イタリアの老舗ビアンキよりリリースされた「INFINITO XE DISC」をインプレッション。グランフォンドレースをより速く走りきるべく生み出されたエンデュランスレーサーのミドルグレードの実力に迫る。



ビアンキ INFINITO XE DISCビアンキ INFINITO XE DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
1885年に創業、現存する世界最古の自転車メーカーとして知られているビアンキ。ファウスト・コッピ、フェリーチェ・ジモンディ、マルコ・パンターニら世界の一流選手たちに自転車を供給し、いつの時代も存在感を示し続けてきた老舗だ。現在はユンボ・ヴィズマをサポートし、ツール・ド・フランス制覇を目指している。

ビアンキはRomaなどカジュアルなシティバイクで馴染み深いブランドであると同時に、先述したようにトッププロと共に最前線で常に戦い続けてきた。彼らのレーシング部門はレパルトコルサと呼ばれ、120年以上にも及ぶレースバイク開発の血脈を受け継いだ存在である。そのラインアップに「INFINITO XE」が2020年モデルより追加された。

直線的かつボリュームが大きめのリアセクション直線的かつボリュームが大きめのリアセクション マッシブな作りのダウンチューブマッシブな作りのダウンチューブ フォークブレードは樽型とされており、優れたエアロ効果を発揮するフォークブレードは樽型とされており、優れたエアロ効果を発揮する


INFINITOとは2010年に登場以来3代に渡り、ヴァカンソレイユDCM、ベルキンプロサイクリング、ユンボ・ヴィズマらが春のクラシックレースで投入するエンデュランスレーサーだ。ベルギーとフランスの石畳を攻略するために各社様々なギミックが盛り込まれたバイクや、非常に細いチューブを採用したバイクを数多くリリースしているが、ビアンキはINFINITOを骨太のチューブを使用したオーソドックスなロードバイクとした。

現在のINFINITOのトップモデルはカウンターヴェイル(CV)という振動除去素材を使用。サスペンションのように衝撃を受け止めるような快適性ではなく、路面からの微振動を素材で除去することでライダーへの負担を軽減してくれるというものだ。この素材のおかげでINFINITO CVはマッシブな作りとしながらも、長距離のレースで最終盤までパフォーマンスを持続させられるバイクに仕上げられている。

ケーブル類はダウンチューブの反ドライブサイドから内装されるケーブル類はダウンチューブの反ドライブサイドから内装される Selle RoyalのAsphalt GFというクッション性に優れるサドルを採用するSelle RoyalのAsphalt GFというクッション性に優れるサドルを採用する

レースバイクらしくマッシブな作りのBBシェルレースバイクらしくマッシブな作りのBBシェル フラットマウント、12mmスルーというスタンダードな規格を採用するフラットマウント、12mmスルーというスタンダードな規格を採用する


しかし、INFINITOシリーズのセカンドモデルとしてリリースされた「INFINITO XE」ではカウンターヴェイルの採用を見送ることに。唯一無二の振動除去素材をオミットすることで、コストパフォーマンスは向上。高級なバイクが用意されるレパルトコルサのラインアップにあって、ビアンキのレーシングバイクを身近な存在とするバイクに仕上げられている。

ただ単純にカウンターヴェイルを一般的なカーボンに置き換えただけではなく、INFINITO XE用の専用設計が行われていることが、レパルトコルサに位置づけられる理由だ。INFINITO CVに対して衝撃吸収性に寄与する各チューブをボリュームダウンすることで、エンデュランスレーサーたる乗り心地の良さを高めている。シートステーの接合位置を下げたコンパクトなリア三角や、細身のフロントフォークがINFINITO CVとは目立つ差異だ。

イタリアのレーシングスピリットが注ぎ込まれた証が「レパルトコルサ」だイタリアのレーシングスピリットが注ぎ込まれた証が「レパルトコルサ」だ ステムとコラムスペーサーはエアロを意識した作りとなっているステムとコラムスペーサーはエアロを意識した作りとなっている


最新のエンデュランスモデルらしくタイヤクリアランスは最大32Cまで対応。標準では28Cが装備されているが、ワイドタイヤの大きなエアボリュームによる快適性を求めることが可能となっている。タイヤで振動吸収性を調整することで、INFINITO XEはレースから長距離サイクリングまで様々なシチュエーションにマッチしたバイクへと乗り心地を変化させやすいはずだ。

INFINITO XEは長めのチェーンステー設計とすることで、直進時の安定感の高い乗り心地に調整されている。長めのヘッドチューブと短めのトップチューブの組み合わせにより、ライダーへのストレスが少ないアップライトなポジションとしている。悪路での操作性やパフォーマンス性が向上し、長距離走行する際の負担を軽減してくれるだろう。

シートステーとシートチューブの交点が下げられているシートステーとシートチューブの交点が下げられている 丸型ではなくD型シートポストを採用することで、エアロや快適性を向上させる丸型ではなくD型シートポストを採用することで、エアロや快適性を向上させる シンプルな作りのINFINITO XEヘッド周りシンプルな作りのINFINITO XEヘッド周り


INFINITO CVの基本エッセンスはそのまま受け継いでいるため、ややエアロダイナミクスを意識したフレームフォルムにも変わりがない。涙滴型のダウンチューブ、エアロ形状のコラムスペーサー、D型のシートチューブなどを採用している。特にエアロブレード形状のフォークは、エア抜けの良い樽型にカーブを描くデザインとしていることがポイントだ。

フレーム重量は約1100g、フォーク重量は約420g。ミドルグレード相応の重量ではあるものの、パワーロスのない剛性と快適性を両立させることで軽快な走行性能を実現しているという。ディスクブレーキのみのラインアップで前後12mmスルーアクスルの仕様。今回インプレッションを行ったのはシマノ105完成車。それではインプレッションに移ろう。



― インプレッション

「次に買い換える必要が無いエンデュランスバイク」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

今回カウンターヴェイルを搭載した上位グレードに乗っていないので、比べることはできませんが、カウンターヴェイルなしでも十分に快適性が高いですね。スプロケットの歯数など装備されているパーツや、ハンドルの位置などを見てもエンデュランスバイクらしい構成ですが、クライミングバイクのように進んでくれるんです。何でだろうと考え込んでしまうくらいですよ。

「次に買い換える必要が無いエンデュランスバイク」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)「次に買い換える必要が無いエンデュランスバイク」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
レースマシンらしいエアロ系とは毛色が違うバイク造形ですが、実際踏んでみるとレースバイクみたいに気持ち良く進んでくれるんです。ヒルクライムバイクはペダルが12時の位置にある時から加速していく印象があるのですが、INFINITO XEにも同じ感覚で進んでいってくれます。

ヘッド周りが高剛性に作られているおかげで、ライダーのパワーを受け止められているという印象があります。BB周りもしなるという事はなく、速度域に関係なくバイクが加速してくれるので、踏み込んでいくのが楽しい。自転車がリニアに進んでいくフィーリングには良い印象しかありません。

それでいて快適性に関しても本当に好印象です。ゴツゴツとした見た目ですが、外見に反して非常にマイルドな乗り心地なんです。フレームから伝わる路面の情報を完全にカットするバイクではなく、丁度良く状況を伝えてくれます。よく進んでくれ、快適。相反する性能のバランスの良さが頭を混乱させますが、結果的に頭の中には良いイメージしか残りません。

もし初めてのロードバイクとしてこのINFINITO XEを購入してしまったら、その次に買い換える必要が無いんじゃないですか(笑)。快適性を求めてエンデュランスバイクを探しているならば、オススメしたいバイクです。

ウィークポイントは重量だけでしょう。正直なところ上りに入るとバイクの重量を感じてしまい、軽量バイクのような挙動は身を潜めます。完成車にアセンブルされているホイール自体が軽い物ではないためでしょう。ただ、それは軽量なホイールに交換してしまえば、一発で解決できますから、交換してあげることでバイクの印象は変わると思いますよ。シートポストやステムなども少しずつ軽量化を進めていくにつれて、より良いフィーリングのバイクになるはずです。バイクを育てていくような楽しみ方もできると思います。

28Cのタイヤはそのままで良いでしょう。タイムを求める走りをした時は、25Cや26Cの方が速く走れるかもしれませんが、28Cとのタイム差は生まれても1秒や2秒程度の差だと思います。わずか3mmの差ですが28Cの快適性は圧倒的なので、このアセンブルは正解だと思います。

INFINITO XEをトータルでみた時、30万円という価格は安いと思わせるだけのポテンシャルを備えていると思います。見た目の良さ、ビアンキというブランドというだけで買ったとしても期待に答えてくれるでしょう。今回テスト印象ではハイエンドバイクにも劣らない性能を持つと言っても良いと感じました。

「1台で何役もこなすバーサタイルなオールインワンバイク」錦織大祐(フォーチュンバイク)

「1台で何役もこなすバーサタイルなオールインワンバイク」錦織大祐(フォーチュンバイク)「1台で何役もこなすバーサタイルなオールインワンバイク」錦織大祐(フォーチュンバイク) 未来的でこだわりのあるフォルムが好印象ですよね。ここ数年ブランドとして、特にミドルグレードが充実してきています。エアロなARIA、ロードレース向けのSPRINTと来て最後にデビューしたこのINFINITO XEは、それらの中でもユーザーニーズど真ん中を射抜くバイクです。

カウンターヴェイルを搭載しているINFINITO CVは、エンデュランスモデルとは思えないレベルの軽さとスピードの伸びが魅力的なバイクでした。弟分であるこのバイクにも大いに期待していましたが、予想以上の走りを見せてくれましたね。エンデュランスバイクらしい優れた振動吸収性を持ちつつも、登録レースに出るような人でなければ十分に満足できる剛性感を備えており、ホビーライダーにとってはまさにうってつけの一台です。

登りで踏んでもしっかりと応えてくれるのですが、とにかく踏みやすい剛性感で脚を残しやすい。それでいて、ダンシングでバイクを振っても、コーナーで倒し込んでいっても、余裕のある安定感を持っていて、初心者にも扱いやすい性格です。レースにおけるハイエンドバイクの活躍もあって、最近のビアンキはカウンターヴェイルに注目が集まりがちですが、決してそれだけではないんだぞ!と高らかに宣言しているようにも感じました。

もちろん、加減速の多い本格的なロードレースのようなシチュエーションであれば他の選択肢、例えば同じグレードであればARIAやSPRINTなどが最適な選択肢となるでしょうが、一定ペースのライドを楽しむのならこのバイクでしょう。一番長い間、サドルの上に座ってられるのは間違いなくINFINITO XEです。

ディスクブレーキの普及もあって、どんどんエンデュランスロードがグラベルロードへ引き寄せられていく流れがあります。その中で、こういったオンロードを軽快に走ることを主眼に置いたモデルは貴重な存在になってきました。

もちろん、グラベルバイクも素晴らしいカテゴリーなのですが、やっぱりオフロードに行かない人にとってはオーバースペックですし、ロードレーサー然とした走りは苦手です。その点このINFINITO XEは、普段はソロでロングライドを楽しみつつ、たまには仲間とエンデューロレースに出場したい、というような方にとって、何にでも使えるこのバイクはうってつけの一台でしょう。

ビアンキ INFINITO XE DISCビアンキ INFINITO XE DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ビアンキ INFINITO XE DISC
フレーム&フォーク素材:カーボン(1.1/8"-1.5")
カラー:CK16/Black Full Glossy、Black/CK16 Graphite Full Glossy
サイズ:47/50/53/55/57
価格:
シマノ105完成車 298,000円(税抜)
シマノULTEGRA完成車 348,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。

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アウトドアスペース風魔横浜 HP

錦織大祐(フォーチュンバイク)錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)

幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。

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text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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