2010/05/23(日) - 14:43
本格的な山岳突入前の「脚試し」と位置づけられていたモンテ・グラッパで、リクイガスが反撃に出た。多くのスプリンターが26分遅れのグルペットでゴールする中、新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は21分01秒遅れでゴール。翌日からジロの山岳はますます難易度を上げて行く!!
地元の声援に逃げで応えたポッツァート
昨年の第92回大会は記念すべき100周年ということもあり、ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリと言った大都市がスタート&ゴール地点に名を連ねていた。
今年はそんな大都市が一つも登場しない。その代わりに地方都市を転々と巡業する。そのため地方の特色が手に取るように分かる。ステージ毎に景色が変わり、方言が変わり、観客のテンションも変わる。「イタリア一周レース」たる由縁がよくわかった気がする。
スタート地点はフェラーラ。今まで見たイタリアの街の中で、最も自転車利用率が高い。今年のジロの開幕地アムステルダムには遠く及ばないが、老若男女問わず、市民が石畳の路面をガタガタいわせて走っている。平地でこじんまりとした街のレイアウト的に自転車がジャストフィットなのだろう。
ポー川が作り出した広大な平原を、熱い太陽が照らす。気温はグングンと上がり、今大会初めて30度近くまで達した。濃厚な太陽光に照らされた黄色オレンジのキャラバングッズが目に刺さる。
天候が回復したことで、選手たちは今までより早くチームバスから降り、出走サインにやってくる。観客が詰めかけたスタート地点で、イタリアチャンピオンジャージを着るフィリッポ・ポッツァート(カチューシャ)は人一倍大きな声援を受けた。
前々日に「イタリアを死の淵から救った」ピッポは、この日のゴール地点アーゾロから直線距離で30kmほどのサンドリーゴ出身。練習で良く上ったというモンテ・グラッパが設定されたコースで、序盤から逃げを決めた。
モンテ・グラッパでレースが動く!!
翌日のゾンコランのアンティパスト(前菜)として注目されていたモンテ・グラッパで、総合狙いの選手たちが動いた。先行していた逃げていたポッツァートらはたっぷりとしたリードを稼ぎ出すことが出来ず、スペシャリストたちのハイペースに屈して吸収される。
ガゼッタ紙の予想通り、上りで主導権を握ったのは、一人もリタイア者を出さずにフルメンバーを揃えたリクイガス。いつの間にかライバルチームはリタイア者続出で、エヴァンスのBMCレーシングチームは残り5名、ヴィノクロフのアスタナは残り6名。戦力ではリクイガスが突出している感がある。
モンテ・グラッパの麓からリクイガスが集団ペースアップを図る。目の前を上りとは思えないスピードで駆け抜けて行った。
新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は早くもグルペットで走行中かと思いきや、ちょうどメイン集団とグルペットの中間、80番手あたりでモンテ・グラッパを上っている。無理せず、極端にペースを落とさず、マイペースで淡々と上っている感じ。観客はユキヤに檄を飛ばす。
モンテ・グラッパの上り始め1km地点で撮影後、クルマでゴール地点まで先回り。当然観客も同じことを考えているので、ゴール方面に向かって渋滞が出来る。北イタリアに入ったことで、ロードバイクに乗った観客の数が増えている。
増えているのはロードバイカーの数だけではない。ジロ後半戦に入って帯同するフォトグラファーやジャーナリストの数も格段に増えて来た。南イタリアでは比較的楽にゴール写真が撮れたが、どうも前日の第13ステージあたりからゴール地点がごった返している。選手のゴールが近づくに連れて、後ろに下がることを促す係員の怒鳴り声のボリュームが上がって行く。
上りでアタックを仕掛け、得意の下りで単独で飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)が一人でゴールにやってきた。あれだけ成績不振が続いていたイタリア勢がステージ3連勝。
本当に今年は総合成績の変動が激しい。総合成績が動かない日は無いと言っていいほど。しかしまだまだラクイラステージのタイムロスを補えるほどではない。残り6ステージでも、イタリア勢、特にリクイガスは攻撃の手を緩めない。
ユキヤはフランス語が通じるコフィディスのカーレ・クリット(エストニア)とニコ・シーメンス(ベルギー)と3人でパックを組み、トップから21分01秒遅れでゴール。それから5分以上遅れて、70名以上のグルペットがゴールした。
生憎ゴール後のドタバタでコメントは取れなかったが、ユキヤは上りを問題なくクリア出来た様子。チームスタッフにテクニカルな下りの様子をジェスチャーを交えて伝え、ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)がマリアローザを獲得した意外さに驚いていた。
さて、明日は泣く子も黙るモンテ・ゾンコランだ。今年で3度目の登場となる悪名高きゾンコランには3つの登坂ルートがあり、2003年のジロで初登場した際には東側のストリオからの登坂だった。東側は平均勾配9%で最大勾配23%。当時はジルベルト・シモーニ(イタリア)が優勝している。
今年は2007年と同じオヴァーロを通過する西側のコースが採用された。こちらは平均勾配11.9%で最大勾配22%。中盤はコンスタントに15%を刻む。
プレスカーはコースと反対の東側からのみ登坂が許されている。スタート地点撮影後、早めにゾンコランの頂上に向かい、盛り上がる観客と一緒に選手たちを待つ予定。ガゼッタ紙によると15万人が上りで観戦する試算だそうです!!
text&photo:Kei Tsuji
地元の声援に逃げで応えたポッツァート
昨年の第92回大会は記念すべき100周年ということもあり、ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリと言った大都市がスタート&ゴール地点に名を連ねていた。
今年はそんな大都市が一つも登場しない。その代わりに地方都市を転々と巡業する。そのため地方の特色が手に取るように分かる。ステージ毎に景色が変わり、方言が変わり、観客のテンションも変わる。「イタリア一周レース」たる由縁がよくわかった気がする。
スタート地点はフェラーラ。今まで見たイタリアの街の中で、最も自転車利用率が高い。今年のジロの開幕地アムステルダムには遠く及ばないが、老若男女問わず、市民が石畳の路面をガタガタいわせて走っている。平地でこじんまりとした街のレイアウト的に自転車がジャストフィットなのだろう。
ポー川が作り出した広大な平原を、熱い太陽が照らす。気温はグングンと上がり、今大会初めて30度近くまで達した。濃厚な太陽光に照らされた黄色オレンジのキャラバングッズが目に刺さる。
天候が回復したことで、選手たちは今までより早くチームバスから降り、出走サインにやってくる。観客が詰めかけたスタート地点で、イタリアチャンピオンジャージを着るフィリッポ・ポッツァート(カチューシャ)は人一倍大きな声援を受けた。
前々日に「イタリアを死の淵から救った」ピッポは、この日のゴール地点アーゾロから直線距離で30kmほどのサンドリーゴ出身。練習で良く上ったというモンテ・グラッパが設定されたコースで、序盤から逃げを決めた。
モンテ・グラッパでレースが動く!!
翌日のゾンコランのアンティパスト(前菜)として注目されていたモンテ・グラッパで、総合狙いの選手たちが動いた。先行していた逃げていたポッツァートらはたっぷりとしたリードを稼ぎ出すことが出来ず、スペシャリストたちのハイペースに屈して吸収される。
ガゼッタ紙の予想通り、上りで主導権を握ったのは、一人もリタイア者を出さずにフルメンバーを揃えたリクイガス。いつの間にかライバルチームはリタイア者続出で、エヴァンスのBMCレーシングチームは残り5名、ヴィノクロフのアスタナは残り6名。戦力ではリクイガスが突出している感がある。
モンテ・グラッパの麓からリクイガスが集団ペースアップを図る。目の前を上りとは思えないスピードで駆け抜けて行った。
新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は早くもグルペットで走行中かと思いきや、ちょうどメイン集団とグルペットの中間、80番手あたりでモンテ・グラッパを上っている。無理せず、極端にペースを落とさず、マイペースで淡々と上っている感じ。観客はユキヤに檄を飛ばす。
モンテ・グラッパの上り始め1km地点で撮影後、クルマでゴール地点まで先回り。当然観客も同じことを考えているので、ゴール方面に向かって渋滞が出来る。北イタリアに入ったことで、ロードバイクに乗った観客の数が増えている。
増えているのはロードバイカーの数だけではない。ジロ後半戦に入って帯同するフォトグラファーやジャーナリストの数も格段に増えて来た。南イタリアでは比較的楽にゴール写真が撮れたが、どうも前日の第13ステージあたりからゴール地点がごった返している。選手のゴールが近づくに連れて、後ろに下がることを促す係員の怒鳴り声のボリュームが上がって行く。
上りでアタックを仕掛け、得意の下りで単独で飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)が一人でゴールにやってきた。あれだけ成績不振が続いていたイタリア勢がステージ3連勝。
本当に今年は総合成績の変動が激しい。総合成績が動かない日は無いと言っていいほど。しかしまだまだラクイラステージのタイムロスを補えるほどではない。残り6ステージでも、イタリア勢、特にリクイガスは攻撃の手を緩めない。
ユキヤはフランス語が通じるコフィディスのカーレ・クリット(エストニア)とニコ・シーメンス(ベルギー)と3人でパックを組み、トップから21分01秒遅れでゴール。それから5分以上遅れて、70名以上のグルペットがゴールした。
生憎ゴール後のドタバタでコメントは取れなかったが、ユキヤは上りを問題なくクリア出来た様子。チームスタッフにテクニカルな下りの様子をジェスチャーを交えて伝え、ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)がマリアローザを獲得した意外さに驚いていた。
さて、明日は泣く子も黙るモンテ・ゾンコランだ。今年で3度目の登場となる悪名高きゾンコランには3つの登坂ルートがあり、2003年のジロで初登場した際には東側のストリオからの登坂だった。東側は平均勾配9%で最大勾配23%。当時はジルベルト・シモーニ(イタリア)が優勝している。
今年は2007年と同じオヴァーロを通過する西側のコースが採用された。こちらは平均勾配11.9%で最大勾配22%。中盤はコンスタントに15%を刻む。
プレスカーはコースと反対の東側からのみ登坂が許されている。スタート地点撮影後、早めにゾンコランの頂上に向かい、盛り上がる観客と一緒に選手たちを待つ予定。ガゼッタ紙によると15万人が上りで観戦する試算だそうです!!
text&photo:Kei Tsuji
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