2020/09/09(水) - 00:52
休息日に行われたPCR検査の結果、全チームのスタートが認められ、陽性となった大会ディレクターのプリュドム氏がレースを去る事態に見舞われたツール・ド・フランス第10ステージ。海風や多発する落車による集団分裂を経て、自身初のスプリント勝利を飾ったサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨヴェールに袖を通した。
9月8日(火)第10ステージ
ル・シャトー=ドレロン〜サンマルタン=ド=レ
距離:168.5km
獲得標高差:700m
天候:晴れ
気温:24〜26度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
132.5km地点 スプリントポイント
PCR検査を経て、プリュドム氏のいないツールが再スタート
2020年ツール・ド・フランス第2週は、今大会唯一カテゴリー山岳が設定されないど平坦ステージからスタート。オレロン島から全長3,027mのオレロン島橋を渡って一旦フランス本土に渡り、海岸線やスードル川が作り出した平原を走り、全長2,926mのレ島橋を渡ってレ島へ。獲得標高差700mという今大会最も平坦なステージは今大会最も海を間近に感じるステージ。海風を切り抜けての集団スプリントに持ち込まれると予想された。
スタッフを含む2名の新型コロナウイルス陽性者が出た場合にチームごと撤退しなければならないという「ツー・ストライク」ルールにより、休息日に行われたPCR検査の結果に注目が集まったスタート地点。「レースバブル」に含まれるチーム関係者約841名を対象にしたPCR検査の結果、すべての選手の陰性が確認されたものの、コフィディス、アージェードゥーゼール、イネオス・グレナディアーズ、ミッチェルトン・スコットのチームスタッフ1名ずつと大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の新型コロナウイルス陽性が判明。落車負傷によりレースを去ったドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)を除く、22チーム、165名が第2週をスタートさせた。
晴れわたるオレロン島を離れるとすぐ、ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)とシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)が追い風に乗るようにしてアタック。ともに元BMCレーシングで、ともにチーム内にピュアスプリンターがおらず、ともにチーム内に総合上位のオールラウンダーがいないスイス人コンビ。今大会に出場しているスイス出身選手4名(シェアー、キュング、ライヒェンバッハ、ヒルシ)の半分が逃げる展開となったが、メイン集団とのタイム差を思うように広げることができない。
最初の1時間を平均スピード49.3km/hで駆け抜けたスイスデュオだったが、進路変更&風向き変化とともにドゥクーニンク・クイックステップが集団ペースアップを開始すると最大2分まで広がったタイム差は瞬く間に縮小。落車や横風でティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)を置き去りにしたメイン集団は、フィニッシュまで100kmを残して逃げを飲み込んだ。
ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィスマ、イネオス・グレナディアーズが先頭で指揮をとるメイン集団は高速を維持したまま向かい風の中を進む。中央分離帯やロンポワン(ラウンドアバウト)が連続するコースでは至る所で落車が発生。総合3位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)や総合7位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)も落車に巻き込まれたが、チームメイトたちのエスコートによって集団復帰を果たしている。
落車や分裂を繰り返しながら集団スプリントで決着
逃げが生まれないまま差し掛かったスプリントポイントではマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)がペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)を下して先頭通過。その後もユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズが危険回避のために集団先頭でペースを上げ続ける。ピリピリとした緊張感に包まれた集団内では総合9位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車。横風区間で集団が割れるシーンも見られたが、総合上位陣の中でタイムを失う選手はいなかった。
横風が吹くレ島橋でキュングがアタックしたものの吸収(しかしステージ敢闘賞を獲得)。集団先頭で状況をコントロールし続けたユンボ・ヴィスマは、残り3kmを切ってから牽引の役目をスプリンターチームに託した。
これまでの平坦ステージがそうであったように、この日もフラムルージュ(残り1kmアーチ)に向かってサンウェブのリードアウトトレインが定刻通りに発車。先頭でトレインを走らせたが、残り400mでミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)がアイルランドチャンピオンを引き連れてリードアウトの主導権を奪う。
後ろにカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とサガンを連れたベネットが残り150mで発進すると、第3ステージと同様にユアンが爆発的な加速で並びにかかる。1年前のツールでは第1休息日明けの第11ステージと第2休息日明けの第16ステージを制し、自他ともに認める「休息日明けのステージが得意な選手」であるユアン。しかし今回ばかりはベネットを差し切ることができなかった。両者同時のハンドル投げで、ベネットが先着した。
全グランツールステージ優勝を果たしたベネット
「ショックを受けているというのが正直な気持ち。ずっとツール・ド・フランスでのステージ優勝を夢見てきた。果たしてそれがどんなものなのか想像さえできなかった。一生勝てないんじゃないかとも思った」。3回目のツールでスプリント初勝利を飾ったベネットは感極まる。現役選手の中で19名(カヴェンディッシュ、グライペル、バルベルデ、フルーム、ニバリ、デゲンコルプ、ジルベール、デュムラン、ヴィヴィアーニ、ユアン、マシューズ、キンタナ、トレンティン、ログリッチ、イェーツ、アル、ピノ、デニス、デヘント)しか達成していない全グランツールステージ優勝を果たした。
「向かい風が吹いていたのでスプリントの開始を辛抱強く待ったんだ。スプリント開始が遅すぎたかもしれないと思った。ギアも重すぎたけど・・・勝てたんだ!すべてのチームに、特にこの機会を与えてくれたパトリック(ルフェーブルGM)に感謝している」。ベネットはこれまで第1ステージ4位、第3ステージ2位、第5ステージ3位。ボーラ・ハンスグローエの攻撃により第7ステージで失っていたマイヨヴェールを、再びサガンの手から奪うことに成功している。
危険な海風ステージを終えて総合成績に大きな変動は起こらず、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨジョーヌをキープ。落車で遅れたダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)とともに最後尾でフィニッシュしたジェローム・クザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)がパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)に代わってランタンルージュ(総合最下位)の座についている。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
9月8日(火)第10ステージ
ル・シャトー=ドレロン〜サンマルタン=ド=レ
距離:168.5km
獲得標高差:700m
天候:晴れ
気温:24〜26度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
132.5km地点 スプリントポイント
PCR検査を経て、プリュドム氏のいないツールが再スタート
2020年ツール・ド・フランス第2週は、今大会唯一カテゴリー山岳が設定されないど平坦ステージからスタート。オレロン島から全長3,027mのオレロン島橋を渡って一旦フランス本土に渡り、海岸線やスードル川が作り出した平原を走り、全長2,926mのレ島橋を渡ってレ島へ。獲得標高差700mという今大会最も平坦なステージは今大会最も海を間近に感じるステージ。海風を切り抜けての集団スプリントに持ち込まれると予想された。
スタッフを含む2名の新型コロナウイルス陽性者が出た場合にチームごと撤退しなければならないという「ツー・ストライク」ルールにより、休息日に行われたPCR検査の結果に注目が集まったスタート地点。「レースバブル」に含まれるチーム関係者約841名を対象にしたPCR検査の結果、すべての選手の陰性が確認されたものの、コフィディス、アージェードゥーゼール、イネオス・グレナディアーズ、ミッチェルトン・スコットのチームスタッフ1名ずつと大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の新型コロナウイルス陽性が判明。落車負傷によりレースを去ったドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)を除く、22チーム、165名が第2週をスタートさせた。
晴れわたるオレロン島を離れるとすぐ、ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)とシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)が追い風に乗るようにしてアタック。ともに元BMCレーシングで、ともにチーム内にピュアスプリンターがおらず、ともにチーム内に総合上位のオールラウンダーがいないスイス人コンビ。今大会に出場しているスイス出身選手4名(シェアー、キュング、ライヒェンバッハ、ヒルシ)の半分が逃げる展開となったが、メイン集団とのタイム差を思うように広げることができない。
最初の1時間を平均スピード49.3km/hで駆け抜けたスイスデュオだったが、進路変更&風向き変化とともにドゥクーニンク・クイックステップが集団ペースアップを開始すると最大2分まで広がったタイム差は瞬く間に縮小。落車や横風でティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)を置き去りにしたメイン集団は、フィニッシュまで100kmを残して逃げを飲み込んだ。
ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィスマ、イネオス・グレナディアーズが先頭で指揮をとるメイン集団は高速を維持したまま向かい風の中を進む。中央分離帯やロンポワン(ラウンドアバウト)が連続するコースでは至る所で落車が発生。総合3位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)や総合7位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)も落車に巻き込まれたが、チームメイトたちのエスコートによって集団復帰を果たしている。
落車や分裂を繰り返しながら集団スプリントで決着
逃げが生まれないまま差し掛かったスプリントポイントではマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)がペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)を下して先頭通過。その後もユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズが危険回避のために集団先頭でペースを上げ続ける。ピリピリとした緊張感に包まれた集団内では総合9位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車。横風区間で集団が割れるシーンも見られたが、総合上位陣の中でタイムを失う選手はいなかった。
横風が吹くレ島橋でキュングがアタックしたものの吸収(しかしステージ敢闘賞を獲得)。集団先頭で状況をコントロールし続けたユンボ・ヴィスマは、残り3kmを切ってから牽引の役目をスプリンターチームに託した。
これまでの平坦ステージがそうであったように、この日もフラムルージュ(残り1kmアーチ)に向かってサンウェブのリードアウトトレインが定刻通りに発車。先頭でトレインを走らせたが、残り400mでミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)がアイルランドチャンピオンを引き連れてリードアウトの主導権を奪う。
後ろにカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とサガンを連れたベネットが残り150mで発進すると、第3ステージと同様にユアンが爆発的な加速で並びにかかる。1年前のツールでは第1休息日明けの第11ステージと第2休息日明けの第16ステージを制し、自他ともに認める「休息日明けのステージが得意な選手」であるユアン。しかし今回ばかりはベネットを差し切ることができなかった。両者同時のハンドル投げで、ベネットが先着した。
全グランツールステージ優勝を果たしたベネット
「ショックを受けているというのが正直な気持ち。ずっとツール・ド・フランスでのステージ優勝を夢見てきた。果たしてそれがどんなものなのか想像さえできなかった。一生勝てないんじゃないかとも思った」。3回目のツールでスプリント初勝利を飾ったベネットは感極まる。現役選手の中で19名(カヴェンディッシュ、グライペル、バルベルデ、フルーム、ニバリ、デゲンコルプ、ジルベール、デュムラン、ヴィヴィアーニ、ユアン、マシューズ、キンタナ、トレンティン、ログリッチ、イェーツ、アル、ピノ、デニス、デヘント)しか達成していない全グランツールステージ優勝を果たした。
「向かい風が吹いていたのでスプリントの開始を辛抱強く待ったんだ。スプリント開始が遅すぎたかもしれないと思った。ギアも重すぎたけど・・・勝てたんだ!すべてのチームに、特にこの機会を与えてくれたパトリック(ルフェーブルGM)に感謝している」。ベネットはこれまで第1ステージ4位、第3ステージ2位、第5ステージ3位。ボーラ・ハンスグローエの攻撃により第7ステージで失っていたマイヨヴェールを、再びサガンの手から奪うことに成功している。
危険な海風ステージを終えて総合成績に大きな変動は起こらず、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨジョーヌをキープ。落車で遅れたダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)とともに最後尾でフィニッシュしたジェローム・クザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)がパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)に代わってランタンルージュ(総合最下位)の座についている。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
ツール・ド・フランス2020 第10ステージ結果
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 3:35:22 |
2位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
3位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
4位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | |
5位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
6位 | アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
7位 | ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | |
8位 | ケース・ボル(オランダ、サンウェブ) | |
9位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
10位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット) | |
DNF | サム・ビューリー(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット) | |
DNS | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 42:15:23 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:21 |
3位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:00:28 |
4位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:00:30 |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:00:32 |
6位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
7位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:44 |
8位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:02 |
9位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:01:15 |
10位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:01:42 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 196pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 175pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | 129pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) | 36pts |
2位 | ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) | 31pts |
3位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) | 26pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 42:15:44 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:23 |
3位 | ルイス・マス(スペイン、モビスター) | 0:01:41 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 126:53:01 |
2位 | EFプロサイクリング | 0:05:12 |
3位 | トレック・セガフレード | 0:05:27 |
text:Kei Tsuji
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