(ラトビア、トレック・セガフレード)と激しい位置取り争いを繰り広げながら突き進む。残り150mまで迫ったタイミングでアッカーマンが、そして後方からベネットがほぼ同時に加速した。
やや後方からのスプリントだったものの、既に1勝をマークしているベネットの加速はこの日も冴え渡っていた。残り150mから最大1500ワットを踏み65.5km/hオーバーで突き進むアッカーマンを交わし、最大1314ワットながら68km/h台に載せて追い上げるヘルベン・タイッセン(ベルギー、ロット・スーダル)も届かず、頭一つ抜け出したベネットがガッツポーズ。ジャージをアピールし、ウルフパックの強さを今一度見せつけた。
だがしかし、フィニッシュから時間を置いて発表されたのは、ベネットの降格処分とアッカーマンの繰り上げ勝利だった。ベネットが位置取り争い中に、第7ステージでタイムアウトになったマッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)の代わりに単騎スプリントに挑んだリエピンスを2度押し退けたことが原因となり、大集団の最後尾となる110位へと降格。ドゥクーニンク・クイックステップの抗議は通らず、「望んでいたような勝ち方ではないが、正当な判断だったと思う」と言うアッカーマンがステージ表彰に登壇することとなった。
この判定を受け、ドゥクーニンク・クイックステップのパトリック・ルフェーブルGMは「こんなデタラメあってたまるか。彼(ベネット)はリードアウトの中にいたのにも関わらず、トレックの選手が彼を引きずり出そうとしたんだ。しかし我々は長きに渡りUCIが無能であると知っている。安全第一だ。リードアウトは尊重されなければならないし、サム・ベネットは(その位置を)守っただけだ」とTwitterで猛抗議している。
「マドリードまでの道のりは長いし、スプリンターのためのチャンスも2、3ステージ残されている。そこで成功を掴めることを願っているよ」と話すアッカーマンにとっては、ティレーノ〜アドリアティコ第2ステージに続く1ヶ月半ぶりの勝利。あと一勝でUCIレース通算勝利数を30に載せることとなる。
平穏な1日を過ごした総合上位勢の中に順位変動は一切なく、マイヨロホのリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)も「結果的にはかなり楽な一日になった。もっと緊張感のあるレースを予想していた」と安堵。翌日も集団スプリント向きのステージであり、総合上位勢にとっては足休めになりそうだ。
前日に1級山岳モンカルビリョに登りつめ、2日後に4つの1級山岳が詰め込まれた獲得標高4,700m(今大会最高)の山場を控えるブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージが走るのは、第4ステージ以来6日ぶり、体感的にはそれ以上ぶりに感じるフラットステージ。
ブルゴス近郊のシド・カンペアドール軍事基地をスタートし、カスティーリャ・イ・レオン州の平野(と言っても常に標高800m前後の高地)を駆け抜ける157.7kmは1つのカテゴリー山岳も無いド平坦。スタート前こそブルゴス名物の強風が心配されたものの、蓋を開けてみれば晴天、気温15度、そして微風という好条件。非常に落ち着いた、スプリントステージらしい、リラックスした展開がステージ後半まで続くこととなる。
ここまで数日間は逃げ切りにチャンスを見出す選手たちが大きな逃げグループを形成したものの、この日はスプリンターにとっての数少ない活躍の場とあって、積極的なアタック合戦は掛からない。スタート後わずか1kmでフアン・オソリオ(コロンビア、ブルゴスBH)とアリツ・バグエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)の2名だけが抜け出し、最大5分程度の差を得て平坦コースを駆け抜けた。
セカンドディヴィジョンのUCIプロチーム、つまりワイルドカード枠で出場権を得たチームの選手が逃げ、メイン集団の先頭をUCIワールドチームが固めるという、定石通りの展開で距離を消化していく。
マイヨロホのリチャル・カラパス(エクアドル)擁するイネオス・グレナディアーズと、この日31歳になったばかりのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマといった総合系チームはもちろん、ドゥクーニンク・クイックステップとトタル・ディレクトエネルジーなどスプリンターチームも牽引役を出してメイン集団をコントロールした。
この日の大部分を占めたオソリオとバグエスのタンデム走行が終わりを告げたのは、残り21.5km地点のことだった。残り21km地点に控えるクルマ一台分の幅の古橋を安全なポジションで通過するべく各チームがメイン集団のペースを上げ、その動きの中で二人は引き戻される。比較的早いタイミングでの吸収だったが、グルパマFDJ、ボーラ・ハンスグローエ、モビスター、そしてロット・スーダルといった各チームが集団先頭を蓋したため、次なるアタックが生まれる余地は無かった。
残り13km地点では総合2位&マイヨプントスのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がパンクで後退したが、素早くバイク交換を行い、危険な状態に陥ることもなく集団復帰に成功する。緩斜面の下りを経てアギラル・デ・カンポーの街に入り、残り1.4kmのヘアピンコーナーから向かい風区間へ。
アシストを3枚揃えたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が優位を維持し、ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)に連れられたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がエミルス・リエピンス(ラトビア、トレック・セガフレード)と激しい位置取り争いを繰り広げながら突き進む。残り150mまで迫ったタイミングでアッカーマンが、そして後方からベネットがほぼ同時に加速した。
やや後方からのスプリントだったものの、既に1勝をマークしているベネットの加速はこの日も冴え渡っていた。残り150mから最大1500ワットを踏み65.5km/hオーバーで突き進むアッカーマンを交わし、最大1314ワットながら68km/h台に載せて追い上げるヘルベン・タイッセン(ベルギー、ロット・スーダル)も届かず、頭一つ抜け出したベネットがガッツポーズ。ジャージをアピールし、ウルフパックの強さを今一度見せつけた。
だがしかし、フィニッシュから時間を置いて発表されたのは、ベネットの降格処分とアッカーマンの繰り上げ勝利だった。ベネットが位置取り争い中に、第7ステージでタイムアウトになったマッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)の代わりに単騎スプリントに挑んだリエピンスを2度押し退けたことが原因となり、大集団の最後尾となる110位へと降格。ドゥクーニンク・クイックステップの抗議は通らず、「望んでいたような勝ち方ではないが、正当な判断だったと思う」と言うアッカーマンがステージ表彰に登壇することとなった。
この判定を受け、ドゥクーニンク・クイックステップのパトリック・ルフェーブルGMは「こんなデタラメあってたまるか。彼(ベネット)はリードアウトの中にいたのにも関わらず、トレックの選手が彼を引きずり出そうとしたんだ。しかし我々は長きに渡りUCIが無能であると知っている。安全第一だ。リードアウトは尊重されなければならないし、サム・ベネットは(その位置を)守っただけだ」とTwitterで猛抗議している。
「マドリードまでの道のりは長いし、スプリンターのためのチャンスも2、3ステージ残されている。そこで成功を掴めることを願っているよ」と話すアッカーマンにとっては、ティレーノ〜アドリアティコ第2ステージに続く1ヶ月半ぶりの勝利。あと一勝でUCIレース通算勝利数を30に載せることとなる。
平穏な1日を過ごした総合上位勢の中に順位変動は一切なく、マイヨロホのリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)も「結果的にはかなり楽な一日になった。もっと緊張感のあるレースを予想していた」と安堵。翌日も集団スプリント向きのステージであり、総合上位勢にとっては足休めになりそうだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第9ステージ結果
1位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:39:55 |
2位 | ヘルベン・タイッセン(ベルギー、ロット・スーダル) | |
3位 | マックス・カンター(ドイツ、サンウェブ) | |
4位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | ヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム) | |
6位 | アレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) | |
7位 | ジョン・アベラストゥリ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) | |
8位 | ロレンゾ・マンザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) | |
9位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) | |
10位 | レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、NTTプロサイクリング) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 36:11:01 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:13 |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:28 |
4位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:44 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 1:54 |
6位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:28 |
7位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | |
8位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 3:35 |
9位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 3:40 |
10位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 3:47 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 27pts |
2位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) | 24pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 24pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 104pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 81pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 73pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 36:12:55 |
2位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 4:21 |
3位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 4:58 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 8:42:27 |
2位 | UAEチームエミレーツ | 5:48 |
3位 | ユンボ・ヴィズマ | 12:46 |
text:So Isobe
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