2020/09/07(月) - 01:11
ピレネー最終日のツール・ド・フランス第9ステージで、終盤に登場した急勾配の1級山岳マリーブランク峠でログリッチ、ポガチャル、ベルナル、ランダが先行。逃げていたヒルシを捕まえた精鋭グループ内のスプリントでタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が勝利し、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)がマイヨジョーヌを手にした。
ニコラ・ポルタル監督の家族とイネオス・グレナディアーズ photo:Luca Bettini
9月6日(日)第9ステージ
ポー〜ラランス
距離:153km
獲得標高差:3,350m
天候:曇り時々雨
気温:10〜22度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
9.5km地点 4級山岳アルティーグルヴ峠(距離2.3km・平均4.5%)
69km地点 1級山岳ラ・ウルセル峠(距離11.1km・平均8.8%)
78km地点 3級山岳スデ峠(距離3.8km・平均8.5%)
99km地点 スプリントポイント
115.5km地点 3級山岳イシェール峠(距離4.2km・平均7%)
135km地点 ボーナスポイント/1級山岳マリーブランク峠(距離7.7km・平均8.6%)
9月6日(日)第9ステージ ポー〜ラランス 153km photo:A.S.O.
9月6日(日)第9ステージ ポー〜ラランス 153km photo:A.S.O.
スタート前に話し込むトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
イネオス・グレナディアーズを先頭にポーの街をスタート photo:Luca Bettini
気温20度、小雨混じりのポーの街をスタート
ピレネー山脈の5つの峠を攻略する153kmのステージが、開幕地ニースからノンストップで続いた長い長い大会第1週を締めくくる。パリに次いで2番目にツールへの登場回数が多い(72回目)ポーの街からラランスの間に登場する峠は4つ。1級山岳ラ・ウルセル峠、3級山岳スデ峠、3級山岳イシェール峠を休むまもなくこなし、この日の目玉である1級山岳マリーブランク峠へ。10年ぶりの登場となるこの峠はとにかく勾配がきつく、頂上手前3.5kmの平均勾配は12%。前日に引き続き山頂フィニッシュではなく1級山岳を越えてから下り&平坦路をこなしてフィニッシュを迎える。
今年3月に急逝したニコラ・ポルタル監督の故郷に近く、マガリー夫人と子供たちを迎えてのセレモニーを経て、168名の選手たちが小雨混じりのポーをスタートしていく。前日までよりずっと肌寒い気温20度以下のピレネー=アトランティック県に駆け出すと、そこから約1時間半にわたる高速アタック合戦が繰り広げられることに。
前方での激しい出入りの末、ステージ前半の平坦区間を瞬く間に消化したメイン集団はそのまま1級山岳ラ・ウルセル峠に突入。平坦区間で脱落したファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)がリタイアを選んだ一方で、すでに総合で遅れている選手たちが逃げ切り狙いのアタックを繰り返した。
ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)を含む先頭グループが形成されると、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が見張り役として危険な動きをチェックする。雨に濡れた登坂距離11.1kmの1級山岳ラ・ウルセル峠で、マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)が単独で抜け出した。
アタックが決まらないまま、高速でステージ前半を駆け抜ける photo:Kei Tsuji
ステージ前半に動いたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Luca Bettini
1級山岳ラ・ウルセル峠を進むメイン集団 photo:Luca Bettini
霧の1級山岳ラ・ウルセル峠でヒルシが独走開始
総合で7分55秒遅れのバルギルやレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)、ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、ジョナタン・カストロビエホ(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)、ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)、オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)という8名が強力な追走グループを形成し、後方ではユンボ・ヴィスマがメイン集団のコントロールを開始。この高速な展開にマイヨジョーヌのアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は孤立した。
気温10度、深い霧に包まれた1級山岳ラ・ウルセル峠をヒルシは追走グループに1分20秒つけてクリア。ヒルシは追走グループを待つどころかタイム差を2分まで広げた状態で3級山岳スデ峠を先頭通過する。下りでさらにリードを広げる走りを見せたヒルシは、追走グループに3分、メイン集団に4分のリードをもってステージ後半へ。追走グループがメイン集団に捕らえられたため、ヒルシが3分55秒先行した状態で最後の1級山岳マリーブランク峠の上りが始まった。
アタック合戦の末に1級山岳ラ・ウルセル峠で抜け出したマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) photo:Luca Bettini
ヒルシを追走するダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)ら photo:Luca Bettini
最後の1級山岳マリーブランク峠でメイン集団のペースを上げるワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
急勾配の1級山岳マリーブランク峠でマイヨジョーヌ争いが加熱
2012年のプロローグを制したファビアン・カンチェラーラ以来となるスイス人のステージ優勝に向けて独走を続けたヒルシ。ペースを落とすことなくスペイン人率の高い観客を縫いながら1級山岳マリーブランク峠の急坂を登ったが、後方でユンボ・ヴィスマがハイテンポを刻むメイン集団の足音が徐々に大きくなってくる。
ワウト・ファンアールト(ベルギー)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、セップ・クス(アメリカ)、トム・デュムラン(オランダ)というユンボ・ヴィスマ勢の牽引により、イネオス・グレナディアーズをはじめとするライバルチームのアシスト体制は崩壊。すると1級山岳マリーブランク峠の頂上まで3kmを残してタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が動く。3日前のタイムロスを挽回するための2日連続のアタックに、マイヨジョーヌを着るイェーツがついに遅れた。
ポガチャルのアタックが封じ込められると、続いてディフェンディングチャンピオンのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。この動きに対応できたのはポガチャル、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)だけで、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)といったライバルたちは出遅れた。
1級山岳マリーブランク峠でメイン集団のペースを上げるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
1級山岳マリーブランク峠でアタックを仕掛けるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Luca Bettini
1級山岳マリーブランク峠でログリッチ、ランダ、ポート、ポガチャル、ベルナルが精鋭グループを形成 photo:Luca Bettini
先頭ヒルシから遅れることわずか15秒で1級山岳マリーブランク峠の頂上にたどり着いたのはログリッチ、ポガチャル、ベルナル、ランダという4名の精鋭グループ(ポートは脱落)。頂上に向けてスプリントしたログリッチが(接触してポガチャルを落車させかけながらも)2番手通過のボーナスタイム5秒を獲得し、マイヨジョーヌ獲得に向けて順調に駒を進める。
平均69.5km/h、最高84.1km/hで下り区間を駆け抜け、リードを25秒まで広げたヒルシだったが、フィニッシュまでの平坦区間が始まると、総合ライバルたちを引き離すために協調する精鋭グループがタイム差を詰める。残り90km地点から始まったヒルシの独走は残り2km地点で終了。こうしてヒルシが加わった5名によるスプリントが始まった。
ステージ優勝とボーナスタイム10秒をかけたスプリント。すでにステージ敢闘賞を決めていたヒルシとログリッチが先頭に立ったが、後方からポガチャルが伸びる。3名横並びのフィニッシュで、差し切ったポガチャルが勢いよく両手を上げた。
独走のまま1級山岳マリーブランク峠の頂上にやってきたマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) photo:Kei Tsuji
1級山岳マリーブランク峠の頂上に近づくタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)やプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Kei Tsuji
1級山岳マリーブランク峠をクリアするエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)やミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
精鋭グループを追うナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) photo:Kei Tsuji
1級山岳マリーブランク峠でライバルたちから遅れたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
1級山岳マリーブランク峠の下りをこなすタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)ら photo:Luca Bettini
ステージ優勝とボーナスタイムをかけたスプリントで先頭に立つタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
スロベニアワンツー&マイヨジョーヌ獲得
「ハードな1日の最後をステージ優勝で締めくくることができて、本当に訳が分からないぐらい嬉しい」。昨年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位に入るとともにステージ3勝を飾った21歳が積極的な走りでステージ初優勝を射止めた。
「できるだけライバルたちからタイムを奪いたくて、10秒のボーナスタイムを狙って全開でもがいたんだ。自分がどんなスプリントしたのかは覚えていない。ただ全開でもがいた。(第7ステージで)ひとつミスを犯してしまったけど、チームとしてステージ2勝目。ツールの第1週には満足している」。第7ステージの追い風集団分裂により1分21秒のタイムを失い、総合16位に陥落していたポガチャルが総合7位に浮上。今大会最も登れているクライマーは大会後半の山岳でさらなる挽回を目指す。
「スタートから全開走行のハードなステージ。チームメイトたちはモチベーションは高く、自分もマイヨジョーヌを狙うと心に決めていた」と語るのは、ボーナスタイムを合計11秒獲得し、54秒遅れたイェーツからマイヨジョーヌを奪うことに成功したログリッチ。ジロ・デ・イタリアでマリアローザを、ブエルタ・ア・エスパーニャでマイヨロホを着用しているログリッチが、3度目のツールで初めてのマイヨジョーヌ着用。1週目を締めくくるピレネー最終ステージを終えて、マイヨジョーヌの本命の一人が総合首位に立った。
「これまでもこれからも、パリでマイヨジョーヌを着るという目標は変わらない。毎日集中して戦っていくだけ。今日はもちろんステージ優勝したかったけど、まずはタデイ・ポガチャルを祝福したい。彼が勝つ姿を見れて嬉しかった」。ログリッチはベルナルから21秒のリードをもって大会最初の休息日を迎える。
マルタンやバルデ、ポート、モレマ、キンタナ、ウランを含む追走グループは11秒遅れでフィニッシュ。マルタンとバルデのフランス勢が総合3位&総合4位で続いている。
「逃げ切れるかどうかという運命はメイン集団が担っていた。自分にできるのは下りを目一杯攻めて、登りでペースを刻むことだけ」。逃げ切り勝利を逃し、ステージ3位に入ったヒルシはそう振り返る。「でも残り3kmの時点でチームカーから後続を待って、スプリントに備えて脚を休めるように言われたんだ。確かにスプリントには自信があった。でも今日はスピードが足りなかった」。ヒルシはすでに総合で1時間以上遅れているが、この日の逃げにより山岳賞3位に浮上している。
5名でのスプリントを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
ステージ初優勝を飾ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
マイヨジョーヌを獲得したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
1級山岳マリーブランク峠をクリアするグルペット photo:Kei Tsuji
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
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9月6日(日)第9ステージ
ポー〜ラランス
距離:153km
獲得標高差:3,350m
天候:曇り時々雨
気温:10〜22度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
9.5km地点 4級山岳アルティーグルヴ峠(距離2.3km・平均4.5%)
69km地点 1級山岳ラ・ウルセル峠(距離11.1km・平均8.8%)
78km地点 3級山岳スデ峠(距離3.8km・平均8.5%)
99km地点 スプリントポイント
115.5km地点 3級山岳イシェール峠(距離4.2km・平均7%)
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気温20度、小雨混じりのポーの街をスタート
ピレネー山脈の5つの峠を攻略する153kmのステージが、開幕地ニースからノンストップで続いた長い長い大会第1週を締めくくる。パリに次いで2番目にツールへの登場回数が多い(72回目)ポーの街からラランスの間に登場する峠は4つ。1級山岳ラ・ウルセル峠、3級山岳スデ峠、3級山岳イシェール峠を休むまもなくこなし、この日の目玉である1級山岳マリーブランク峠へ。10年ぶりの登場となるこの峠はとにかく勾配がきつく、頂上手前3.5kmの平均勾配は12%。前日に引き続き山頂フィニッシュではなく1級山岳を越えてから下り&平坦路をこなしてフィニッシュを迎える。
今年3月に急逝したニコラ・ポルタル監督の故郷に近く、マガリー夫人と子供たちを迎えてのセレモニーを経て、168名の選手たちが小雨混じりのポーをスタートしていく。前日までよりずっと肌寒い気温20度以下のピレネー=アトランティック県に駆け出すと、そこから約1時間半にわたる高速アタック合戦が繰り広げられることに。
前方での激しい出入りの末、ステージ前半の平坦区間を瞬く間に消化したメイン集団はそのまま1級山岳ラ・ウルセル峠に突入。平坦区間で脱落したファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)がリタイアを選んだ一方で、すでに総合で遅れている選手たちが逃げ切り狙いのアタックを繰り返した。
ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)を含む先頭グループが形成されると、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が見張り役として危険な動きをチェックする。雨に濡れた登坂距離11.1kmの1級山岳ラ・ウルセル峠で、マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)が単独で抜け出した。
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気温10度、深い霧に包まれた1級山岳ラ・ウルセル峠をヒルシは追走グループに1分20秒つけてクリア。ヒルシは追走グループを待つどころかタイム差を2分まで広げた状態で3級山岳スデ峠を先頭通過する。下りでさらにリードを広げる走りを見せたヒルシは、追走グループに3分、メイン集団に4分のリードをもってステージ後半へ。追走グループがメイン集団に捕らえられたため、ヒルシが3分55秒先行した状態で最後の1級山岳マリーブランク峠の上りが始まった。
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急勾配の1級山岳マリーブランク峠でマイヨジョーヌ争いが加熱
2012年のプロローグを制したファビアン・カンチェラーラ以来となるスイス人のステージ優勝に向けて独走を続けたヒルシ。ペースを落とすことなくスペイン人率の高い観客を縫いながら1級山岳マリーブランク峠の急坂を登ったが、後方でユンボ・ヴィスマがハイテンポを刻むメイン集団の足音が徐々に大きくなってくる。
ワウト・ファンアールト(ベルギー)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、セップ・クス(アメリカ)、トム・デュムラン(オランダ)というユンボ・ヴィスマ勢の牽引により、イネオス・グレナディアーズをはじめとするライバルチームのアシスト体制は崩壊。すると1級山岳マリーブランク峠の頂上まで3kmを残してタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が動く。3日前のタイムロスを挽回するための2日連続のアタックに、マイヨジョーヌを着るイェーツがついに遅れた。
ポガチャルのアタックが封じ込められると、続いてディフェンディングチャンピオンのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。この動きに対応できたのはポガチャル、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)だけで、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)といったライバルたちは出遅れた。
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平均69.5km/h、最高84.1km/hで下り区間を駆け抜け、リードを25秒まで広げたヒルシだったが、フィニッシュまでの平坦区間が始まると、総合ライバルたちを引き離すために協調する精鋭グループがタイム差を詰める。残り90km地点から始まったヒルシの独走は残り2km地点で終了。こうしてヒルシが加わった5名によるスプリントが始まった。
ステージ優勝とボーナスタイム10秒をかけたスプリント。すでにステージ敢闘賞を決めていたヒルシとログリッチが先頭に立ったが、後方からポガチャルが伸びる。3名横並びのフィニッシュで、差し切ったポガチャルが勢いよく両手を上げた。
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スロベニアワンツー&マイヨジョーヌ獲得
「ハードな1日の最後をステージ優勝で締めくくることができて、本当に訳が分からないぐらい嬉しい」。昨年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位に入るとともにステージ3勝を飾った21歳が積極的な走りでステージ初優勝を射止めた。
「できるだけライバルたちからタイムを奪いたくて、10秒のボーナスタイムを狙って全開でもがいたんだ。自分がどんなスプリントしたのかは覚えていない。ただ全開でもがいた。(第7ステージで)ひとつミスを犯してしまったけど、チームとしてステージ2勝目。ツールの第1週には満足している」。第7ステージの追い風集団分裂により1分21秒のタイムを失い、総合16位に陥落していたポガチャルが総合7位に浮上。今大会最も登れているクライマーは大会後半の山岳でさらなる挽回を目指す。
「スタートから全開走行のハードなステージ。チームメイトたちはモチベーションは高く、自分もマイヨジョーヌを狙うと心に決めていた」と語るのは、ボーナスタイムを合計11秒獲得し、54秒遅れたイェーツからマイヨジョーヌを奪うことに成功したログリッチ。ジロ・デ・イタリアでマリアローザを、ブエルタ・ア・エスパーニャでマイヨロホを着用しているログリッチが、3度目のツールで初めてのマイヨジョーヌ着用。1週目を締めくくるピレネー最終ステージを終えて、マイヨジョーヌの本命の一人が総合首位に立った。
「これまでもこれからも、パリでマイヨジョーヌを着るという目標は変わらない。毎日集中して戦っていくだけ。今日はもちろんステージ優勝したかったけど、まずはタデイ・ポガチャルを祝福したい。彼が勝つ姿を見れて嬉しかった」。ログリッチはベルナルから21秒のリードをもって大会最初の休息日を迎える。
マルタンやバルデ、ポート、モレマ、キンタナ、ウランを含む追走グループは11秒遅れでフィニッシュ。マルタンとバルデのフランス勢が総合3位&総合4位で続いている。
「逃げ切れるかどうかという運命はメイン集団が担っていた。自分にできるのは下りを目一杯攻めて、登りでペースを刻むことだけ」。逃げ切り勝利を逃し、ステージ3位に入ったヒルシはそう振り返る。「でも残り3kmの時点でチームカーから後続を待って、スプリントに備えて脚を休めるように言われたんだ。確かにスプリントには自信があった。でも今日はスピードが足りなかった」。ヒルシはすでに総合で1時間以上遅れているが、この日の逃げにより山岳賞3位に浮上している。
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デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
ツール・ド・フランス2020 第9ステージ結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 3:55:17 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) | |
4位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | |
6位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:00:11 |
7位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | |
8位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
9位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
10位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
11位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | |
12位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:54 |
13位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
14位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
15位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
16位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | |
17位 | トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
18位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
DNF | ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
DNF | ステフ・クラス(ベルギー、ロット・スーダル) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 38:40:01 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:21 |
3位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:00:28 |
4位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:00:30 |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:00:32 |
6位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
7位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:44 |
8位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:02 |
9位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:01:15 |
10位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:01:42 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 138pts |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 131pts |
3位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 111pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) | 36pts |
2位 | ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) | 31pts |
3位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) | 26pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 38:40:22 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:23 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:01:41 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 116:07:32 |
2位 | EFプロサイクリング | 0:04:35 |
3位 | トレック・セガフレード | 0:04:50 |
text:Kei Tsuji
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