イタリアにルーツを持つ老舗ツールブランド、シリカ。アメリカ・インディアナポリスへと本拠を移し、新たな風を取り入れた同社が送り出すユニークなチタン製のボトルケージとストローのセットを手にした編集部員によるインプレッションをお届けしよう。(※テクノロジーの紹介はこちらのプロダクト記事から)



セブンイレブンのカフェラテ、こちらも最近は紙ストローになった。セブンイレブンのカフェラテ、こちらも最近は紙ストローになった。
海洋ごみとして廃棄されるプラスチック製品が生態系にもたらす影響が問題視され、その一環としてプラスチックストローの使用を抑制するムーブメントが起きている。あなたの近くのカフェやコンビニでも紙製ストローに切り替わったところも多いのではないだろうか。

ちなみに、私は紙ストローは大嫌い。まず、口に含んだ時点で水分を吸収してひっつくのがNG。どうしても木っぽい紙の味もするし、長時間浸していてヘタりきった姿には怒りすら覚える。環境問題も大事だが適材適所というものがあるだろうと、紙ストローが出てくるたびに思っていた。

シリカ TITAN STRAW w/711カフェラテ 高級感が10倍増しである。 セブンカフェのロゴが無ければコピ・ルアクのカフェラテと言われても信じるレベルシリカ TITAN STRAW w/711カフェラテ 高級感が10倍増しである。 セブンカフェのロゴが無ければコピ・ルアクのカフェラテと言われても信じるレベル
この存在感。もはやストローが主役。この存在感。もはやストローが主役。
スターバックスで、チョコチップをトッピングしたバニラクリームフラペチーノとヘニャヘニャになった紙ストローで格闘しつつ自転車関連サイトを眺めていた時、目に入ってきたシリカのチタンストロー。その日、運命に出会った。そう感じるほどに美しく飲み口がアノダイズドされたチタン製のストローは、環境保護だとか紙ストローへの憎しみだとか、いろんな細かな理由を別にしても単純に手にしたくなる存在感を放っていた。

すっかりその魅力にやられてしまい4つ用意されるカラーのどれを注文しようか、そんなことに頭を悩ませつつ日本へと入荷が開始されるのを心待ちにしていたある日、なんとチタンボトルケージ2つとストローが美しい琥珀色の"バーボン"カラーに染められたセットが用意されるというニュースを馴染みのショップで耳にした。

飲み口が曲がったバージョンも同梱される。左は紙ストローを曲げてみた。お話にならないみすぼらしさである、あと角度が付きすぎると飲めなくなる。ストローとしていかがなものか。その点チタンは良い。最高だ。飲み口が曲がったバージョンも同梱される。左は紙ストローを曲げてみた。お話にならないみすぼらしさである、あと角度が付きすぎると飲めなくなる。ストローとしていかがなものか。その点チタンは良い。最高だ。
セットで2万円という価格を聞いて「ストローだけでいいや」と冷静になりかけるが、なんと同色に染められたチタン製ボルトまで付属するという。実は、新車に装着するためのボトルケージを用意したはいいものの、ボトルケージ用のボルトがフレームに付属しておらず、どうしたものかと悩んでいた私にとって、これが決定打だった。

単品で8000円するボトルケージが2つと3600円のストローがセットになったうえで、特別仕様のカラーリングが施されているのだから、2万円はむしろ安いまである。完全に搾取される側のマインドセットであるが、運命的な出会いなのだからしょうがない。何となれば国内在庫は3セットのみだという話で、その場で即注文したのであった。

ちょうど指が当たるあたりにシリカのロゴがレーザー刻印されているちょうど指が当たるあたりにシリカのロゴがレーザー刻印されている
さて、そんな経緯を経て届いたTITANIUM CAGE + STRAW KIT Bourbon。写真で見ていた時よりももう少しくすんだスモーキーな色合いで、丁寧にチャーリングされた樽で熟成されたバーボンを彷彿とさせる深さがある。

チタン製のストローを使うのは人生で初めてだったのだけれど、これが思っていたよりも素晴らしい。少し金属っぽい味がするのではないかと身構えていたが、そんなことは一切無く飲み物の味をそのまま味わえる。考えてみれば、人工関節やインプラントにも使用されるほど物性的に安定しているチタンなのだから、当然といえば当然なのだけれど。

厚さ0.35mmと極薄のチタンチューブ。 ストローのために選ばれたかのような寸法だ。厚さ0.35mmと極薄のチタンチューブ。 ストローのために選ばれたかのような寸法だ。
ふにゃふにゃになった紙ストローは1g。吹けば飛びそうな軽薄さだ。こんなものに大切な飲み物を任せていいのだろうか。ふにゃふにゃになった紙ストローは1g。吹けば飛びそうな軽薄さだ。こんなものに大切な飲み物を任せていいのだろうか。 チタンストローは7g 放つオーラに比べると驚くばかりの軽量性 もちろん紙ストローが7本束になってもかなわない剛性を持っている。3本の矢は折れないかもしれないが、7本の紙ストローはチタンストローに手も足も出ないチタンストローは7g 放つオーラに比べると驚くばかりの軽量性 もちろん紙ストローが7本束になってもかなわない剛性を持っている。3本の矢は折れないかもしれないが、7本の紙ストローはチタンストローに手も足も出ない


厚さ0.35mmというチタンチューブは熱伝導性にも優れており、冷たい飲み物のひんやりした感覚をそのまま味わうことが出来るのも美点だ。チューブの薄さは、ストローの流量の多さにも直結している。6.35mmという直径もちょうど良い咥えやすさで、シリカはストローを開発するためにこの寸法のチューブを使ってボトルケージを作っていたのでは?という疑念を抱いてしまうほど。

もちろん、水を吸ってしまってふにゃふにゃになることなんてありえない。シリカいわく「どのストローよりも重量剛性比に優れている」のだから(笑)。一つだけ注意点を挙げておくと、ストローを噛む癖がある人にはあまりオススメは出来ない。この優れた重量剛性比によって、あなたの歯が欠けてしまう可能性があるから。

シリカ SICURO Bottle Cage Ti シリカ SICURO Bottle Cage Ti
非常にオーソドックスでトラディショナルな作りのボトルケージは、機能的な面で言えば正直特筆すべきことは無い。といっても、金属製ケージ特有のしっかりしたホールド感を備えつつ、30gを切る重量というのはそれだけで十分魅力的なのだけれど、実使用においては何の変哲もないボトルケージである。

しかし、なんとはなしに眺めていると一つの違和感に気付く。これ、どこで溶接してるの? 1本のチューブを曲げて加工しているのだから、最後に端部同士をつなげる必要がある。シリカがインスパイアされたというKING CAGEなどは一目で溶接部がわかるが、それはチタンが非常に溶接しづらい素材であることも大いに影響している。

目を凝らしてなんとか見つけた溶接部 お分かりいただけただろうか?目を凝らしてなんとか見つけた溶接部 お分かりいただけただろうか?
ここまでロープロファイルな金属製ボトルケージは見たことが無い。ケージのチューブとフレームのクリアランスの狭さにもシリカのこだわりを感じるここまでロープロファイルな金属製ボトルケージは見たことが無い。ケージのチューブとフレームのクリアランスの狭さにもシリカのこだわりを感じる
前方から見ると、ボトルケージの取り付けプレートの薄さがよくわかる前方から見ると、ボトルケージの取り付けプレートの薄さがよくわかる
よくよく細部まで見て、やっとジョイント部分に気付くことが出来た。フレームに取り付けるプレートとの4つの溶接点、その右上に、かすかに溶接痕が残っていた。非常に細やかな溶接の痕をみて、シリカが誇らしげに語っていたレーザー溶接の凄まじさを実感する。取り付けプレートとの溶接部分も極めて細かく滑らかで、ついつい何度も眺めてしまうほど。

実はこのボトルケージ、装着個所別に塗り分けがされており、テンパーカラーとの境目の角度が大きいのがダウンチューブ用、少ないのがシートチューブ用となる。つまりどういうことかといえば、両方を自転車に装着すると琥珀色とチタン地金の境界線が一直線になるよう工夫されているのだ。

シートチューブ側はシリカロゴまでバーボンカラーに染まっているシートチューブ側はシリカロゴまでバーボンカラーに染まっている
ダウンチューブ用のシリカロゴはチタンカラーのまま。ボルトのカラーにも要注目だ。ダウンチューブ用のシリカロゴはチタンカラーのまま。ボルトのカラーにも要注目だ。
こういうの、響く人と響かない人がいると思うのだけれど、私は直撃、ドストライク、クリーンヒット。更に追い打ちをかけてくるのが、ボトルケージと同色に染め上げられたチタンボルト。ここの芸も細かくて、バーボンカラーとチタン無地が1本ずつ付いてくる。どこまで人の心をくすぐれば気が済むのか。

ここまでやられて、21,000円。ボトルケージ2つとストロー2本の値段としては高い部類に入るのは事実かもしれないけれど、正直全く後悔はしていない。久々に、"粋"というものを感じるプロダクトに出会えたのだから。

シリカ TITANIUM CAGE + STRAW KIT Bourbon
内容:SICURO Bottle Cage Ti(BOURBON/TITANカラー)×2個
TITAN STRAW(BOURBONカラー)ストレートとベントの2本セット
価格:21,000円(税抜)

impression&photo:Naoki.Yasuoka
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