2020/07/12(日) - 13:12
今年フルモデルチェンジを果たしたフェルトのエアロロードARから、ハイエンドモデルの「FRD」グレードをインプレッション。高速巡航を安安とこなすエアロ性能と扱いやすい挙動に加え、さらなる軽さと剛性感を獲得したフラッグシップ機を紹介しよう。
チュービングの魔術師と呼ばれた創業者ジム・フェルト氏が手掛けた高性能なバイクによって、レーシングブランドとしての地位を築き上げてきたフェルト。トライアスロンバイクやトラックバイクは世界中で特に高い評価を得ており、エアロのテクノロジーに関しては一目置かれる存在だ。2018年にはフェルト氏の出身地であり、最先端テクノロジーが集積する南カルフォルニアに本社を移転し、バイク開発にさらなる力を注いできた。
質実剛健なバイク作りに定評がある中、オールラウンドモデルの「FR」と並びロードバイクのラインアップを支えてきたのがエアロロードの「AR」である。その誕生は2008年。TTバイク然とした当時としては画期的なエアロチュービングをロードバイクにも取り入れ、その年のツール・ド・フランスで鮮烈なデビューを飾った。
2014年にはさらに性能をブラッシュアップした2代目を市場に投入。そこから6年という長い開発期間を経てついに今年、満を持してディスクブレーキを獲得した第3世代へとフルモデルチェンジを果たした。昨今のレースシーンで最も注目を集めるエアロディスクロードのカテゴリーに向けてフェルトが放つ渾身の1台だ。
エアロロードらしさ溢れるボリューミーなチューブ形状やホリゾンタルデザインは先代から引き継いだもの。その上で、10度以下のヨー角に対し空力性能を最適化する「ロー・ヨーアングル・セオリー」に基づいてフレームを再設計(実走環境で受ける風の9割はヨー角10度以下という研究結果に基づいたもの)。当時トップクラスのエアロ性能を見せつけた先代に対し、9.6%もの空気抵抗削減を叶えている。
ダウンチューブを始め正面から風を受ける箇所には、翼断面形状の後端を切り落とした「トランケーテッド・エアフォイル・シェイプ」を採用。エアロ、重量、剛性をバランスさせる形状をCFD解析と風洞実験によって煮詰めていったという。中央をくびれさせたヘッドチューブ、フレームと一体化したようなフォーククラウン、横に張り出したシートステーなど、スムーズな風抜けを実現するデザインを各所に取り入れている。
後輪に沿ったシートチューブには「フィッシュリップ・シェイプ」という独自の形状を採用しており、エッジ部分を外側に広げリアタイヤを包み込むようにすることでエアフローの改善に貢献している。タイヤクリアランスは最大30Cまで対応だ。また、チェーンステーが延長したようなユニークなBB周りの造形も、剛性を確保しつつエアロに配慮されたものだという。
コックピット周りも専用ステムを開発することでセミインテグレーテッドなケーブルルーティングを実現した。ハンドルから出てきたケーブル類が最短距離でステム内部に引き込まれることで、フル内装に近いエアロなルックスを獲得している。ハンドルのクランプ径は標準的な31.8mmのため好みの汎用品を使用可能。専用のエアロスペーサーも2ピースのパズル式でステムの高さ調整もしやすい仕様だ。コラム自体は丸形のため、専用のトップカバーを使えばステムも汎用品に交換することができる。
2グレード展開のARだが、いずれにもフレーム素材にTeXtreme(テキストリーム)カーボンを使用したことは大きなトピックだろう。チェッカーフラッグ柄の編み目が特徴的なカーボンであり、自転車業界でも限られたメーカーしか採用していない高性能素材だ。テープ状の繊維を編み込むことで一般的なUDカーボンよりも密度が高く薄い、すなわち高強度で軽量なフレームに仕上げることができる。
さらに、今回インプレッションしたFRDグレードは、ウルトラハイモジュラスカーボンを含む8種類ものカーボンシートを用いたトップモデル専用のレイアップが施される。加えて、下位グレードでは分割されたインナーモールドを使用するのに対し、FRDでは一体成型のモールドを採用。フレーム内部からの除去に手間がかかる製法ではあるものの、バイクの性能を最大限引き出せる超高精度な成型を可能としている。
快適性に関する部分では、二股に分かれた「リーフスプリング」シートポストが効果を発揮する。硬くなりがちなエアロシートポストだが、今作は下端まで前後に分割された形状とすることでしなりを生み出し、路面からの突き上げを緩和している。さらには、シートポストのクランプ部分にエラストマーを搭載したスリーブを挿入しており、振動吸収性の向上を狙っている。
先行して発売されたAdvancedグレードから遅れること4ヶ月。ついに国内デリバリーが開始されたトップモデルのAR FRDは、シマノDura-Ace Di2完成車(1,580,000円)とフレームセット(598,000円)にて展開。FRDグレードが代々受け継いできたマットブラックに、フェルトのロゴカラーであるブルーのアクセントを加えた精悍なルックスに仕上がる。48、51、54、56の4サイズラインアップだ。
― インプレッション
「圧倒的な剛性感とエアロ感、平坦での気持ち良さは群を抜いている」藤野智一(なるしまフレンド)
TTバイクに匹敵するようなエアロ感や平坦巡航のしやすさが非常に気持ち良いですね。エアロロードらしい風抜け感というか、向かい風でも押し戻されない感覚がすごく強くて、40km/h以上の高速域でも平気で巡航できてしまう走りを見せてくれました。空気抵抗を抑えて数ワットでもパワーを節約するような、まさにエアロダイナミクスの恩恵を実感できる乗り味に仕上がっています。
トップグレードとあってフレームの剛性はかなり高いですね。カッチリと乾いた印象の踏み味で、優れた反応性を有している一方、足への反発は大きめです。重たいギアで踏みすぎてしまうとすぐに足が売り切れてしまいそうです。その分、スプリントなど大パワーをかけたときにバイクが応えてくれる感覚は大きく、非常に気持ち良く加速してスピードに乗ってくれますね。瞬間的にガッとパワーをかけるようなペダリングを続けると足が持たないので、じわっとトルクをかけて素直に走らせてあげると、高い推進力も相まってスムーズに巡航できると思います。
昔のエアロロードというとBB周りがガチガチで踏んでも動かない印象ですが、このバイクはしなるけど戻りが速い高弾性な特性を感じますね。そのため、ダンシングの際も大振りではなく狭い範囲で小刻みに振っていくリズム感がマッチします。ハンドルを無理に寝かせようとすると挙動に重さを感じたので、そこはバイクに合わせてあげるのがいいでしょうね。
フレームが硬いせいかフロントからの突き上げ感は大きい方ですね。ストレートに振動が手に伝わってくるんですが、リアは割と快適めなのでトータルの乗り心地は悪くありません。
下位モデルのAdvancedグレードと比べると乗り味は全然別物です。Advancedはしっとりした踏み味でしたし、やはりFRDはトップモデルだけあって登りが格段に軽いと感じます。フレーム形状は同じなのでエアロ感は極端に変わりませんが、全体的にさらに磨きをかけた性能に仕上がっていますね。クイックに切り込むハンドリングではありませんが、直進安定性は抜群で高速域でも安心してもがき倒せます。
高い巡航性能を活かして、アタックをかけて一人で逃げたり少人数でローテーションを回したりするレースシーンでアドバンテージとなるでしょうね。ゴールスプリントでも大きな武器になると思いますが、足が削られやすい分、そこに行くまでの段階で無駄足を使わない上手い走り方が求められそうです。高いパワー領域でしっかり足を回していけると真価を発揮してくれると思います。
「見た目に反した軽さが印象的、速さは言うまでもなくピカイチ」川原建太郎(ワイズロード東大和)
いやー、これはやばいバイクですね。体格が大柄な自分の脚質に合っていたからかもしれませんが、めちゃめちゃ進んでくれます。剛性バランスが良くてバイク全体の一体感が高いおかげか、グイグイとパワーをかけていってもそれが全部スムーズな推進力に変わってくれる印象ですね。トップグレードらしい速さを全身で感じられる乗り味です。
一番驚いたのは、ボリュームあるルックスに反した走りの軽さですね。踏み出しからすでに軽いし、登りもスイスイこなせる軽快感があります。上り坂でもアウターのまま粘るようにトルクをかけると、思った以上に踏み切れてしまうんですよね。硬すぎないBB周りの剛性感が効いていて、アウターで踏めるギアの範囲が広いと感じました。
もちろん、エアロロードらしく高速域での加速感は抜群です。50km/h近い高速巡航からもう一段階スピードを上げようとしても、バイクの挙動が安定していて思い切りパワーをかけることができます。パワー伝達の無駄がなく重心バランスも良いので、高速域でもスッと腰を上げてペダリングできるんですよね。ヒラヒラするバイクだとこうはいきません。スピードに乗ってしまえば、迫力あるバイクの見た目も相まって他を寄せ付けない最強感がありますね(笑)。
初代のARなんかは完全に直線番長なイメージでしたが、今作はしっかりと万人が扱いやすい乗り味に進化しています。ダンシングもしやすいし意外と自由自在に操作できるので、良い意味でエアロロードっぽさは感じないほどです。加えて、乗り心地も想像以上に良いですね。硬そうに見えるエアロ形状のシートポストなのに、スリットが入っていることでしなってくれるので突き上げ感が少ないと感じました。
速さに加え軽さと癖の無さも合わさり、よりオールラウンド感のあるバイクに仕上がっています。パワーがあるライダーならフレームのポテンシャルを十分に発揮できるでしょうし、逆に体重が軽くてゴール勝負を諦めていたような人でも苦手を補ってくれる1台となってくれると思います。
フェルト AR FRD
フレーム:UHC Ultimate + TeXtreme カーボン
フォーク:UHC Ultimate + TeXtreme カーボンモノコック
コンポーネント:Shimano Dura-Ace Di2
サドル:Prologo Dimension Nack
ホイール:HED Vanquish 6
タイヤ:Continental Grand Prix 5000 Tubeless
サイズ:48、51、54、56
カラー:マットテクストリーム
価格:1,580,000円(税抜)、フレームセット598,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド
CWレコメンドショップページ
川原建太郎(ワイズロード東大和)
ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。
ワイズロード東大和
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:カステリ
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
チュービングの魔術師と呼ばれた創業者ジム・フェルト氏が手掛けた高性能なバイクによって、レーシングブランドとしての地位を築き上げてきたフェルト。トライアスロンバイクやトラックバイクは世界中で特に高い評価を得ており、エアロのテクノロジーに関しては一目置かれる存在だ。2018年にはフェルト氏の出身地であり、最先端テクノロジーが集積する南カルフォルニアに本社を移転し、バイク開発にさらなる力を注いできた。
質実剛健なバイク作りに定評がある中、オールラウンドモデルの「FR」と並びロードバイクのラインアップを支えてきたのがエアロロードの「AR」である。その誕生は2008年。TTバイク然とした当時としては画期的なエアロチュービングをロードバイクにも取り入れ、その年のツール・ド・フランスで鮮烈なデビューを飾った。
2014年にはさらに性能をブラッシュアップした2代目を市場に投入。そこから6年という長い開発期間を経てついに今年、満を持してディスクブレーキを獲得した第3世代へとフルモデルチェンジを果たした。昨今のレースシーンで最も注目を集めるエアロディスクロードのカテゴリーに向けてフェルトが放つ渾身の1台だ。
エアロロードらしさ溢れるボリューミーなチューブ形状やホリゾンタルデザインは先代から引き継いだもの。その上で、10度以下のヨー角に対し空力性能を最適化する「ロー・ヨーアングル・セオリー」に基づいてフレームを再設計(実走環境で受ける風の9割はヨー角10度以下という研究結果に基づいたもの)。当時トップクラスのエアロ性能を見せつけた先代に対し、9.6%もの空気抵抗削減を叶えている。
ダウンチューブを始め正面から風を受ける箇所には、翼断面形状の後端を切り落とした「トランケーテッド・エアフォイル・シェイプ」を採用。エアロ、重量、剛性をバランスさせる形状をCFD解析と風洞実験によって煮詰めていったという。中央をくびれさせたヘッドチューブ、フレームと一体化したようなフォーククラウン、横に張り出したシートステーなど、スムーズな風抜けを実現するデザインを各所に取り入れている。
後輪に沿ったシートチューブには「フィッシュリップ・シェイプ」という独自の形状を採用しており、エッジ部分を外側に広げリアタイヤを包み込むようにすることでエアフローの改善に貢献している。タイヤクリアランスは最大30Cまで対応だ。また、チェーンステーが延長したようなユニークなBB周りの造形も、剛性を確保しつつエアロに配慮されたものだという。
コックピット周りも専用ステムを開発することでセミインテグレーテッドなケーブルルーティングを実現した。ハンドルから出てきたケーブル類が最短距離でステム内部に引き込まれることで、フル内装に近いエアロなルックスを獲得している。ハンドルのクランプ径は標準的な31.8mmのため好みの汎用品を使用可能。専用のエアロスペーサーも2ピースのパズル式でステムの高さ調整もしやすい仕様だ。コラム自体は丸形のため、専用のトップカバーを使えばステムも汎用品に交換することができる。
2グレード展開のARだが、いずれにもフレーム素材にTeXtreme(テキストリーム)カーボンを使用したことは大きなトピックだろう。チェッカーフラッグ柄の編み目が特徴的なカーボンであり、自転車業界でも限られたメーカーしか採用していない高性能素材だ。テープ状の繊維を編み込むことで一般的なUDカーボンよりも密度が高く薄い、すなわち高強度で軽量なフレームに仕上げることができる。
さらに、今回インプレッションしたFRDグレードは、ウルトラハイモジュラスカーボンを含む8種類ものカーボンシートを用いたトップモデル専用のレイアップが施される。加えて、下位グレードでは分割されたインナーモールドを使用するのに対し、FRDでは一体成型のモールドを採用。フレーム内部からの除去に手間がかかる製法ではあるものの、バイクの性能を最大限引き出せる超高精度な成型を可能としている。
快適性に関する部分では、二股に分かれた「リーフスプリング」シートポストが効果を発揮する。硬くなりがちなエアロシートポストだが、今作は下端まで前後に分割された形状とすることでしなりを生み出し、路面からの突き上げを緩和している。さらには、シートポストのクランプ部分にエラストマーを搭載したスリーブを挿入しており、振動吸収性の向上を狙っている。
先行して発売されたAdvancedグレードから遅れること4ヶ月。ついに国内デリバリーが開始されたトップモデルのAR FRDは、シマノDura-Ace Di2完成車(1,580,000円)とフレームセット(598,000円)にて展開。FRDグレードが代々受け継いできたマットブラックに、フェルトのロゴカラーであるブルーのアクセントを加えた精悍なルックスに仕上がる。48、51、54、56の4サイズラインアップだ。
― インプレッション
「圧倒的な剛性感とエアロ感、平坦での気持ち良さは群を抜いている」藤野智一(なるしまフレンド)
TTバイクに匹敵するようなエアロ感や平坦巡航のしやすさが非常に気持ち良いですね。エアロロードらしい風抜け感というか、向かい風でも押し戻されない感覚がすごく強くて、40km/h以上の高速域でも平気で巡航できてしまう走りを見せてくれました。空気抵抗を抑えて数ワットでもパワーを節約するような、まさにエアロダイナミクスの恩恵を実感できる乗り味に仕上がっています。
トップグレードとあってフレームの剛性はかなり高いですね。カッチリと乾いた印象の踏み味で、優れた反応性を有している一方、足への反発は大きめです。重たいギアで踏みすぎてしまうとすぐに足が売り切れてしまいそうです。その分、スプリントなど大パワーをかけたときにバイクが応えてくれる感覚は大きく、非常に気持ち良く加速してスピードに乗ってくれますね。瞬間的にガッとパワーをかけるようなペダリングを続けると足が持たないので、じわっとトルクをかけて素直に走らせてあげると、高い推進力も相まってスムーズに巡航できると思います。
昔のエアロロードというとBB周りがガチガチで踏んでも動かない印象ですが、このバイクはしなるけど戻りが速い高弾性な特性を感じますね。そのため、ダンシングの際も大振りではなく狭い範囲で小刻みに振っていくリズム感がマッチします。ハンドルを無理に寝かせようとすると挙動に重さを感じたので、そこはバイクに合わせてあげるのがいいでしょうね。
フレームが硬いせいかフロントからの突き上げ感は大きい方ですね。ストレートに振動が手に伝わってくるんですが、リアは割と快適めなのでトータルの乗り心地は悪くありません。
下位モデルのAdvancedグレードと比べると乗り味は全然別物です。Advancedはしっとりした踏み味でしたし、やはりFRDはトップモデルだけあって登りが格段に軽いと感じます。フレーム形状は同じなのでエアロ感は極端に変わりませんが、全体的にさらに磨きをかけた性能に仕上がっていますね。クイックに切り込むハンドリングではありませんが、直進安定性は抜群で高速域でも安心してもがき倒せます。
高い巡航性能を活かして、アタックをかけて一人で逃げたり少人数でローテーションを回したりするレースシーンでアドバンテージとなるでしょうね。ゴールスプリントでも大きな武器になると思いますが、足が削られやすい分、そこに行くまでの段階で無駄足を使わない上手い走り方が求められそうです。高いパワー領域でしっかり足を回していけると真価を発揮してくれると思います。
「見た目に反した軽さが印象的、速さは言うまでもなくピカイチ」川原建太郎(ワイズロード東大和)
いやー、これはやばいバイクですね。体格が大柄な自分の脚質に合っていたからかもしれませんが、めちゃめちゃ進んでくれます。剛性バランスが良くてバイク全体の一体感が高いおかげか、グイグイとパワーをかけていってもそれが全部スムーズな推進力に変わってくれる印象ですね。トップグレードらしい速さを全身で感じられる乗り味です。
一番驚いたのは、ボリュームあるルックスに反した走りの軽さですね。踏み出しからすでに軽いし、登りもスイスイこなせる軽快感があります。上り坂でもアウターのまま粘るようにトルクをかけると、思った以上に踏み切れてしまうんですよね。硬すぎないBB周りの剛性感が効いていて、アウターで踏めるギアの範囲が広いと感じました。
もちろん、エアロロードらしく高速域での加速感は抜群です。50km/h近い高速巡航からもう一段階スピードを上げようとしても、バイクの挙動が安定していて思い切りパワーをかけることができます。パワー伝達の無駄がなく重心バランスも良いので、高速域でもスッと腰を上げてペダリングできるんですよね。ヒラヒラするバイクだとこうはいきません。スピードに乗ってしまえば、迫力あるバイクの見た目も相まって他を寄せ付けない最強感がありますね(笑)。
初代のARなんかは完全に直線番長なイメージでしたが、今作はしっかりと万人が扱いやすい乗り味に進化しています。ダンシングもしやすいし意外と自由自在に操作できるので、良い意味でエアロロードっぽさは感じないほどです。加えて、乗り心地も想像以上に良いですね。硬そうに見えるエアロ形状のシートポストなのに、スリットが入っていることでしなってくれるので突き上げ感が少ないと感じました。
速さに加え軽さと癖の無さも合わさり、よりオールラウンド感のあるバイクに仕上がっています。パワーがあるライダーならフレームのポテンシャルを十分に発揮できるでしょうし、逆に体重が軽くてゴール勝負を諦めていたような人でも苦手を補ってくれる1台となってくれると思います。
フェルト AR FRD
フレーム:UHC Ultimate + TeXtreme カーボン
フォーク:UHC Ultimate + TeXtreme カーボンモノコック
コンポーネント:Shimano Dura-Ace Di2
サドル:Prologo Dimension Nack
ホイール:HED Vanquish 6
タイヤ:Continental Grand Prix 5000 Tubeless
サイズ:48、51、54、56
カラー:マットテクストリーム
価格:1,580,000円(税抜)、フレームセット598,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド
CWレコメンドショップページ
川原建太郎(ワイズロード東大和)
ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。
ワイズロード東大和
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ウェア協力:カステリ
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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