139日間休止していた2020年のUCIワールドツアー再開を告げるストラーデビアンケが8月1日に開催。気温36度の熱い戦いが予想される「白い道」を舞台にしたワンデークラシックの見どころをチェックします。



コースの約1/3が未舗装路 最高気温36度の砂埃レースの予想

シエナ南部に広がる未舗装路を走るシエナ南部に広がる未舗装路を走る photo:RCS Sport
3月14日のパリ〜ニース第7ステージを最後に、実に139日間休止していたUCIワールドツアーが再開する。トップレースを含めて中止や延期が相次ぐ中、本来3月7日に開催される予定だったストラーデビアンケが8月1日に開催。この「白い道」決戦を皮切りに、翌週の8月8日にはミラノ〜サンレモ、翌々週の8月15日にはイル・ロンバルディアが開催される。11月までの3ヶ月間、選手や関係者が今まで経験したことのない密度のレーススケジュールをこなすことになる。

当然、ジロ・デ・イタリアの主催者でもあるRCSスポルトを含めたすべてのレース主催者はUCIが発表した新型コロナウイルス対策のプロトコルに沿ったレース運営を行わなければならない。参考までに、イタリア国内では3月から4月にかけて連日5000人前後の新規感染が確認されていたが、6月以降は概ね新規感染者は200〜300人/1日で推移している(7月30日は386人)。

ストラーデビアンケ2020 コースプロフィールストラーデビアンケ2020 コースプロフィール photo: RCS Sport
ストラーデビアンケ2020 コースマップストラーデビアンケ2020 コースマップ photo: RCS Sport初開催が2007年と、まだ歴史が浅いにもかかわらず、今風に言うところの「グラベル」をふんだんに組み込むことで独自の地位を築いたストラーデビアンケ。トスカーナ州シエナの近郊に広がる丘陵地帯の未舗装路を走るワンデーレースであり、2015年からは女子レースのストラーデビアンケ・ドンネが併催。2016年に女子レースが、2017年に男子レースがそれぞれUCIワールドツアー入りした。

シエナを発着する184kmコースには変更がなく、11ヶ所・合計63kmの未舗装区間(セクター:イタリア語でセットーレ)が設定されている。つまりコース全体の約34%が未舗装路。しかも石畳レースとして知られるパリ〜ルーベのように平坦基調ではなく、獲得標高差は3,000mを超える。

例年レースが動き始めるのはフィニッシュまで54kmを切ってから登場する全長11.5kmの第8セクター「モンテサンテマリエ(別名セットーレ・カンチェラーラ)」で、ここで絞られた精鋭集団の中から第9セクター「モンテアペルティ」や第10セクター「コッレ・ピンズート」でアタックがかかる。ここまでくればフィニッシュまで残り15kmほど。最大勾配18%に達する最後の第11セクター「レ・トルフェ」でも勝負が決まらない場合は、丘の上に位置するシエナ旧市街に続く急勾配(最大勾配16%)の石畳坂へ。ここで独走に持ち込んだ選手だけが、細い路地を抜けた先にあるカンポ広場で両手を挙げることを許される。

コースは2019年大会と全く同じ。しかし2020年はあらゆる点で1年前(1年4ヶ月前)とは異なる。例年3月上旬であれば気温が20度に達しない肌寒い気候だが、夏の盛りを迎えているイタリアは、暑い。天気予報によるとレース当日の天候は晴れで、気温は36度まで上昇する。スタート地点で着用が義務付けられているマスクをレース中も着用したくなるような、壮絶な砂埃が舞うレースになることも考えられる。



アラフィリップとファンフルーテンの大会連覇を止めるのは?

昨年大会で勝利したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が初出場で初勝利昨年大会で勝利したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が初出場で初勝利 photo:RCS Sport
2019年大会の優勝者はジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)。その後アラフィリップはティレーノ〜アドリアティコでステージ2勝し、ミラノ〜サンレモでモニュメント初制覇を果たし、ラ・フレーシュ・ワロンヌ優勝、ツール・ド・フランスでステージ2勝&14日間マイヨジョーヌ着用という怒涛の活躍を見せた。

アラフィリップは2015年大会の優勝者ゼネク・スティバル(チェコ)という心強い相棒を従えての出場。もちろん翌週のミラノ〜サンレモでも連覇を狙ってくることだろう。

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos開幕戦で勝利を収めているゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)開幕戦で勝利を収めているゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos

初出場となるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)初出場となるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
コースの約1/3が未舗装路という特殊なコースがシクロクロッサー向きであることは、元シクロクロスU23フランス王者のアラフィリップや元シクロクロス世界王者のスティバル、そして元シクロクロス世界王者ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)の活躍を見れば明らか。ファンアールトは過去2年間連続で3位表彰台。2019年ツール・ド・フランスの落車からは復活を遂げている。

そしてもちろん、現シクロクロス世界王者で、ロードレース界が最も注目する男と言っても過言ではないマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の初出場も要注目。セカンドディビジョンのUCIプロチーム所属ながら優勝候補の筆頭とも言えるファンデルプール。今シーズンはミラノ〜サンレモ、イル・ロンバルディア、ラ・フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、アムステル・ゴールド・レース、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベと、忙しくワンデークラシックを連戦する予定だ。

ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、チームイネオス)ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、チームイネオス) (c)CorVosシーズン2戦目に挑むフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)シーズン2戦目に挑むフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) (c)CorVos

ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) (c)CorVosペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) (c)CorVos


ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、チームイネオス)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)、ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ)という過去の優勝経験者や、2019年大会2位のヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)やペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム)という錚々たる顔ぶれ。

ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)やタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)という一流グランツールレーサーもスタートラインに並ぶ。実質的なシーズン初戦のためコンディションにばらつきがあることは想像できるが、レースを走りたいと願うフレッシュさは全選手共通。ハイレベルな戦いになることが予想される。

今季勝率100%を誇るアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)今季勝率100%を誇るアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) (c)Luis Ángel Gomez/Vuelta Ciclista a Navarra
女子レースは7月下旬のシーズン再開から怒涛の3連勝を飾っている(しかもいずれも圧勝している)アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)の連覇なるか。リジー・ダイグナン(イギリス)とエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)という2人の優勝経験者を擁するトレック・セガフレードや、2018年大会の優勝者アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールスドルマンス)、2016年から毎年欠かさず表彰台に登りながらまだ勝てていないカシア・ニウイアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)らがファンフルーテンに待ったをかける。

レースが途絶えた3月以降もオランダに残ってトレーニングを続けた與那嶺恵理(アレBTCリュブリャナ)は4年連続の出場。2019年大会で13位という好成績を収めた與那嶺のシーズンがストラーデビアンケで再始動する。

text:Kei.Tsuji